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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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リアクション

 城 紅月(じょう・こうげつ)はかなり大き目のカマクラの中で1人、チョコフォンデュの準備をしている。
 チョコを湯煎で溶かし、バナナ、マシュマロ、クッキー、カステラを串に刺し、真っ赤なお皿に綺麗に並べ、一緒にオレンジピールも並べておく。
「やっほー! これ差し入れ、良かったら食べて」
「良いの!?」
「うん! 私達はお泊りなの、じゃまたね〜」
 やってきたのは藤籠にたくさんの苺を持ってきたルカルカだった。
 持ってきてくれた苺も皿の上に並べる。
「お邪魔しまーす! チョコフォンデュやってるって外の看板にあったから来たんだけど、大丈夫?」
 準備がだいたい整ったところでカマクラの中に入ってきたのは白波 理沙(しらなみ・りさ)龍堂 悠里(りゅうどう・ゆうり)白波 舞(しらなみ・まい)の3人だ。
「いらっしゃい! 勿論! 歓迎するよ!」
 紅月は満面の笑みで出迎える。
 そう実は、カマクラの外に『誰でも歓迎チョコフォンデュ中』と書かれた看板を立てていたのだ。
 勿論、タノベさんの許可は取ってある。
 紅月に案内され、3人はちょっと珍しい八角形のコタツの中に入った。
「あったかいわねー」
「そうだなー」
 舞と悠里はぬっくぬくのコタツに入ると、よほど外が寒かったのか頬がほんのりピンク色に変わった。
「ここ! 誰でも歓迎って書いてあるよ!!」
「うぉっ! マジだ!!」
「これは……インするしかないね!」
 何やらカマクラの外で会話しているのが聞こえてきた。
「おっじゃまー! ごぞー……えーっと、なんだっけ? ……ああ、ごしょうばんにあずかりに来たぜー!」
 元気に入って来たのはシヅル・スタトポウロ(しづる・すたとぽうろ)、その後ろからエパミノンダス・神田(えぱぴのんだす・かんだ)とスプーンを両手に持った宇佐川 抉子(うさがわ・えぐりこ)だ。
「千客万来大歓迎! いらっしゃい! チョコフォンデュいっぱいあるから食べて行ってね」
「わーい! チョコー!!」
 抉子はコタツに座ると、さっそくスプーンで器用に苺をどろっどろのチョコの中に入れ、たっぷりと苺にチョコがつくと引き上げ、口へと運んだ。
「んー! おいしーーーーい!」
「良かった」
 抉子はほっぺを押さえて、笑顔になった。
「スプーンで食べるとより一層美味しいですよ!」
「えっ!? ああ、確かにチョコは沢山、口の中に入るよね」
「どうですかスプーン!?」
 キラッキラした笑顔で言われ、断れるわけもなく、紅月は差し出されたスプーンを受け取った。
(すっごく変わってる子だけど……可愛い)
 その輝く笑顔が印象的だったようだ。
「またスプーンかよ!」
「痛い、痛いー」
 シヅルが抉子のこめかみを軽くグリグリする。
「確かに、このチョコフォンデュは絶品でオレンジのやつなんか最高だけど、スプーンないだろ」
「でも、美味しいよー!」
 ほっぺを膨らませて、抗議の声をあげるが、シヅルには聞きいれてもらえないようだ。
「トゥデイは鍋とヒアしてたから誰かに箸の持ち方をティーチしてもらおうと思ったのですが……必要ないみたいですね」
 エパミノンダスはそう言うと、近くにあったマシュマロをチョコにくぐらせ、口へと入れた。
「箸の使い方だったら私が・俺が、教えようか?」
 呟きを聞いた理沙と紅月が同時に申し出た。
「2人もの人にティーチしてもらえるなんて、ミーはハッピーですね」
 ここでは優しい箸の持ち方講座が始まったようだ。
「なんかチョコフォンデュってバレンタインとかでやりそうなイメージあるわね……あ、悠里さんはどれ食べる?」
 対極のテーブルでは、舞が自分の分のついでに悠里に取ってあげようとしていた。
「え? あ、えっと……あ、あぁ、そうだよな、うん」
「顔が赤いけど、どうしたの?」
「あ、ああ! なんでもない! えっと……バナナで!」
「了解! 待っててね」
 舞はバナナをチョコにくぐらせ、緑のお皿にのせ、悠里の前に置いた。
 自分の分として苺をチョコにくぐらせる。
(舞……今の流れに深い意味は無いんだよな?)
 バナナを食べながら、悠里はドッキドキしていた。
 場所は戻って、シヅル達。
「しかし……料理ってさ、どーせならカワイイ女の子に作ってもらいたいみたいな、ほのかな夢がある訳よ」
 シヅルがうんうんと頷きながら語ると、スプーンを加えたまま抉子がシヅルを見た。
「あ えぐ公は別な! スプーンとか入ってんだろ絶対……」
「なんでバレたの!?」
「やっぱりかよ!」
 抉子は驚きの声を上げたが、シヅルも入っていたことにビックリしたようだ。
「あー、それとエピ、お前は論外。ぜってー食い物じゃないもん入ってる」
「失礼ですね! ミーはイートできるものしかインしませんよ! この、『紅葉の葉』をグラインドしてもみじおろしとか!」
 それを聞いて、紅月と理沙はいやいやいやと顔の前で腕を振った。
「あ、そうだ! 紅月」
「何かな?」
「かき氷とか作んねーの? こんなに綺麗な雪が一杯あるのに」
「シロップは持ってきては――」
「しょうがねぇな! 俺が作ってやるよ!」
 そう言うと、シヅルは皿を持って外に出て、すぐに雪をいっぱい載せて戻ってきた。
 鞄から取り出したイチゴとメロンとブルーハワイのシロップをコタツの上に置いた。
「どれで食べる?」
 わっくわくしながら他の人達に訊ねたのだった。
 紅月の交流しようチョコフォンデュは成功と言えるだろう。
 このカマクラの中のメンバーはかなり仲良くなったようだ。