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臨海学校! 夏合宿!

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其の九 22:50 どきどきキャンプ!!


「それは、迫ってみるのもありじゃないかしら?」

 同じテントで寝ることが決まっていた女性達に、そう助言された。アリシア・ノースはおもむろにテントを飛び出し、パートナーである村雨 焔のところへ向かった。案の定、村雨 焔は外套姿のまま、曖浜 瑠樹と夜の見回りをしていたようだ。

「焔ー!」
「アリシア、早く自分のテントに戻れ。班分けは合宿前に決まっていたものだ、そう聞いただろう?」 

 村雨 焔はいらだった様子で返答する。だが、アリシア・ノースはずいっと迫って顔を見上げる。察した曖浜 瑠樹はなだめるように見回りの相方の肩に手を置いた。

「そう邪険にするなよ、男のテントは俺の自信作だから、寝るのもきっと楽しいぜ、アリシアちゃん」

 曖浜 瑠樹はアリシア・ノースの視線にあわせるように屈んでそういった。呆れたようにため息をつくと、村雨 焔は手を差し出した。

「そんなにさびしいなら、班員に相談してみよう」
「え、え、あの……」
「最初から言えば、わざわざこんな時間に走ってくる必要もなかっただろうが。すまないな、曖浜」
「気にすんなよ。俺もすぐ戻るからさ」

 手をつないでもらって、アリシア・ノースは不思議そうにパートナーを見つめたが、にっこり微笑んで曖浜 瑠樹に手を振るとパートナーの手をしっかり握り返した。

 〜〜01:20〜〜

 それぞれのテントに別れて、恋の話で盛り上がったのも小一時間ほど前までの話。小さな黄色い悲鳴もすっかり波の寄せては返す音色にかき消されてしまっていた。砂の中に張り巡らされた罠の数々は、彼らにとっては友人、いや彼らの子供のようなものだ。

「ロザリィヌ、目的の女子テントの罠ははずしてあるんだろうな?」
「無論でございますわ。あなたに言われずともね」

 ロザリィヌ・フォン・メルローゼは貝殻で秘部を隠すだけの格好で不敵な笑みを浮かべ、同志である八月十五日 ななこと国頭 武尊、エドワード・ショウに言い放つ。
 彼らが積極的にテント設置に力を注いでいたのも全てはこのため。八月十五日 ななこに関しては、ナガン ウェルロッドが勧めてきたのでなんとなく参加しているだけだ。

「いざ」
「夜の蜂蜜授業」
「どきどきキャンプ編」

「「「スタートだぜ(ですわ)」」」

「みんな息が合ってるね〜」

 マイペースな八月十五日 ななこをおいて、各自行動を開始した。罠の数々を発動前から音もなく回収、そして歩いていて音がしても問題がないよう、ざるに多量の豆をいれ、さざなみの音も再現する徹底ぷりだ。

 目的のテントまで100メートル、

 80メートル、

 50メートル、

 10メートル、


 もうすぐ手が届く、そう思ったとき、あくまでも蛇よけ程度の茨に全員が足を引っ掛けた。引っかかること自体は想定済みのため、声を上げることもなくテントの布に手をかけたが、腕が動かない。それどころか、身体がいうことを聞かず、感覚がどんどん失われていく。

「な、何故……ですの……?」

 宇都宮 祥子は、くす、と笑みをこぼした。身体が動かなくなったメンバーはセリエ・パウエルのランスで押さえつけられる。

「なぜ?簡単なこと……くらげから拝借した麻痺液よ。一時間もすれば解けるから、安心なさいな」
「女といえど、油断ならぬのだな」
「うほほ、か、貝殻水着とは、なんともまた……たまらんのぅ」
「お師匠、口元が緩んでいます」

 剣崎 誠は犯人の半分が女であることに驚きを隠せない様子で男二人を縄で縛り上げ始める。早瀬 重治は鼻の下をこれ以上にないくらい伸ばしきり、弟子のヘトゥレイン・ラクシャーサにため息を疲れてしまう。

「ま、まさか……なぜこの完璧な計画がばれたんだ?」
「何をしているのかしら?このは・じ・さ・ら・し!!!」

 エドワード・ショウのパートナー、ファティマ・シャウワールは氷のようにつめたい表情でパートナーを踏みつけた。比島 真紀とサイモン・アームストロングは苦笑をこぼしながらファティマ・シャウワールに声をかける。

「ファティマ、貴殿の協力を感謝する」
「気にしないで。このバカが張り切るなんて、おかしかったのよ」
「ファティマ……バカとか……」
「バカじゃないの?ていうより、あんたバカよね?」
「う、羨ましい……」

 横でパートナーに幾度も踏みつけられているエドワード・ショウを見て、国頭 武尊は小さく呟いた。

「宇都宮祥子……名前、覚えさせていただきますわよ?この屈辱は……」
「そうね、明日になったら、一緒に遊ばせてもらおうかしら」
「え?」
「それが罰、不満かしら?」
「ふふ……大歓迎ですわ」

 ロザリィヌ・フォン・メルローゼは願っても見ない申し出を受けて微笑むと、宇都宮 祥子の手を借りて立ち上がる。八月十五日 ななこも同じ形で釈放となった。

「男は、明日の後片付け楽しみにしとけよ?」

 サイモン・アームストロングに一睨みされて、エドワード・ショウと国頭 武尊はうなだれた。
 夜の蜂蜜授業、どきどきキャンプ編はここで幕を閉じたのだった。


其の十 05:30 学校行事の朝って早いよね!!


 誰が言い出したわけでもなく、日が昇って間もない時間にかまど周辺には人が集まっていた。たまたま早朝の見回りついでにかまどまで来たフィリップ・アンヴィールは、驚いて声をかけた。その中に、パートナーの宮本 月里もいたからだ。彼女はパートナーの姿に気がつくと、にっこり微笑んだ。

「おはようございます」
「何をしているんだ、料理班のメンバーばかりで……みんな寝てるだろう?」
「朝昼兼用の、ご飯作ってたのよ」
「昨日アスタががんばってくれたおかげで、パンも沢山焼いてあったから、それでサンドウィッチっぽいのを、ね」

 同じく準備をしていた神楽坂 有栖、鈴木 二深子も言葉を返す。アスタ・クロフォードは、盛り付けの手伝いをしていた。

「コレは、私が作ったスープです」

 宮本 月里はフィリップ・アンヴィールに味見用にお玉を差し出す。さっぱりとした味わいは、魚でだしをとったからだろうか。暖かな味わいだった。

「どう、ですか?」
「……ああ、おいしい。海辺で、こうしてのんびりと食事ができるとは、いい時代だな」
「フィル……」
「いい思い出ができた。ありがとう、月里」

 フィリップ・アンヴィールにそういわれて、宮本 月里は頬を赤らめた。それを見て、自分のいったことが急に気恥ずかしくなったのか、彼もまた顔を赤らめた。他のメンバーはそんな二人をほほえましく見守っていた。

 〜〜07:00〜〜

 出来上がった料理を一通り並べ終えた荒巻 さけはみんなの顔を見渡す。

「これだけあれば十分かな?」
「それじゃ、みんなを起こしてくるね〜」

 アスタ・クロフォードがそういってかまどのそばを離れると、なんと全員起床しており、準備運動を開始していた。それを見てか、沖にいる巨大くらげも、触手を動かして準備運動をしていた。バスガイドの片倉いつきは、迷彩模様のスク水に着替えた状態でメガホンを持っていた。

「みなさーーーん!!あとはもう後顧の憂いがないように、目いっぱい遊んでくださいねーーーーーー!!!!」

 歓声が上がって、誰もが海の中へと飛び込んでいった。泳ぎが苦手なものは砂浜に残っていたが、風船のような植物で作った玉を使って遊ぶチームも出てきた。クライス・クリンプトは積極的にいろんな人に声をかけていた。

「ビーチバレーやる人いませんか〜〜!?」
「……あの、薔薇の学舎の人……ですよね?」
「え、あ、そうです…よ?どうかしましたか?」
「でも、男性達で……いちゃいちゃしたいって……聞いたんですけど……私達が入って大丈夫ですか?」
「偏見持たないでください!僕は騎士道を学ぶために薔薇の学舎に入りました。皆さんが思っているように享楽的なのは、珠輝さんくらいなもので……」

 四方天 唯乃とシャーロット・マウザーが日傘をくるくるさせつつ怯えた様子で問いかけてきたのに対し、クライス・クリンプトはそう熱心に語りかけた。おもむろに彼の背後にたった、明智 珠輝はその柔らかそうな尻をなで上げる。

「ひゃあああ!!!」
「そう、邪険にしないでくれたまえよ……私達は同じ屋根の下で一夜を過ごした仲じゃないか……」
「ご、誤解を招く言い方をしないでください!!!!アレは同じ班だからしょうがなく……」
「そうだ。それならオレも一緒だったしな」
「誠さん〜助けてください!!」
「俺たちは、曖浜、それに村雨もいたが、みんなで仲良く同じ屋根の下で寝たぞ?」
「そこはあえて言い直さなくっていいから!!!」

 加わってきた剣崎 誠も合わさって、さらに大きな悲鳴が上がったが、誰もがそれを楽しげに眺めていた。ひとしきり笑い終わると、クライス・クリンプトがいいたいことも伝わり、男女混合のビーチバレー大会に発展した。
 陽神 光は峰谷 恵と一緒になって砂に絵を描いていた。砂浜が巨大なキャンバスとなって、各場所がなくなった頃、木の枝を使う別の遊びを思いついた。

「よーし!今度は砂のお城を作ってあっそぼ〜」
「ボクのほうがおっきなおしろ作るからね〜!!!」
「筐子ちゃんも、一緒にお城つくろ〜?」
「うん!私作るの得意だから、負けないよ〜」

 あーる華野 筐子はコンテストでの高評価に満足したようで、既にいつものダンボール姿に戻っていた。
 砂の城作りに加わると、その手先の器用さから、荘厳な城を作り上げていく。時折聞こえてくる「昨日の美女すっごかったよなぁ〜」という声に満足げに微笑みながら、城を黙々と作り上げていった。



「遠泳で勝負しようぜ!」
「自分と、でありますか?」
「なんだか速そうだからな。あんた。向こうにも、何人か集まってるんだ。一緒にやろうぜ」

 グラウェン・ロックベルは比島 真紀に手を差し出してにっこりと笑った。砂地で待機しているつもりだったが、サイモン・アームストロングに背中を押され、参加することになった。ロザリィヌ・フォン・メルローゼや、宇都宮 祥子もそこにいた。集まったメンバーは沈没船の辺りまで競争し、素潜りでほら貝にタッチしてくる……そこまでが一連の流れとなっていた。
 審査員は人魚達だ。
 誰も知らされていなかったのだが、最下位の罰ゲームは、くらげと5分間戯れることだった(麻痺させない条件である)
 何人かの男が期待していたのもつかの間、罰ゲームを食らったのはゆる族のうんちょう タンだった。くらげのぬるぬるした触手が、うんちょう タンの身体を撫で回す。

「あ、いや、や、やめ……ぁ、そんなとこまで……」

 それを聞かされて不愉快に思ったのか、ロザリィヌ・フォン・メルローゼは拳を鳴らしながら、他の女性陣を引き連れて、遠泳で共に遊んだ仲間のところに改めて訪れた。

「このふざけた企画を考えたのはどこの殿方かしら?」

 すぐさま駆け出したのはエドワード・ショウと、国頭 武尊だ。その二人を武器を片手に追いかけっこが始まった。首謀者二人はこれ以上にないほど必死に砂浜を駆けていた。

「エドワード!!ナガンがコレなら絶対うまくいくって言ったのに、何でバレたんだ!?」
「何でだろうなぁ。てか、まずいよな……これ……」
「このバカああ!!!!学校の恥さらしーーーー!!!」

 エドワード・ショウは、パートナーのこの鬼の形相をしばし夢に見たとか見ないとか。
 昼前になり、ようやく食事にありついたメンバーは食い散らかす勢いで食事を終えて、片付けに入った。テントは綺麗にばらして、布だけは持ち帰ることにした。木材は流木が流れ着いているところに返し、ロープの類はキージャ族の二人がほしがったのであげることにした。国頭 武尊とエドワード・ショウは木材と石材を運ぶのを強制され、馬車馬のごとくこき使われた。
 手の空いたメンバーはジェイコブ・ヴォルティを中心にごみ集めに回っていた。そうこうしているうちに、飛空挺が飛んでいるのが見え始める。

「そろそろ、お別れですね」
「寂しイでス」
「また、いつか遊びに来ますね」
『そのときは、もっと多くの仲間を連れてきますね』

 キージャ族の二人、そして人魚達に別れを告げると、来たときと同じく軽装に武器を携え篠崎 真の地図を元にバスに乗ったところまで戻ることになった。

 一泊二日の、短い冒険が幕を閉じたのだった。

担当マスターより

▼担当マスター

芹生綾

▼マスターコメント

 初めまして、芹生綾です。
 皆様お疲れ様です!臨海学校はいかがでしたか?
 
 今回はこんな試みをしてみました。
 ・応募用紙を出す→抽選申し込み
 ・計画を立てる→アクション申し込み
 なので、現地に着いたら冒険シナリオらしくイベントという名の事故があり、サバイバルな生活をしていただきました。
 シナリオガイドにはない内容で、多くの方を戸惑わせてしまったかもしれません。賛否両論、真摯に受け止めたいと思っております。
 作った本人が自覚していないところで好評だったこのシナリオガイド、新たに別のマスター様により生まれ変わるRも楽しみですね。
 
 あなたにとって一度しかない、今年の夏の思い出として残ることができたら、幸いです。
 また次回、お逢いできましたらそのときはよろしくお願いいたしますね。