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リアクション
「さーて、次の試合はっと……おっ、ウチの学校の女の子にイルミンスールの女の子、相手は両方とも百合園の女の子じゃないか! 審判って思う存分女の子のおっぱいを堪能できるよな、役得役得〜」
高さのある椅子の上に座り、カルナス・レインフォード(かるなす・れいんふぉーど)がニヤニヤと顔を歪ませる。彼の位置からだと胸の谷間がよく見えることもあり、そのせいで公正な判定が行えていないこともあったが、大体が判定の必要がないものばかりなので、特に問題なかった。
(もう、こっちまで聞こえてるんだから! 私が居るのに他の女の子ばっかり見て! ……ど、どーせなら、私に色々して欲しいのに……)
その下で補佐を行っていたアデーレ・ローエンハイト(あでーれ・ろーえんはいと)が、頬を染めながら何やらゴニョゴニョと呟く中、レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)とネノノ・ケルキック(ねのの・けるきっく)のペアが、ホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)とエメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)のペアに勝負を挑もうとしていた。
「チーム・ニンニクスタミナーズ今こそ復活です! 私たちが勝ったら、二人を私の必殺技『百合園バスター』の実験台にしてあげます!」
「そ、それって何なのかな!? 痛いのはイヤだからねっ!」
「そうですー、これ以上おつむが弱くなったらどうしてくれるんですかー?」
「エメネアさん、自分のことをわざわざネタにしなくても……」
そんな会話が交わされ、そして試合が開始される。
「こうなったら、速攻で決めるよっ! せーの、シナモンスティック、ホームラーン!」
向かってきたボールを、ホイップがシナモンスティックで打ち返す。星になったと思いきや相手コートの死角に落ちてくるという強力な技だが、レロシャンには対抗技があった。
「必殺、サンドバリアー!」
両腕に装着したパワードアームで砂浜を叩けば、生じた衝撃波と舞い上がる砂がボールを浮き上がらせる。落ちてくるボールは単に重力に引かれるだけなので、大した力でなくてもボールを浮き上がらせることが出来たのだ。
「十二星華の方々と勝負できるとは光栄です。ワタシの必殺技をお見舞いしてやる!」
ネノノがレロシャンの背中を蹴って大ジャンプを見せ、レロシャンは衝撃波を撃ち出してボールを高々と浮き上がらせる。
「ちょっと、あれ反則じゃないの!?」
「女の子がやってることに反則はない!」
ホイップの抗議を彼にとっては正当な理由でカルナスが却下する。その間にネノノが音速の斬撃をボールに当て、ほぼ直角の角度からアタックを見舞う。
「バーゲンの極意!
目の前にあるものはとりあえず掴め!」
しかし、エメネアが召喚した『オバハン軍団』にはその程度のアタックなどいとも簡単に受け止められてしまう。
「ポイント、レロシャン・ネノノペア!」
そこでカルナスが笛を吹き、アタックを防がれたはずのレロシャン・ネノノペアにポイントを告げる。
「どーしてよ! アタックはちゃんと防いだはずよ!」
「ババアに用はない!」
これまた彼にとっては正当な理由でカルナスがホイップの抗議を却下し、結果、レロシャン・ネノノペアの勝利となる。
「ふっふっふ……では早速、受けてもらいましょう!」
「わわわーっ!?」
言うが早いか、レロシャンがエメネアを抱えて跳び上がる。
「! 十二星華の方々にそのような真似はさせられません!」
レロシャンを追って、ネノノが加速ブースターで跳び上がる。レロシャンがエメネアを抱えて落下姿勢に入るその瞬間、ネノノが二人の間に入る形になり、そして三人がそのまま砂浜に落下する。
「エメネアさん、今度一緒にサッカーしま――」
エメネアが聞き取れたのはそこまでで、エメネア自身は直前にネノノに放り上げられたことで砂浜にぽす、とちょっとおしりを打つ程度で済んだものの、ネノノはレロシャンの『百合園バスター』の直撃を受けて、首と腰が変な方向に捻じ曲がっていた。
「うわー、痛そう……あんなの食らったら治療費にいくらかかるんだろう……」
治療のため海の家に運ばれていくネノノを見送りながら、ホイップが一人呟く。
「……不思議なものね。
同じ学校にいながら、こうして面と向かって会って話すのが初めてだなんて」
「そう……ですね。
亜璃珠さんのことは優子さんからお聞きしてました」
「へぶっ!!」
コートでは、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)とアレナ・ミセファヌス(あれな・みせふぁぬす)が表情を崩さぬままに会話という名のラリーを続けていた。
「今まで私は、あなたが苦しんでたときも、それを知らなければ、手を差し伸べてやることが出来なかった。
……全く情けない限りね」
「いいえ、きっと、もっと私が、自分から言うべきだったんです。
私は誰にも、優子さんにも、自分の言葉を、言うことが出来なかったんですから」
「んぎゃっ!!」
「……これからは私、ちゃんと向き合ってみようと思うの。
迷惑でなかったら……いいかしら?」
「迷惑だなんてそんな……。
こちらこそ、よろしくお願いします」
「おぱぁ!!」
「……さっきからうるさいわよ、ちび。それに何その下品な声。とても昔の私とは大違いね」
「こんなことさせたのはありすだろー!!
ばーかばーか、じゅうにせーかのすぱいくなんてとめられるわけないだろー!?」
「そう言う割には結構頑張ってたじゃない。……ま、あなたが手加減してくれてるのでしょうけど」
あちこち擦り傷を作った崩城 ちび亜璃珠(くずしろ・ちびありす)が、亜璃珠に食って掛かる。実は亜璃珠とアレナ、ちゃんとバレーの勝負もしており、ちび亜璃珠はネット際をぱたぱたと飛んでアレナのヴィータでのアタックをブロックしていたのだ。
「……本気で打ったら、痛い、では済みませんから」
ヴィータを仕舞ったアレナが、ふふ、と微笑んだ。
「私が勝ったらテティスには、気になる人とデートして告白してもらうからね!」
「ええ!? アイナさん、それはちょっと……」
アイナ・クラリアス(あいな・くらりあす)の言葉を受けて、テティス・レジャ(ててぃす・れじゃ)が狼狽えた様子を見せる。
「おや、それだとここは、隼人たちに勝利を譲った方がいいのでしょうか?」
「そ、そんな急に言われても困るわ! 優斗さん、絶対勝ちましょう!」
「分かりました、テティスさんがそうおっしゃるのでしたら、僕も出来る限り応えましょう」
テティスの相方に回った風祭 優斗(かざまつり・ゆうと)が微笑み、アイナとペアを組んだ風祭 隼人(かざまつり・はやと)に言う。
「そういうわけなので、頑張ってくださいね、隼人」
「相手が兄だろうと手加減はしないぜ!」
『勝ったら敗者へ日焼け止めを塗らせてもらう』を掲げた隼人が応え、それぞれが準備を終えた。
「準備はよろしいですか? では、始め!」
審判役を買ってでた諸葛亮 孔明(しょかつりょう・こうめい)の合図で、ボールが宙に舞う。
「隼人、受け止めなさい!」
「ぐっ!! こ、この程度、大したことはない!」
身体を張って隼人がボールを受け止め、トスを上げたアイナに続いて飛び上がり、アタックを放つ。攻守に渡り活躍する――アイナにコキ使われているとも言う――隼人に、テティスはコーラルリーフを使用するかどうか迷っていた。
(負けるのは嫌だけど……これを使うのも卑怯な気がするわ……!)
結局コーラルリーフを使わず、上がったボールへテティスがジャンプする。
「隼人、ブロック!」
「うおおおおおおお!」
そこへ、隼人がネット際を顔を一杯にして跳び上がる。気迫とインパクトに押されたテティスのアタックは隼人の顔に防がれ、優斗のフォローも一歩間に合わず、ボールが地面に落ちた。
「ポイント、隼人・アイナペア!」
孔明がポイントを告げ、隼人・アイナペアの勝利が確定する。
「よっしゃ! というわけでテティス、俺が日焼け止めを――」
意気揚々とテティスへ歩み寄る隼人、その眼前に優斗が立ち塞がる。
「隼人、僕も『敗者』であることを忘れていませんよね?」
「なっ!? そ、そんなの屁理屈だろ!? お、おい止めろ――うわあああぁぁぁ!!」
微笑みを浮かべたまま、優斗が隼人をズルズルと引きずっていく。
「もう! テティスにエッチな事なんて許さないんだからね!」
小さくなっていく隼人にアッカンベーをして、さて、とアイナがテティスに歩み寄る。
「じゃ、そういうわけだから、頑張ってね♪」
「ほ、本当にしなくてはダメなの?」
困惑した様子のテティスに、アイナがニッコリと「もちろん♪」と答えるのであった。
(……うん、これで準備は万端です! セイニィさんごめんなさい、悪知恵全開で行かせてもらいます!)
何やらコートに仕掛けを施した様子のプレナ・アップルトン(ぷれな・あっぷるとん)、ネットの両端はいかにも怪しげと言わんばかりのリボンで装飾されていた。
(プレナ、まるで悪役だよ……マグは大きくなってもあんな風にはならないようにしよっ)
パラソルの下で冷たい飲み物を口にしていたマグ・アップルトン(まぐ・あっぷるとん)へ、横からポンポンが差し出される。マグが振り向くと、ララ・シュピリ(らら・しゅぴり)が既にポンポン装備でニッコリと微笑んでいた。
「えへへ〜、マグちゃんもララと一緒に応援しよっ!」
「……うん、そうだね」
マグがポンポンを受け取ったところで、呼ばれていたセイニィが少々遅れて姿を見せた。
「ゴメンねー、途中で変な格好させられちゃって……あら」
幻時 恋(げんじ・れん)に案内されてやって来たセイニィが、幻時 想(げんじ・そう)の姿を認めて意外といった表情を浮かべる。
「どんなものかと思ったけど……様になってるじゃない。見ただけじゃ分からないわね」
「来てくれて嬉しいよ、セイニィ。色々とごめん」
「ま、過ぎたことを気にするようなあたしじゃないわ。今日はあんたと、あんたが大切にしてる人と、楽しめればそれでいいわ」
「た、大切な人……」
プレナのことを突っ込まれて、想の頬が紅く染まる。
「準備はいいかなー! それじゃ、いっくよー!」
クラーク 波音(くらーく・はのん)がボールを打ち上げ、試合が開始される――。
「せーの、熱血してるかー! あたーっく!」
「ふふ、着替えた時にムチャクチャな技への対応は済んでいるわ! その程度の炎で、水着は燃えないっ!」
波音が放った必殺アタックがセイニィを炎に包むが、ビーチバレーのハチャメチャ振りを肌で感じた経験――と、誰かのツテ――を反映した水着は、焦げ目一つ付かない。
「あ、あれ? そっかパレオで脚が……っと!」
「幻ちゃん、そのアタックは弾かせてもらいますね!」
思うように動けない想のアタックを、プレナがヒモを引っ張ることでネットを伸ばし、防ぐ。
「頑張れ〜頑張れぇ〜♪」
「無理しない程度に頑張れ〜」
脇で、ララとマグがポンポンを手に応援の声が飛ぶ。
「うぅ、こんなハズじゃなかったのにぃ」
「ぷ、プレナお姉ちゃん、大丈夫!?」
ちなみに試合の方は、セイニィ・想ペアが優位に試合を進めていた所へ、プレナが仕掛けた罠が暴発し、プレナがネットの下敷きになったことで決着となった。
「試合は僕たちの勝利でしたけど、プレナ先輩と波音さんのペア、凄く息合っていましたね」
「……そうね。……あんたが言ってたこと、なんとなく分かった気がするわ。ま、実際にどうするかは、その時決めるけどね。あたし、気まぐれだから」
「皆さん、ドリンクどうぞ〜」
ララとマグが汗を流した者たちへドリンクを振る舞う所へ、想とセイニィも向かっていく。
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