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右手に剣を左手に傘を体に雨合羽を

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序章


「このままでは本作戦の成功率は0です」
 シャンバラ教導団の服に身を包んだ男、小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)は忌々しげに口元を歪めて呟いた。
 彼が今いるテントの中には声をかき消すかのような大きな音が絶え間なく響いている。これは雨粒がテントを叩く音だ。
 雨が降ること事態は決して珍しくも何ともない話であるが、これは明らかに異常だと言えた。
 何しろ一月も雨が降り続けているのだから。
 しかも、未だに止む気配はない。
 この長雨が普通のものではないことは小暮はすでにわかっていた。
 これほどの期間止まない雨というのもおかしな話だが、さらにおかしいのは雨がこの辺り一帯――ある小さな村を巻き込んでしか降っていない。
 人為的なものなのか、もっと別の要因が絡んでいるのかはわからないが、何かしらの原因があることはわかっている。
 本来ならば、その原因を探りに行く、もしくは部下に探りに行かせるべきなのだろうが、それができる事態ではなかった。
「どう考えても手が足りない」
 連れてきた部下を総動員させていたが、手が足りない。それはこの場で的確な指示を出し続けている小暮が誰よりもわかっていた。
 ここまで雨が続くとは予想されておらず、彼が連れてきた部下は少人数。だが、その数で防げる状況を逸脱しつつある。
 このままでは何かしらの大きな災害が村を襲うのは時間の問題だった。
「あ、あの……!」
 小暮が対策に頭を悩ませていると、金髪の女性が意を決した様子で口を開いた。
 恐る恐ると言った感じであまり主張することに慣れていない様子が見え隠れしているが、彼女は現在雨の脅威に晒されている村の長である。
 最近、高齢だった彼女の祖父に当たる村長が亡くなったために、その役職を引き継いだらしいが、まだ二十歳そこそこで威厳も頼りがいもない女性だ。
 そんな彼女が小暮に提案する。
「救助を外部に要請しませんか? 私たちだけではどうすることもできませんし……」
「そうですね。それしかありませんね」
 外部の人間が入ってきた場合、連携が取れなくなるかもしれないということを危険視していた小暮だが、このままでは手遅れになる可能性がある。
 小暮は村長の提案に頷くと、部下に指示を出した。そうして、様々な手段でなるべく多くの人々へとその情報を伝わっていく。