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秋のスイーツ+ラブレッスン

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【雅羅グループ】

白波 理沙(しらなみ・りさ)白波 舞(しらなみ・まい)はモンブランを作ることになった。
「よーし、頑張って栗潰すよー」
 理沙はぐっと拳を握るが、ミキサーでかんたんにできるよ、と舞は言う。
「じゃあ私はクリーム泡立てるわね」
 理沙は上にかける栗のモンブラン部分を、舞はそれに隠れるクリーム、と分担した。
「あ、ねぇ雅羅! ちょっと手伝っていかない?」
見回りに来た雅羅を理沙が呼び止める。「これ何?」とミキサーをつついてきた。
「じゃあ使ってみる?」
 材料を入れて、スイッチは雅羅に押してもらう。大きな音にびっくりしたのか、思わず手を離していた。
「あははっ初めてなのねそれ」
 ちょっとからかうように舞は笑う。けれど恐る恐るやってみたら面白いのか、スイッチを押すのがだんだん楽しくなってきて何度もやっていたら、蓋が吹っ飛んで半分中身が溢れ出た。
 やっちゃった! と3人固まってしまう。罰の悪そうな顔をしてごめん、と雅羅は謝った。
「いいよいいよ。まさか吹っ飛ぶとは……」
「いつも面白いことやってくれるねぇ」
 材料が減ってしまったのは残念だけど理沙と舞は怒っていない。トラブルはそれだけで、モンブラン部分の小さいものが出来上がった。
 後で面白いものを見せてくれたお礼に、と雅羅に渡してあげよう。



黄泉 功平(よみ・こうへい)は楽しみなどなにもないと過ごしていたが、千堂 ちひろ(せんどう・ちひろ)に誘われて参加した。
「まぁ物を作るっていうのは嫌いじゃないけど、上手くできるかねぇ」
「わりと楽しいものですよ。私、くるみ入りのチョコケーキが食べたいです。甘いものは頭の疲れも取れるし、お腹が一杯になれば気分も落ち着きますよ」
「もうすぐクリスマスだしな……」
「そうそう。余行練習って感じでいきましょうか」
 ちひろにチョコケーキ、と言われてクリスマスケーキが浮かんだ。ホットケーキの元を使って、チョコレートを加えて作ることにする。
「チョコ刻むのか? 適当に折っちまえばいいだろうに……」
 ちひろの指示通りに、功平は面倒だがチョコを溶かす前に包丁で刻む。
「そんな険しい顔してないで、もうちょい楽しんでやったらどーだ?」
 同じ調理台の向かいで、鼻歌を歌いながら材料を切っていたのはヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)だ。何を作るつもりなのか、様々な種類の材料を切っては皿に乗せている。
「おっしゃる通りですよ! そちらは何を?」
 ちひろがヴァイスに聞くと、
「あ? これみんなパイに包んで焼くんだぜ! どうせなら秋の味覚一気に食える方が得だろ?」
 と楽しげに、殻と格闘していたクルミに向かって光条兵器を飛ばす。クルミは中身ごとみごと粉々になった。いくつかかけらが功平たちの方へと飛ぶ。
「や〜、潰した潰した。あ、やべ。そっち行っちゃったクルミはそれあんたらの方で使ってくれよ」
 ヴァイスは悪いなー、と笑いながら言う。拾うのも面倒なのか、自分のペースでカボチャなどを潰しに次の作業へと取り掛かっていた。
「な、なんだぁ……?」
「私たちもクルミ使うんでちょうどいいです。これも使ってみましょうか」
 生地に入れるほど多くはないけれど、後のトッピングぐらいには使えるから、小皿に取っておく。
「なぁなぁ、あんたさ、暗い顔してないで楽しくやろうぜ。混ぜる材料もそのほうが美味くなるし」
 にっ、と笑うヴァイスは功平に言った。なんなんだこいつ、と思いながら、作業にはだんだんと集中するようになった。その様子を見て、ちひろは小声でヴァイスに耳打ちする。
「アドバイスありがとうございます。功平もなんだか少し元気を取り戻したようで」
「いーって、チョコ焦げやすいし注意しろよ?」
 こそこそしていると、功平がちひろー、と呼んでいる。オーブンの使い方がわからなかったらしい。
ヴァイスの方は材料の準備ができると、パイシートの中にバランスよく敷き詰めて、功平たちのケーキと一緒に焼いた。
 出来上がったあとは、ケーキとパイを切り分けて交換した。
「……美味いな。こんどまた作るか」
「はい、もちろん」
 物事にやる気になってくれてよかったと、ちひろは喜ぶ。
「俺の美味いだろ? あんたらのも上出来だったぜ」



「じゃあ手始めにマカロン焼きましょうかねぇ」
レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)はあらかじめ持ってきた記事の材料を、ボウルに入れて混ぜ始めた。
「えっ、モンブランにマカロンなの?」
リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は、作る予定はモンブランだったはずだよ、と確認する。
「土台に使うんですよ。ね、レティ」
ミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)は説明する。モンブランの土台にマカロン生地の半分を使うのだ。
「そうだったんだ。びっくりしちゃったよ。じゃあ僕はクリーム混ぜようかな」
 リアトリスは力仕事は僕がやるね、と栗を潰したりクリーム作業を買って出た。
「ああ、その持ち方じゃ混ざりにくいでしょうに」
 ボウルはこう持って支えて、とレティシアは手を上に重ねながら教える。
「へぇ、いつもこうして作ってたんだ?」
「旦那様は知らなさすぎですよー」
「じゃあ帰ったらまた作ろうよ、夕飯も手伝うから」
 話しながらだけれど、すいすいと作業を進めていく二人を見てミスティは安心する。料理は初めてだとリアトリスは言っていたから、どうするものかと思っていた。仲が良いのもあるが、レティシアの教え方が上手い。
「クリームの味見をさせてくださいまし、旦那様」
「僕のクリームそんなに心配かなー」
 レティシアは指で大きく掬うと、舐めるように口に入れた。
「もうちょっと混ぜた方がいいかも……」
「うん、了解。口元についたままだよ」
 えっ、と口元を拭おうと思うと、リアトリスが顔を近づけてクリームを舐めとってしまった。不意打ちのことに驚いてしまう。
「(ああもうこのご夫婦ったら……)」
 周りがじろじろ見る中、ミスティは少しヒヤヒヤしてならない。せめてもの夫婦を大きめのレシピ本でガードする。
「そんな心配そうな顔しないでよミスティ。お楽しみは夜に取ってあるからね」
「し、失礼しましたっ」
 土台にクリーム、栗にモンブランクリームの順に乗せて完成。
今回作ったのを踏まえて、家に帰った後は二人だけで、ブランデーを加えて一緒に作った。「モンブランと僕の唇ってどっちが甘い?」なんてリアトリスが言うから、レティシアは顔を赤くして、答えられず照れてしまった。



オルフェリア・アリス(おるふぇりあ・ありす)は並べた食材と器材を見てどう扱えばいいのかおろおろしていた。
「どどどどう使えばいいんでしょう」
ローズマリー・アプローズ(ろーずまりー・あぷろーず)はふわっとした笑みを浮かべ、優しく言った。どんどん熱意が篭って気合が入っているが。
「大丈夫ですよ! お菓子のほとんどは愛情でできているのです。その、セルマ様への愛情を、愛情のたけをこのお料理にぶつける事! それすなわち、お料理が美味しくなる為の秘訣…なのでございます!」
「で・す・よ・ね! 愛情だけは負けません私……!」
 言われてみたとおりに作業を進めるオルフェリア。栗を潰すと書いてあるから、この方が楽だよね、と破邪の刃を使って栗を潰した。……が、流しに栗? らしき黄色いものが散らばってしまい、どうやら粉砕してしまったらしい。
「無念……。栗を台無しにしてしまいましたあああっ」
 涙目になってローズマリーにすがる。
「大丈夫大丈夫。まだ材料はありますから……! それにしても凄い散らばり方です」
 遠くからその様子をセルマ・アリス(せるま・ありす)はじっと見つめていた。お菓子を作っているから、どんなものかと覗きに来たのだが、予想通り凄い。作業をしている本人たちは気づいていないようだった。
 ローズマリーの言うことを聞いて、きちんとした手段で栗を潰したり生地を混ぜていく。
「ちゃんとクリーム状になってます! すごいですよローズマリーさん」
「だって愛情が凄いんですもの。お菓子もその通りになるって言ったでしょう?」
 一人では色々破壊しそうになったが、なんとか生地が焼けるまで上手く行った。あとは栗のクリームを塗っておしまい……。
「どう? お菓子作りは」
 背後からセルマが話しかけてきて、びくっとしてしまう。
「いつからいたんですか……っ! えっと、そのクリームを塗っているところで……っ」
 いつだっけなぁ、とセルマは塗り終わるまで、ケーキの完成を見届けた。
オルフェリアは切り分けて、「オルフェの気持ちなんです」とセルマに渡した。
「オルフェ、ちゃんと頑張ったご褒美あげるよ」
セルマは満足げに笑うと、ちゅっと音を立てて頬に口づけする。ふわりと甘い香りが鼻をかすめた。きっと口にしたらさぞかし甘いだろう。
「せっ、セルマさん……!」
「今度は俺も一緒に作ろうかなぁ。楽しそうに作ってたし」
「はいっ!」
 褒めてくれた嬉しい一言に、オルフェリアは円満の笑みを浮かべる。無事出来てよかったとローズマリーも傍で笑っていた。