イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

リアクション公開中!

インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

リアクション


【2】SEARCH【1】


 西区・化学プラント。
 一週間前に破壊された化学プラントは、無惨な残骸と化していた。コンクリートの壁はことごとく破壊され、焼け付いた鉄骨が剥き出しとなっている。散乱するコンクリート片は高熱に晒された事を訴えるように真っ黒に焦げている。
 天学生徒会長山葉 聡(やまは・さとし)と風紀委員の鈴木は瓦礫の中を歩いていた。
「このプラントはオートメーション化されていたのが幸いでした。ここ二ヶ月で破壊されたラボやプラントには人的被害も出ていますが、このプラントは事件当時、誰も常駐していなかったため、施設関係者に被害者は出ていません」
「警備スタッフはいたんじゃないのか?」
「5km先にある区画担当警備の常駐する詰め所にいた模様です。事件当時、プラントの警備システムを監視していたようですが、やはりシステムに異常はなかったと報告しています」
「異常はないが、気が付いたらプラントが大火事になってたってか。まったくよくわからねぇなこの事件は……」
 聡の視線の先では、海京警察と風紀委員が協力して現場の洗い出しを行っている。
「他に連絡事項は?」
「教導団のルカルカ・ルー、蒼空学園の七枷陣、空大のレン・オズワルドから、海京警察に捜査協力を志願したいと連絡が入っています。海京は日本領、大陸の人間が動き回るのは気になりますが、どういたしましょうか?」
「……って、そんな事気にしてられる状況じゃねぇだろ。海京警察に口利きしてやれ」
「了解です。それと……」
「ん?」
「生徒会のほうから、アイリ・ファンブロウの同好会の申請が来ている、と連絡が」
「アイリって、あの変人か? あー……わざわざ連絡して寄越すってこた、許可して大丈夫かって事だよな?」
「そうでしょうね」
「うーん……、まぁ同好会の規定を満たしてるならいいだろ。こっちはそれどころじゃねぇんだよ」
「生徒会にはそう伝えておきます。それから……」
「まだなんかあるのか?」
「お忘れですか、風紀の桐ヶ谷君とのアポがあります。このプラントで待ち合わせの約束ですが……」
「ああ、そうだった。おっ、なんだもう先に来てるじゃねぇか、おーい、煉」
 既にプラントで待っていた桐ヶ谷 煉(きりがや・れん)は二人を見付けると顔を上げた。
「……悪かったな、忙しい時に時間をとらせて」
「いや、構わないさ。わざわざ呼び出したって事はそれなりに大事な用があるんだろ?」
「ああ。ただ、これから話す内容は正直理解されにくい話なんだ」
「なんだよ、もったいぶるな」
「噂に聞いたんだが、パイロット科のアイリからシャドウレイヤーとか未来人なんて話をされたんだろ?」
「ああ、今朝な」
「後者はともかく、前者は確かに存在した。確実にな」
 顔を見合わせる聡と鈴木に、煉は以前シャドウレイヤーの中でアイリと共に戦った事を話した。
「おいおい、そんな報告、俺は受けてねぇぞ。マジかよ……」
「認めたくはありませんが、桐ヶ谷君が嘘を吐く理由もありませんし……、やはり真実なのでしょう」
 二人とも信じられない様子だが、風紀委員である煉の言葉を疑う事はなかった。
「……ちょっと待て。その話が真実だとするとだ」
「?」
「まさか、煉……。お前、魔法少女のコスプレをして海京の街を……?」
「ち、違う!」
 あらぬ誤解をかけられて、煉はぶんぶん首を振った。
「ボクが魔法少女仮契約したんですよ。父様はマスコットです。ハムスター姿可愛かったなぁ♪」
 煉の背中からひょっこり顔を出し、桐ヶ谷 真琴(きりがや・まこと)は言った。
「父様?」
 聡は眉を寄せる。
「ええ、ボクもアイリと同じで未来から来たんですよ。多分彼女とは別の未来ですけど」
「え……? は? ええ?」
「ま、皆信じてくれないですけどね。顔がそっくりなのでいつも兄妹か親戚だと思われるんですよ」
「………………」
 聡は怪訝な表情のまま黙ってしまった。
「それぐらいにしておけ。聡が混乱してる。ところで、シャドウレイヤーの痕跡は見つかったか?」
「それが見当たらなくて……。あの空間の痕跡はこちらの空間には残らないかもしれないね」
「そうか。証拠があれば話もしやすくなると思ったんだが……」
 鈴木はコホンと咳払いをした。
「いえ、もう十分ですよ。桐ヶ谷君の報告はよくわかりました。異空間が現実に存在していると言う事ですね」
「ただ、それを認めた上でどう対策を取るかだ。うちの学校に魔法少女なんてほとんどいないからなぁ」
「そこで提案なんだが、アイリをリーダーにしたシャドウレイヤー対策組織を設立してはどうだろうか?」
「アイリを?」
「表向きは部活動って扱いにして実働部隊となる魔法少女達や、バックアップを行う人員に所属してもらう。天学以外の協力者については課外活動の一環という扱いにすればいい。まあ、アイリをこちら側に引き込んでしまえば例の問題児行動も、ある程度抑制できる、という狙いもあるんだがどうだろう?」
「部活動……」
「そんな話をどこかで聞きましたねぇ、会長」
「なんの話だ?」
「ちょうどよくアイリさんから同好会の申請が来てるんです」
「……ったく、今の煉の話で合点がいったぜ。アイリの奴、自分達で組織を立ち上げやがったな……。
 いや、あいつらじゃなくて、誰かの入れ知恵か……?
 ……まぁいい、スーさん、例の”同好会”は生徒会でサポートしてやれ。その代わり、何かあったらちゃんと報告するように言っとけ」
「了解です」
「……流石、うちの会長は話が早いな。ルルには俺から、その”同好会”の件を伝えておこう」
「ああ、そっちは頼んだぜ」