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古代魔法書逃亡劇

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古代魔法書逃亡劇

リアクション

「スナイパーライフルの訓練には絶好の環境ですね」
 やや遠くで紙ドラゴンを狙うのは大草 義純(おおくさ・よしずみ)だ。小型小型飛空挺をホバリングさせたまま身体とスナイパーライフルを固定。構える。
「少しずつ剥がしてしまいましょう」
 眼鏡のブリッジを押さえ、狙いを定めて撃つ。翼の付け根に着弾。
「狙い通りです。次は……もう一方の翼の付け根を」
「ギャァアアオオォゥ!」
 紙ドラゴンは体を空中で一回転。はためかせた翼が空を打ち、風圧が離れた大草義純にも襲う。
「っ、これぐらいではめげませんよ!」
 再び、スナイパーライフルを構えた。
 大草義純の視界の端に小型飛空挺で飛びまわる蓮見 朱里(はすみ・しゅり)が映った。背に背負った掃除機によりページ回収を行っている。
「【とある惑う書お掃除隊】の蓮見朱里、行きますっ!」
 一ページたりとも逃さぬよう、最大出力でページを吸い取る。
「朱里、こちらも頼む」
 言いながらアイン・ブラウ(あいん・ぶらう)が翼の付け根部分にカルスノウトで一撃。数々の攻撃を受け脆くなったそこからページが次々に飛んでいく。
「はーい、任せて!」
 一時後退するアイン・ブラウと入れ替わるように紙ドラゴンに近づき、飛び散ったページを回収。ドラゴンが体を震わせた。
「来る!」
 アイン・ブラウの声に、ドラゴンの周りにいた小型飛空挺や箒が退く。【ドラゴンブレス】が吐き出され熱風が押し寄せる。
「みんな、大丈夫?」
 咳き込みつつ蓮見朱里が周囲を見渡す。直撃した者はいないようだ。それを確認してアイン・ブラウが再び攻撃態勢に入る。蓮見朱里は掃除機を背負いなおし舞い落ちるページを追いかけ紙ドラゴンの正面へ。
「ギャォオオウオオ!」
 猛る紙ドラゴンの目前で囮を続けている六本木優希達の乗る小型飛空挺に二つの箒が近づいていく。ディアス・アルジェント(でぃあす・あるじぇんと)ルナリィス・ロベリア(るなりぃす・ろべりあ)だ。ディアス・アルジェントは上昇途中で、眼下の橘ニーチェに語りかけた。
「おーい、ニーチェ。あまりはしゃぐなよ」
 橘ニーチェはいい加減な返事を返して、朝の光のごとくさわやかな笑みを浮かべた。
「さ、修復可能な程度に懲らしめますですよー! ……主にディーが!」
「懲らしめるの主に俺かよ!?」
 文句を言いつつ上昇。ルナリィス・ロベリアも追いついてくる。
「六本木、いい案があるんだが乗らないか?」
 紙ドラゴンの爪を小型飛空挺ごとよける六本木優希に語りかける。
「案、ですか?」
 紙ドラゴンに視線を遣ったまま六本木優希が応える。
「……罠よ」
 背後でルナリィス・ロベリアが呟いた。
「下でニーチェが罠を仕掛けてるんだ。そっちへ上手く誘導すればドラゴンに大ダメージを与えられるぜ」
「成程。試す価値はありそうですね」
 六本木優希とミラベル・オブライエンの了承を得て紙ドラゴンに向き直った。
「ドラゴン、こっちだ!」
 呼びかけて【ドラゴンアーツ】。遠距離からエンシャントワンドでの打撃を加え挑発。
「………………………」
 ルナリィス・ロベリアが【ハウスキーパー】で取れかけたページを掃除隊に流して攻撃。
「ギャォオオオゥオォ!」
 怒った紙ドラゴンは勢いをつけて追ってくる。
「おわ!」
「……回避」
 小型飛空挺二機と箒二本がばらばらに飛び回り、ドラゴンの注意をひきつける。
「そろそろ、行きますか」
 紙ドラゴンを上空から観察していた緋桜遥遠が小型飛空挺をやや先に進めてホバリング。そのまま武器を構え跳躍。紙ドラゴンの背に着地。武器を振り上げ集中。【雷術】を直接紙の体に叩きこむ。他のメンバーの攻撃の邪魔にならぬよう、首周辺に移動。
「さすがに直に魔法を食らったらきついでしょう」
 攻撃の衝撃で剥がれたページがばらばらと飛んでいく。
「待ってー!」
 蓮見朱里が必死でページを追いかけている。紙ドラゴンは暴れ、上空の面々からの攻撃がそれを撃つ。紙ドラゴンは少しずつ弱ってきているように見える。
「もう少し! マナ準備だっ!」
「了解っ! 気をつけてねベア!」
 ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)に頷いてみせマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)はドラゴンの下へと小型飛空挺を滑らせた。
 ドラゴンの体力も魔力も、だんだんと減ってきている……。