イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【借金返済への道】突然変異!?

リアクション公開中!

【借金返済への道】突然変異!?

リアクション


第2章


 皆がそれぞれ、この状況で自分の出来る事を探している間にホイップから招待されていたタノベさんが到着した。
「いや〜、なんだか想像以上に凄いんですね、邪気払いの桃というのは」
 着いてすぐ、このありさまを見たタノベさんはホイップに聞いた。
「……す、すみません、なんか違う感じに育ってしまったみたいで……」
「あぁ〜、やはりそうですか」
 この事を聞いたタノベさんの瞳にはキラリと何かが光ったように思えた。
「むしろこの桃は利用できますよ。最近は強くなりたい方が多くて、魔物と戦いに行かれてるみたいなんですが、そこでの効率を上げる商品が出来そうです。なので、桃はしっかり収穫して下さい。ワタクシが買い取ります」
 それを聞き、桃収穫に来た人達は気合いが入った。
「会話しているところ、すみません! ホイップさん、このえらい状況になった原因に心当たりはありますか? なんとか原因を探って元に戻せたらと思いまして……」
 タノベさんと会話をしていたところにソアが質問をした。
 その後ろには雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)、ケイ、歩も居た。
「う、う〜ん……」
 ちらりとタノベさんの方へと視線を送った。
「もしかして、アレですか?」
「う……はい」
「何が原因なんだ?」
 ケイが意味深な2人に聞いた。
「実は……タノベさんに発売したばかりの成長促進剤をもらって使ってみて……」
「たぶん、その薬が何かの作用をしてこうなったんだと思います」
「ところで……カナタの姿が……」
 きょろきょろとケイがパートナーである悠久ノ カナタ(とわの・かなた)の姿を探す。
「くけ〜っ!!!」
 桃の木の側で魔物と一緒に奇声を上げているのを発見出来た。
 ケイは慌てて連れ戻そうと走っていった。

「ところでホイップ。敷地の使用許可は取っているのか?」
 ベアがホイップへと質問をする。
「それは私も是非聞きたい。少なくとも私は聞いていないが?」
 アルツールがホイップを問い詰める。
「あ、えっと……許可なら校長先生にとってあるよ?」

 以下、ホイップとエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の会話。
「校長先生、邪気払いの桃を栽培したいので場所貸して下さい!」
「構わないですぅ〜。ただし、条件があるのですぅ」
「な、なんでしょう?」
 ホイップの喉がごくりと鳴った。
「その桃を少しだけ献上するのですぅ。それと、邪気払いの桃の栽培は貴重ですぅ。安易に知られてはならないのですぅ。だから、栽培方法は解らないようにこっそり作るのですぅ〜」
「うん、それなら大丈夫。解りました、作ったら持ってきます」
 以上、回想終了。

「まったく……校長も我々教師には報せてくれてもよさそうなものを……はぁ」
 一つ溜息を吐く。
「事情は解った。私も魔物の掃討を手伝おう」
「有難うございます!」
 ホイップは深々と頭を下げた。

「ところで、何か、元に戻せる方法は!? せっかくホイップちゃんが育てたんだもん、このまま倒しちゃうのは可愛そうだよ……」
 歩が気にしていた事を口にした。
 ホイップとタノベさんはそれを聞き、黙ってうつむいてしまった。
「戻す方法は無さそうだな。では、ホイップ殿、自分でやってしまった事の始末をつけなければいけない。自分の尻は自分で拭かなければ」
 ホイップの後ろで大人しく聞いていた藍澤 黎(あいざわ・れい)がきつめに言う。
「我も薔薇の品種改良をよくやっているのだが、生命をいじっていると言っても過言ではない。だからこそ自分で作り出してしまったものの責任はとらなければいけない」
「……うん」
「我も失敗してしまった時は跡形もなく燃やしている」
「うん。私もちゃんと責任取るよ」
 しーん、と静かな時間が少しだけ流れた。
「我も手伝うからな」
「うん! 有難う! 皆さんも今回は私が引き起こしてしまったこと、危険なので帰られても仕方ないと思います。ただ、もし手伝って下さるのなら、宜しくお願いします」
 先ほどよりも深くお辞儀をした。
 それを聞いて帰る者は誰一人とおらず、むしろ余計に気合が入ったように見えた。
 こうして、桃の収穫と、桃の木退治と魔物の掃討が始まったのだった。