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第3章 馬鹿笑いをしましょう〜お笑い番組

「うきうきどっきりなラジオ放送を始めるよ♪」
 ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)はカフを上げてマイクに向かって喋り始める。
「んー・・・お料理の悩み・・・1人だけ、なのかな?」
 ぽつんとテーブルに置かれた質問のお便りを見てしょんぼりとする。
「それでも気にせずはりきって答えちゃうよ♪おぉ〜っ!この食べ物系って料理が得意なあたしの得意ジャンルだね」
 面白そうな質問内容に目を輝かせて答えを考える。
「この味をちょっぴりアレンジしてみたいってことだよね?じゃあちょっとあたしがレシピを教えてあげるよ」
 ガラス越しにいるエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の方を見て、イメージに合うSEを出してもらうように、メモに書いて見せる。
 ジュージュー、カンカンッ。
「ちょっと辛さを加えるといいかもね」
 ジュァッジュウゥーッ。
 おぉおいしぃい〜♪
「え、あたしの声が効果音にっ!?」
 おっおぉ、おっ、おいっおぃしい〜♪
「ちょっと何スクラッチさせてるのっ。まったくもぅ、あははっ」
 エリザベートに効果音で遊ばれてしまいクスッと苦笑いする。
 もうすぐごはんだよー♪
「ごはんの時間早いから!まだ、お昼すぎたばかりだよ。夕飯にはまだ早いね」
 オススメは〜っ、豆板醤ジャンッジャンッだよ!
「ちょい辛の味付けを紹介してるけど、それ使ってないからね。なんかドタバタしちゃったけど、話を元に戻さなきゃね。それでね、これが結構おいしくなってしまうんだよ。これはあまり知っている人は少ないんじゃないかな?ぜひ試してみてね!」
 効果音で遊ばれながらもラジオを進行させる。
「あーっと、もう時間だね。イルユルラジオのパーソナリティー、ネージュ・フロゥでお送りしたよ。じゃあ皆、まったね〜♪」
 ラジオを聴いてる人々に向かって手を振るように言い、カフを下げて放送を終わらせる。



「ルカでーす」
「アコでーす」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ルカ・アコーディング(るか・あこーでぃんぐ)が、同じ声音でラジオを聴いている人々に向かって挨拶する。
「大昔の映画の小美人みたいだね」
「アコ知らないもん」
「2人でゴアドー島で蛾の守護神呼ぶアレよ」
「え、その島じゃなくって」
 トゥウウゥウーーーーッ!!
「―・・・島よ、それ」
「知ってんじゃん。って効果音で消されたわっ」
 ガラス越しからエリザベートに“危険NGワード”とカンペを見せられる。
「ありゃ、そうだったんだね」
「おいおいっ。特撮で有名な漢字一字違いのところのほうがおっかないけど、あの辺りの人たちも本気で怖いから気をつけてね♪勝手に放送したらヤバイのよ」
 ぱしっとアコに突っ込みを入れる。
「ルカはかよわい普通の女の子だし、こわーいもん」
「“自称”かよわい普通の女の子にお詫びして訂正します」
 リスナーの人々にアコが深々とお詫びをする。
「だって前者なんて特撮ヒーロー並のパワーで向かってこられるわよ。カタカナ3文字で表すと、ヤ・・よ」
「1字で止めちゃったね。確か架空生活ネットで訴えられた人がいたっけ?」
「自宅に乗り込まれて、たたみけられたみたいね」
「えーっ、そこまではしてないと思うよ」
「でも、それくらいヤバイ状況になっていたわ」
「えぇヤダ!アコたちは・・・そんなことしないよ・・・・・・うん」
「ちょっとそこは自信持って言おうよっ。・・・ね♪それじゃあここで一旦CMよ」
 笑って〜微笑んで〜♪イルユリ〜ラッジ〜〜オ♪
 お家の畳を変えるならここがお買い得!
 今なら5Gという安さっ、新年を迎えるためにそこの奥様、いかがでしょうか!
「はいっ、ていうことでここからは皆の質問に答えるコーナー、もしあなたが家に帰ったら、ほにゃららなことになっていたらどうする?まず始めに投稿者名、しっきーさんからの質問!もしあなたが家に帰ったら、周りが全員執事になっていたらどうする?そうねぇ、とりあえずちょっと楽してみようかな」
「楽するってどういうこと?」
「紅茶とか出してもらったりかな。至れり尽くせりとかで♪」
「ルカッ、そのスキルは執事じゃなくってメイドだからっ!」
 彼女のボケにアコがすかさず突っ込みを入れる。
「しっきーさんの周りには常に執事の服を着ている人がいるのかしら」
「この時期に?そんな、まさかぁ〜」
 1年中執事の服を着ていそうなやつなんて存在するのかと、ルカルカがクスクスと笑う。
 ラジオを聴いている四季は、“残念ながらいるのよね。だって今日くらい袴を着ればいいのに、執事服だもの”と言う。
「別の質問コーナーにいくわよ。投稿者名・・・あら珍しいわね、本名だわ。神和綺人さんからの質問よ。もしあなたが家に帰ったら、パートナーの性別が逆転していたらどうしますか?」
「んっ、面白い質問ね!」
「続きがあるわね、ちなみに私の場合はパートナーが、性別が変わっていろいろと困ることがあると思うので、フォローしつつ元に戻る方法を探します。・・・そうね、ルカもそうすると思うけど。いろいろ困るって辺りが気になるわね。いろいろって何かしら♪もしアコが男の子になっちゃったら、記念写真でも撮っておくかも」
「どうしてアコがそうなったらって言うの!?」
「えぇーっ、だって目の前にいるパートナーがアコしかいないんだもん」
「確かにそうだけどねっ。次はアコが答えるよ。あれ、この人も同じ質問ね。クリス・ローゼンさんからの質問よ。もしあなたが家に帰ったら、パートナーの性別が逆転していたらどうしますか?」
 クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)の質問をアコが読み始める。
「(あ、クリスも同じ質問してる・・・)」
 家でラジオを聴いている神和 綺人(かんなぎ・あやと)が彼女の方を見る。
「私の場合は・・・可愛い女の子の服を着せて写真を撮ったり・・・、放送にはできないような、あんなことやこんなことをしたいです!てっ、お便りにあるわ」
 パーソナリティーのアコは、読みながら首を傾げる。
「放送できないこと!?その辺りは伏せなきゃね、答えちゃったら放送事故よ。ルカもアコも無理だけど、ラジオ的にもいけないわよね?」
 ジュァッ、シュァアアァアッ。
「あははっ、なんか飛び立ったわ」
 “子供が聴いちゃいけなさそうなことはNGだよ!”と、静香にNGだと効果音で返事を返させる。
「まだ続きがあるわ。・・・別に性別が逆転していなくても、機会があればあんなことやこんなことをしたいんですけどね。追伸:私のパートナーは男性です」
「って、クリス。僕にどんなことするつもりなの!?いろいろとか、あんなこととかってなんなの!!」
 その内容を聴いた綺人は、驚きのあまり大きな声でクリスに問う。
「フッフフフ、聞きたいですか?知りたいですか?むしろ、そうされたいですか!?」
 クリスはニヤッと黒い笑みを浮かべて綺人の方へ近づく。
「イヤだよ!それ聞いたらいろいろ崩壊しそうだし、知ったらクリスがそういう性格だっていうふうにしか見れなくなっちゃうよ。ていうかされたいって何ーーーっ!?」
「あのお屋敷に行けば、いーっぱい服を借りれますからね。今からでも一緒に行きませんか?というか行きましょうっ」
「や、イヤだよ。元旦にトラウマを作りたくないよ、新しい気持ちで新年を迎えたいのにっ」
「慣れればきっと楽しいですよ?カミングアウトしたっていいじゃないですか。新しい自分になって新年を迎えるのも楽しいですよ」
 着せ替え魔人化しているクリスがじりじりと詰め寄る。
「僕は今のままがいいんだよ!うわぁあん、クリスが変だよぉおーっ!!きっと何か悪霊が憑いているんだね!?お祓いしに行こうっ」
「いいえ?私は正気ですよ。フッ・・・フフフッ」
 世の中には草食系や肉食系と呼ばれる者がいるが、彼女の場合は後者なのだろう。
「わぁあぁあーっ!!―・・・酷い・・・あんまりだよ・・・・・・ぐすんっ」
 何が起こったかは綺人とクリスのみぞ知る。
 リスナーたちの惨劇を知らないラジオ番組は、まったくノーマルに進行を続けている。
「質問の答えだけどルカが男の子になっちゃったら、危険な敵に狙われたら後ろに隠れようかな♪」
 クリスの質問に答えようとルカルカを見てニッと笑う。
「ひっどーいアコッ」
「か弱い男の子になる、とか言わないでね♪」
「ひぃいん〜、か弱いかも。誰か〜お助け〜って言いながら逃げちゃうかもっ」
「はい、自称ね」
「むぅ〜」
「でも・・・イヤがる子にそんなことしちゃうと、綺人さんが泣いちゃうかもしれないよ♪」
「ありゃ〜もう時間ね。ルカたちにとってはイルミンは第2の母校で、エリザベートは皆の友達なの。今日は静香さんとも一緒にラジオを放送出来て楽しかったわ♪それじゃあお相手は、ルカと・・・」
「アコ〜♪本当のルカは最終兵・・・」
 最後まで言い終わる前に、ルカルカにカフを下げられしまう。
 番組を終えたルカルカはテンションを下げて落ち着き、アコと放送室から出て行った。