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リアクション
第三章 地下に棲まう鬼3
隠し部屋から隠し通路へは全員の協力で発見できたが、すでに時は丑三つ時(午後三時半)である。
あと、二時間もすれば城の者が起き出してくる頃だ。
一行は長い地下階段を下り、石壁で作られた地下通路へと進んでいく。
ここではヴァルキリーレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が光術を使って明かりを灯していた。
「薄気味悪い場所ですね。あ、あれは……」
小一時間は歩いたころ、レイナの放つ光の先に蠢く黒い影があった。
邪鬼の群れだ。
皆それぞれに武器を手にし、身構える。
「おいでになったようだな!」
静麻の銃声を皮切りに恭司が突撃をかけた。
隼人と正悟は、怯えるティファニーを何とか立たせている状態だ。
「夜明けまであと僅か。こんな雑魚は適当にちらせて、先に進んだ方が良いのでは」
戦いを避けながら、なをも慎重に地図を描き続ける保長。
全員で邪鬼をなぎ倒しつつ、迷路のように入り組む地下通路を駆け抜けた。
「はあ……は……どこまで続きやがるんだ、この道は……え?」
先行して走っていた光一郎は、急に今までとは違う作りの部屋に囲まれていることに気がついた。
血のように赤く塗られた漆喰が妙に寒々しい。
見れば足下に、長い爪のついた腕が一本転がっていた。
「し、屍体デスー!キャアアア!」
なんとかこれまで我慢していたティファニーだったが、恐怖が限界に達したようだ。
持っていた槍を振り回し始めた。
「ティファニーさん落ち着いて。今は冷静に動かなきゃ!」
正悟がなだめ、落ち着かせようとするが暴走ティファニーにはまるできかない。
仕方なく、パニック状態の彼女を力で押さえ込んだ。
「ご、ごめんね」
「ふえぇぇぇ……っ」
「ティファニーちゃん大丈夫だよ。俺たちが守るから……はっ!?」
隼人は殺気を感じ、暗闇に目をこらした。
すると明かりが……レイナではない別の明かりが次々と灯っていく。
鬼火だ。
その揺れる灯りから、角を生やした小柄な人影がゆっくりと近づいてくる。
「侵入者か……そなたたち、『天鬼神』の血の契約をしておらぬようだな。ならば帰す訳にはいかぬ。ここで全員、死ね」
明かりに照らされた鬼は美しい顔を歪めて笑っていた。
どこかで見た面立ちの女の鬼である。
髪はのび放題で、やつれてはいるが、茶席で一度見かけたことがある――隼人は驚愕した。
「……鬼城貞継将軍!」
「将軍様だと!?」
恭司達が叫んだのと同時に、鬼子が襲いかかってきた。
「私を将軍と呼ぶなどと……許されぬぞ!」
その長刀は素早く、力強い。
光一郎が間合いを計りながら近づく。
「なにやってんだよ将軍様、こんな所で。
「ええい、私を将軍と呼ぶなといっておろうが!」
「でも、あんた、今の将軍様にそっくりだぜ。別人ってなら、血縁者か!?」
「なん……だと!?」
鬼子も動きが止まった。
驚きを隠しきれないでいる。
「ま、まさか……あの子が生きて……」
「俺たちは鬼退治に来たんじゃない。マホロバ城に隠された謎を解きに来ただけだ」
静麻は畳みかけるように言う。
「その長刀を下ろしてくれないか」
「お、教えてくれ……その将軍は私と似た顔なのだな。生きているのだな」
鬼子から殺気が消えた。
彼女は長刀を捨て、もう一度繰り返した。
「教えてくれ、その名を。あの子には名前がなかったのだ」
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