イルミンスール魔法学校へ

シャンバラ教導団

校長室

百合園女学院へ

打倒! 鷹の目強盗団

リアクション公開中!

打倒! 鷹の目強盗団

リアクション


●プロローグ
「みんな集まったな、助かるぜ!」
 蒼空学園の一室、強盗団を倒すため集まった多くの仲間達を前に、山葉 涼司(やまは・りょうじ)はそう言って、ニッと微笑む。
「あらかた作戦は出来てるか?」
 涼司がそう尋ねると、水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)が答えた。
「私がお嬢様の役をやる事にします、侍女としてマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)にも変装してもらいます。私もマリーも軍人ですから、危険も承知した上での判断です」
「俺とルエラ・アークライト(るえら・あーくらいと)の他に、ボディガードの回るのが1・2・3……」
 そう言って、警備に回る人数を確認する世納 修也(せのう・しゅうや)に対して、三島 公貴(みしま・きみたか)が言った。
「警備の人数、減らしたほうがいいかな? 護るべき対象二人に対して、警備の人数が倍以上というのは、敵が警戒するかもしれないね」
「そうだな。今回は、わざと負けて貰う必要があるからな」
 公貴の問に、涼司も思案げに眉間にシワを寄せる。
「宝石を護るのが目的じゃ無いからな。強盗団が襲撃して来ることが前提だ、警備をもう少し手薄にし、女性の囮を増やすか?」
 佐野 和輝(さの・かずき)は、仲間達にそう問いかける。
「アニスが囮になろうか?」
 そう尋ねたアニス・パラス(あにす・ぱらす)の言葉を、すかさずリモン・ミュラー(りもん・みゅらー)が否定する。
「君じゃ無理だ。どう見ても『いいとこのお嬢様』とか、それに付き従う『従者』には見えんからな」
「そんなの、やってみないとわかんないもん!」
「やる前から結果は見えている。無駄だ」
「二人共、言い争うのはその辺にしてください」
 すかさずスノー・クライム(すのー・くらいむ)は、言い争う二人の仲裁に入った。
「ん〜」
 何かを考えている様子の緋王 輝夜(ひおう・かぐや)が、何か思いついたらしく、イタズラっぽい笑みを口元に浮かべると、公貴の方に近づいた。
「ちょっとメガネ外してくれる?」
「?」
「思った通り、イケるじゃん。公貴、女装してゆかり達に加われば?」
「ぼ、僕が?!」
 突然の申し出に困惑する公貴。
「くくっ、確かに、公貴君ならっ、やれるだろう」
 こみ上げる笑いをこらえながら、森下 信嘉(もりした・のぶよし)はそう言った。
「そうですね。女性が多いほうが、強盗たちの気を引けるでしょう。相手は、あわよくば奪う品物を持つ対象まで連れ去ろうという悪党ですから。興味を引く餌は、多い方がいいと思いますよ」
「旅行でここへ訪れたお嬢様、ということにしておくなら、お嬢様をエスコートする案内人のような人が一緒のほうが、自然だと思うわ。どうかしら?」
 ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)と、アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が、口をそろえて輝夜の意見に同意する。
「……仕方ないな、ここは我慢して、作戦を遂行しよう」
 公貴は、浮かない様子でそう答えた。
「まぁ、奴らが現れたら、さっさとネックレスを渡しちまえばいいんだ。誘拐されそうになっても、そこはオレ達がしっかり守るから、安心していいぜ」
 玖純 飛都(くすみ・ひさと)は、自信に満ちた表情でそう言った。
「隠密行動はあまり得意じゃないけど、私は離れた場所から雲入 弥狐(くもいり・みこ)と一緒に偵察するわ」
 奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)が、仲間達にそう告げる。
「ともかく、みっともない名前まで付けて悪事を働く馬鹿なんざ、オレ達で蹴散らしてやろうぜ!」
 柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)の言葉に、大勢の仲間達も頷く。
「ネックレスは『本物』を用意した。小細工をしてバレたんじゃ、作戦が台無しだからな。追跡は、お前らの腕にかかってるからよろしく頼むぜ。たしか学園祭で使った衣装やなんかが、学園の倉庫の保管してあるはずだ。必要なら貸し出すから自由に使ってくれ。じゃあ、後は任せる。派手にやってくれ!」
 涼司は、そう言って集まった仲間達を激励し送り出す。
 
 その頃、人気の少ない木陰の下、携帯で話す青年がいた、彼の名はドクター・ハデス(どくたー・はです)……。
「山葉 涼司が、この辺りで活動している鷹の目強盗団を潰そうとしているらしい……我々としては、鷹の目強盗団に加勢し、恩を売るのも悪くない」
『そうですわね。今からコンタクトを取るのも悪くありませんわね。今回の作戦、わたくしも協力いたしましょう』
 電話の向こうで、そう答えるのはミネルヴァ・プロセルピナ(みねるう゛ぁ・ぷろせるぴな)だ。
「ククク、契約者どもの慌てる顔が目に浮かぶな。では、また連絡する」
 電話を切るハデス。
「早速、作戦立案に入ります」
 傍らで、電話でのやり取りを見守っていた天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)がそう答える。
「向こうの手が見えないからな……こちらは、待ち受ける形の作戦が良いだろう。アルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)を上手く使うがよい、任せたぞ?」
「はい」

 思惑の交差する中、鷹の目強盗団を討つための作戦は、決行日を迎えることになる。