イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)

リアクション公開中!

インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)
インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回) インベーダー・フロム・XXX(第2回/全3回)

リアクション


【5】 G【3】


「大文字先生、悪い人じゃないよね……?」
 寿子は不安だった。
 設定資料室の調査では、一応、大文字が反社会的な組織と関わっている可能性は低いと言う結果だった。
 しかしまだ確たる証拠ではない。
「そう心配しなさんな、寿子くん」
 生徒会庶務の十七夜 リオ(かなき・りお)は、ため息を吐く彼女に見かねて声を開けた。
「人工島の海京でこんな大掛かりな設備作るとしたら、それこそ建築時に仕込まなきゃだ。上層部関係の機密プロジェクトって可能性が高い訳だから、こないだのテロリストの関係者って線は低いよ」
「リオちゃん……」
「それにね。正直な話、機密事項だから仕方ないとはいえ、第3世代イコンの研究がどこで誰が担当してるか不明なとこも多いんだよ。だから、従来とは別アプローチで研究してるグループがあってもおかしくはないんだ。外部からの目晦ましの為に、整備科や研究棟とは別の所で、とかね。ここもそういう施設なんじゃないかな」
 そう言うと、寿子の表情も少しほころんだ。
「……うん、そうだね。心配してくれて、ありがとう」
「あ、リオちゃんばっかり!」
 隣りを歩いていた桐生 理知(きりゅう・りち)は、寿子の手をぎゅっと握った。
「大文字先生の事は心配だと思うけど、私もついてるんだからっ」
「理知ちゃん……」
「何か出てきても大丈夫だよっ。一緒に魔法少女に変身して戦うから安心してね!」
「戦いに行くんじゃなくて調査しに行くの」
 北月 智緒(きげつ・ちお)は突っ込んだ。
「あ、そっか……てへへへ」
 はにかむ理知に、寿子はくすくす笑った。
「理知ちゃんもありがとう。なんだか元気が出て来たよ!」

「!」
 先行していたフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)が足を止めた。
「どうした、フェル?」
 相棒のリオが尋ねた。
「この角の向こう……、大きな扉があります……。でも、その前に監視カメラが……」
 フェルはディメンションサイトで、この先の空間を把握していた。
「監視カメラは厄介だね、なんとか出来るかい、フェル?」
「たぶん、出来ると思います……」
 角の向こうを強くイメージし、覚醒型念動銃で監視カメラを狙い打った。カメラを固定するポールをねじ曲げて、明後日の方角に向ける。
「今……!」
 その隙に寿子達は廊下を抜ける。
 それから再び、ポールを元の方向にねじ曲げた。
「これで大丈夫……」
「ちょっと待った……!」
 コンクリート モモは両腕を広げて、皆を止めた。
 彼女の身に付けたノクトビジョンに、扉までの数メートルの間に張り巡らされた赤外線センサーが映ったのだ。
「制御盤は……この先ね」
 モモは壁に手を当てると電撃を放った。
 電撃は壁を流れ制御盤に直撃、火花が上がり、赤外線は切れた。
「これでよし」
「すごぉぉーい……!」
 寿子は小さく手を叩いた。
「ふふ、どういたしまして」
 モモは寿子の肩に手を回した。
「……ところで、遠藤さん、知ってる?」
「ふぇ?」
「主人公っていつも勝手に新型機乗り込んで勝利しちゃうのよ。ファーストもZもZZも!」
「!?」
 モモは大ホールの扉をピッキングスキルで解錠する。
「もしかして、私にも”5倍以上のエネルギーゲインがある”なんて言うチャンスが……!」
「ええ、人生みんなが主人公! 誰にでも”こいつ動くぞ”のチャンスはあるのよ!」
 わくわくしながら扉を開けた。

 しかし中に入ってみるとイコンなどはどこにもない。
 奥にある大きなステージから、外側に向かって扇状に、段々畑のように、座席が設置されてた。それはまるで野外劇場のようだった。
 見たところ、新型のイコンは無さそうだ。
「えー、なにそれー。冷めるわー。マジ冷めるわー」
 モモは露骨にガッカリして文句を言い始めた。
 そんな彼女を尻目に、リオは銃型HCに、ここまでマッピングした地図を表示させた。
 地図の座標は天学の普通科校舎と一致している。学園直下にこの空間は存在しているのは間違い無さそうだ。
「……他の施設に連結している可能性もあったけど、一応この地下施設は普通科校舎の区画で完結してるのか。なるほどねぇ」
 ステージを見下ろした。
「……ま、言われてみれば確かに拍子抜けかな。これじゃ、大きめの講義室と大差ないもんね」
「……試作機もありません」
 フェルは普段の視線以上に冷めた視線を部屋に彷徨わせた。
「そうだねぇ。そういうのがあるなら、開発に混ぜて欲しかったんだけど……。まぁいいや、とりあえず部屋を調べよう」
 リオはデジカメで施設の様子を記録し始めた。

「何に使うんだろうね、ここ。音楽でも演奏するのかな? それとも演劇?」
「はぅ……。見た感じ、照明とか音響設備はちゃんと揃ってるみたいだけど……」
 理知と寿子は首を傾げた。
「意外! 大文字先生がオペラ歌手だった!! ……って事は無いかしら?」
 智緒は言った。
「大文字先生が……?」
 二人はいい声で歌う先生を思い浮かべた。
「あはははははっ! に、似合ってる〜!」
「た、確かに体型はオペラ体型だけど! あははっ!」
 3人は笑いながら、ステージの傍に行った。
「ふふ……あ、でも、もしかして魔法少女のライブ用だったりして?」
「はぅ? どういうこと、理知ちゃん?」
「魔法少女の歌声を響かせて敵の心を鷲掴み、みたいな?」
「あ、知ってるそう言うの。前にアニメで見たよ、男女の三角関係を描いたロボットアニメ!」
「大文字先生ってロボットに詳しい人だから、そういうのも取り入れてるかもね。歌の力で戦うイコンなんて素敵じゃない」
 理知は寿子とステージに上がった。
「せっかくだから歌ってみる?」
「ええっ、ここでぇ? 恥ずかしいよぉ!」
「大丈夫だよ、一緒に歌うから。それに歌ったら何か起こるかもしれないし」
「じゃあ、智緒が舞台装置を動かしてあげる」
 智緒は装置を探して、近くの座席を調べた。
 座席と言っても普通の座席とは違う。身体にフィットするシートで、前面にコンソールパネルとスロットル、それから透明モニターが設置されている。
「……まるでイコンのコクピットみたいね」
 しかしこんなコクピットが、ざっと見回しただけでも100席以上ホールにはあった。
「ま、いっか」
 智緒はシートに腰を下ろし、コンソールパネルを叩いた。
 すると、ステージの上に映像が映し出された。
「!?」
「な、なにこれぇ!?」
 理知と寿子は、ビックリしてステージから離れた。
 ステージだと思っていたものは、巨大な立体モニターの投影機だったのだ。
「ど、ど、どうしよ……」
 どうにかしようとパネルを操作すると、今度はけたたましく警報が鳴り響いた。
「ば、馬鹿! どこ押したんだ!」
 慌ててリオが駆け寄った。
「わ、わかんないよぉ!」
 座席の透明なモニターに”非常事態宣言”の文字が流れた。

緊急警報発令。緊急警報発令。
 海京の非常事態レベルがトリプルSに到達しました。繰り返します、非常事態レベルがトリプルSに到達しました。
 地球に未曾有の脅威が迫っています。全校生徒はただちに戦闘配置に着いて下さい。
 これより海京が地球圏を守る最終防衛ラインとなります


「ふぇぇぇぇ!?」
 寿子は目をパチクリさせた。
「ど、どうなってんだこりゃ……?」
「リオ、あれを見てください」
 フェルは指差した。
 立体モニターに見た事もない巨大なイコンの図面が表示されている。

 ”地球圏絶対防衛用超弩級決戦兵器グランガクイン”

「ぐ、グランガクイン……?」
これより決戦兵器の起動カウントダウンに入ります。総員配置についてください。10、9、8、7……
 部屋全体が鳴動を始めた。震動はすこしづつ大きくなっていった。
 ところが、途中でカウントダウンを刻む声が途絶えた。同時に震動が地面に沈むようにおさまった。
 部屋の照明が落ち、真っ赤な非常灯の光に空間は染まった。
 モニターには”ERROR”の文字が点滅している。
「エラー……?」
 リオはコンソールパネルを操作した。
 モニターを下から上に流れていくシステムコードを、彼女の眼差しは凄まじい早さで追った。
「……どうやら、このシステムはまだ開発途中みたいだね。未完成部分に引っかかって、途中でダウンしたみたいだ」
 その時、通常の照明に戻った。自動ドアが開き、大文字が入ってきた。
 隣りには、柚木桂輔七枷陣の姿もあった。
 クルセイダーから逃れるため、謎フロアに避難したところ、シャドウレイヤーの範囲外に出たので大文字は元に戻ったのだった。
「見つかってしまったか……」
「大文字先生!」
 険しい表情をしているが、けれどもどこか肩の荷が下りた安堵の表情にも見えた。
「先生、話してくれるよな……?」
 桂輔は言った。
「もう隠し通すことは出来ないようだな……」
 大文字は語り始めた。
「グランガクインはパラミタの脅威から地球を守るため建造が進められている地球圏絶対防衛用超弩級決戦兵器だ。1年前の海京クーデターののち、建設された天御柱学院の普通科校舎。その際、極秘裏に開発が進められた……それこそが”G計画”、即ち”グランガクイン計画”だ!
 そしてここがグランガクイン計画の中枢、地球防衛の要”グランガクイン司令部”になる!」
 寿子は息を飲んだ。
「超兵器開発計画、噂には聞いてました……」
「火のないところに煙は立たん。噂は真実だったと言うことだよ」
「でも、凄いです……! 先生のスーパーロボットは実現してたんですね!」
「実現、か……」
 大文字は苦笑した。
「順調に技術革新、新たな技術の発見が進めば、いずれは実現するかもしれん」
「……まだ完成してないんですか?」
「開発は進めているが、根本的なエネルギー問題が解決しない限り、グランガクインが日の目を見る事はないだろう。私の試算ではグランガクインの完成には早くても”30年”はかかる」
「3、30年……!?」
「その日が来るまで、ここを守らなければならん」
 その時、激しい震動が海京を襲った。
「な、なんだ!?」
 震動は断続的に続いている。
 大文字は座席のひとつに座ると、コンソールパネルを操作し、外部のネットワークに接続した。
 メガフロートの全体図が表示される。
 メガフロートを海底に固定している部分が赤く点滅している。これは何かしらの攻撃を受けた時、発生するシグナルだ。
「これは……!」
 緊急事態に気付いた大文字は素早くパネルを叩き、立体モニターに海京上空の映像を映し出した。
「!?」
 海京の空に、ガーディアンの一団が飛び交っている……!




 To Be Continued.

担当マスターより

▼担当マスター

梅村象山

▼マスターコメント

マスターの梅村象山です。
本シナリオに参加して下さった皆さま、ありがとうございます。
また、公開が遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

今回も探索・調査パートが多く、次回に繋がる情報もたくさん出てきたのではないでしょうか。
探索・調査では、調査する箇所が漠然としている人よりは、明確にしている人の方が情報を発見し易い判定をしています。
例えば1時間の調査時間があったとして、
”施設を調査する”と言うアクションと”施設の倉庫を調査する”と言うアクションでは、
一カ所における調査密度が違ってきますので、当然、後者の方が何かを見つける可能性は高くなります。

あと調査関係ですが、サイコメトリを調査に用いられている方がたくさんいましたので、一応注意を。
このスキルは、あくまでも触れる対象に、
”籠められた想いや、その物品にまつわる過去の重大な出来事”がないと意味がありません。
その辺の壁とか床に強い想い入れのある人はいないんじゃないかと思います。
何か曰くありそうな道具や場所でしたら何か見つかるかもしれませんが、それ以外だと何も出てきません。
なので対象を絞り込んでおかないと無意味な行動になってしまうのでお気をつけください。

また、話は変わりますが、
今回はアイリに絡んでくれる人より、サーファー刑事に絡んでくれる人のほうが多かったです。
とても有り難い事ですが、絡んでくれた人たちのアクションが、ほかの人のアクションともよく絡んでしまったため、
なんだか後半、刑事がシナリオのメインNPCみたいな空気に……!
違いますよ! 彼はただの悪ふざけですよ!

次回はいよいよ最終回となります。
シナリオガイドの公開日はまだ未定ですが、事前にマスターページで告知出来たらいいな、と思ってます。
それでは。また次回もご参加頂けたら幸いです。