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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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インベーダー・フロム・XXX(第1回/全3回)

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「最近、不可解な事件が多いですねぇ。私も西区にラボを持っているものですから、肝が冷えましたよ」
 風羽 斐(かざはね・あやる)は手の中でコーヒーカップを弄ぶ。
 西区にあるラウンジは研究者たちの憩いの場だ。研究の合間に集まり、論議を交わす。ここではよく見られる光景だ。
「本当にのぅ。幸いラボが現場から離れていたから助かったが」
「まだ安心するのは早いですぞ。あのプラント以外にも襲撃を受けた施設は幾つもありますからな」
 研究者達も昨今の事件に不安を抱いているようだ。
「……そういえば、この間、書類を失くしてしまいましてね」
「ほう」
「研究に関する大事な書類でして、必死で探していたのですが、どうにもこうにも見つからないのですよ」
「ああ、ありますなぁ、そういう事」
「探している内に、ふと、これも事件かもしれない、と。こう事件が続くと何が起きてもおかしくはないと思ってしまいまして、流石に考え過ぎだとは思いますがね。まぁ書類はいつもと違う所にあっただけだったんですけどね」
「書類が見つからないのは、オッサンのラボが片付いてないのが原因だろ。ったく、誰が片付けてると思ってんだよ」 
 翠門 静玖(みかな・しずひさ)はやれやれと肩をすくめた。
「お父様、世間話ばかりではなくて、聞き込みもしっかりやって下さい」
 同じく後ろの席で、朱桜 雨泉(すおう・めい)も唇を尖らせる。
「……はは、うちの助手は手厳しいですな(本当に容赦ないな、お前さんたち……)」
 斐は苦笑した。
「まぁこれだけ事件が大きくなると放っておけませんから、私も個人的に事件を調べているんです。時に皆さんは化学プラント襲撃の件で何かご存知ありませんか?」
「例えば、狙われる様な理由やシャドウレイヤーの件で、思い当たる事はないですか?」
 静玖も重ねて尋ねると、研究者達はう〜むと考え込んだ。
「そのシャドウレイヤーと言うのは聞いた事もないのぅ。新しく開発された技術か何かかのぅ?」
「……あ、そう言えば胡散臭い噂ですが、ひとつ思い当たる事がありますぞ。なんでもこの海京で”超兵器”の開発が秘密裏に行われていると言うものでして、もしや件の犯人はそれを狙って襲撃を繰り返しているのでは、と……」
「おいおい、学院の教授がそんな噂を真に受けてたら、学長にどやされるぞい」
「あの、すみません。その”超兵器”と言うのはいったい?」
「なんじゃお前さんは聞いた事なかったんか?」
「パラミタから何らかの脅威が地球に迫った場合、この海京が最前線となるでしょう。脅威は水際で塞き止めなければならない。そのため、地球圏防衛構想は昔から議論が繰り返されてるんですな。この噂もその関連でして、実はパラミタの脅威に対抗するための超兵器開発は既に着手され、この海京のどこかで着々と準備が進んでいる、と」
「もっともただの噂じゃ。昔から言われておるが、未だにそんな兵器は片鱗すら見た事がない」
「なるほど……」
 斐は雨泉にちらりと視線を送る。雨泉はそっと首を振った。
 サイコメトリでラウンジの家具を片っ端から調べているが、特に事件に関わりあるものは得られなかった。
「……ダメだ。ここにはサイコメトリで拾える手がかりはないな」
「お父様、そろそろ場所を移動しましょう」
「ん? ああ、そうだな。では、教授に博士、お話ありがとうございました。私たちはこれで」
「何か気付いた事がありましたら、警察の方にお願い致しますね」
 静玖はペコリと頭を下げ、三人はラウンジを後にした。