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秋のスイーツ+ラブレッスン

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秋のスイーツ+ラブレッスン

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「思いつきだけど大丈夫かなぁ」
想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)は、あらかじめ炊いたお米を解凍したものを、丸の形に潰していく。
「手軽に作れるお煎餅だけど、きっと美味しいわよ」
想詠 瑠兎子(おもなが・るうね)はその上にゴマを振って、トースターで焼いていく。甘い匂いが漂う中、香ばしい匂いに釣られて雅羅は「何それ?」とのぞき込んでくる。夢悠が説明した。
「雅羅は珍しいかなぁ。お米を焼いたもので、煎餅っていうんだ」
「ライスバーガーなら見たことあるけど、お米もお菓子になるのね」
「栗餡も作るんで、後で食べて行ってくださいね」
「ええ、是非」

四谷 大助(しや・だいすけ)は何も作業をする様子の無い雅羅に、「何か作った?」と聞いた。
「それが何も……。さっき手伝ったらミキサーの中身が吹っ飛んだし」
 少し気を落としているのか、雅羅は苦笑する。
「大丈夫だった? それなら俺と作ろうよ。使って故障しそうな物は使わないから」
 秋苺・南瓜・紫芋でケーキを作るんだ、と言うと、「それは綺麗ね」と食いついてきた。
「じゃあ下ごしらえが済んだものから潰してってよ」
 大助が材料を切って皮むき。それを雅羅はラップに包んで棒で潰す作業だ。
「これもなかなか難しいわね……っ。材料無駄にしたらその時は謝るわ」
 ラップからはみ出さないようにするのが精一杯らしく、本人は真剣にやっている。その姿を見ているのが、大助は楽しくてたまらない。
「あはは。オレは雅羅と一緒なら、なんでも楽しいよ。結構スリルもあって。」
 何よスリルって! と言い返されるけど、潰したものを生クリームに投入。3食のクリームができた。甘いものが苦手な大助だが、雅羅の隣で作業していればなんのこっちゃない。
「見てて。紅葉が咲くから」
 器用にクリームでスポンジの上に盛り付けていく。苺クリームと紫芋クリームで五つの葉っぱが集まって、大きな紅葉ができた。カボチャのクリームは黄色いので、小さいイチョウの形に盛り付けていく。
「じゃあ、仕上げの苺切ってくれないかな」
「遠慮しとくわ。また吹っ飛びそうだし」
「なにそれおかしいーっ。この際だから包丁の使い方覚えようか」
 雅羅は剣を握るみたいに包丁を握ったが、こうだよと教えてやると普通に持ってくれた。途中手を少し切ってしまったらしいが、無事苺は切れた。それを盛り付けて完成だ。
「じゃあ手伝ってくれたお礼、ケーキは雅羅にあげるよ」
「作った本人も食べないとダメでしょ? 私も手伝ったからいただくけど。ほら、大助も食べなさい」
 雅羅はざくっとフォークで適当に削ると、大助の口元にそれを突きつける。
「(う、嬉しいけど……っ)い、頂きますっ」
 料理に挑戦してくれたのだから、自分も挑戦しないと。渋々ケーキを口に入れた。……やっぱり甘い。

「ひゃっはー! 生地こねるぜーっ!」
茂手乃 乙女(もてない・おとめ)は気合を入れて生地を捏ねている。アップルパイ用だ。
「いいけど、その生地投げないでくれよ?」
リチャード・ロウ(りちゃーど・ろう)は無理やり乙女を連れてきたのだが、その反動かヤケになっているようで、目が離せない。
「できたら、食べれるから。僕の指示通りお願いしますよ」
「わかってるって! できるようになったら好きな時に作って、好きな時に食べれんだろ? やってやるよ」
 乙女が生地作業をしている間、リチャードはリンゴを切って火を通していた。途中乙女が「うまそう」とつまみぐいしそうになったけれど、「生生地も食べてお腹壊してください」と止めた。美味しいパイと食べるためには我慢。
 形はちょっとイビツだけれど、味は問題ないアップルパイができあがった。



「よし、じゃあ作るかー」
カイナ・スマンハク(かいな・すまんはく)はシャツの腕をまくると、ばしっと机を叩く。
「どうした? ミミィ。こっなをふりふり〜、材料まっぜまっぜまっぜ〜!」
緊張して調理台の上であわあわとしているミミィ・スマンハク(みみぃ・すまんはく)は材料をボウルにいれながら口ずさむカイナのおかしな歌に、ぽそぽそと声を合わせる。
「材料まっぜまっぜ……。ミミィにもできましゅか?」
「大丈夫! 俺がちょっと混ぜたら生地にジャンプしてくれないか?」
「はいでしゅ! ミミィ、がんばりましゅ」
 クッキー生地を作るため、カイナはボウルの中で生地を混ぜていく。その間、ミミィには栗をラップで包んだものに足で踏んで粉々にしてもらった。
「やっぱ栗潰すにはミミィが一番最適だな。じゃあこっちも頼むよ」
 クッキー生地ができると、栗を混ぜる。うどんを作る時のようにミミィに踏み踏みしてもらう。わずか10cmの小さな体では通常の作業は難しいけれど、小回りがきいて大変助かる。
「このへんに丸、四角かな。くり抜いてくれ」
「お絵かきみたいでしゅー」
 平らに生地をならすと、二人で型抜きではなく爪楊枝で描くようにくりぬいた。
 カイナはクッキーの表面に絵を描たいのだが、くぼみを付けるだけでいいだろうか。
「なぁ、クッキーとかお菓子に絵ってどうやったらいいと思う?」
 そばで作業をしていた乙女たちに、とりあえず聞いてみる。
「それならチョコデコペンだった気がするぜ? ケーキのプレートに名前書いたりするかんじで」
「そっか! サンキュー、乙女」
 作業時間を半分以上過ぎていたためか、主催が用意した材料置き場にはもうデコペンが無い。責任者の海のところに聞きに行くと、板チョコがあれば溶かして袋に入れて絞り出せばデコペンができるのだそうだ。
 幸いにもただのチョコはあったため、その方法でやってみる事にした。クッキーが焼きあがると、さっそく慎重に書いていく。
「皆の絵は必須だよな。あとは動物とかかなぁ」
「カイナしゃん凄いでしゅ! 綺麗でしゅーミミィもやりましゅ!」
 ミミィには小さめの袋で用意してやり、空いたクッキーに書かせた。
 クッキーにはパートナーたちの顔と、主催陣たちが可愛らしく書かれている。通りすがる人が思わず振り返る出来栄えとなった。



「よし、さつまいもを蒸かして……どうすればいいんだっけ」
水無瀬 愛華(みなせ・あいか)は芋羊羹を作ろうと蒸かしてるが、次の工程を忘れてしまった。誰か作り方を知っている人がいればいいのだが……。
おろおろとしていると、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)が「どうしたの?」と話しかけてきた。愛華はそのことを話す。
「ちょうどよかった! 困ってるならあたしたちに頼って」
 ミルディアはお菓子作りは慣れているようで、初心者をお見受けした者がいれば手伝おうと思っていた。
「羊羹を作りたいけど芋だし、どうやって固めればいいのかなって思ってたんです」
「潰すのに力がいるだろう、手伝うか」
ローザ・ベーコン(ろーざ・べーこん)は蒸かし終わった芋を取り出すと、ミルディアと一緒に皮を器用に向き始めた。
「お二人とも手際いいですね」
「慣れちゃえば平気よ、ほらこうやって。あと潰すのは網状とか穴の空いたおたまも使えるし」
「あ、本当だ、結構楽しいです」
 ミルディアのアドバイスどおりにやると、愛華は作業が楽しくなってきた。固めるために水あめと砂糖を入れる。
「型はこれでよくないか? ちょうどいいし」
 ローザは少しの間放れていたと思うと、他のグループが使い終えたらしき牛乳パックを手に戻ってきた。四角いし、余計な部分は切ってしまえばいい。
 混ぜた芋を牛乳パックに詰めると、完成が楽しみだと愛華は冷蔵庫へと入れにいった。

「さっきは牛乳パック助かったな」
「いいえー、こちらも助かりますよ」
ローザはアイスを作っていたという天鐘 咲夜(あまがね・さきや)に型を頂いたので、少し作業を手伝うことにした。
「あれ、咲夜はパートナーと一緒じゃないの?」
 仲良さげだった気がするけど、とミルディアはたずねる。
「ナイショ参加なんです。甘いものは得意じゃないみたいだから」
咲夜は牛乳に卵やコーンスターチを加え、砂糖を控えめにして混ぜる。もう一つのボウルでローザに混ぜてもらっているものと合わせて、抹茶とチョコ味二種類のアイスができる。
「確かに冷たいと甘さ感じにくいしね、きっと喜んでもらえるわ」
「はいっ」



紅 咲夜(くれない・さくや)は上達のために、上手そうな人のところを探していた。そんな時、すごい包丁裁きをする岡部 彰人(おかべ・あきと)を見つけて、彰人の向かいで作業をすることにした。
「速いし、綺麗ねその裁き」
「ああ、人に食わすには上達しないと飽きられるからな」
「わかるわ、それ。ちょっと見学させてもらってもいい?」
 ちょうど彰人が切っていたのは栗で、均等な薄さで切られている。それを見て咲夜は栗饅頭を作ろうと思い、ちらちらと見ながら自分の作業を進めることにする。
 彰人は「ならば栗饅頭勝負といくか?」と同じ物を作ることになった。初心者ではないのだし、共同作業ではなくどっちが美味しく作れるかで競えば、上達するだろう。
「そっちが餡子の中に栗なら、こっちは100パーセント栗なんだから」
「それは楽しみだ」
 結果的に咲夜も彰人も周りの人に味見させてみたけれど誰も文句無しの絶品なものができた。あとはパートナーに食べて喜んでもらえればいい。