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chapter6 光をほぐす 

 静けさを取り戻した蒼空学園。保健室に酒杜 陽一(さかもり・よういち)とそのパートナーで魔女のフリーレ・ヴァイスリート(ふりーれ・ばいすりーと)が入ってくる。陽一が手に持っていたのは、たくさんの折り鶴だった。教師である陽一は、朝のホームルーム時に、生徒たちに鶴を折ってくれるようお願いをしていた。もちろん自分とフリーレも1日かけて鶴を折っていた。そうしてできた千羽鶴を、そっと台の上に置く陽一。台の上に置いてある色々な見舞い品を見て、陽一は目を瞑っている環菜を穏やかな目で見た。
「こんなにたくさんの生徒から慕われてるとは、さすがはカンナ様、といったとこか……」
「皆、私たち同様日頃の感謝を示したのであろう。鶴を折ってくれた生徒たちといい、蒼空は良い生徒でいっぱいなのだな」
 黙って頷きながら、保健室を出る陽一と後を追いかけるフリーレ。
 その頃、蒼空学園のあちこちで騒ぎが起こっていたため、構内に入るタイミングを失っていた結城が見舞い品を一通り買い揃えて構内に戻ってきていた。しかし、まだ学内に残っていた幾つかのトラップに彼はことごとくひっかかるという散々な目に遭い、タライが落ちてきたりヌルヌル地面でスリップしたりと大変な道のりだった。そして保健室に辿り着く頃彼はびしょ濡れになっていた。当然買ってきた雑誌も、食べ物もびしょ濡れで人に渡せるよな状態ではなくなっていた。それでも一応保健室へと入る結城。そこには、寄せ書きのメンバーが勢揃いしていた。皆結城を見て驚いたが、学園の所々が泥や水で汚れているという惨状だったため、ほとんどの人は何があったかを察していた。
 エルミルはできれば直接環菜に寄せ書きを手渡ししたいと思っていたが、せっかく眠っている環菜をそれだけのために起こすわけにもいかず、結局そっと台の上に置いた。香が別れ際「せっかく預かった色紙じゃったが、校長から一筆もらえず申し訳なかったの」と言っていた通り、その色紙にエリザベートの名前はない。ちょっと見てみたかったけれど、仕方ないですねとエルミルは心の中で納得し、保健室を出る。出入り口のところで、揃ってお辞儀をする一同。
 生徒のほとんどが学校から帰った頃、ルミーナが保健室に姿を現した。ぐっすり眠っている環菜を起こさないように、そっと近付く。台を見ると、果物の数々や飲み物、缶詰、花瓶に挿された花や折り鶴、そして寄せ書きなど、様々な見舞い品が置かれていて、ルミーナはまるで自分のことのように嬉しくなった。そういえば、とルミーナはお昼にガーデァから預かった手紙を取り出した。手紙を見ると「はやくよくなってね」という文字と、笑顔の環菜とルミーナがふたりで手を繋いでいる絵が描かれていた。
「環菜さん、ここには、環菜さんを思ってくれている方がこんなにたくさんいらっしゃいますよ」
 環菜さんのパートナーでよかった。ルミーナは、環菜の寝顔を眺めながらそんなことを考えていた。

 ――数日後。
 すっかり体調が回復した環菜は、いつも通り業務をこなしていた。校長室には、ルミーナによって飾られた折り鶴や寄せ書きなどの、見舞い品の数々。環菜はそれに目をやると、いつもの口調で指示をした。
「そんなものいつまでも出しておかないで、早く片付けて」
「良いのですか? せっかく生徒の皆さんが折ったり、書いたりしてくださったのに……」
「いいから。所詮紙でしょ?」
「環菜さん、そこまで言わなくても……ほら、この寄せ書きなんて、とても鮮やかで綺麗ですよ」
 ルミーナが、環菜に色紙を見せる。色紙には、数々のメッセージが書かれていた。

『無理はしてもいいけど、無茶は程々に 樹月 刀真』
『風邪は寝るとなおるから、よく寝る事 漆髪 月夜』
『いつも学校を支えてくれてありがとうございます。早く風邪が治りますように! 柊 まなか』
『皆があなたを心配しています。どうかご自愛下さい エドワード・ショウ』
『日頃から無茶すんなよ、体調管理は怠るとロクなことはない 結城 翔』
『カンナ様、今度株について教えてくださいますか? 理数は苦手なのですが大丈夫でしょうか? エルミル・フィッツジェラルド』
『カンナ様、ルミーナさん綺麗ですね。またあとで、カンナ様が元気になったら遊びに行ってもいいですか? カンナ様とも、もっとお話がしたいです。 シルト・キルヒナー』
『風邪に負けるなよ。 葛葉 翔』
『今はゆっくり休んで下さい。早く元気な姿が見られることを楽しみにしています 能美 キユ』
『校長が元気ないと、学校自体が元気なくなるから早く治してな シルバ・フォード』
『お大事に…。 雨宮 夏希』

「字が汚い生徒がたくさんいるのね。まあ、使用人としてなら使ってもいいかもしれないけど」
「環菜さんはまたそうやって……あら?」
 ルミーナが寄せ書きをしまおうとしたその時、窓から射し込んだ光が色紙にあたった。すると色紙の一部が呼応するように輝きを放ち、その部分から文字が浮かび上がりだした。

『環菜は40度の熱を出したみたいですけどぉ、私は100度を超える熱のある炎を出せるのでぇ、今回は私の勝ちですぅ。だから、もう温度で私に勝負を挑むのは諦めなさぁい』

 文の最後には、エリザベート・ワルプルギスの文字。くすくすと笑うルミーナを尻目に、「ひねくれた子供ね」と一笑に付す環菜。
「かわいいお方ではないですか。それで、これは結局どちらに置きましょうか?」
「適当にそのへんに置いときなさい。後は私が片付けるから」
 分かりました、と短く返事をし、机の上に寄せ書きを置くと、ルミーナは出入り口へ向かった。
「何かお飲み物でも買ってきましょうか」
「そうね、じゃあ紅茶をお願い」
 静かにドアを閉め、ルミーナが校長室から出て行った。ひとりになった部屋で、環菜は小さく呟く。
「本当、素直じゃないんだから」
 環菜は寄せ書きを大事そうに机の引き出しにしまうと、鍵をかけた。


担当マスターより

▼担当マスター

萩栄一

▼マスターコメント

萩栄一です。前回のマスターコメントがあまりに簡単すぎたっぽいので、今回はちょっと色々書かせてもらおうと思います。
まず今回のシナリオに参加してくださった皆さん、ありがとうございました。
ユニークなアクションが多くて面白かったです。
で、ここからゲームマスターの立場としていくつか言わせていただこうと思います。
ひとつ目は、NPCの言動についてアクションで色々書かれると結構厳しいということです。
NPCや他キャラの言動を縛ってしまうような描写をしてしまうと、話の芯やキャラがぶれる恐れがあります。
なので極力自分のキャラを主語にして手段を書いてくださると助かります。
ふたつ目に、他シナリオの設定をあまり持ち込まれると正確に拾えない可能性があるということです。
すべてのゲームマスターがすべてのシナリオを熟読しているわけではないので、
「○○のシナリオで絡んだ時の話題を出す」みたいなことを書かれるとこれも厳しいです。
自分が担当したシナリオなら大丈夫ですが、それでも他シナリオとあまりリンクさせない方が無難だと思います。
逆に、こういうアクションがよかったってのもありました。
キャラの口調などをきっちり書いている方は非常にキャラをイメージしやすかったです。
特に今回のように校長先生など目上のNPCが出てくる場合、
「普段の口調はタメ語、けど校長先生に対しては敬語、呼び方は○○、校長先生は○○と呼ぶ」
みたいに丁寧に書いていただけると、セリフとキャラが書きやすくて助かります。
なお今回、キャラの名前が同じ方が数名いたので、混同しないためふたり目以降は名字で記述させていただいたことをご了承ください。
そして今回の称号は、寄せ書きを書いてくださった方々と、面白いアクションを送ってくださった数名の方に称号を付与させていただきました。
長文に付き合っていただきありがとうございます。
また次のシナリオでお会いできることを楽しみにしております。