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【十二の星の華】日陰に咲く華

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【十二の星の華】日陰に咲く華

リアクション

「うるせぇと思ったら、村が襲われてやがるぜ、番長!」
「何ィ! てめぇら、大人しくしやがれ、オレの美声が轟かねぇだろ!」
 国頭 武尊(くにがみ・たける)吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)が村へと駆け込む。
 彼らは神楽崎分校に所属するパラ実生だ。
 番長である竜司主催の親睦会を兼ねた青空リサイタルを始めようとしたところ、竜司がマイクを持った途端に、遠くから聞こえる僅かな雑音にメンバーが気付き、気になって仕方ないというので止む無くこうして駆けつけたというわけだ。
「こんな格好だからって舐めんなよ。こちとら冥土に誘うメイドだぜ!!」
 親睦会を楽しむため、気合入れて上品なメイド服を着込んできた武尊は、足に括りつけてあった星輝銃を抜き合成獣に攻撃を開始する。
 今まさに、村人に襲い掛かろうとした合成獣の足を弾いて、体勢を狂わせる。
「離れろ邪魔だ!」
 竜司はバイクに乗り込み、集まってくる合成獣をかく乱していく。
「頭沢山あると邪魔だろ? 潰してやるぜ!」
 竜司に気をとられた合成獣の頭を背後から武尊が打ち抜く。
「救助している人達の所へ!」
 騒ぎを聞き、駆けつけたロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)は、逃げ遅れた村人の前に飛び出して、誘導を始めた契約者の方にいくよう指示し自分自身は高周波ブレードを構え、合成獣の前に立ち塞がる。
「一撃では倒せないようです。後方支援の方以外は、一体に集中攻撃して数を減らしていきましょう」
 そう言って、竜司と武尊に加勢し、ロザリンドは手負いの合成獣に更なる攻撃を浴びせる。
 そうしている間にも合成獣達は次々に村人を襲っていく。
 クイーン・ヴァンガードの隊員が幾人か救援に訪れていたが数が少ない。救護所の方に大人数回っているようだった。
 ロザリンドは不安を感じながらも1秒でも、1匹でも多く合成獣を倒すために、細い体で奮闘する。
「うおおお! 俺は蒼空学園の前原拓海! いずれは新日章会に入り、日本の国益を守る男!」
 クイーン・ヴァンガード見習いとして駆けつけた前原 拓海(まえばら・たくみ)もまた、ガードラインで後衛を守り、自身は前衛へ躍り出る。
「いざ尋常に勝負だー!」
 装備したカタールで、派手に合成獣に斬り込んでいく。
「説得に回った奴らが多かったようだな。もめてる場合じゃないんだが……ッ」
 サジタリウスとの合流を待たず駆けつけたクイーン・ヴァンガードのアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)は、後方にちらりと目を向けた後、サンダーブラストを3匹の合成獣に浴びせた。
「サジタリウスさんのことも気になりますけれど、同じ十二星華のティセラさんのしていることを見過ごすわけにはいきません!」
 パートナーの六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は、アレクセイからサジタリウスがこちらに向かっているという話を聞いており、気がかりではあったが、襲われている村人達を放っては置けず、合成獣退治に専念する。
 後方で、村人達を誘導する人々をガードラインで守りつつ、ハルバードを構え、チェインスマイトで攻撃していく。
「私達は敵ではありません。離れていてくださいっ」
 合成獣だけではなく、狼も援護に訪れた契約者達に飛び掛ってくる。
 先ほどのサンダーブラストに警戒し、木の陰に潜み飛び掛るチャンスを窺っている狼もいるようだ。
「離れて下さい。ごめんなさい」
 飛び掛ってくる狼を傷つけないように払いのけて、優希は合成獣との間に立つ。
 アレクセイは、優希に払いのけられ、衝撃で朦朧としている狼を抱えあげると木々の方へと連れて行く。
「仲間を守ってやれ」
 狼達にそう言葉を残して放すと即その場を離れる。
「いくぞ、ユーキ!」
 戦場に戻り、アレクセイは優希と共に雷術を同時に放つ。
 2人の同時攻撃により負傷していた合成獣が1匹、沈黙する。
「確実に倒させてもらう!」
 そして拓海が、倒れた合成獣の心臓と頭部を武器で突き刺した。
「1匹、1匹が強すぎる。だが、負けるわけにはいかない」
 拓海は、次の合成獣の元に向かっていく。
 アレクセイと優希も、休む間もなく次の戦いを開始する。
 普通の獣が合わさった合成獣とは違う。生物ではないものも掛け合わせて作られた生物兵器のような獣だった。
「村の人達は、皆さんの仲間、ですよね?」
 潜む狼達に、高務 野々(たかつかさ・のの)が語りかける。言葉は通じなくても、村人を助けている姿を見てもらえば、きっと手は出してこないはずだ。そう信じて、無差別に襲おうとする狼には決して手を出さず、村人達の誘導を手伝っていく。
 契約者に襲い掛かろうとする狼を見かけて、野々はその間に走って割り込む。
「野々さん!」
「大丈夫です。早く村人を安全なところへ! 狼達は多分家族のようなものですから、絶対皆さんも手を出さないで下さい」
 野々は狼に腕を引き裂かれながら、そう皆に声をかける。
「早く、早く避難して下さい」
 狼を振り切った後、転びそうになっている少年の下へ、野々は駆けつける。
「大丈夫? 倒れている時間なんてありません。頑張って下さい」
「ありがと、う……」
 少年に肩を貸す野々にはもう狼は襲ってこない。
 代わりに合成獣が1匹、こちらに向かってくる。
 野は々高級はたきを取り出す。
「このメイド神器で、片付けちゃいますよー!」
 振り回しながら、怪我をしている少年を連れて村の外へと急ぐ。
 合成獣ははたきを避け、高く飛んで、上空から野々と少年に襲い掛かる。
「ダメーっ!」
 声と同時に炎が飛び、合成獣の顔に直撃する。
 合成獣は野々達に攻撃を加えることなく、地上に下り激しく体を振って火を消していく。
「早く、こちらへ!」
 ノエル・ミゼルドリット(のえる・みぜるどりっと)が、野々が庇っている少年にヒールをかけて、2人を木々の中へ誘導する。
「こっちには行かせないんだから!」
 火術を放った アニエス・バーゼンリリー(あにえす・ばーぜんりりー)は、こちらに向かって駆け出した合成獣に再び炎を放つ。
「ここを通過した先に救護所が設けられている。まっすぐ走り抜けろ!」
 村人達に声をかけて、御風 黎次(みかぜ・れいじ)がカルスノウトを手に、合成獣の元に走る。
 ライオンのような顔に、いくつもの機械のような手足を持つ奇妙な獣だ。
「強敵のようじゃ。手加減はできぬぞ!」
 ルクス・アルトライン(るくす・あるとらいん)も、ランスを手に前線に躍り出る。
「家の中にいる方も早く! この合成獣は窓くらい簡単にぶち破る力を持っていぞ」
 呼びかけながら、黎次はカルスノウトを合成獣に叩き付け、瞬時に後方へ飛び、間をおかずルクスがランスを突き出した。
 合成獣の肩をランスが貫く。
「行きます!」
 更に、ノエルが身の丈程ある片刃の大剣型の光条兵器を手に走り込み、合成獣の背に叩き込む。
「止めだッ」
 奇妙な叫び声をあげて、暴れる合成獣に向かって黎次が飛び、剣を叩き込んだ。
 強烈な一撃で首を落とされ、合成獣は動かなくなる。
「今だよ! 家から出てこっちに!」
 アニエスが呼びかけると、木造の小さな民家から獣人の家族が飛び出してくる。
「足元に気をつけて下さい。周りは見ずに早く――」
 ノエルは家族の手を引いて、アニエスの方へと誘導し、アニエスが救護所の方に案内をする。
「まだ民家に人は残っているようだ。行くぞ」
「ええ」
 黎次とルクスは民家に突撃している合成獣の方へ駆けていく。

「もう誰かが死ぬのを見るのは苦しいです。お願い、バニラ。私に立ち向かう勇気を下さい」
 傷だらけの村人達、子供達、動かない村人達が手を引かれ、運ばれていく姿に有洲 いちご(ありす・いちご)は振るえそうになる自分の体を抱きしめて、腕の中にあるぬいぐるみにそう言った。
 ぬいぐるみを服の中に入れて、ぐっと拳を握り締めるといちごは戦場になっている村の中へと駆け込んでいく。
「早く逃げて下さい。ここは危険です」
 子供の泣き声が聞こえてくる方へと走り、動かない親の腕の中で泣いている幼子を発見する。
「大丈夫、お母さん、助かりますから……っ」
 母親の息があることを確認し、傷口を縛ってから担ぎ上げ、幼子を連れていちごは村の外へ急ぐ。
 そのいちごと親子に鋭い牙を持った合成獣が目をつける。
「頑張って。援護するから〜!」
 永式 リシト(ながしき・りしと)が、グレートソードを振り上げて駆け込み、合成獣に叩き込む。直後に後方に走り、木々の間に走り込む。
「グルルルルルルッ」
 傷を受けた合成獣がターゲットをリシトに変えて、木々の方へと跳ぶ。
 リシトは木々の中を走り、合成獣の側面から飛び出して攻撃を加えると、再び木が密集した場所へと飛び込む。
「そんな体じゃ歩きにくいだろ、この中は〜」
 体の大きな合成獣は木々の中を自由に移動が出来ない。
「こっちだよ」
 背後に回りこみ、再び剣を叩き込んだ後、今度は村の中へとリシトは走る。
「ありがとうございます。早く、早く……っ」
 その隙にいちごは怪我人を密集した木々の中に必死に運び込んでいき、救助に訪れた人に預ける。

「村長! 村長ー!」
「女王様からお預かりした村の宝を守るんだ!!」
 村人の中には逃げようとしない者もいた。
 神楽崎分校メンバーとのツーリングの途中で異変に気づき駆け込んだ カリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)は、飼っている狼を村人達の中に紛れ込ませこの場から離れるよう誘導してみる。
 完全に離れはしないが、足止めくらいの効果は得られ、カリンは狼に襲われることなく武具を纏い、鈍器を手に合成獣を倒そうとしている村人の傍に近づくことができた。
「あんたたちが逃げないと狼達が死に急ぐことになるんだよ」
 後ろからぐっと腕を掴む。
「狼達には女王の意思も宝も関係ないだろ?」
 既に倒れて死んでしまっている狼も多かった。
「ガルルルルルッ」
 カリンの言葉に迷いを見せた村人達に、合成獣が爪を振り下ろす。
「この手で、何人の人間の体を裂いた? 何匹の狼の命を奪った!?」
 刀を抜いたカリンが、刀身で爪を防いだ後、振り払う。
 即座にまた向かってくる合成獣に、素早い動きでカリンは刀を何度も打ち下ろし、合成獣の体を切り裂いていく。
「早く逃げな! 必要なら虎かすよ?」
 カリンはパラミタ虎も連れていた。
「ぐ……っ、やられた仲間運ぶのに、借りたい」
「ああ、仲間のことを考えてやんな。村長の方にも助けは行ってるみたいだしなッ」
 苦しげに言う村人にカリンは虎を貸し出して、自分は合成獣と戦い続ける――。