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【ざんすか内乱】ふっかつのしゃんばら【最終話/全3話】

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【ざんすか内乱】ふっかつのしゃんばら【最終話/全3話】

リアクション

 第3章 「シャンバラ大荒野のアイドル、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の登場よー!」

■□■1■□■「儀式なんてくだらないわ。私の歌を聴けぇー!」

騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は、周囲の様子を見回す。
「こ、これは……詩穂のアイドルとしての感覚が告げています!
 ライバルが登場すると!」
伊達眼鏡を光らせて詩穂は戦慄する。

宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)が、
パートナーの魔道書同人誌 静かな秘め事(どうじんし・しずかなひめごと)と、
精霊イオテス・サイフォード(いおてす・さいふぉーど)を伴って現れた。
「亜璃珠の愛奴もといアイドル化の後押しをするわけだけど、
 大事な復活の儀式にただコンサートするだけっていうんじゃ空気嫁状態よねえ。
 いっそ、儀式の盛り上げにコンサートをするわよ。
 こお、天岩戸に引き篭った天照大御神を引っ張り出すために踊ったアメノウズメのような感じで。
 儀式には歌や踊りはつきものだし丁度いいかもしれないわ」
「ふふふ〜。
 母様はなにやら真面目に考えておられるようですけど、
 わたくしは亜璃珠ファンクラブの一員として
 亜璃珠様の華々しいお姿を記録に残すのみですわ〜」
「復活の儀式にアイドルコンサートですか?
 それがどんな関係があるのかわかりませんが、
 皆が楽しめる方法を考えればよいのですよね?
 殿方限定になるのでしょうけど、衣装をシースルーというのでしょうか?
 うっすらと透けて見えるような薄い生地の服、
 衣装をそれにするのはどうでしょう?
 あと羽衣めいた飾り物とか。
 大きな振付とふわふわした衣装の動き、それと統一された振り付けで意識の統一感を誘発するんです」
静かな秘め事に予備のカメラを渡されつつ、イオテスは何の裏も悪意もなく過激な発言をする。
「さあさあ、
 シャンバラ大荒野のアイドル、
 崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の登場よー!」
祥子の実況で、煙幕ファンデーションが焚かれた中、
崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が登場する。
白を貴重にしたキレイ・清楚系のシルク系のお姫様なドレスにティアラや長手袋を着用し、
百合園っぽさ、或いはお嬢様らしさをイメージした衣装に、
白のエレキギターでギャップ演出といういでたちであった。
「ふふふ、普段きりっとした格好良い系お姉さんな亜璃珠の
 かわいらしい姿を決定づけてあげるわ」
祥子のたくらみはよそに、亜璃珠は演奏を始める。
アリスの崩城 ちび亜璃珠(くずしろ・ちびありす)は、ジャーマネとしてトラブル対応に当たる。
「いったい何のつもりざんすか!?」
「亜璃珠のあいどるこんさーとよ。
 何かあったら私が小型飛空挺できゅーしゅつ&たいひするわ。
 そのままとびながららいぶぞっこーでも乙なもんかしら?」
ちび亜璃珠はざんすかをなだめる。
(良くも悪くも熱狂したのに、
 やさぐれっぱなしだった自分に腹が立ってきたから。妥協をプライドが許さない。
 今回は、私らしい演出で!
 このままじゃ終われない。今度は本物の亜璃珠を見せ付けてやるわ)
亜璃珠は前回のリベンジを考えていた。
裏では、神倶鎚 エレン(かぐづち・えれん)が、
亜璃珠のアイドルライブを地祇達にうまいこと持ちかけて悪徳プロモーターをしようとしていた。
契約書にサインさせまくるつもりである。
「ライブチケットは『観光地の絵葉書』に印刷して発行しましょう。
 きっと地祇のみなさんの契約数も鰻登り、
 そのライブを興行したヴぁいしゃりーは
 全て土地の地祇から支持を受けることが出来ますわ。
 そうなれば、まさに地祇のリーダー!
 シャンバラの支配者と言っても過言ではありませんわ!
 だいいち、亜璃珠は百合園生なのですから、地元ヴぁいしゃりーを応援するのは当然ですわよね?」
「ふふふふふ、わかってるじゃありませんの。
 これでシャンバラを支配するのはわたくしですわ!
 おーほっほっほっほ!」
エレンは、個別に地祇達に同じ話をして回っていた。
「アイドルライブですもの、人々はもう熱狂的に支持するようになりますわよ〜。
 合体してシャンバラになったら、
 その中心意識は人気を集めてみんなが認めるつぁんだがなるに違いありませんわ」
「君はなかなか見所があるようだね!
 ツァンダ商人である僕が支持してあげよう!
 あーはっはっはっはっは!」
(チョロいですわ)
ライブとは関係ない、遺跡の使用優先順位に関する取り決めとか、
地祇の所属契約とか出演契約とか、
配当金のほとんどを荒野の孤児院に寄付する契約とか、
そんなものをエレンは地祇達に片っ端から契約させるのだった。
エレンのパートナーの機晶姫プロクル・プロペ(ぷろくる・ぷろぺ)は、そんな中、考えていた。
「……最近エレンがプロクルと遊んでくれないのである。
 他のLCとばっかり遊びに行ってしまうのである……。
 むむ! 
 神子だったらきっとちやほやしてくれるようになるのである!」
メモリープロジェクターで、映像投影してライブを盛り上げようとするプロクルだが、
ステージ上のざんすか達の思惑とはズレる。
「って、ざんすかシリーズの『珍プレー集』流すんじゃないざんす!」
「いいじゃないか、ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)が、
 グレートマシンガンことオマタゲ・ソルデスだと思って、
 『グレートクニガミン』こと国頭 武尊(くにがみ・たける)に、
 『ハイパーランサー』の名乗りを上げて突っ込んだシーンとか、
 貴重な名場面もあるのである!」
プロクルは言う。
「ハイパーランサー引っ張りすぎです!?」
ロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、ツッコミを入れる。
「そうそう、そんなことより、円さんに連絡して、
 アイドルの亜璃珠さんを応援するファンサイトを立ち上げたところだったんです。
 色々とデータや情報を貰いましたらブログ作成を。
 動画や写真を張り付けまして、これまでの活動や以降のスケジュールを載せまして。
 という感じで作成したのですが、
 物足りない感じがしたので、
 アクセス数の多い所を参照にしました。
 「体が火照って仕方が無いです」
 「ヴァイシャリーの夜で待っています」とかありましたので、
 いろんなフレーズを入れてみたんです」
アクセス数を増やすためエロサイトやワンクリック詐欺っぽい言葉を入れてしまうロザリンドであった。
なお、そういうサイトであることには気づいていない。
「円さんの作ったパンフもサイトのあちこちに掲載しましたよ。
 パンフ紹介ブログの見出しには「最終日に亜璃珠さんが凄い事を!?」と入れました。
 ファンの皆さんは必ず来ていただかないと!」
かくして、ロザリンドの広告のせいで、邪な期待を抱いた亜璃珠ファンが詰め掛けてしまったのだった。
「これで、亜璃珠さんが、
 アイドルとして成功されることを願ってます。
 この事態を収拾するには、強い人の思いが必要だと思います」
「亜璃珠さんが脱ぐっていうのは本当か!?」
「うおおおおおおおおおおおおお!!」
ロザリンドの言う「強い人の思い」とは、本人の意図とは関係なく、
「エロス」や「リビドー」になってしまったのであった。
さらに、羽高 魅世瑠(はだか・みせる)と、
パートナーの剣の花嫁フローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)
シャンバラ人ラズ・ヴィシャ(らず・う゛ぃしゃ)
蝙蝠の獣人アルダト・リリエンタール(あるだと・りりえんたーる)も、
儀式を盛り上げようとする。
「しっかし、合体だぜ合体。
 男女問わずくんずほぐれつの合体……ってことは、
 男と男が合体するパーツなんてのもあるわけでよ。
 たしがんって奴も泣いて喜んでるだろうぜ。
 な、オマタゲも、ソルデス一家の連中もそう思うだろ?」
「オマタゲも、ソルデス一家も、
 なんだかんだでざんすかシリーズの準レギュラーといっても過言じゃないもんな。
 さすがジャタ族の生命力だぜ!」
魅世瑠とフローレンスは、しゃたを慕ってやってきたオマタゲ・ソルデス達に言う。
「えーとえーと、みんながんばろうね。
 じゃた様の中毒は心配だけど、
 またあたらしい中毒になっても困るから今回はおさわりしないよー。
 それより、みんなでじゃた様のためにがんばってたたかおうね!
 ラズがみこ?
 魅世瑠が言うならなってもいいよー。
 でも、なにすればいいのかなー。
 ラズにはむずかしいことはわからないし
 昔のことも時々一族の亡くなったババ様の話を思い出せるていどだよー?」
「だから使いやすいんじゃねぇか」
「って、魅世瑠それどういういみー?」
「PC神子が出てきたら、
 突然神子なりたさに自由設定変更なんてチートもやってねぇし。
 筋は通ってるだろ」
「あ、ラズわかったよ、それって『めたはつげん』だね!」
ラズと魅世瑠が会話する横で、
アルダトは言う。
「うふふふふふ、「黒ベタに白抜き太明朝で『合体』」
 と来れば、わたくしの独擅場ですわね。
 腕とかいろんな部位とかが鳴りますわ。
 え、そういう意味ではないんですの?
 対ジャタ族一万人組手とかではなく?
 あらあら、がっかりですわね。
 このがっかり感をどこにぶつけてやりましょうかしら。
 そうですわね、ヴぁいしゃりーとたしがんが悪者ということになっていますから、
 全部引き受けていただきましょう。
 お二方には、【蒼フロ倫】で【全年齢対象のため描写不可】な、
 本物のサバオトというものを身をもって味わっていただきたいものですわ」
「ぎゃああああああ、何をなさいますの!?」
「ああ、【蒼フロ倫】で【蒼フロ倫】というやつかい。
 フフフフフ、嫌いじゃないよ」
アルダトがヴぁいしゃりーとたしがんに襲い掛かったが、たしがんは余裕であった。
桐生 円(きりゅう・まどか)は、ボロボロになっているヴぁいしゃりーを回収して、
亜璃珠アイドルコンサートのコメンテーターにする。
(なるほど、絡め手が多そうだから関節技ね。
 なんだろう、目立ってれば気が済む子のような臭いがする)
「ヴぁいしゃりーくんの力が必要なんだ!
 たのむよ!
 ヴぁいしゃりーくんしか出来ない高貴なお仕事なんだ!」
「ふふふ、そ、そこまでおっしゃるならやってさしあげてもよろしくてよ」
ヴぁいしゃりーは円に乗せられる。
ちぎのたくらみを使用して、15歳の外見になった円は、ステージに上がる。
「くっ、だが胸は変わらない畜生!」
歌詞担当の桐生 ひな(きりゅう・ひな)と、
パートナーのアリスナリュキ・オジョカン(なりゅき・おじょかん)も、
ステージに上がる。
円とひなはバックダンス対決をし、ナリュキは前回同様、マスコット役であった。

「貴女の事を想うとー 胸の鼓動がざわめくー
 本当は傍に居て 共に戦い抜きたいが 今は気持ち胸に仕舞ったー♪

 空を見る度に 貴女の事を呟くー
 遠く離れた地で 地平線を望みながら」

せつないラブソングが終了し、
黒赤基調の攻撃的なイメージの、
胸元を強調した黒革のホルターベストにガーター付のミニスカートという、
お色気重視で「目指せエロカッコよさ」な姿に変身した亜璃珠は、
今度は黒いギターを手に叫ぶ。

「儀式なんてくだらないわ。私の歌を聴けぇー!」

「ありすをトップアイドルとして、盛り立ててやるのじゃ」
ナリュキは、亜璃珠のステージ上で愛嬌を振りまく。
「ぐるんぐるん〜」
円は、ヴぁいしゃりーをぐるぐるステージ上でふりまわす。
「きゃー、何をなさいますのー!?」
「円の実力はそんなもんですかっ、分銅で茶が沸くです〜」
ひなは、一緒にヴぁいしゃりーをふりまわす。
「きゃー!? きゃー!?」
悲鳴を上げるヴぁいしゃりーだが、円とひなは回転力を利用して、ヘリのように飛んだ。
「うわー! バターになるー!」
円とひなとヴぁいしゃりーはくんずほぐれつして落下した。
そんな中、熱いパンクソングを歌う亜璃珠だった。

「揺れるこの世界の中で 今を生き抜く者として
 何もかも握り潰すか それとも奈落に行くのか

 掌の上に転がる賽は 哀しみと憎しみとの狭間に
 全てを燃やし尽くす地獄の炎 迫り来たりてー Ah」

秋葉 つかさ(あきば・つかさ)と、
パートナーの吸血鬼ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)が、
ステージに飛び出してきた。
「ヴァレリー様も亜璃珠様も御主人様でありますから、
 ヴァレリー様もアイドルに!
 それに神子になる為に合体するらしいですよ?
 合体ですよ合体、身体を使ってあんな事やこんな事まで……」
「おお、さすが妾と以心伝心のつかさなのじゃっ!
 『この後』の準備のために前座をつとめてくれようとは!」
「ちょっと待ってよ、『この後』って!?」
つかさとナリュキの発言に亜璃珠が呆然とする中、
ヴァレリーのライブがはじまる。
「みんなー抱きしめてー。しゃんばらの果てまれぇ〜♪」
火術、雷術、氷術で特殊効果も織り交ぜつつ歌うヴァレリーであった。
(ふっ、これで気を惹ければシンデレラも真っ青だな)
ヴァレリーは思う。
「よーし、そろそろ頃合ねえー」
円のパートナーの吸血鬼オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)の合図で、
英霊ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)が、ロザリンドとともに集めたファンの群れが、
ステージに人間階段を作り始める。
「さあ、アリスちゃん、
 この上を歩いてちょうだい!」
オリヴィアの無茶振りに、亜璃珠はキレる。
「隠しステージってわけね。
 ここで逃げたら私の名が廃るわ。やってやろうじゃない!」
「さあ、ご主人様も!」
「俺様もか!?」
つかさの言葉にヴァレリーは驚きつつも、一緒に人間階段を上る。
「さあ、いずれは亜璃珠様とユニットを……」
「まてまて、それは俺様よりもつかさがやりたい事ではないか?」
「私はメイドですよ?
 御主人様より目立つ事はできません、ということでお願いいたしますね」
つかさとヴァレリーはそんな会話をし、なしくずしでヴァレリーも本気でステージをやるのだった。
オマタゲ達、じゃたを崇めるドMの男達を中心に、亜璃珠ファンの人間階段は構成されていた。
ダークネスウィップを振り回す女王様な亜璃珠を見て、ロザリンドは言う。
「こういうの流行ってるんですか?」