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リアクション
【シャンバラ教導団・2】
「――教導団と言えば軍務に代表されるようなドンパチ荒っぽいイメージが先行しますけど、
そういうのが苦手な人にも後方支援の仕事もありますので、その人の適正に合わせた学部や部隊に就く事が出来ます」
教導団内部の廊下を歩きながら説明する慎一郎は、一呼吸置いて一行を振り返った。
「喧嘩するのが得意ならドンパチやれば良いし、
苦手なら通信や輸送の仕事で皆の支援役に、とね」
「簡単に言うと軍属もなれるよって事」
アレクは簡単に言うと、と言ったが、シェリーらは逆に分からなくなったらしい。ミリツァが兄の代わりに口を開いた。
「よくて。『軍人』というのは本来、国の正規軍に所属しているアレクのような人間を指すの。
民間人では無い、軍に籍を置く者。そういう意味を持つわ」
アレクが間違っていないと頷くので、ミリツァは続ける。
「『軍属』というのは、それ以外の、軍に雇用された者の事よ。ね、お兄ちゃん」
「ああ。通訳、車両や航空機の整備みたいな専門職。従軍牧師もそうだろ。
それから物資の輸送……あとは食堂のオバサン。軍政、法律関係なんかもそうだな」
「グンセイ? ホウリツ?」
チンプンカンプンと言う風にシェリーやナオの顔に、アレクはどう噛み砕けばいいか考えながら丁寧に説明する。
「軍事行政の事な。
軍隊っていうのは国の組織だ。国の管理の下、国の決めたルールに則って動く。
そこからはみ出ない様にする役割をする、いわば事務員だな」
言い終えて、アレクはヘルムズリー大佐を一瞥する。今はシェリーやナオに分かるよう事務員という言葉を使ったが、それが的確かと言えば、アレク自身鼻で笑ってしまいそうになるのだ。
シャンバラ教導団(或いはシャンバラ王国軍)に関していえば、ヘルムズリー大佐が局長を務める法務局が、軍事行政一切を取り仕切っている。
更にこの法務局は行政のみならず、教導団員及び一般国軍兵に対する司法権も握っている。
その権限は将官級にも及び、ヘルムズリー大佐は一部の特権者(金団長とそのパートナー達)を除き、あらゆる教導団員に対して最強の政治的権力を握っているのと同義である。
「従軍牧師……。聖職者まで居るのか」
破名が拾ってきた言葉に、アレクはけろりと理由を言った。
「死ぬ前に天国に行ける様に祈ってくれるんだよ」
礼拝とか結婚式とかもあるけどな、と言う言葉はもう聞こえていない。シェリーは改めて此処がそういう場だと思い知り顔を蒼白にする。
「そう怖がらなくても、まあ大した事じゃない。
俺の所属する合衆国軍がやってた昔のある戦争では、死んだ女性兵はたった一人だ。
何故かって言うと、女性兵がまだ一般的では無く、彼女達の多くは衛生部隊所属だったからなんだよ。
運がいいか、悪いか。前に居るか、後ろに居るかで大分生存率が違うんだ」
「後方の仕事は意外と卒業後の進路にも有利な資格や経験が積めますしね」
アレクの言葉に頷きながら慎一郎が、『進路』を決めようとしているシェリーやナオへそう説明する。
「選択肢が多いって事? 私でも出来る事って多いのね?」
問うシェリーに慎一郎はそうだと頷いて、ただ、と付け加える。
「ただ、やはりドコに所属してもある程度の体力や精神力は要求されます
「そう、なの?」
「個よりも集団を優先する気風なので、そういうのがどうしても合わない
という方は最初は戸惑いますが、じきに慣れますよ」
個の基礎は集団というラインまで高める必要がある。個よりも全体を重んじるのかと、シェリーは丁寧に話を進めてくれる慎一郎に、パンフレットからではわからない学校の雰囲気を感じ取る。
「規則が多いし、内容は……少し厳しいか」
言う破名は、そういえば、組織の規則をこうやって知ることは初めてだなと気づく。破名が研究所から課せられた規則は絶対の約束事だ。守るべき規律が多くて難しいなんて感想を抱く自分に思わず自嘲するのだった。
「規律……ですか…………」
慎一郎にバトンタッチする形でやってきた水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)とマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)は、破名がまた漏らした言葉に反応して息を吐いた。
彼が言わんとしている事は分かる。教導団は先程行ったばかりだという明倫館や、これから回る他校とは、そういう意味で一線を画している部分があった。
(やっぱりその辺の説明は、外せませんね……)
ゆかりは頭の中で考えを纏めて、暫し立ち止まった。
ヘルムズリー大佐の手前、下手な説明をすれば後でどんなお小言を貰う破目になるのか、分かったものではない。
ここは慎重に言葉を選ぶ必要があった。
「――軍隊は、国家公認の下で圧倒的な物理力を行使できる組織である以上、厳格なまでのルールの遵守が求められます。
何をするにもルール上の根拠を厳格に要求され、少しでも根拠が怪しいと追及を受ける。
軍人に結果オーライで勝手な行動を許してしまうと、取り返しの付かないことになってしまいます」
ゆかりが間を置く。破名も、シェリーらも皆考え込んでいるようだ。ゆかりがマリエッタとさてどう続けようかと互いを見ている為、今度はアレクが口を開いた。
「さっき言った軍政にもかかる事だけどな……。
軍人はよく人殺しと揶揄されるが、それでも行っているのは『平和維持活動』なんだ。
国家が二つあれば、守りたいものはそれぞれ違う。それがぶつかり合うから戦争が起こるが、それでも元を正せば、軍人と軍隊が持つのはただ国を守るという意志だ。
が、国の守り方、世界の守り方は軍人が個人で決める事じゃない」
「私達は組織ですからね」
ゆかりが先程の言葉をもう一度出すのに、アレクは頷いて続ける。
「決めるのは、国――つまり政治家だ。
国家の決めた安全保障の政策に則って、俺達は行動する。訓練はどうするか、兵器はどうするか、情報はどうするか、全部が元々決められているんだ。
決められた事を守らないと、さっき水原大尉が言った『取り返しのつかない事』になる。それがどう言う事かは……大体分かるだろ?」
その辺は自分で考えろという風なアレクに、ゆかりは皆が考える時間を置いて話始める。
「決められたルールの上を歩くのが私達軍人です。
そこから外れたり、間違って落ちたり、それを防ぐには、普段から自分たちを厳しく律する必要があるんです」
話す間、ゆかりもアレクも、その瞳は一切の曇りも無いようだった。
国を守る為、規則を守る為、自分を律する。
知らず閉じ込められた空間だとしても、此れと言った規則の無い自由な孤児院に居たシェリーには、途方も無く難しい事のように思えてならない。
そうして意識せず固まっていたシェリーの肩に、マリエッタの体重が乗り、思わず姿勢が傾いた。
「でも息抜きしないと身が持たないよねー」
先程迄の真面目な話を茶化すような口調だが、ゆかりはくすくすと笑い、アレクも「その通りだな」と目を細める。
「真面目な時は糞真面目にやって、バカやる時は思いきりバカやっとけばいいんだって。うちの連中見てるだろ?」
アレクの皮肉っぽい笑顔に、ナオとかつみは地球の軍人の寄せ集め軍隊『プラヴダ』の様子を思い出し「ああ」と得心した。
「そうそう。実際、仕事も私生活もガチガチじゃ発狂するわ。
プライベートでは結構自由にやってるのよ。
因みにカーリーは、インドア派だから読書したり、お菓子を作ったりするのが趣味。
私はというと――、どこか外に出るのが好きなので適当に街中をぶらついたり、服とか買いに行ったりするのが好きだけど……」
呼吸の間を置いて、マリエッタは少々態とらしい顔を作った。
「羽振りのいいカーリーと違って、あたしはダメね。
欲しい服があっても指くわえて諦めてるの!」
「あら、だったらゆかりに買ってもらえばいいのではなくて?」
口を挟んだミリツァは、それが当たり前の事なので当たり前のようにそう口にしているだけだが、マリエッタは少し驚いた。
「そうね、買ってもらえばいいと思うの。
だけど、あんまり高いのは駄目って怒られるからそのときは……
ええっと、どうしよう?」
お金を触ったことがなく、経緯は違うものの『与えられる側』であるシェリーは、マリエッタに「買ってもらえばいい」と言うも、言葉に詰まり、助けるようにミリツァを見た。
するとミリツァはキリッとした表情でこう言った。
「カードよ」と。
「カードでこっそり買えば、一桁くらい違ったところでお兄ちゃんは気がつかないのだわ。
それに最悪の場合でも、明細をチェックする月末まではバレ無いのよ」
「お前…………。それ俺の前でよく言えるな」とアレクはミリツァの頭に掌を乗せる。
ミリツァとシェリー。二人の反応に、ゆかりとマリエッタは此処で初めて、自分達が相手にしている彼女達がちょっと変わった娘なのだと気がついた。
かつみやナオが乾いた笑いを吐いているのに、ミリツァとシェリーは首を傾げている。
*
ジェイコブ・バウアー(じぇいこぶ・ばうあー)とフィリシア・バウアー(ふぃりしあ・ばうあー)が『砲弾演習』へ連れ行ってくれると言った時、シェリーは勿論それが何の事か分からなかった。
当然ながらジェイコブ達の案内は、ヘルムズリー大佐の許可を得た上での行為である。でなければ、如何に見学とはいえ、部外者を訓練現場に同行させるなどは有り得ない話であった。
ともあれシェリーはジェイコブ達に招かれるまま、その現場へと足を運んだ。まだその時点でも、シェリーはジェイコブが何を見せようとしているのか、理解が及んでいない。
が、実際で目にしてみれば分かると言われたのは本当だった。
それ程近くに居る訳では無いのに、ビリビリと演習場の大気を震わせて届く爆音と爆風に耐えられず、シェリーは自分の両耳を両手で庇うように覆った。かつみやミリツァが平気そうにしていることに、きゅっと唇を引き締める。そんなシェリーに気づいたナオは、シェリーだけじゃなく、自分もこういうのはちょっとと困り顔になった。一人だけ怯えているわけでは無さそうとシェリーは気を取り直した。
「す、凄かったわね。音とか……」
粗方で見学を終え、建物へ引き返して行く道すがらシェリーが素直に感想を述べると、隣のミリツァがジェイコブへ振り返った。
「でもあれは実弾ではなく、訓練用の筈よ。そうよねバウアー准尉」
ジェイコブは頷いたミリツァの言葉を拾って、シェリーが聞き返した。
「訓練用?」
「演習での炸薬量は減らされる場合が多い。民家近い基地とか尚更配慮が必要だし」
質問にアレクが答えると、ジェイコブがそれがどういうことか説明を始めてくれた。
「訓練用と言っても射撃手順や弾道特性が違っては演習にならない。
そこは抑えた上で、安全性で、安い。これが訓練用――演習弾だ
『威力』という点に置いては、先程見た通りの破壊力にはなるが」
ジェイコブの説明を聞いていたシェリーは、逆に分からなくなってきたようだ。つい破名へ振り返ってしまうのを見て、アレクが徐に掌に氷の球体を作り出す。
「これが弾だとするだろ。目標はあー……どうしよっか」
だったらとジェイコブが近くの木箱を指差した。
アレクは彼に目配せして――どうやら本当に要らないものらしいと判断し――、木箱の右の角を投げつける。木箱にぶつかる直前氷は花火のように弾けた。
木箱の角が割れたのを見てジェイコブは得心し、シェリーへ言う。
「あれが『実弾』だ」
ジェイコブが説明を変わってくれたのを聞いて、アレクはまた同じ大きさの氷を作ると、同じ様に木箱の先程とは反対側の左の角へ投げつけた。二度目の氷は弾けず木箱にぶつかって砕けながら土の上に転がり落ちる。木箱の左角には、傷がついている。
「あれが『演習弾』。
一度目も二度目も、氷の大きさは同じ、投げるスピードも同じだ。違うのは爆発性能だけだな?
つまり破壊力は変わるが、性能は変わらない」
こくこくとシェリーが頷くと、ミリツァが木箱の傷を指差す。
「こういう事よシェリー。同じ性能を持っていれば、投げる練習をする事は出来る」
「ああ!」
声を上げて納得するシェリーに、フィリシアが微笑んでいる。
そんな風に演習の話題を続け通りがかった場所で、シェリーは足を止めた。
「ねぇ、花が咲いているわ」
見えてきた中庭の光景――ヒラニプラの空の下、色とりどりと可憐に咲く花に、先だって改装した時に多くの花を植えられて明るくなった孤児院を思い出して、シェリーの声が弾む。
フィリシアは敢えてここを通ったのだ。一行に会うまでの廊下で、彼女はジェイコブへ言っていた。
「教導団と言うとどうしても殺伐とした印象があるのではないでしょうか。
意外に思われるかもしれませんけど、わたくしたちも花を見て美しいと思いますし、それで癒やされもするごく普通の人間であることを知ってほしい、そう思いますの」
フィリシアの意図した通り、此処へ着てから緊張の連続だったシェリーの表情が柔らかくなっている。
「よろしければ記念撮影しませんこと?」
シェリーの顔を覗き込んだ笑顔のフィリシアの提案に、シェリーは破名を振り仰ぐ。
「嫌でなければ行っておいで」
そう言われて、シェリーはミリツァとナオの腕を引いて駆け出した。
*
最後に一行を出迎えたのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)とセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)。当然だが今日は制服姿だ。
ヘルムズリー大佐の前でいつもの格好を披露しようものなら、即刻、別の者に担当を挿げ替えられるところであったろう。
こういうところの判断は、まだ常人のレベルを保っていると言って良い。
見学者一行をどこを案内しようかと模索していた二人は、一番親しみやすい分野からのアプローチを図る事で、教導団の取っ付き難い軍事色の強さを薄めようと考えた。
「学食はどうかしら」なんてセレンフィリティは言ったのだが、実際彼女達が案内するのは、教導団内部の工場だ。
此処で作られるコンバット・レーション(*野戦食、戦闘糧食)を、一行へ見せようと言うのだ。丁度腹も空く刻限で、タイミング的には完璧だろう。
そうして此処で繰り広げられたのはセレンフィリティによる
『教導団イチうまいミリメシトップ3!』やら『史上最低の激マズ缶詰!』等等。
ナオは感心して聞いているし、食べ物に釣られ易いのかシェリーは目を輝かせているが、ひたすら続く食の話題にむしろパートナーのセレアナがやや引きぎみだった。
(セレンて、本当に食欲魔人なんだわ……。らしいと言えばらしいんだけど)
「と、取り敢えずこの辺で、本当の食堂に行きましょ。
お茶でも飲んで行かない?」
セレアナの提案で行った食堂で、シェリーとナオはテーブルの上のルカルカに薦められたあの飲茶を食べ終えた空の皿見つめていた。
さっきまであれだけパックや缶詰に入った食べ物を見てきたから、料理が皿に乗っているのが逆に不思議な気がしていたのだ。
「そういえばお皿は? 一緒に持って行くの?」
シェリーがはっと気付いて言うのに、セレンフィリティたちが笑う。
「皿っつーか食器な、状況に合わせてだが……。
演習とか……行動中は大体そのまんまフォーク突っ込んで食うよな?」
アレクがセレンフィリティとセレアナへ言うと、二人は頷いている。シェリーもナオも驚いているようだ。
「でも人間、どんな環境だろうと食べないことには元気出ないし」
「マズくても嫌いでも喰うんだよ。これで戦えるならマシ。死ぬよりマシ。
俺それでチョコレートだけは完全に克服した。Desert Barに比べたら――」
アレクが言いかけたのに、セレンフィリティの動きがビクリと止まった。
「何で言っちゃうかなぁ……」
心底残念そうに溜め息を吐いて、セレンフィリティが懐から取り出したのは、チョコレートバーだ。
「俺が言ったのとは違うだろ」
アレクが眉を上げたのに、セレアナは声を上げかけるが、その時にはセレンフィリティがアレクへ心得たと瞬きで返した為、最早制止は不可能だ。
「そうそう、これはアレクが言ってたのとは違うチョコレートバーよ。安心して」
と、セレンフィリティが言うので、何も知らないシェリーは笑顔でそれを受け取った。誰かの制止が無いと系譜の子供は食べ物に関して躊躇いがない。パッケージを開けて早速かぶりつく。
「…………」
かぶりついたまま、想像と違う味にシェリーは涙目になった。悪戯が成功して笑い出すセレンフィリティと意地の悪い笑顔のアレクに、セレアナは呆れて首を振っている。
「…………ふぇ?」
やり取りにチョコレートにかぶりついて涙目になったまま、シェリーは疑問符を浮かべる。セレアナは嘆息の後に、改めて口を開いた。
「それはアレクが言っていたデザート・バーよりも更に昔の、最初期チョコレートバーよ。
エネルギーが高い事や、高温で溶けないように、腐敗しないようにする努力が優先されて作られたものなの。
味は二の次というより、三の次ね。美味しかったらお菓子になっちゃって非常食として機能しないと思われていたらしいわ。
まったく、そんなもの何処で見つけてきたんだか……」
*
「自分を、見失わないように。かぁ」
ヘルムズリー大佐へ感謝の挨拶を終え駐車場へ向かう道すがら、シェリーは自分達を気遣うセレアナの言葉を思い出す。
「――私から言えるのは、どの学校を選ぶにしてもそこで自分を見失わないように。って事くらいかしら。
漠然と流されては自分が学校へ行くことの意味すら掴めなくなる。そうしたらやがて苦痛になるだけだから」
漠然と流されてはいけない。これはとても重い言葉だった。『誘われたからなんとなく』と言う気持ちがあったミリツァにも、『今は未だかつみと同じ学校に行きたい、ぐらい』と言ったナオにも、等しく心に突き刺さる。
遂にシェリーは足を止めていた。
「シェリー?」
気付いて隣に移動してきた破名に名を呼ばれ、少女は、うん、と反応を返した。
「なんかね。わかってたのにわかってなかったなって」
「何が?」
「選ぶって、自分に対して責任重大なのね」
先の葦原の時も例を出されていた。
入学の許可を取り付けるのに必死になりすぎていて、その先に何があるのか本当は想像もしていなかった自分に気づき、シェリーは急に自分が恥ずかしくなり、俯いてしまう。
「そうだな。俺も、色々見ておかなかれば、とは思う。シェリー、顔を上げろ。まだ学校は残っている」
破名は、少女に歩けと促した。
「それと、忘れるな。スタートは一緒だ……今も、昔も」
シェリーは最初に預かった子供。共に、と言葉を添える。長年一緒に住んでいることから、言葉よりも声の響きで、シェリーは、この人も不安なのだと悟った。
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