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あなたはどうしてロリオ

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第2章 目覚めよカミングアウト

「というか・・・すげーな、衣装の数が・・・何でこんなに?―・・・・・・」
 衣装部屋にある服の数を見た滝川 洋介(たきがわ・ようすけ)は思わず絶句する。
 それもそのはず、1つの部屋に何千着もあるからだ。
「(これを洋介君に着せたら・・・くふふ、ムフフ)」
 ミューセル・レニオール(みゅーせる・れにおーる)は衣装を見るなり彼が着たところを妄想し始め、身体中から願望にまみれたどす黒いオーラーを放つ。
「着るんです」
「誰が・・・?―・・・はっ!」
 ハンガーにかけてある服を掴むミューセルが、ギギギッ・・・とゆっくり振り返る姿を目にし、ゾクッと身を震わせる。
「ふ、ふざけ・・・ん・・・・・・なぁああ!」
 パートナーの怪しい目つきに絶叫し、洋介は部屋から飛び出る。
「よし、我らで共闘し洋介を捕えるぞ!」
 彼を着せ替えさせようと道田 隆政(みちだ・たかまさ)はミューセルに協力して追いかける。
「オレにそんな趣味はないっ」
「たまにはパートナーの願いを聞いてあげたらどうなの?」
「うわぁっ!?」
 -ナレーション-
 逃げようとしたが、洋介はネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)に回り込まれた。
「わぁお!隆政しゃま〜協力してくださるのですかぁ〜これで百人力です!」
 ミューセルが奇怪な指の動きでわきわきさせがら、彼との距離をじりじりと詰めていく。
「くっ、ちくしょぉ〜。着替えさせられてたまるか」
 -ナレーション-
 洋介の行動選択。
 戦う。
 逃げる。
 死んだフリをする。
「つ・・・捕まるもんかぁっ」
 洋介は逃げるを選択した。
 恐ろしい着せ替え魔人たちから全速力で階段を駆け下り逃げる。
「何でそこに!?さっき廊下にいたじゃないか!」
「ハァハァ・・・洋介きゅん?これに着替えてくださいな・・・」
 -ナレーション-
 着せ替え魔人Aミューセルに回り込まれ、逃げられない。
「うぅっ・・・」
 -ナレーション-
 逃げるを選んだ洋介は背後を振り返る。
 着せ替え魔人B隆政、着せ替え魔人Cネージュが逃げ道を閉ざしている。
 逃げられない。
「こうなったら次の選択を・・・。選択を・・・おい、次の選択は!?」
 -ナレーション-
 ―・・・・・・・・・。
「次の選択はないのか!?」
 天の声にすがろうとするが、返事が返ってこない、もう選択肢はないようだ。
「ハァハァ・・・洋介きゅん?これに着替えてくださいな・・・」
 部屋から持ってきた衣装を持ってミューセルが詰め寄る。
「うわぁあぁぁあーっ!」
 -ナレーション-
 洋介は着せ替え魔人たちに捕まってしまった。
「むふぅ〜・・・洋介きゅん?まずはこのメイド服〜」
「ちょっ・・・ミューやめっ・・・いやぁ〜ん!」
 ミューセルに服を毟り取られ、無理やりメイド服を着せらてしまう。
「こ、これは!ミューよ、さすがじゃのぉ。メイド姿がこんなに似合うものなのか・・・」
 その姿を隆政がカメラでパシャリと撮る。
「ご、ご主人様ぁ〜・・・ヒドイです。スンスン」
 洋介は何かに目覚め始めたような声音ですすり泣く。
「ハァハァ・・・よし次は〜♪」
 ピンクナースの服を着せ、危険者と化したミューセルは息を粗くしながら興奮する。
「次はこのミニスカセーラー服を洋介に着せてみよう・・・。その後はスク水を!」
「どれも似合うわね、フフフッ。抵抗しても無駄よ♪」
 隆政とネージュにもドールのように着せ替えせられる。
「もう勘弁してぇ〜」
 着せかえさせられるだけでなく隆政に恥ずかしい姿を撮られた洋介はぼたぼたと涙を流した。



「わぁ〜、可愛い衣装が沢山あるよ!凄いねぇーっ」
 館の中へ入るなりリナト・フォミン(りなと・ふぉみん)は、大はしゃぎで衣装部屋を見て回る。
「これ、羽純ちゃんとリックちゃんに似合うかも!」
 目を輝かせて2人をじっと見つめ、その視線に月崎 羽純(つきざき・はすみ)は“ろくでもないことを考えついていそうだ”、と逃げるように1歩後退る。
「着てみて♪」
「よく見ろ・・・それは女物じゃないか」
 ハンガーから服を取り勧めるリナトに顔を顰める。
「あ、本当だ!まぁいっか〜、似合うんだし」
「よくないっ。たとえ夢だったとしてもありえないな」
 似合えば何でもいいというふうな態度をとるリナトに対して抗議の声を上げる。
「えっ、僕たちに女装させるって聞こえたけど。―・・・聞き違いだよね?」
 聞き違いかと自分の耳を疑ったリヒャルト・ラムゼー(りひゃると・らむぜー)はリナトへ問いかける。
「ううん、聞き違いじゃないよ。この服がね、2人に似合うって言ったの」
「僕が女装・・・面白いんじゃないかな」
 空耳じゃないと分かったリヒャルトは逃げ出すかと思いきや、大人の余裕を見せつける。
 今まで1度も女装したことがない彼は、斬新で面白そうだと思いリナトの案に乗っかってしまう。
「歌菜ちゃんもこの服、2人に似合うと思わない?」
「どうして私に聞くの!?でも・・・王子と羽純くんの女装ね・・・超見たいかも!」
 遠野 歌菜(とおの・かな)までもが女装させたいという願望に取り込まれてしまった。
「ねぇ、羽純くん。お願い・・・着て」
「き、着ない。俺は絶対に着ないからなっ」
 潤んだ瞳で頼まれても無理なものは無理だと、部屋から飛び出した羽純は廊下を走り逃げる。
「あっ、逃げた。純ちゃん、僕からは逃げられないんだよ?」
 全力で拒否する相手にリナトは悪気ゼロKgで追い回す。
 部屋に取り残された2人はこそこそと話し始める。
「ねぇ王子。ちょっと頼みたいんだけどいい?」
「うん、僕で出来ることならいいよ」
「ありがとう♪あのね・・・ごにょごにょ・・・」
 羽純を捕まえる作戦をリヒャルトに耳打ちをする。
「―・・・うん、分かったよ。(騙すのはちょっと気が引けるけど、歌菜ちゃんの願いなら仕方ないよね)」
 頷きながら内容を聞き、パートナーの望みを叶えてやることにした。
「はぁ〜っ。ここまでくれば見つからないよな」
 衣装の中に埋もれて身を隠した羽純は、自分を探しているリナトが離れるのをじっと待つ。
「あれぇ〜いないなぁ。どこに行っちゃったのかなぁ」
 見失った様子で少年は彼が隠れている部屋の傍から離れていく。
「よし・・・行ったようだな。―・・・リヒャルト!アンタも逃げてきたのか?」
 ほっと息をつき部屋から出ようとしたとたん、リヒャルトが室内へ入ってきた。
「なら、俺と協力して逃げよう・・・って・・・なんだ?この手は?」
「逸れないようにと思ってね」
「子供じゃないんだから迷子になんてならないぞ」
「いや、逸れたら捕まるかもしれないじゃないか」
 -ナレーション-
 リヒャルトが協力して逃げようという目でこっちを見つめている。
「(本当に協力してくれるのか?信用して大丈夫だろうか・・・)」
 -ナレーション-
 羽純の行動選択。
 信じるに値する眼だ。
 怪しい、信じない。
 しばいて放置する。
「分かった、俺と一緒に逃げよう」
 羽純は信じるに値する眼だ、と選択した。
「―・・・おい、逃げるんだろ。何でそこから動かないんだ?アンタ・・・まさか!?」
 焦る羽純にリヒャルトがニヤリと笑みを浮かべる。
 彼の手から逃れようと必死に振り解こうとする。
 -ナレーション-
 残念、リヒャルトの正体は歌菜の手先だ。
 彼の仲間が部屋へ飛び込んできた。
 追いついた着せ替え魔人Dリナトと、着せ替え魔人E歌菜に捕獲されてしまう。
 羽純の行動選択。
 戦う。
 逃げる。
 現実逃避する。
「は、離してくれっ!」
 -ナレーション-
 逃げるを選択、振り解こうと必死に抵抗する。
「―・・・ほら、歌菜ちゃんが期待に満ちた目で君を待ってる」
 歌菜の手先Aリヒャルトが羽純の耳元で囁く。
「い、いやだ。こうなったら意地でも・・・っ」
 -ナレーション-
 羽純の行動選択。
 まとめてジェノサイド。
 逃げる。
 死んだフリをする。
「そんなものは着たくない!」
 -ナレーション-
 逃げるを選択した。
 逃げられない。
「頼む、離してくれ・・・。た、助けてくれ、天の声ーーっ」
 -ナレーション-
 逃げられない・・・。
 逃げられない・・・・・・。
 逃げられない・・・・・・・・・。
 ―・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 月崎 羽純は力尽き、着せ替え魔人D・Eに捕まってしまった。
 ドレスを着せられ、ジ・エンド。
「うーん、我ながら完璧な着こなしだね。本当に面白い経験ができたよ」
 薔薇のような真っ赤なドレスを着た美女のような姿に、リヒャルトは口元に扇を当てて微笑む。
「お、覚えてろよ・・・お前ら!」
 羽純の方はというと、黒薔薇をイメージしたドレスを着せられている。
「2人とも美人さんだよ!」
 百合のように裾が開いたドレスを着た歌菜は、2人の姿を見て満足そうに微笑む。
 不満げながらもその笑顔に負けてしまった羽純は何も文句を言えなくなってしまう。
「お姫様4人で記念撮影だ〜♪ビデオは持ってきてないからカメラだね」
 歌菜と同じ花のようなドレスを着たリナトが、館にあるカメラを使い記念写真を撮った。



「うーん、どこにいるのかな・・・。―・・・ふぐっ!?」
 ロリオを助けに来た神和 綺人(かんなぎ・あやと)だったが、突然何者かの先制攻撃で後頭部に打撃をくらい、路上で気絶してしまう。
「―・・・クリス?何やってるんだい・・・」
 目を覚ますとクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が屋敷の部屋の中で服を漁っている。
「フッ、フフフ・・・」
 クリスは選んだ服を掴み、腐女子のようなオーラを放つ。
「ど、どうしたの?」
 怪しげに笑う彼女にそっと近づく。
「その服・・・どうするつもり?」
「さあ、このゴスロリ服が良いですか?それともメイド服?黒い猫耳もつけちゃいましょう!」
 -ナレーション-
 なんと、クリス・ローゼンの正体は着せ替え魔人Fだった。
 クリスが綺人を着せ替えようと迫る。
 綺人の行動選択。
 戦う。
 逃げる。
 拒否する。
 綺人は拒否するを選択した。
「・・・い、いや・・・。それだけは許して」
 ミニスカートを全力で拒否する。
「着物ならあまり露出しないから許容範囲だけど・・・。っていうか、男を無理矢理女装させて何が楽しいの!?」
「可愛い服を着てるアヤを見るのが楽しいんですよ!後、ちょっと泣きそうなアヤの顔を見るのも・・・ですね。早く着替えないのでしたら・・・、この私が無理矢理にでもその服を脱がせて着替えさせます!」
「ク、クリス。そんな趣味があったの!?」
 -ナレーション-
 彼女のカミングアウトに、綺人は心に100のダメージを受けた。
「自ら着ないんですね?でしたら私が・・・フッフフフ♪」
 -ナレーション-
 危険な笑みを浮かべて着せ替え魔人Fクリスが綺人に迫る。
 “クリス、やめてぇえーー!”
 “お断りします!”
 拒否ボイスは耳をシャッターで閉じたようにひらりとかわされてしまう。
 “さぁ、お着替えの時間ですよぉ〜♪”
 クリスの攻撃、綺人の服を無理やりひっぺがす。
 “うぁあああぁああーーっ!!”
 羞恥攻撃をくらった綺人は女子が襲われているような声音で叫び、心に80のダメージをくらう。
 “ぼ、僕が知っているクリスじゃないーっ!クリスはどこ!?クリスを返して!”
 目の前にいるのは知らないヤツだ、恋人と同じ姿をした誰かだと綺人は現実逃避し始めた。
 “私がアヤをかわぃい〜くしてあげますからじっとしていてくださいね。抵抗するだけ無駄ですっ。これで・・・最後ですよー!”
 “ひっ、いやだぁあっ。こんな格好・・・僕じゃない、僕じゃないよぉお。うわぁあ〜ん!!”
 着せ替えフィニッシュで痛恨の一撃をくらい、心に130のダメージをくらう。
 心を雑巾のようにズタボロにされた神和 綺人はもう立ち上がれない。
 “素敵ですよ、アヤ。私がコーディネートした服なんですから当然ですよねっ。ウフフフ!!”
 着せ替え魔人Fクリスの勝利の高笑いが部屋中に響き渡る。