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【帝国を継ぐ者・第二部】二人の皇帝候補 (第3回/全4回)

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【帝国を継ぐ者・第二部】二人の皇帝候補 (第3回/全4回)

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【反撃の兆し】




「……全く、あの娘のしぶといことよ」

 執務室に篭っていたラヴェルデは、信じられないといった体で呻くように呟いた。
「ネットの神などと……下らぬものに扇動される民の方が愚かと言うべきか……」
 佐那たちが集めた、カンテミールのシブヤ化を拒む者達が、エカテリーナの作るネットワーク包囲網に次々と参加を表明し、オンライン上であるとは言え、一大勢力を築いているとの報告が入っている。いかに知名度の高いアイドルであるティアラが、選帝神の座を射止めたと言え、民衆に不満の声があるとなれば、強硬手段は取り辛い。街の中身を入れ替え、ティアラの土台を確実にしようとしたことが裏目に出たのかもしれない。
 次はどう手を打つか、と頭を悩ませていたラヴェルデの元に、更に凶報は舞い込んできた。
「しくじった……とはどういうことだ。取り逃がした、だと……?」
 荒野の王という最大の戦力を送り込み、シャンバラの力も、上手く巻き込んだ。
 幾つもの駒を動かし、エリュシオンの地盤をゆっくりと塗り替えるのにも成功しつつある。
 運気は間違いなく自分に向けて流れているはずだというのに、思惑通りにことが運びつつあるはずなのに、ラヴェルデは落ち着き無く部屋の中をうろうろと歩き回った。
「何故だ……何故、あの小僧はこうも……!」
 苛立ちも露な呟きだったが、その中に僅かに焦りの色が見え隠れしていた。
 他者の運気を自分のそれに巻き込む力を持つラヴェルデだが、その力は全ての者に対して有効ではない。運命の力が勝る者に対しては、干渉できないのだ。運命すら自分のものとしてしまうような力を持っていたアスコルドが崩御した今、ラヴェルデにとって同じ選帝神でもなければ、対抗しうる相手など、このエリュシオンには存在しない筈だったのだ。それが、確実に追い込んでいるとはいえ、何故か最後の一手が届かない。喉元まで刀は届いているのに、その切っ先は急所を貫く寸前で逸れてしまう。まるで、とそこまで考えてラヴェルデは首を振った。
「あり得ん、あり得ん……っ、目覚めてもいない小僧に、私の力が通用しない筈が無いのだ……!」
 だん、と机を叩いたラヴェルデは、自らに言い聞かせるようにしながら、かたかたと小さく震える手を、卓上のペンへと伸ばした。
「そうだ……あの小僧がまだ”候補者”であるからこその力だ……まだ宿命の糸が残っているからに過ぎん」
 呟きながら、ラヴェルデが用意した文書は数通。立派な便箋と封筒、そして厳重に魔法による封のかけられたそれを腹心達に、即刻の配達を命じると、ラヴェルデはその顔を漸く笑みに歪ませた。
「そうとも……直ぐにでも引き摺り下ろしてやれば良い。皇帝はヴァジラのもの……そして世界は正しき主のものとなるのだ……!」


 そうして各所に届けられたその文書の内容は【アスコルド大帝の喪が明け次第、選帝の儀を執り行う】というものだった。






 同じ頃、ジェルジンスクとオケアノスを繋ぐ坑道の一角。
 遠くから響く大勢の足音に、ドミトリエは顔を上げた。
「あ、ドミトリエ!」
「……何とか生きてたみたいだな」
 その視線の先でぶんぶんと手を振った、久方ぶりに見るセルウスの姿に、ドミトリエは大きく溜息を吐き出した。表面上は冷静にしていながらも、やはり心配していたらしい。近付いて来たセルウスに、説教ついでに頭をくしゃりとやってやろうとしていたドミトリエだったが、ふと、伸ばしかけたその手を止めた。別れた時には、状況が判っているのかと疑いたくなるほど、本当に子供っぽいばかりの少年だったセルウスの目が、強い決意と覚悟を滲ませていたからだ。
 じっと観察するように見ていたドミトリエに、セルウスは真剣な顔をして「ドミトリエ」と呼んだ。
「ごめん、後ちょっとだけ、オレのこと手伝って欲しいんだ」
 その言葉に、ドミトリエは一瞬面食らったような顔をしたものの、直ぐにわざとらしく大きな溜息をついて、皮肉に口元を引き上げた。
「ここまで来たんだ、付き合ってやるさ。今更見捨てるのは、夢見が悪くなりそうだしな」
 ひねた物言いだが、本心は伝わったのだろう。嬉しげにセルウスは頷いて、続いてキリアナを振り返った。
「えーっと、キリアナ……」
「言うまでもあらしまへん」
 流石に口ごもったセルウスに、キリアナは笑って首を振った。その眼差しは、迷いの振り切れた、どこかさっぱりとしたものだ。
「あちらさんのやり口は、良ぉ分かりました……ウチは、荒野の王を認められしまへん」
 きっぱりと言って、キリアナはセルウスへの協力に頷いた。がしかし、だからと言ってセルウスを皇帝にしたいと言うのとは違いますえ、と釘を刺した。そこはあくまで選帝神の領分だからと頑なだ。
「やっぱりツンデレなんじゃないですか」
「せやから、そういうのと違います!」
 冷やかした詩穂に真っ赤なったキリアナに、皆の空気が僅かに和む。
 状況は、好転したとは言い難い。だが、セルウスの真っ直ぐな眼差しに背中を押されるように、誰一人諦めようとする気配は無かった。
「これからどうする?」
「決まってるよ」
 ドミトリエの問いに、セルウスはぐっと拳を握り締めた。


「全部ひっくり返すんだ!!」




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担当マスターより

▼担当マスター

逆凪 まこと

▼マスターコメント

ご参加くださいました皆様、大変お疲れ様でした
相変わらず、皆様のアクションに引っ張られる形で、私の予想を大きく超える結果になってきています
今回はこれまでの回からの裏の部分や、パラミタに蔓延る諸々のいくつかを、ずるりと引きずり上げていただきました
果たして現在、どちらが優勢なのか劣勢なのか、は、皆様に判断していただくとして
残すところ第二部も後一回、全力でもって、挑んでいただけましたら幸いです

ちなみに結果は以下の通りとなっております

※尚、今回のイコン運用ついては、ガイドに可能として記載していた【ジェルジンスク】◆討伐のみとなっておりました
表記的にわかり辛くなっていたかもしれず申し訳ありませんが、公平性を鑑みまして、判定はリアクションの通りとなっております
(ちなみに、イコン使う予定ないけど状況のリアリティ演出の為などの場合は問題ありません)


■セルウスの逃亡……成功
■ノヴゴルドの護衛……成功
■現在の状況
 ・カンテミールは依然としてティアラの統治下に置かれています
 ・ドミトリエとセルウスが合流することが出来ました
 ・ノヴゴルドの死亡は撤回されましたが、今だ行方不明ということになっています
 ・ジェルジンスクには、ノヴゴルドに委任された、という老人が執務を代行しています

■主に判明したこと (下記については、マスターページの帝国概要にも追記予定です)
  ・荒野の王は、ブリアレオスでの戦闘中に不調をきたし、何かの薬を使用していました
  ・荒野の王が欠片に反応を示しました
  ・セルウスが自身の力に目覚め始めたようです
  ・テロリストの少女が所有していた武器は、アールキングに関連するものだったようです
  ・テロリストの少女は、グランツ教の信者の一人だったようです
  ・ティアラはラヴェルデの関係者ではありますが、あくまで協力者レベルのようです



……ということで、

予想外の事態や、それぞれの思惑もどんどんと錯綜し、舞台も転機を迎えようとしています
なにやら相変わらずのややこしさを醸し出していますが、次でとうとう大詰めです
その先は果たして……というところで、また次回もお付き合いいただければ幸いです