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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

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≪スプリングカラー・オニオン≫と魔法学校の編入試験

リアクション


=====act7.食堂=====

 ≪スプリングカラー・オニオン≫が無事にイルミンスール魔法学校の食堂に届いた。
 生徒達はそのうち一部を分けてもらい、学校の生徒より一足先に料理を頂くことにした。

 
「餃子できたよ」
「ありがとう」

 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は挽肉とキャベツ、ネギを餃子の皮で包み、皿に並べて持ってきた。
 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は≪スプリングカラー・オニオン≫やパプリカなどの野菜をフライパンで炒めていた。

「お、そろそろいいんじゃないかな?」
「そうだね。じゃあ、煮込むかな」

 リアトリスは、水と固形スープを入れた鍋に、炒めた野菜を投入した。

「後は十分くらい煮込んで……」
「餃子を茹でるだけだね」
「はい」

 浮かんできたあくを取っていくリアトリス。
 ぐつぐつ音を立てる鍋から、美味しそうな匂いが沸き立ってくる。
 『コンソメベースで野菜多めの水餃子』。
 いつか大切な人に食べてもらいたい。
 リアトリスの表情はとても真剣だった。

 その横ではヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)が、≪スプリングカラー・オニオン≫などの食材を使ってフライを作っていた。
 鼻歌まじりに、サクサクの衣がついたフライを次々に揚げていく、アリアクルスイド。
 その時、持ち上げたフライを落としてしまい、油が数滴飛び散った。

「あっちぃ……」
「アリア、油が飛ぶから気を付けてね」
「涼介兄ぃ、遅いよ!」

 丸玉ねぎのコトコト煮の具合を確認する涼介に、アリアクルスイドは頬を膨らませて怒っていた。


「ふぅ、こんなもんか?」

 野菜を切り終わったクロイス・シド(くろいす・しど)は、手の甲で汗を拭った。
 その指には絆創膏が貼られていた。
 正確には、ポケットに入れっぱなしにして洗濯でくしゃくしゃになった絆創膏を、無理やりセロテープで止めた、ほぼ無意味な手当てだった。

「ちょっと、シド。
 これ、何なのっ!?」

 ケイ・フリグ(けい・ふりぐ)がクロイスの切った野菜を指さしていた。

「何って野菜だろ?」
「じゃなくて、なんでこんなにも大きさがバラバラなのか聞いてるの!」

 クロイスの切った野菜は統一性がなく、大小様々な形で切り分けられていた。
 メイド服のケイが、唾が飛んできそうな勢いで怒鳴りつける。
 すると、クロイスは頭をかきながら恥ずかしげに答えた。

「いや〜、なんていうか、メイド服が気になって……」
「着替えてくる」
「ちょ、ちょっと待って――」
「ぎゃっ!?」

 引き留めようとしたクロイスは、立ち去ろうとしたケイのツインテールを掴んでしまい、首を後方へと引っ張ってしまった。
 クロイスは謝る間もなく、顔面に強烈なパンチを食らった。
 プンスカ怒りながら立ち去ろうとするケイ。
 だが、しつこいクロイスにスカートを掴まれてしまう。

「つ、次はちゃんと集中してやるから……」

 クロイスは片手で鼻血を抑えながら、涙目で訴えた。
 目が語る。
 
『俺からメイドを取ったら、何が残ると言うのだ。否、何も残らない。おまえはそれを奪おうというのか!? 俺に死ねというのか!? この外道! 非道! 邪道がっ!』
 
 実際クロイスがどう思っているかはわからなかった。
 だが、それほどにクロイスのメイドに対する思いが伝わってきたのだ。
 ケイはクロイスの瞳を暫く見つめていた。

「本当?」
「ほ、本当だ」
「……わかった」

 両手を上げて喜んだクロイスは、垂れてきた血に慌てて鼻を抑えた。
 ケイはため息を吐いた。

「でも、次やったら……クロイスの秘蔵写真燃やすから」
「え?」
「では、その時は俺が手伝いましょう」

 ケイの脅迫にクロイスが驚いていると、鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)が意地の悪い笑みを浮かべて近づいてきた。
 クロイスが親の仇を見るような目で、貴仁を睨みつける。

「そんなことしてみろ、タダじゃおかないからな」
「じょ、冗談ですよ」
「……ん、そうなのか? もう、悪い冗談はやめてくれよな」

 クロイスは笑いながら貴仁の肩をバシバシ叩き、真っ赤な手形をつけていた。
 この人はどんだけメイドが好きなんだろうと、貴仁は不安を感じた。
 
「ところで、それなんだ?」
「ああ、玉ねぎを焼いてみたので、味見してもらいたくて持ってきたんですよ」
「お、じゃあ、もらおうかな」

 クロイスは焼き≪スプリングカラー・オニオン≫が乗った皿を受け取る。
 ≪スプリングカラー・オニオン≫から甘い香りが漂ってくる。
 切り分けられた部分を爪楊枝で刺すと、サクリといい音がした。
 玉ねぎから湯気が立ち昇っていた。

「結構熱そうだな」
「じゃあ、これをかけたらいいよ!」

 クロイスが≪スプリングカラー・オニオン≫に息を吹きかけていると、突如横から白い液体が降り注いできた。
 驚いて振り向くと、機晶姫設計図 ファブニル(きしょうきせっけいず・ふぁぶにる)がチューブを両手で絞り、中身の白い液体を≪スプリングカラー・オニオン≫に全て注ぎ込んだ。

「あの、ファブニル。これは何?」
「たべればわかるよ♪」

 早く食べろと急かしてくる、ファブニル。
 クロイスは不安を覚えながらも、恐る恐る焼き≪スプリングカラー・オニオン≫+白い液体を口に運ぶ。

「……パクッ――!?」

 口に入れた瞬間、舌が糖分でいっぱいになった。

「れ、練乳だ」
「ぴんぽーん!」

 白い液体は練乳(コンデンスミルク)だった。
 せっかくの≪スプリングカラー・オニオン≫の味を微塵も感じさせず、ひたすらに甘かった。

「ドレッシングもつくったんだけど、あじみしてくれる?」
「ん、ああ…………」

 クロイスは小皿を受け取り、添えられたスプーンを手に取るも、それ以上腕が進まない。

「どうかした?」

 先ほどは練乳。今度は果たして何が入っているのだろう。
 見た目の第一印象は、若干黄色が混ざった白。よく見ると、卵の白身のような透明な物体が……混ざりきっていない。
 そして、スプーンですくった時の重量感。
 クロイスは直感した。――これは、逝ける。
 
 ファブニルが期待の眼差しで見つめ、今か今かと待っている。
 そんなファブニルがメイド服を着ていた。

「くそっ」
 クロイスの心を敗北感が支配した。
 どこからどうみても、ファブニルはロリメイドだった。

 クロイスは両親に心の中で謝りながら、特製ドレッシングを口に運んだ。
 瞬間――

「――★□@?$&♪<!>#!?!?!?!?!?!?!?!?」

 世界が崩壊した。
 
『意識がどこか遠くへ吹き飛んだ。
 光を感じ、時を感じ、生命を感じた。
 神秘的な存在が何か大切なことを説いていた。
 意識が宇宙の一部に溶けていく……』
 
 ような気がした。
 気付けば、全身から大量の汗を流れ出ていた。
 口の中が麻痺していて何も感じない。
 食道がくっついたように苦しかった。

「どうだった?」
「うん。……あぁ……」
「大丈夫そうだね。よし、他の人にも食べてもらおう♪」
「ま、待てっ」

 ドレッシングを他の人にも味見させようとするファブニルを、クロイスは慌てて引き留める。

「これ何が入っていたんだ?」
「えっとね。砂糖にシナモン、水あめ、ハチミツ、練乳、ガムシロップ、後は……」

 クロイスは聞いていて頭が痛くなった。
 一日に必要とされる糖分を、圧倒的にオーバーしている。
 きっと誰か死ねると直感した。
 このままではファブニルが殺人犯になってしまう。

「ファブニル、これはやめた方が……いねぇし」

 周囲を見渡したがすでにファブニルの姿はなかった。すでに誰かに持って行ったようだ。
 クロイスは急に吐き気に襲われ、口を押えた。

「とりあえず水だ……」


「アリアさん、変わりましょうか」

 ティー・ティー(てぃー・てぃー)がハンカチで手を拭きながら、アリアクルスイドに話しかけていた。

「うん。お願い。
 ボクはサラダを作ってくるよ」
 
 アリアクルスイドは菜箸をティーに手渡し、野菜を切りに向かった。
 ティーは揚げ終わった野菜を、油きりの上に乗せていく。
 すると、イコナ・ユア・クックブック(いこな・ゆあくっくぶっく)が次に入れる野菜を持ってきた。

「ティー、切り終わりましたわ」
「ありごとうございます、イコナちゃん」
「えっと、次は……」
「次は魚を捌いてもらえますか」
 
 ティーは菜箸を安全な場所に置くと、釣ってきた魚をまな板の上で捌いて見せた。

「……こんな感じでお願いします」
「わ、わかっていますわ」

 イコナは、身体でティーを押しのけ、子供用の包丁で魚を切り始める。 

「イコナちゃん、親子丼の方は大丈夫ですか?」
「そ、そうでしたわ」
「待ってください。包丁は持ち歩いちゃダメですよ」
「は、はいですわ」

 イコナは包丁をまな板に置き、慌てて親子丼を作っている鍋を見に行く。
 沸騰した鍋から食欲誘う匂いが漂ってくる。

「ま、まだ大丈夫ですわ。……たぶん!」

 鍋を見つめながら、イコナは額からダラダラと汗が流れていた。
 ティーはその様子を苦笑いを浮かべて見つめていた。

「そういえば、ティーの方は見ていなくて大丈夫ですの?」
「大変……!?」



「それで俺の所に持ってきたと」

 源 鉄心(みなもと・てっしん)は手に持った皿に乗せられた黒い揚げ物を見つめる。
 ティーが目を伏せ、しゅんとしていた。

「ごめんなさい、鉄心。
 やっぱり、後でちゃんとしたのも持ってきます」

 ティーが皿を掴もうとすると、鉄心はそれを回避した。

「確かにこのまま捨てるのはもったいないからな。
 ありがたくいただいておくとするよ」
「鉄心……ありがとうございます!」

 ティーは目尻に薄ら涙を浮かべながら、喜んでいた。

「次こそはちゃんとしたのを持ってきますから」
「ああ、期待してる」

 ティ―は反転すると、花の香りを残し調理に戻っていった。
 鉄心は壁際まで歩いて行く。

「さて、お前たちにも処理を手伝ってもらおう」

 そこには連れてきた≪カメレオンハンター≫達が縄で縛られていた。
 鉄心は≪カメレオンハンター≫の猿轡を外し、焦げてしまった揚げ物を相手の口に入れようとする。
 だが、≪カメレオンハンター≫は口を閉じて、必死に拒んでいた。

「悪いが拒否権はない。
 拒否すればどうなるか……」

 鉄心が鋭い視線で睨みつけると、≪カメレオンハンター≫は唾を呑みこみ、ゆっくりと唇を開いた。
 その少しの隙間に鉄心は、一気に揚げ物を詰め込んだ。
 覚悟を決め、目を強く閉じながら噛まずに呑みこむ≪カメレオンハンター≫。
 と、次の瞬間――その表情が、昇天しそうなほど幸せそうなものに変わっていた。

 不思議に思った鉄心も、よく噛んで味わってみる。
 すると、最初は焦げの味しかしなかったのに、噛んでいくうちに素材の味が染み出てきた。

「なんだ。結構いけるじゃないか」

 羨ましそうに見つめる≪カメレオンハンター≫を横目に、残りは鉄心が一人で食べていた。


「あ、あの……」
「ん、なんだ?」

 くつろいでいたエヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)の元に、イコナがやってくる。
 イコナは緊張した面持ちで、手に持ったお盆から蓋のついた丼をエヴァルトの目の前へと置いた。

「親子丼、作りましたの」
「俺が食べていいのか?」
「ええ。食べたいと言ってましたわよね?」
「……聞こえていたのか」

 エヴァルトは記憶探り、≪ルブタ・ジベ村≫を出発する際に親子丼を食べたいというやりとりをしたことを思い出した。
 照れから頬をかく、エヴァルト。
 イコナの作ってくれた親子丼に期待しつつ、蓋をとる。

「み、見た目は少々悪いかもしれませんが、味は問題ないはずですわ」

 ご飯に乗せる際に失敗したのだろう。
 見た目は少々ぐちゃっとなっていた。
 それでも、エヴァルトは感謝しつつ箸で、卵の絡んだ鶏肉とご飯を口に運んだ。
 鶏肉は少し硬かった。卵は集中的に固まりになっている部分があった。
 残念な部分が多々ある。
 しかし――イコナの一生懸命の気持ちが、エヴァルトの箸を止まることなく動かさせた。
 エヴァルトは、米粒一つ残さず親子丼を食べきった。

「うん。とても美味しかったです。ありがとうございます」
「よ、よかったですわ。
 そうですわ。ポミエラさんにも食べて頂きましょう」

 イコナが満面の笑みを浮かべていた。


「ポミエラさんは……いましたわ!」

 再び親子丼をお盆に乗せたイコナは、食堂の隅でレポートを作成していたポミエラを見つけた。
 イコナは上機嫌でポミエラに話しかける。

「ポミエラさん! レポートでお困りのようですわね?」
「あ、イコナさん。ええ、そうなんですの」
「だったら、いいものがありますわ!」

 そう言って、イコナは勢いよく親子丼をテーブルの上に乗せた。
 丼と蓋の間から、若干の汁がこぼれていた。
 ポミエラは首を傾げながら、蓋をとった。

「親子丼?」
「そうですわ! ≪スプリングカラー・オニオン≫を使っていますの。
 だから食べてみれば、きっと秘密が分かりますの!
 さぁ、どうぞですわ!」

 しきりに勧めてくるイコナ。
 ポミエラは眉を潜めながらも、箸を使って≪スプリングカラー・オニオン≫を含んだ部分を食べてみた。
 暖かい汁が口の中で溢れる。
 口から鼻孔を通って、≪スプリングカラー・オニオン≫の優しい香りが広がってきた。
 ポミエラはその不思議な感覚に驚いた。
 噛めば噛むほど、桜のイメージが浮かんできて、暖かい気持ちになるのだ。
 親子丼はあっという間に食べ終わってしまった。
 そしてポミエラは腕を組んで悩み始めた

「うーん……」
「……ど、どうですか?」

 イコナはオロオロしていた。 
 確かに料理はおいしかった。
 しかし、≪スプリングカラー・オニオン≫が生まれた原因がなんなのかは結局わからなかったのだ。
 でも、伝わってきたものは確かにあった。

「ヒントにはなったと思いますわ」
「そ、そうですの? ……よかったですわ」

 ポミエラが微笑むと、イコナも安心して笑っていた。

「それではわたくしは失礼しますわ。
 頑張ってくださいですの」
 
 別れを告げてイコナはティーの所へと戻っていく。
 すると途中で、ファブニルに呼び止められた。
 
「いこなぁ! いこなぁ!」
「ファブニルさん?」
「サラダつくったよ! ティーといっしょにたべて!」
「わかりましたわ。ありがとうございますの♪」

 イコナはドレッシングがかかったサラダを、ファブニルから受け取った。
 大喜びでティーの元へと戻るイコナ。

「ティー、ファブニルさんからサラダをもらってきましたわ」
「あら、そうなんですか?
 では、せっかくですから、皆さんより先にいただいてしまいましょう」
「じゃあ、わたくしも……」

 二人はフォークで新鮮なサラダを刺すと、ドレッシングをしっかり絡めた。
 そして口の中へと入れる。

「「いただきます――――!?!?!?」」

 瞬間――口の中がファブニル特製ドレッシングで染まった。

「と、とっても甘いです」
「強烈甘々ですわ」

 どうにか喉を通したが、胃がむかむかする。
 今にも逆流をおこしそうだった。
 ティーが気持ち悪そうに口を押える。

「イコナちゃん、水を……」
「わ、わたくしもですわ……」

 水を飲んでも胃の中で気持ち悪い感覚が残っている。
 許容を超えた糖分に対し、体内組織が分解を拒んでいるような気がしていた。

「太ってしまいますわ……」

 イコナが涙目で呟いた。



「ポミエラ、約束のスープを作ったぞ。いるだろう?」

 ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)は約束通り、≪スプリングカラー・オニオン≫を使ってオニオンスープを作ってくれていた。
 ポミエラはテーブルの上の生徒達が集めた資料を一箇所にまとめると、ダリルが用意してくれたオニオンスープを頂くことにした。

「どうやら、集めた資料は役に立っているようだな」
「はい。皆さんのおかげでどうにか出来上がりそうですわ」

 まだ、目を通している途中だったが、ポミエラのために用意された資料は読みやすく、見ていて絶対に完成させようという気にさせた。
 ポミエラは資料から気づいたことなどを、ダリルに語った。
 そこへ、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)がやってくる

「なら、俺からも参考になる話を聞かせようかな」

 エースは村人からの聞いてきた話や自分の知識を、ポミエラのレポート作りに役立てて欲しいと思っていた。

「メモの用意はいいかい?」
「は、はい」

 カップを置いて、慌ててメモの準備を行うポミエラ。
 準備ができたのを確認すると、エースは――熱烈に語りだした。

「まず、玉ねぎには色んな種類がある。極早生、早生など種類がある。収穫時期からして≪スプリングカラー・オニオン≫は極早生種だな。これは夏中に食べきる長期保存の向かないタイプ。一般に玉が瑞々しく太り柔らかく甘みが強い感じだ。実際食べてみて確証したよ。育ち方だが、玉ねぎっていのうは繊細で日照の長短に敏感なんだ。そういう意味でこれは俺の推測だけど、足りない栄養を土から吸収していると思う。おそらく世界樹の力だな。後……」
「あ、あぅ――ぷしゅぅ……」

 ポミエラが頭から煙を出して倒れた。
 エースはそれに気づかず、リリア・オーランソート(りりあ・おーらんそーと)に頭を叩かれるまで熱弁し続けた。

「いたっ、いきなりなんだ?」
「エース、ホドホドにしないとポミエラちゃんにドン引き……の前に燃え尽きちゃうわよ?」
「え? うわっ、いつの間に……大丈夫か、ポミエラ!?」
「あうぅ――」

 抱き上げたポミエラは、目をぐるぐるさせ、気絶した。


 リアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は出来上がった水餃子を緋柱 透乃(ひばしら・とうの)に味見してもらっていた。

「どうかな?」
「うん。いいんじゃない? 普通においしいよ」
「そ、そうか。よかった……」

 リアトリスはバクバクと音を立てる胸を押さえながら、深く息を吐いた。

「これなら、好きな人にも食べさせられるね♪」
「う、うん。でもこれだけじゃ、寂しいよね。
 他にも作れるようにしたいな……」

 水餃子にあうメニューを考えながら、リアトリスはメモをとっていく。

「私も陽子ちゃんに何か作ってみようかなぁ」

 透乃は美味しそうな食事を想像して、垂れそうになった涎を手の甲で拭き取った。