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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)

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海に潜むは亡国の艦 ~大界征くは幻の艦~(第1回/全3回)
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リアクション

 
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「敵イコン部隊は離れたわね。私たちは、直掩機を排除します」
 敵本隊に迫ったアイオーンの中で、シフ・リンクスクロウが言った。
「了解しました。左、ヴァラヌスの編隊です」
 レーダーで敵を確認したミネシア・スィンセラフィが言う。目視でも、それは確認できる距離にあった。
「まずは、敵戦艦に、強襲で一撃を加えます」
 シフ・リンクスクロウが、バスターレールガンで敵戦艦に先制攻撃をかける。
「敵ヴァラヌス、こちらに来ます」
 すぐさま、残っていた直掩のヴァラヌス・フライヤーがむかって来た。だが、アイオーンとヴァラヌス・フライヤーでは機動力が違いすぎる。立体的に動き回りながら、アイオーンがビームアサルトライフルでヴァラヌス・フライヤーを次々に撃墜していった。
 見かねて、戦艦の一隻が回頭して砲撃を開始する。
「いい具合に崩れてくれた」
 そこへ、レン・オズワルドの格闘式飛空艇アガートラームがエナジーバーストで突っ込んでいった。敵戦艦側面に両舷アームからブラスターフィストを叩き込む。強力な衝撃を受けて、戦艦が傾いた。立てなおすことができずに、そのまま大地に左舷をこすりつつ墜落座礁する。
「得たり!」
 地面すれすれを飛んできた紫月唯斗の魂剛がアンチビームソードと二式を抜き放って両手に構えた。敵艦からのレーザーバルカンをアンチビームソードで弾きつつ、エナジーバーストで一気に突っ込む。
「狙い目はあそこなのだ」
 エクス・シュペルティアが、紫月唯斗のモニターに映る敵戦艦の甲板にポイントマーカーを表示した。
「斬り裂くぞ!」
 狙い違わず、魂剛が二式をそこに突き立てる。そのまま、エナジーバーストの勢いを利用しつつ、ファイナルイコンソードで敵艦を斬り裂いていった。二式に凍らされつつ甲板が真っ二つに裂けていき、魂剛が通りすぎた後に砲塔が誘爆していった。
 
    ★    ★    ★
 
「マーク3に続き、マーク2も沈黙」
「こちらも敵艦二隻撃破か。思ったよりもやる。マーク4を後方へ回せ。マーク1は本艦の直掩だ。残ったイコンを出せ。敵をこのまま引きつけつつ、本艦は予定通りマスドライバーの破壊にむかう!」
 ブリッジで、スキッドブラッドの艦長が部下たちに命令を下していった。
「フリングホルニの位置は確認できたか?」
「はい。敵攻撃部隊がやってきた方向以外のエリアの中で、地上を移動するイコンなどの進路から算定し、索敵しましたところ、後方にそれらしき艦隊を発見したとの報告が入っています」
「よし、すぐに機動部隊をむかわせろ。ここパラミタが安寧の地ではないと教え、奴らの目を覚まさせるのだ。なるべく沈めろよ」
「はっ」
 
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「なんでえ、地上部隊がいないなんて嘘じゃねえか」
 小鳥遊美羽やシフ・リンクスクロウが撃墜したヴァラヌス・フライヤーなどを次々に格闘で破壊していきながら、エヴァルト・マルトリッツが言った。
 しょせんは手負いの敵であるので、ヴェルトラウム・ツヴァイスの敵ではない。すでに失っているフライトユニット以外に、脚部とショルダーキャノンを破壊して完全に戦闘能力だけを奪う。いちいち完全破壊していては手間がかかりすぎるというものだ。
 やっと、先行部隊に追いつくと、撃墜された敵戦艦が見えてきた。
「おいおい、俺の分は残っているんだろうなあ」
 そうエヴァルト・マルトリッツが軽口を叩いたとき、地面すれすれを砲弾が飛んできた。
「あれ、まだ生きてるよ!」
 ロートラウト・エッカートが注意をうながす。
「上等だ。突っ込むぞ!」
 エヴァルト・マルトリッツが、このときとばかりにヴェルトラウム・ツヴァイスをシステムエス形態に変形させた。ビームウイングを展開して、ヴェルトラウム・ツヴァイス・システムエスが飛翔する。
 横倒しになった敵戦艦が、生き残っている主砲を回頭させようとした。だが、さすがにまともに動かず、追尾できない。
 その砲台を踏み台にして砲身を破壊すると、ヴェルトラウム・ツヴァイス・システムエスが艦橋に突っ込んでいった。すでにブリッジ要員は退避しているようだが、イコンの一撃でコントロールシステムを破壊する。これで、この戦艦は完全に沈黙するだろう。
 
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「敵援軍か。近づけさせるな」
 いつの間にか敵イコン部隊がうまく後退し、イコンの戦場と艦隊の戦場が近づいてきている。
 スキッドブラッドを確認した斎賀昌毅のフレスヴェルグが、第六天魔王と共にバスターライフルで敵イコンを長距離狙撃して、格闘式飛空艇アガートラームや魂剛を掩護するが、そちらも敵戦艦の激しい砲撃に阻まれてスキッドブラッドに近づけないでいるようだ。
「敵艦の砲塔を狙えるか?」
 斎賀昌毅がマイア・コロチナに聞いた。
「もう少し機体を安定させれば……」
「よし、着地して狙撃する」
 斎賀昌毅がフレスヴェルグを着地させた。
「照準、敵戦艦第一砲塔。大気偏光、風力修正加味。誤差修正、右5秒、仰角1度2秒」
 敵からのロックオンのアラートを無視して、マイア・コロチナが弾道を計算する。
 上空から、変形したアートゥラ・フィーニクスが迫る。だが、二機の間に、柊真司のゼノガイストが割り込んできた。すかさずレーザーブレードを抜いたアートゥラ・フィーニクスと、ゼノガイストが新式ビームサーベルで切り結ぶ。
「狙撃か。急げよ」
 上空で三次元的な白兵戦を繰り広げながら、柊真司がつぶやいた。
「ロックオンしたよ」
「発射!」
 フレスヴェルグが、バスターライフルを発射した。クリティカルした攻撃が、砲塔の弾薬に引火して敵船体に大穴を開ける。
 たまらず、敵艦がホログラフの砂嵐を投影して格闘式飛空艇アガートラームらを牽制した。
 
    ★    ★    ★
 
「戦況は、やや押し気味というところでしょうか。まだ気を抜けませんが」
 戦力配置図をメインスクリーンに投影して、グレン・ドミトリーが言った。
「偵察隊から入電。敵別働隊を発見したとのことです」
 リカイン・フェルマータが、ブラックバードからの連絡を報告した。
「了解した。各艦、攻撃準備。あいている艦とイコンは迎撃に回せ。艦隊、微速前進。敵前衛部隊を撃破して、スキッドブラッドを落とすぞ」
 グレン・ドミトリーが、艦隊に伝達した。
 フリングホルニを中心とした全艦が移動を始める。
「それでは、私もイコン部隊を率いて、ちょっと敵を殲滅して参ります。本来は、グレンを連れていきたいところですが、今回はフレロビーにしましょう」
 そう言って、デュランドール・ロンバスが出撃しようとしたときであった。
「ちょっと待ってください、この反応は?」
 艦内侵入者の警報に、リカイン・フェルマータがあわてて館内マップをスクリーンに投影した。