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辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)の一日】

 刹那の朝はゆるりとした起床で始まる。
 夜遅くまで仕事をこなしていたツケがここにきているからだ。
 否、それが刹那の確かな生活リズムであり、刹那だけに適したテンポだ。
 誰かに起こされることはなく、自分で起き上がる。
 パートナーアルミナ・シンフォーニル(あるみな・しんふぉーにる)イブ・シンフォニール(いぶ・しんふぉにーる)が用意してくれた和食。
 これを三人で静かに食べる。決して騒いだりなどはしない。
 その後はブレイクタイムよろしく、新聞を広げ世界で起きていることに目を通す。
 その合間、“相棒”の手入れも忘れない。大事な大事な刹那の仕事の相棒のだ。
 朝の刹那の表情は冷静でいて、優しき、少し大人びた幼女。実に可愛らしいものだ。

 朝も終わり昼になれば刹那はイブと森へと向かう。
 自分の準備体操と訓練を兼ねての模擬戦闘。
 森の中を二人が駆け巡り、ダガーと銃弾が木々を傷付けながら縦横無尽に飛び回る。
 イブが使用するペイント弾は、刹那に当たることはなく、刹那の背後からの一撃にて今日の訓練は終了した。
 その後、アルミナと共に買い物へ出る。が、この時、刹那の表情に異変が。
 刹那の双眸が、ナイフの切っ先よりも数段鋭くなった。
 そのままカメラから姿を消し、数分後に戻ってきた。

―一体何があったのですか?

 スタッフがそう聞くと刹那はこう答えた。
「何、ゴミ掃除じゃよ」
 と。

 夕食も終わると、刹那は依頼人に会いに行くという。
 が、ここで刹那から思わぬ一言が発せられた。
「……ここはちょっと、撮影はNGじゃ、音声もな。相手に迷惑かかるからのぉ。
 少し待っていてくれ」
 ……仕方がなかった。あの時の鋭い表情を思い出せば、当然だ。
 数分程待っていると刹那は帰ってきた。
「すまんのぅ、あちらから襲ってきたのでな。早々にやってしもうた」

―やってしもうた、とは?

「当然、お命頂戴、ということじゃよ。さあ帰るとするかのぅ」
 そう言った刹那は何事もなかったかのように家に帰る。
 帰宅すると、作られていた夜食を食べ、お風呂に入り、髪を多少乾かしてから眠りに付いた。
 余談だが、眠っている刹那の表情は年端も行かぬ少女、そうとしか見えなかった。

 これが辿楼院 刹那の一日――