イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

リアクション公開中!

聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)
聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回) 聖戦のオラトリオ ~覚醒~(第3回/全3回)

リアクション


(・第三部隊)


 第二部隊のアルファ小隊、ブラボー小隊に先行し、第三部隊はマリーエンケーファーに接近していた。
「なんちゅうデカさや……」
 連想されるのはダイダラボッチというところだろうか。
 コームラント、【与一】のコックピットから穂波 妙子(ほなみ・たえこ)はその姿を捉えた。
「妙子、離れるぞ! 主砲が来る!」
 朱点童子 鬼姫(しゅてんどうじ・おにひめ)が叫ぶ。
 元々狙撃の姿勢になっていたため、それほど反応に遅れることはなかった。
 直後、光が爆ぜた。
 被弾したわけではない、ただ敵の主砲の余波が伝わってきただけだ。
「この前のとは比べ物にならんな」
 東シャンバラの要塞にあった主砲。それも強力だったが、今回のはそれを凌駕している。
 敵イコンから通信が入った。
 今の主砲が再び放たれるまで、あと二十分。
 しかし、敵の武装があれだけとは思えない。
 巨体から生える二本の腕が、胴体の前へ突き出された。
「砲口!?」
 ビームの発射口だ。胴体に搭載された大型プラズマキャノン以外に、掌の中からビームが放出される。
 その威力が要塞にあった武装並の威力を誇っている。
「ミサイルが来るぞ!」
 ならば、とこちらもミサイルポッドで応戦する。
 そして、敵のビーム発射口に大型ビームキャノンの照準を合わせた。
「これでも、食らいや!」
 フル出力で狙撃を行う。だが、それは敵の前で拡散した。
 エネルギーシールドだ。
 この距離ではびくともしない。しかし、これ以上近づけば危険だ。敵の武装は何も遠距離攻撃のみに特化しているわけではないからだ。

 同じように、遠距離からの攻撃を行っている機体があった。
 敵のシュメッターリング、シュバルツ・フリーゲの編隊を潜り抜け、マリーエンケーファーへと接近していく。
「はっはぁ、いいねぇいいねぇ! ぶっ潰しがいがあるじゃねぇか!
 何だ、赤坂ぁ! ビビってねぇよなぁ?」
「な、ビビってなんかないわよ! 照準……セット! いけるわよ!」
 折原 宗助(おりはら・そうすけ)赤坂 琴葉(あかさか・ことは)の駆るコームラントだ。
 大型ビームキャノンを敵小隊に向けて砲撃を行う。
「この砲撃……避けれるもんなら避けてみやがりなぁ! オラオラオラ! 堕ちろ堕ちろ堕ちろぉぉぉ!」
 その攻撃は図らずも、味方部隊が突破するきっかけを作っていた。
 コームラントの支援を受け、他の機体が突破していく。
「あのデカブツ……へえ、歯ごたえありそうじゃねぇか」
 直後、機体が揺れた。
 主砲の衝撃を受けたためだ。
「面白ぇ。テメーも俺に堕とされてくたばっちまいなぁぁぁぁ!」
「あーあ、テンション上げすぎだっての。けどまぁ、あれを堕とせば敵の士気も下がるだろうし、やる価値はあるわよね」
 もう一機、【与一】が敵機の右側にいることを確認し、左側へ旋回する。左腕の砲口を確認し、そこを狙う。
 発射のタイミングを狙ってだ。
「堕ち――」
 だが、出力が違いすぎた。
 咄嗟にかわすものの、装甲が削り取られる。
「ち、なんて威力だ……」

 隙が見当たらない。
 だが、敵の機体も完璧ではないはずだ。
『あと二十分ってさっきあの中のパイロットは言ったよな。それは、エネルギーのチャージにそれだけ時間がかかるってことだ。ビビる必要はねえ。必ずどこかに弱点はあるはずだ』
 コームラント、【クラッシャー】の中から、雨月 晴人(うづき・はると)が通信を送る。
「石橋ツリー! ボォォス?」
「ああ、おそらくはそうだ」
 アンジェラ・クラウディ(あんじぇら・くらうでぃ)の謎の叫びに晴人が応じる。
「落ち着いて敵の挙動を見極めるんだ。フォォォ! が共にあらんことを」
 アンジェラの言動を真似ながら、【クラッシャー】は前へと進む。コームラントでありながら、前衛としてマリーエンケーファーの対策に当たるために。
 現在までに確認した敵武装は、
 ミサイル。
 大型プラズマキャノン。
 両掌のビームキャノン。
 そしてエネルギーシールド。
(これだけでも、相当だな)
 仲間を奮い立たせようとしたものの、敵の弱点らしい弱点のあたりはついていない。
 敵のミサイルに対して、機関銃とミサイルポッドで弾幕を張り、他小隊やイーグリットのための道を開く。
(ハルト、来る、ワイヤー!)
 敵の胴体から太いワイヤーが放たれた。
(く……!)
 咄嗟にそれを避ける。
「椅子ラー油に行った奴ぷぎゃー!」
 回避時の衝撃に、アンジェラが声を上げる。【クラッシャー】はかわせたからまだいい。
 眼前のイーグリットが一機、ワイヤーに拘束され、次の瞬間煙を上げて海上へと墜ちていった。
「電流か……!」
 拘束式ワイヤーに電撃を流し、機体をショートさせてきたのだ。
(近付くのも容易じゃない……どうすりゃいいんだ?)

「ターゲット確認、目標を駆逐する」
 リーゼロッテ・フォン・ファウスト(りーぜろって・ふぉんふぁうすと)フィア・シュヴェスター(ふぃあ・しゅう゛ぇすたー)が搭乗するイーグリットがマリーエンケーファーに肉薄する。
 改めて見ると、目の前のイコンは一つの移動要塞にも見える。
 人型……とはいえ、辛うじてだ。
 武装は機体と一体化している。こちらのように、装備して使用しているというわけではない。
 機動力を生かし、ミサイルをかわしていく。
 だが、問題は攻撃すべき箇所を見つけられないことにある。ビームライフルのトリガーを引くも、エネルギーシールドは機体全体を覆うように展開されている。
 接近すればワイヤーの餌食だ。
 ビームサーベルに切り替え、拘束式ワイヤーを切断する。
「――――ッ!」
 そこへ、バルカンによる銃撃が来る。こちらの持つ頭部バルカンと同じような、接近戦用の兵装だ。
 ワイヤーで拘束し損ねた相手を撃ち抜くためのものだろう。
「遅い! 遅いぞフィア!」
「ごめん……なさい」
 思うように機体の性能を発揮できず、わずかに苛立つ。
 弱点を探すことさえ困難な状況に、歯噛みせずにはいられなかった。

「ワイヤーとミサイルは厄介だな」
 クェイル、【イルマ】に搭乗した笹井 昇(ささい・のぼる)デビット・オブライエン(でびっと・おぶらいえん)は第三部隊に追いついた。
「迎撃は味方に任せて、私達はあれの注意を引き付ける」
 どれだけ重武装であって、巨大であっても一機だ。仲間が攻撃するチャンスを作れば勝機はある。
 クェイルの性能は、他の二機――イーグリットやコームラントと比べるべくもない。だが、その分パイロットとしての純粋な技量が問われる。
 そのことに、改めて昇は気付いた。
(クェイルで足りない分は私達が補う)
 昇が機体移動を行い、デビットがアサルトライフルのトリガーを引く。
「あのシールド、どうにかならねぇものかな」
 そう簡単にあのシールドは破れそうにない。
 飛んでくるミサイルを注視して、昇は最小限の動きでの回避を図る。
「昇、あんまり難しく考えんなよ。イコンも女と一緒だ。個性に合わせて優しくリードしてやればいいんだよ。こっちがガチガチになったら相手も固くなるだろうが」
 照準を合わせる。
「自然体だよ、自然体。こんな風にな」
 近くまで接近しかけていたシュメッターリングを撃つ。昇の動きに合わせて、狙いやすいように銃口を移動させていたのだ。
「借りるぜ、その剣」
 敵の腕をアサルトライフルで撃ち、怯んだ隙に実体剣をぶんどる。敵の剣には対ビーム用のコーティングがされているようだ。
「さて、これで少しはマシになるか」
 左手にアサルトライフル、右手に実体剣を携え、【イルマ】はマリーエンケーファーを見据えた。