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其の一 13:50 いきなりの水着コンテスト中止!??
青い空!白い砂浜!そして何より青い海は、水着が似合う!!そう一声あげたくなる景色ではあったが、問題があった。
水着は確かに海岸にあふれかえっている。だが、みなの表情はこの青い空と海を純粋に謳歌するものではなく、必死に何かを探しては、何かに追われるがごとく駆け出して、嬉々として作業をしていたのだ。楽しそうではある、だがなにか間違ってはいないだろうか?
念密な計画を立てて下準備を整え、【六校共催 ミズ&ミスター臨海学校 水着コンテスト】の企画発案をした島村 幸(しまむら・さち)はこの気候を嫌うかのように水着の上にいつもの白衣を纏い、頭を抱えていた。
パートナーのガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)はなだめるように島村 幸の肩を抱き寄せた。
「幸……今は何より、明日の朝までみんな無事に生き抜くことですぞ?」
「分かっています。でも、せっかくみんなで準備をしたのに、こんなことってないですよ……」
「大丈夫ですよぅ〜こんなこともあろうかと、さらなる企画は立ててあるのですぅ〜」
迷彩柄のワンピース水着を纏った皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)はパートナーのうんちょう タン(うんちょう・たん)に持たせていた耐水性のメモ帳を受け取ると、島村 幸の前にそのページを見広げてみせる。
「ふむ、なるほど。これならば我々の目的は達成することができそうだな」
「今は水着コンテストよりも、みんなとテントとか食事の準備するほうが大事じゃねぇか?」
「愚か者め、娯楽がなくては何のための夏の思い出じゃ」
レーゼマン・グリーンフィール(れーぜまん・ぐりーんふぃーる)は喉を鳴らしながら納得し、パーカーを羽織った緋桜 ケイ(ひおう・けい)は非難の言葉を、緋桜 ケイのパートナーで魔女の悠久ノ カナタ(とわの・かなた)はすぐさまその発言を封じ込めた。
レーゼマン・グリーンフィールのパートナー、かわいらしいフリルで飾った緑色の水着を纏ったイライザ・エリスン(いらいざ・えりすん)は、ただ無表情でその様子を眺めていた。視線を遠くにやれば、安全地帯として確保したテント設営予定地にて、多くの生徒達がテント設営のために汗を流している。
「悠久ノ殿の言うとおりだよ。我々は、企画どおり動く必要がある。今この水着の美しさを現せるのは、今だけなのだから」
藍澤 黎(あいざわ・れい)は何かいいたげなパートナー、守護天使のフィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)の口をあらかじめふさいだ状態でそう言い放つ。
「そうですぅ〜私達は、任務を遂行しなくてはならないのですよぅ〜」
「うむ。それに、おそらくこの審査基準のほうが皆楽しめるであろう」
皇甫 伽羅は改めて、メモ帳に載っていた作戦内容を手早く防水加工された紙に油性ペンで書き込んで計画書を作っていく。
そこにはこう書かれていた。
審査基準変更:この夏、水着姿で輝いていたみんなを表彰しよう!
レーゼマン・グリーンフィールが感嘆の声を上げる横で島村 幸は砂浜に計算式を書き出していた。現在の作業進行状況や、人数の割り当てを考えると、夕食のキャンプファイヤーまでには行程は終了するはずだ。だが、当初予定していた水着コンテスト開催時間を取るには、今以上に進行速度を速める必要が合った。
「無理せずキャンプファイヤーの席でみんなにお披露目……って形が理想的なのかもしれませんね」
「幸……」
「ガートナ、そもそもこの企画はみんなで楽しむもの。無理をしても、誰も喜ばない……そうですよね?」
ガートナ・トライストルは、パートナーの笑顔を見て、無言で頷いた。皇甫 伽羅やうんちょう タン、レーゼマン・グリーンフィール、藍澤 黎ら運営を支えてきたもの達も頷いた。
まずはテント設営班を手伝い、その後キャンプファイヤー設置を手伝って会場設営をしようということで意見が合致した。誰もが我先にと駆け出す中、悠久ノ カナタは振り向いて海を眺めた。
「こんな海岸に、荷物もほとんどない状態で放り出されなければ、みんな必死にサバイバルしなくても良かったのにのぅ……」
其の二 時間は戻って 10:30 到着直前の出来事!!
時間を少し戻してみよう。
集合場所から海岸沿いのキャンプ地に向かうため、飛空挺を降りた蒼空学園、薔薇の学舎、百合園女学院、波羅蜜多実業高校、シャンバラ教導団の生徒達は、別ルートで集まったイルミンスールの生徒も交えてバスを待っていた。
「皆さーん、お待たせいたしました!」
迷彩模様のバスガイドルックで現れたのは、シャンバラ教導団の生徒、片倉いつきと彼女のパートナーでゆる族のダッティーである。
「俺達が今回の監督役だ。いつきはバスガイド、俺様は運転手だ。教員は今回ついてこねぇが、俺達のいうことは必ず聞くようにな」
「そういえば、今回は水着コンテストがあると聞きました。せっかくなので、バスの中で予選を行ってはいかがでしょうか?」
「生徒用の車両はこっち、後ろの車両は連結して荷物用として使うから、着替えや必要なさそうなものはこっちに積み込んでくれ。言っておくが、武器は身体から放すなよ」
誰も異論を唱えるものはなく、はしゃぐので手一杯だった生徒達は、バスに乗り込む前に着替えを済ませ、荷物を言われるがままに別車両に詰め込んだ。
「それでは、皆さんそろいましたね?出発しますよ〜」
バスガイドいつきの言葉を合図に、バスは連結された荷物用車両をつれて発車した。そのとき、荷物車両には数人の生徒達がもぐりこんでいたのだ。
褌にTシャツを着た姿がその容姿に違和感をもたらしていたナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)は、予定がくるってしまって大変つまらなそうな顔をしていた。
水着コンテストの前、水着に着替えるその前に波羅蜜多実業高校特製褌を出場者全員に着用させようとしていたが、荷物を摩り替える余裕がなかった。
せめて水着を持ってきていない奴に押し付けようかと思っていたが、いく人かの男子には押し付けることに成功したが、女子達はガートナ・トライストルとかいう奴が持ってきていた予備水着とやらを嬉々として受け取っていた。
だがまだ制服がある。
ナガン ウェルロッドはにやりとした。八月十五日 ななこ(なかあき・ななこ)はガートナ・トライストルからもらったワンピースのシンプルな水着をまとってその後ろで荷物を抱きかかえ、満面の笑みでついてきていた。
「ナガン〜みんなの荷物とすりかえるって、どれが着替えか分かるの?」
「適当でいいだろ。とりあえず、鞄は全部捨てちまおうぜ。コレでどいつもこいつも、荷物がなくって困るぜ〜」
「ナガン賢い〜」
ナガン ウェルロッドの言葉に納得し、八月十五日 ななこはポイポイっと荷物を窓の外に放り投げていく。彼らのこの行為がこの後とんでもないことを引き起こすなど、知る由もなかった。
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「さぁ!エントリーナンバー順にアピールおねがいしまーーーっす!!」
いつきの声を合図に、一列に並んだ水着姿に自信のある男女が並ぶ。惜しげもなく露にされた肌は同一の色などありはせず、色とりどりに輝いていた。そのさらけ出された身体のラインを包むのは身体に若干きつくフィットする水着。その水着のデザイン、色もまた、うら若き肉体を魅惑かつ妖艶なほどに演出していた。
審査員達に限らず、男女を問わずそんな姿を見せ付けられて誰もが頬を緩ませていた。
「フィルラント・アッシュワークス……み、水着は……友達からもろ……った、越中褌や……です」
蚊の鳴くような声で可憐で儚げな少年、フィルラント・アッシュワークスは名乗り出た。未発達で艶かしい褐色の肌に褌姿がミスマッチして、会場内には鼻血を噴くものもいた。
「フィルラ、褌をめくるんだっ!!」
審査員席に座っている仮面をつけた謎の審査員、ダークネイビー氏(藍澤 黎)はパートナーに小声で語りかけた。
「え……それは、ダメだと思う……」
「いいからっ!!もっとショタっぽく媚びるんだ!脱ぐのはダメだが、チラリズムはその筋にはたまらないポイントだからな!」
隣で若干呆れ気味の他の審査員を置いて、謎の審査員、ダークネイビー氏(藍澤 黎)はさらに言葉を重ねる。それを聞いてか、頬を赤らめていたフィルラント・アッシュワークスは耳まで真っ赤にして握りこぶしを作り、フルフルと震え始めていた。
「もぉなんでキミは、まいどまいどそうなんや! ええかげんにしぃ!!」
フィルラント・アッシュワークスは、容姿に合わないマシンガントークを開始し、ダークネイビー氏の席まで行くとマスクを引っぺがし、藍澤 黎を正座させて説教を開始する。アピールの一環だと思い、客席は爆笑の渦に包まれた。
そんな中、バスガイドのいつきは運転席に取り付けられた無線機に向かい声をかけた。向こうからの声は、バスガイドのいつきの耳についたイヤホンに聞こえているようだった。
「無論です、はい、荷物は全て別の車両に………爆弾も設置完了です。
いつでも爆破をして彼らの荷物を破壊できます。
自給自足での生活なのに、荷物を持ってくるなんておばかな……え、コレは演習ではない?
コレはあくまでも親睦合宿だから余計なことはするな?……え、だって今日ですよね?
シャンバラ新入生強化サバイバル合宿……あれ?……はい、ごめんさい。間違えました。
爆破はせず、すぐに爆弾ははずします………」
「だと思ったぜ。いつきのドジっぷりは相変わらずだな」
ダッティーはため息混じりに運転し続けた。パートナーの背中がとても寂しそうなので、後で飴でもあげてご機嫌を取ろうと考えていた。
「アピールポイントか……強いて言うなら、この髪じゃな」
とわの かなた、と書かれたスクール水着で自慢の銀髪を披露した悠久ノ カナタは、後ろで控えていたパートナー、緋桜 ケイを引っ張り出すと後ろに下がる。
見た目は女性らしいが、あるはずのものがなかったり無いものがあったりするので、それらをスパッツで押し込めパットをはめ込みパレオでさらにで誤魔化していた。
観客の反応を見る限り、問題はなさそうだとほっと胸をなでおろした。
「よ、夜桜お七……特技は、う、歌……とか?」
そう口にすると、古いアニソンが流れ始めた。懐かしい魔女っこアニメのオープニング。
夜桜お七を名乗る少女は無意識のうちにそれをかわいらしく歌い上げ、次の出場者にマイクを手渡した。
白い日傘すらもシャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)のスタイルの一部として溶け込んでいた。淡いピンク色がかわいらしいフリルワンピースの水着は彼女の髪の色とよく合っていた。雪のように白い肌が日差しを嫌っているのがよくわかる。
「シャーロット・マウザーです。アピール……といっても、歌くらいしか、思いつかないので……ここで一曲歌わせていただきますね〜」
のんびりとした口調で自己紹介を終えると、マイクに向かい澄み切った歌声を披露し始めた。歌声がバスの外、荷物車両まで届くほど響き渡っていた、その時だった。
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