イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

【借金返済への道】突然変異!?

リアクション公開中!

【借金返済への道】突然変異!?

リアクション

 こちらも少し、時間を戻しましてミノタウロス戦。
「皆に女神の祝福を」
 ジーンズに、白いTシャツ、真っ赤なジャケットを着たルカルカ・ルー(るかるか・るー)は自分と婚約者である鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)にパワーブレスをかけた。
「それじゃあ、みんな手はず通りに」
 真一郎が声をかけると皆の顔が引き締まる。
 ミノタウロスははずれに居た桃の木を鷲掴みにし、桃の実をむさぼり食っていた。
 周りには他の魔物も寄って来ているのかと思われたが、ミノタウロスを恐れてかミノタウロスのみだ。
 近くまで来ると3メートルはやはり大きい。
「倒していいんでしょ!!」
 突然、逃げ出していたミネルバがミノタウロスの前へと無防備に立ちはだかった。
「へっへ〜。一度戦ってみたかったんだよねぇ〜……へぶしっ!!」
 ファインティングポーズをとったままミノタウロスの蹴りであっという間に星になってしまった。
「……物凄く危険な様ですね。気を引き締めて行きましょう」
 水神 樹(みなかみ・いつき)は皆にディフェンスシフトをかけて言葉を掛けた。
「あ〜、忘れていたが、ミノタウロスは人間の女性で繁殖するらしい。真偽のほどは定かではないが気を付けるようになーー!」
 後方からアルツールの忠告が入った。
 聞いて女性陣は少し引いた。
「でも、これって使えるわよねっ! 囮役ばっちりやっちゃうんだから」
 そうルカルカは言うと、夏侯 淵(かこう・えん)と共にバイクにまたがる。
「自分がしっかりサポートしますので、そう心配そうな顔をなさるな」
 真一郎の心中を察して姜 維(きょう・い)が呟いた。
「頼みます」
 真一郎はそれを短い言葉で返した。
「ルカルカに負けちゃったんだな……私」
 その様子を見ていた松本 可奈(まつもと・かな)は自身の恋が破れてしまった事を実感していた。
「……うん、私の妹になるかもしれない人なんだし、頑張るかな! ……諦めるつもりはないけどね!」
 何やら決意を固めたようだ。
「それじゃあ……ゴー!」
 ルカルカのこの言葉でバイク囮役は動きだした。
 バイクで出ると直ぐにその派手な赤に気がついたようで実が無くなった木を投げつけてきた。
「危ない!」
 後方からアメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)が氷術で作り出した氷の塊を桃の木にぶつけ、ルカルカ達との激突を防いだ。
 アメリアは続けて雷術をミノタウロス目がけて放ち、一瞬だが痺れさせる事に成功した。
「ちゃんと当たれよ!」
 その隙をルカルカの後ろで狙っているのは淵だ。
 自分達に再度目がいくように矢を放ったのだ。
 矢はミノタウロスの顔の横をかすっただけだったが、目標を維持させるには十分な働きだったようだ。
 ルカルカ達に向かって斧の攻撃を仕掛けてくるが、スピードはそれほどないのでなんとか避けられる。
 だが、斧の通った後には強烈な風が残る。
 当たればただでは済まない事が証明されたも同然だ。
 このまま、囮は桃の実収穫している人達や雑魚と戦っている人達からは少し離れる。
 離れるのが終わると、思いっきり戦っても大丈夫と判断しバイクを止める。
「アンタなんか、およびじゃないのよ。ルカルカには、ちゃーんと彼氏がいるんだからねっ」
 そう言うと足元を狙って火術を放った。
 維は火術によって立ち止まったミノタウロスの股の下をスライディングしながらふくらはぎを切りつけた。
 ルカルカは火術によって生まれた煙に交じって近寄り、轟雷閃を発動させ斧を弾こうとするが、その掴む力には勝てず、弾く事は叶わなかった。
「もう! 弾かれちゃえばいいのに!」
 斧を奪おうとしたのがお気に召さなかったのか、ミノタウロスは無差別に斧を振り回す。
「セシー!!」
 魔法の詠唱をしていたセシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)を守っていたレイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)は合図を出し、後方へと更に下がった。
「行きますっ!」
 上空からは水神樹がランスバレストを発動させ、ぶん回していた腕を掻い潜り、頭を狙った。
 しかし、気が付かれ寸前で避けられた為、かすっただけとなってしまった。
「この短い丈は恥ずかしくてあまり動きたくはないけどそうも言ってられないしね!」
 その下では白を基調とした短いフラメンコドレスを身に纏ったリアトリス・ウィリアムズ(りあとりす・うぃりあむず)がアキレス腱を重点的にバスタードソードで切りつけた。
 フラメンコを踊りながらなのでその剣は舞っているようにも見える。
 服が揺れるたびに青い薔薇の刺繍が散っているようだ。
 ここまで攻撃され、やっとミノタウロスの動きが鈍くなってきた。
 囮はアルミ製で出来た赤い戦国時代の鎧を着たマーガレット・ヴァーンシュタット(まーがれっと・ばーんしゅたっと)高月 芳樹(たかつき・よしき)にバトンタッチされた。
「それがしの動きについてこられまっか〜!」
 マーガレットは素早く動き、自身の赤い鎧で目を惹かせる。
「こっちも見落としてもらっては困る」
 芳樹は火術を手の上で大きく発動させ目立つようにした。
 2人の赤い色に反応し、斧を振り回してくる。
「止まらへんーー!」
 しかし、うまく立ちまわっているように見えたマーガレットはそのスピードのまま何故かミノタウロスの下腹部に頭突きとなってしまった。
「ふごっ……!」
 ミノタウロスは今までの威勢はどこへやら、油汗をかき動きが止まってしまった。
 この隙を逃さず、皆一様に決め技を発動させた。
「でっかいのいくのじゃーー!」
 セシリアはファイアストームを放ち、炎の柱を出現させた。
「こっちもあるぜ!」
 炎の柱がおさまってきたところでレイディスが爆炎波を発動。
「龍刃神楽・雷電!」
 リアトリスはドラゴンアーツと轟雷閃を組み合わせた独自の技名のものをぶつける。
 ミノタウロスの姿勢が大きく崩れた。
 真一郎と可奈は目で合図をするとお互いにバーストダッシュを使って、ミノタウロスの上空へと上がった。
「ダブルバーストアタック!」
 そのまま2人は同時に技名を叫び、下降しながら切りつけた。
 全ての攻撃は終わった。
 あとに残ったのは可愛そうなくらいメッタメタにされたミノタウロスと、巻き込まれてしまったマーガレットだった。
「ご、ごめん!」
 急いでリアトリスがマーガレットに近づく。
「ふ……それがしはこんな事では倒れたりせえ……へ……ん」
 良い感じに焦げてしまったマーガレットはそのまま気を失ってしまった。
 慌てて、担ぎヒールが出来る人を探しにいった。
「力比べがしたかったのにっ!」
 丸焦げになっているミノタウロスに駆け寄ったルカルカだったが、その息はもうない。
 その後、項垂れていたルカルカを真一郎が励ましていた。
「レイ、ミノ焼きの完成じゃ! 美味しそうじゃのう……じゅるり」
 セシリアは嬉しそうにレイディスとパーティー会場へとミノタウロスを運んで行ったのだった。