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瀕死の人魚を救え!!

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瀕死の人魚を救え!!

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第4章 騒動

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)は、たまたま典韋がチンピラを締め上げているのを見かけ、話を聞いてしまったのであった。
「人魚を誘拐してコレクションうとするとは……とんでもないやつだ。大金持ちだって?懲らしめるついでに金目のものも頂戴するかな」
 改造パワードスーツを着用しているので、ぼさぼさの銀髪も、18の少年にしてはきつい赤い瞳も見えない。
「蒼空の騎士パラミティール・ネクサー様のお出ましと行くか」
 エヴァルトはしゃきっと立ち上がった。

 ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)はローザマリアらの会話を耳にして、ほう、とため息をついた。そんなときのガートルードはどきりとするほど色っぽい。
「ねえ、聞いた?」
 典韋が戻って、皆に話している内容をを聞きつけたのだった。
 ガートルードは長身妖艶のすばらしい美女だ。乳白金の髪を後ろにたばね、どう見ても大人の女だが、実際は14歳。まだあどけない少女なのだ。
ガートルードのパートナー、シルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)が応える。
「おう、聞いたぜ。悪がいるもんよのぉ」
 シルヴェスターは金髪を高く結い上げた美女といったいでたちだが、目いっぱい言葉つきは悪い。その迫力は美女である点をはるかに上回って彼女の印象を深くする。
「悪さをしないようにちょっと脅しておきましょう。行きましょうか」
「おうよ、やったるけん、まかしちょき」
端整で物静かな表情に似合わない、凄みの聞いた口調で言って、シルヴェスターはにやりと笑った。

 万願・ミュラホーク(まんがん・みゅらほーく)は情報源から、同じくケルナダとダイダの関係や、今日ケルナダの家にダイダが訪れていることなどを知った。
「誘拐なんて許せない・・・!ぶちのめして、誰が原因か、吐かせてやろう…!! 猫華店長としては…やらんわけにはいかんである」
 さきほど海岸でフェリアに優しく、
「大丈夫、襲った奴は必ず見つけ出して、謝らせるであるよ」
と声をかけてきたのだ。フェリアはちょっとひるんだ顔をしていたようだったが、きっと内心は喜んでいるに違いない。
「なんとしてでも、やる」
 万願は決意を秘めて、屋敷へと向かった。

 エヴァルトは屋敷の裏手にいたチンピラを手際よくしびれ粉で麻痺させ、縛り上げた上で植え込みの奥に突っ込み、さっさと屋敷へと入った。いくつもある扉を手際よく開けていく。
 と、ひとつのドアを開けたとき、ドア脇にいたらしい女が二人、さっと左右に飛んで構えた。床には縛られて気絶した男が二人、転がっている。
 「なんやワレ。ケルナダの手のもんかい」
金髪を結い上げた美女が凄みのある声で言う。シルヴェスターだ。
「い、いや、俺は人魚を襲ったやつを探して……あなた方も?」
「お仲間でしたか」
もう一人の妖艶な美女が言った。
「俺はエヴァルト。エヴァルト・マルトリッツ……です」
「ではご一緒に。わたしはガートルードです。こちらはシルヴェスター。パートナーです」
 ガートルードの色っぽい声に、エヴァルトはさっと顔が紅潮するのを感じた。まあ、パワードスーツのおかげで表情は読めないだろう。
「悪もんはどこだ?ここか?ぶちのめす」
不意に万願がドアの向うから現れた。
「いや、ここじゃない……」
エヴァルトはぼそっと言った。
「もっと奥のほうでしょう。大体そうと決まっています」
ガートルードは断定的に言った。
「行きましょう」

 一方、海岸では……。変熊 仮面(へんくま・かめん)はいつものように全裸に薔薇学マント、赤マフラー、赤い羽の仮面を身につけて、パートナーの巨熊イオマンテ(きょぐま・いおまんて)の肩に乗り、腰に手をあて仁王立ち。今日は海辺ということで、さきほど貝殻を集めて作った紐パンを身に着けている。イオマンテは目つきが悪く、顔には傷ありの、しかも体長が数メートルはある巨大な熊だ。
「さぁ、泳ぐぞー! イオマンテ、俺様を下ろせ」
投げ出すようにイオマンテは変熊を下ろすと、のしのしとフェリアのほうへ向かう。看護の学生が色めき立つ。フェリアは顔色を一層青白くし、目を見開いてイオマンテを見た。
「ワシはここで日向ぼっこしたいだけじゃ!なんもせん」
 そう言いつつもイオマンテは手早くフェリアの周りの砂をかきとって、たちまち広いプールを作り上げたのだった。それからのっそりとその場を去ってゆく。
「ありがとう……」
消え入るようなフェリアの声に、イオマンテの耳がぽっと染まった。
「海は楽しいのぉー! はっはっは〜」
照れ隠しに走っていくイオマンテの先にあったのは、レストハウスだった。
「おおっとぉ」
ついた手の先が建物の塀をドカンと崩した。
「ああ〜〜あ、やっちまった」

「ふんふんふ〜〜ん」
 鼻歌交じりに海に入ろうとした変熊の腕を誰かががしっと掴んだ。
「な、なんだお前」
腕を掴んだのは霧島だった。
「さ、最後の貝殻が一個足らないのだそうです」
「さ、最後の一個ってなんだよ!」
変熊の海パンに貼り付けられた貝殻の寄せ集めの、一番上に、アクセントとして貼り付けた緑色の貝殻を指差して霧島が顔を赤らめ、うめくように言う。
「た、頼まれて追跡スキルを使用してみれば……こんな……」
「と、言うわけで、頂くね」
「ちょーっ!俺の貝殻取るなよ。何時もは隠せって言うくせに…あ、やめて!むしり取らないで!
ディオネアが無情に、宝石貝の殻をむしり取った。
「でもこれ……お薬にって……フクザツかもね」

日は高く上り始めていた。