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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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リアクション

 空京でチラシを手にした霧雨 透乃(きりさめ・とうの)は急いで家へと帰り、そのドアを開けた。
 他のパートナーが誰もいないことを確認すると、後ろからそっと緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)に近づく。
「よ・う・こ・ちゃんっ!」
「きゃっ! 透乃ちゃん? ビックリしました……なんでしょう?」
 陽子は内心、後ろから抱きしめられている体勢を嬉しく思いながら、質問した。
「これ見て! これ!」
「えっ?」
 透乃が陽子の目の前に出したのは、空京自然公園の広場でカマクラと鍋をしないかという例のチラシだ。
「へぇ……こんなことやるんですか」
「良いでしょ!? だから――」
 きゅっと陽子を抱きしめている腕に少しだけ力が入る。
「一緒に行ってみない?」
 そう耳元で囁いた。
「はい……勿論、喜んで」
「わーい! カマクラで鍋デートだね! 楽しみ〜♪」
(デート……少し恥ずかしいですが、そう言われると嬉しいですね)
 すでに夕方だったこともあって、2人は急いで支度をし、空京自然公園へと向かって行った。

 タノベさんのところで、たんまりと食材をもらい、2人用のこじんまりとしたカマクラの中へと入る。
「カマクラの中ってどうしてこんなに暖かいんだろうねぇ」
 透乃はコタツの中に入ると、ホッとした顔をした。
「そうですね、不思議ですよね」
 陽子はその隣にちょこんと座った。
 少し体を温めてから、調理を開始した。
 2人が作っているのはちゃんこ鍋だ。
 透乃も陽子もよく食べるので、材料は5人前ほどもらってきている。
「こっちで熱燗の準備しますね」
「よろしく〜」
 透乃が切った材料を鍋の中に入れている間に、陽子は違う小さな鍋に水を入れ、温めていく。
 ぬるめのお湯が出来たら、その中に日本酒(タノベ酒造 びた一文)を入れた徳利を入れ、さらに火に掛けていく。
 加熱している間、徳利を軽く回し、まんべんなく温まるように配慮した。
 ゆっくりと熱燗の準備をしていると、透乃の方の鍋は完成したようだ。
「出来たよ! そっちはどう?」
 徳利を取り出し、軽く触れると人肌よりも少し熱めだ。
「出来ました。良い感じだと思いますよ!」
 2人は隣同士に座り合う。
「いただきます!」
 同時に声を出し、食べ始めたのだった。
「う〜ん! この鶏団子、生姜がきいてて最高!」
「どうぞ」
 陽子が声を掛けると、透乃はお猪口を差し出した。
「ん!!! この熱燗も絶妙! この日本酒もやるなぁ……確か、タノベさんが始めて酒造を作って、こしらえた日本酒だった言ってたよね」
「ええ、確か……つい昨日出来たばかりのお酒とか言って嬉しそうにしてましたよね」
「これなら嬉しくなるのわかるよ! 美味しいから売れるよ! 帰りに買って帰れたら良いね」
「はい」
「あ、陽子ちゃんも呑んで、呑んで」
 透乃は徳利を持つと陽子の持つお猪口へとなみなみ注いだ。
「はぁ〜……本当……これなら売れそうですね」
 陽子の頬が少し上気する。
「はい陽子ちゃん、あーん」
「えっ!?」
「あーん、だよ?」
 少し下から陽子を見て、鶏団子をつまんだ箸を陽子の口に持って行く。
「2人きりでも……恥ずかしい……です」
 陽子はお酒を飲んだせいではなく、恥ずかしさで顔を赤くする。
「あーん……しないの?」
 悪戯っぽく、にやりと笑う透乃に抗えるはずもなく――
「あーん」
 陽子の口の中に鶏団子が入った。
「そういう顔で見るの……ずるいです」
「ええ? どういう顔〜?」
 明らかにわかってはいるが、陽子の反応を楽しんでいるので、止める気はない。
 ちゃんこ鍋が順調になくなってきたところで、何かがカマクラの中に投げ込まれた。
「な、何!?」
 投げ込まれた何かはスープのみとなった鍋の中に入り、カードが2枚、入口に落ちていた。
 透乃がカードを拾いあげ、読むとそこには――
『今夜はお楽しみですね☆ 狭乙女 宝良』
『これで元気百倍 姉ヶ崎 和哉』
 と書かれていた。
「透乃ちゃん、鍋の中に入っているのはどうやら加工済みのスッポンみたいです」
「……ああ、なるほどね」
 納得した透乃は陽子にはカードに書かれた事は伏せ、スッポン鍋を2人で頂くことにした。
「良い感じに体が火照ってきたね」
「そうですね……外で冷たい空気に当たりますか?」
「うーん……それも良いけど――」
 透乃はそう言いながら横にいた陽子を押し倒した。
「火照った体を冷ますには……一度思いっきり熱くすることが一番!」
 ほとんど抵抗をすることなく、陽子は透乃を受け入れたのだった。
 スッポンの効果……があったかどうかは秘密である。