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霊気漂う深夜の肝試し

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霊気漂う深夜の肝試し

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第7章 つけ狙う足

「どっかに手頃な人いないかなー。あっいたいた、しっかり脅かしてくるんだよー」
スフィーリア・フローライト(すふぃーりあ・ふろーらいと)のパートナー、フタバ・グリーンフィールド(ふたば・ぐりーんふぃーるど)はひそひそと小声で言い、ホウキに乗せてきた黒いシーツを羽織った藍澤 黎(あいざわ・れい)を目標の近くへ落とす。
「いっ今ドスンて大きな音しなかった!?」
参加者を驚かすようなミイラ男に変装したアルフィエル・ノア(あるふぃえる・のあ)が、音の聞こえた方へ視線を向ける。
「それはきっと…あれだよ、荷物が崩れた音!」
恐怖心を紛らわせるように黒山 湊(くろやま・みなと)は顔に冷や汗を浮かべながらも平静を装う。
「だよねー…あは、あはは」
セオボルトとはぐれてしまったアベリアは乾いた笑いをする。
「ねぇねぇ、アベル。あれって何だろう」
トワが指差した先には黒い布があった。
興味を示したトワは、黎が隠れている布を剥がす。
「あぁ…我の…らだ……我の躯…!」
呻き声を上げながら、平気そうな顔をしているトワでなく、アルフィエルの方へズルズルと足を引きずりながら近づく。
「えぇええー、何で僕の方に!?」
思いがけない展開に、アルフィエルは顔面を蒼白させる。
べったりと血糊のついた手で黎がアルフィエルに触れようとした瞬間、口に含んでいたトマトジュースを吐き出した。
「あぁああっー!!」
あまりの恐ろしさにアルフィエルは戦慄して走り出す。
ターゲットにされてはたまらないとアベリアも駆け出し、その後をトワが慌てて追う。
「よくやったぁー黎」
傍で隠れて見ていたフタバが黎に褒め言葉をかけた。
再び黎をホウキに乗せてターゲットを探していると、床に倒れこんでいる少年を発見する。
「もしもーし、スフィーリア。なんかヤバイ状態の人がいるよ」
「うんわかった、今そっち行くね」
フタバが携帯電話を使い、助けてあげるようにとスフィーリアに連絡する。
現場にたどりくとシャーロットが困った顔でオロオロしていた。
「どっどうしましょう。気づいたらこの方が倒れていたのですぅー」
「では生きてるか確認してみましょう。大丈夫ですかー?もしもーし…。一応、息があるようですね」
気絶しっぱなしの少年、スフィーリアが呼びかけても珠輝から返事は返ってこない。
「まぁ、とりあえず救出してあげましょうか」
珠輝の腰布を掴んで落とさないように、スフィーリアはホウキに乗って運ぶ。
「落とさないように気をつけないとね。2つの意味で大変なことになるから」
横目で見ながらフタバが注意する。
「―…たしかに」
その言葉にスフィーリアは納得したように言う。



「だいぶ上の階まで来てしまいましたね…」
怯えながら雫は辺りをキョロキョロと見回す。
「向こうの方に通れそうな道があるようだよ」
ローランドがドアを開けて顔を覗かせた。
2人が慎重に歩いていると、クスクスという声が聞こえてくる。
眼の前にドスンと大きな物音を立てて、白いシーツを被った何かが落ちてきた。
自らシーツを剥ぎ取り、恐ろしい形相をしたジェレマイア・ウェイト(じぇれまいあ・うぇいと)が姿を現す。
「きっ…きゃあぁああー!」
ジェレマイアの顔を見ただけで雫が大声で悲鳴を上げ、少女の声は校舎中に響き渡った。
雫は身体全身で拒否反応を起こし、白いシーツをジェレマイアへ投げつけて部屋から飛び出していく。
パートナーの態度に対してすまなそうにローランドはジェレマイアの方に1度振り返ると、再び雫の方へ身体を向け直して少女の後を追う。
「(酷いな…そこまで驚かなくても…)」
叩きつけられたシーツを片手に、ジェレマイアは心の中で呟いた。



「こんなところまで人来るのかよ」
先ほどから誰1人来ない屋上で、緋桜 ケイ(ひおう・けい)が疲れた口調でぼやく。
「待つのだ。ここで待っていれば相手は必ずくるのだよ!その時こそ…わらわの気持ちを皆にも存分に味合わせてやるのだ。フッフフフ…」
いつもは怖がりの自分が驚かされる立場だったことを持ち、ケイのパートナーの悠久ノ カナタ(とわの・かなた)は赤色の双眸に怪しい光を宿す。
「おい、話し声が聞こえてきたぞ」
「よぉし…今こそ…」
続きの言葉を言おうとした瞬間、カナタは顔を青ざめた。
カナタの視線の先には、首から下を真っ黒なタイツで身体を覆っている永夷 零(ながい・ぜろ)が10m先の通路を歩いていた。
生首が宙に浮いていると思い込んだカナタは、ガタガタと震えながら叫ぶ。
「な…生首…!」
相手に気づかれる前にケイはカナタの服の襟を掴み、ドラム缶の後ろに隠す。
「零…女の子の声が聞こえませんでした?」
ルナ・テュリン(るな・てゅりん)はケイの裾を引っ張って辺りの様子を見渡した。
「さぁな、もしかして…」
「もしかしてとは…?」
「出たのかもしれないな」
問い返すルナに、零は薄っすらと不適な笑みを浮かべる。
「―…科学でも解明できない存在のことでしょうか?」
「そうだぞ。科学なんかじゃ、理解することは不可能だ」
「えっ…えぇー…どうしましょう。ボク…なんだか…少し不安になってきました。イルミンスールの森は見たこともない綺麗な植物とかありましたけど、校舎内は不可思議な罠だらけでございましたし」
不安がるルナの態度に、心の中でケイは大笑いをした。
零とルナが立ち去って行ったことを確認すると、ケイは疲れたようなため息をつく。
「うぅ…わらわが皆を驚かす方なのに…」
「ほら、また誰か来たぞ」
驚かす方なのにも関わらず悲鳴を上げてしまい、落ち込むカナタにケイが声をかける。
ロープを使って陽太が地上へ降りようとしていた。
そうはさせまいとケイはマジックミストの術を発動させ、氷術でひんやりとした空間を作り出す。
「突然出てきた霧のせいで地面が見ない…これじゃあ降りれな…あわわわっ!」
気力を取り戻したカナタが炎術を使い、火の玉を演出する。
「怖がれ…さぁ、もっと怖がるがいい」
雷術でラップ音を作り出しながら不気味に笑うカナタの姿に、ケイは少しばかり怯えた顔をする。
恐怖のあまり陽太はロープで降りるの断念し、涙を堪えて走り去った。
大笑いするカナタを横目で見ながら、ケイはほんのり陽太に同情心を抱く。