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輝く夜と鍋とあなたと

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 大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)は静かに携帯を閉じ……そして、自分の隣にいるソフィア・クレメント(そふぃあ・くれめんと)を今回のカマクラと鍋のイベントに誘ったのだった。

 カマクラに到着すると、料理のまったく出来ないソフィアが七輪の火を見て、剛太郎が湯豆腐を作り始めた。
(まさか……誘った女の子全員に断られるとは……)
 剛太郎は作りながら、いつの間にか遠い目をしてしまい、手が止まる事もしばしば。
「ソフィア……酒を貰ってくるの忘れたから貰ってきてくれ……はぁ……外に出たらカップルだらけで死ぬ……」
「では、行ってまいりますわ」
 カマクラの外に出ると、良い事を思いついたのか、ソフィアはにやりと1人笑ったのだった。

 ソフィアが日本酒(タノベ酒造 びた一文)を持って帰って来ると、湯豆腐は完成していたが……まったく嬉しそうでも楽しそうでもない剛太郎が寂しくコタツの中でお茶をすすっていた。
 その姿はまるでおじいちゃん!
 あまりの事にソフィアは吹きだしそうになるが、必死に我慢し、こらえた。
「持って帰ってきましたよ? ささ、お酌しますから」
 ソフィアは隣に座ると、一升瓶からそのままグラスに注いだ。
 注がれた日本酒を一気にぐいっと飲み干す。
 無くなると、またソフィアが注ぐを暫く繰り返した。
「寒い……一緒にくるまらないか?」
「えっ?」
 剛太郎の思いがけない行動に戸惑いを隠せていないが、最初の計画通り、ソフィアは嫌とは言わずにしたがった。
 コタツに入り、一緒の毛布にくるまって横になるが、互いに背を向け合ったままだ。
「……」
(いつも雑に扱われるから今日は優しくしまくって悪戯してやろうとおもっていたのですが……なんだか狂っちゃいますわ……なんだか演算装置が軋んでいるような……)
 ちらりと肩越しに剛太郎を見ると、少し震えたのがわかった。
(ソフィアの装甲が……冷たい……余計に寒いような……)
 結局、眠れず、剛太郎は起きて、一升瓶を持った。
「ぷはぁ……」
 そのまま一気飲みしてしまった。
 一気に呑んだからか、それとも許容量オーバーなのかはわからないが、かなり顔が赤くなっている。
 焦点もあっていないようだ。
「お酒だけじゃなくて、ちゃんと何かお腹の中に入れないとダメですわ」
 ソフィアはそっと、よそった湯豆腐を差し出し、ついでに笑顔も付けた。
「ソフィア……お前、本当は可愛かったんだな……いつも雑に扱って済まない」
「えっ!?」
 湯豆腐に1口箸を付けてから、剛太郎はソフィアを見つめた。
「盾にしたり……囮にしたり……ギャグキャラ扱いしたり……本当はこんなに可愛い女の子なのにな」
 そっとソフィアの頬に手を伸ばす。
「えっ!? えっ!? えっ!?」
 剛太郎の行動に対処しきれず、手を振り払う事もなく、すんなりと触られるのを受け入れた。
「いつもありがとう……本当は感謝しているんだ。今だって自分の行動に付き合ってくれてる……」
 頬に置いていた右手を上へと移動させ、ソフィアの頭を良い子、良い子と撫でた。
(な、何が……一体何が起こっているのですか!? え、演算処理が追い付か……な……い……)
 ソフィアはとうとう、顔を真っ赤にし、自分の感情を制御出来なくなってしまったようで、見つめられていた瞳をそらさず、しっかりと見ると、剛太郎に抱きついてしまった。
「剛太郎さん……」
「ソフィア……」
 冷たくて、暖かなキスを交わしたのだった。