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リアクション
イーダフェルト、防衛 1
ナラカ。そこには、夥しい量の艦隊が列を成してイーダフェルトへと殺到しようとしていた。
『敵艦隊とイコン共を、一機たりともイーダフェルトに近づけさせるな!
我々の後ろにあるのはイーダフェルトだけではない。我々の未来も存在する。だからこそ、何としてでも守りぬく!』
イーダフェルト護衛艦隊総指揮官、金 鋭峰(じん・るいふぉん)が艦内部で咆える。それは無線を通じて全部隊へと送信され、士気を向上させる。
『我々と敵の戦闘力はほぼ互角、しかし数では圧倒的に奴らの方が上だ! 数で押し切ろうとするな!
奴らがこちらの防衛ラインを越えてから集中砲火で攻撃、これで一気に落とす!』
総指揮官として作戦を伝える鋭峰。いつも冷静な彼はがここまで大声で指揮を執る。それはそのまま戦況の厳しさを物語っていた。
『だが、戦場では各自の判断に行動を委ねる。何よりも生き残ることを考えろ!
この状況では一兵失うことが敗北へと直結する。絶対に生還し次の相手へと喰らいつけ! 以上、全軍迎撃を続行しろ!』
「くくく、シャンバラ教導団の長も必死にならざるを得ないようだな。しかし、ソウルアベレイターごとき、我らオリュンポスの敵ではない!」
「数で勝る相手、ですが所詮は烏合の衆。ならば、ハデス君でも勝機はあると言うものです」
「……ん? 何か引っかかる物言いだった気がするが、まあいい! さあ、迎撃を開始するぞ!」
浮遊する城、という外観の機動城塞オリュンポス・パレス内部で、ドクター・ハデス(どくたー・はです)と天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)が攻撃態勢に入る。
「さあ、十六凪よ! ソウルアベレイターの亡霊艦隊に向け、全砲門開け!」
「了解しました。では準備を行いますので、ハデス君は各部隊に呼びかけておいてください」
そう言って準備を整え始める十六凪。残ったハデスは無線を使い他部隊へと呼びかけを実行。
「こちらオリュンポスパレス! 我らは敵艦隊へと向けて一斉射撃を開始する! 射撃後、迎撃を存分に行うといい! フーハハハハ! ……これでいいか?」
「ええ、カンペ通りですね。それでは思い切り始めましょう。禁忌兵器の設計図を基に製造された、戦術ミサイルカーニバルを。ではハデス君、景気よく、大声で」
「うむ。撃てえぇぇぇーい!!」
ハデスの掛け声と共に戦術ミサイル・ビッグバンブラストが、最初に五発、続けて五発、計十発が敵艦隊へ向けて射出される。
ドーン!
ドーン!!
ドーン
ドーンッ!!
ドドーン!!
敵艦隊へ命中した戦術ミサイルは爆発、その絶大な威力と広範囲に及ぶ威力で敵艦隊とイコン機をまとめて撃墜していく。
「どーだ! これがオリュンポスの力だ! ハーッハハハハハハハハゴホッゴホッ!!」
「……まあ、向こうはまだまだと言ったようですが」
十六凪の言う通り、多数の敵部隊を撃墜したそばから、後方より追加の敵部隊が戦列に加わろうと進行を開始していた。
「お、おのれ……もう一発だ!」
「もうエネルギー切れです。一度後退しますよ(後は他の方の盾にでもなりましょうか)」
出来ることがなくなったオリュンポスパレスは後退。しかし敵戦列をかき乱したことに変わりない。
更に打撃を受けて孤立してもイーダフェルトを目指す敵もちらほらと見える。
「よし。今ので母艦を失った敵イコンを殲滅するぞ!」
「了解! このまま直進して、一機で向かってきてる敵イコンが最初の目標だよ!」
「あれだな!」
ハデスの攻撃に乗じて孤立してなおこちらに向ってくるイコンに目をつけた無限 大吾(むげん・だいご)と西表 アリカ(いりおもて・ありか)が、
愛機アペイリアー・ヘーリオスを使用して敵へ近づくため、ブーストを噴かす。
その動きを察知した敵蜂型イコンもアペイリアーへと直行。
「何も考えず敵を切り刻むだけの人形に、負けはしない!」
ブレーキをかけて急停止、その直後に上昇。その後ろに控えていた僚機イコン二機がビームアサルトライフルを乱射する。
レーザー弾の回避を試みる敵イコンだが避けきれず、数発の被弾を余儀なくされる。何よりも、それの対応に追われたのが最大の代償。
「敵イコンはこちらに気づいてない。このまま接近してっ」
「ああ、このまま叩き斬る!」
右手に装備したビームアサルトライフル【エルブレイカー】を撃ちつつ、間合いを詰めるアペイリアー。
攻撃されようやくアペイリアーの存在を思い出し、顔を上げる敵イコンだがもう遅い。
アペイリアーから放たれた大型ビームキャノン【ノヴァブラスター】に直撃し、撃墜。
「そのまま三時方向にいる集団へ!」
「密集してるなら、アバヴァランチミサイルの出番だな!」
指示された方向を見やるや否や、ミサイルポッドからミサイルを射出させ攻撃を仕掛ける。
しかし距離が空いていたせいか、数発のミサイルは敵イコンに迎撃され無力化される。
お返しだ、と言わんばかりに攻撃をしてきたアペイリアーに目標を定めなおした敵イコン数機が動こうとする。
が、その内の一機にバスターライフルの一撃が命中し、そのまま沈ませる。
予期せぬ方向からの攻撃に敵イコンがそちらを見やると、真っ白に塗装されたイコンゾフィエルがバスターライフルを構えていた。
「いい加減、貴方たちの顔も見飽きましたけれど……どうせ踊るのならば最後まで、ですわ」
「私たちはいつも通りやるだけです」
ゴーストイコンと幾度も戦闘をこなしてきたフランチェスカ・ラグーザ(ふらんちぇすか・らぐーざ)、カタリナ・アレクサンドリア(かたりな・あれくさんどりあ)の両名。今も冷静に敵との間合いを計っている。
敵イコンはより自分たちに近いゾフィエルに狙いを変更し、突貫を開始。
これに対してフランチェスカも敵へと直進し、接近戦へと持ち込む。
相手は二機。挟まれればかなりの劣勢を強いられる状況の中でもフランチェスカ操縦のゾフィエルは、踊るように空を駆け敵の照準を絞らせない。
次第に追いつけなくなる敵イコンの状態を見計らい、動きをわざと鈍らせるフランチェスカ。
それをチャンスと見た敵イコン二機が不用意にゾフィエルへと接近。
「甘いですわ」
ブーストを再稼動させ、数十メートル前進するゾフィエル。その後ろで敵イコン同士がぶつかり合っていた。
「敵は真後ろです。そのままやっちゃいましょう」
「ええ。絶対零度の味、思い出させてあげましょう」
ほとばしる冷気を漂わせる氷剣を抜き、振り向きざまに横一閃。斬撃と冷気が敵イコンを刻み、凍てつかせる。
攻撃を受けた相手イコンも必死に反撃を試みるが、ゾフィエルを捕らえることは出来ない。
「私ばかりに気をとられていると、痛い目を見ますわよ?」
フランチェスカの言葉の数秒後、動きの鈍った敵イコン二機をミサイルが襲う。
またしても、予期していなかった攻撃に反応できず、爆発に巻き込まれた敵イコンはそのまま墜落する。
少し離れた場所には、ミサイルの発射口から硝煙を漂わせたアペイリアーの姿があった。
「ほっほう、やるのう。私たちも負けてはおれぬな」
「ああ! イコン部隊がいなくなって、丸裸になった戦艦を叩こう!」
ハデス、大吾、フランチェスカの三名に続きカスタムイコン機第六天魔王に乗り、
桜葉 忍(さくらば・しのぶ)と織田 信長(おだ・のぶなが)がぽつんと浮遊する敵戦艦へと向かう。
それに気づいた敵戦艦がレーザー弾を無差別にばらまき自身に近づけまいとするが、その命中精度はお世辞にもいいとは言えない。
あくまで辺り一帯に弾をばらまくだけの攻撃だ。
「牽制にもならんのう、そんな攻撃は!」
敵の攻撃に構わず敵戦艦の距離を縮める忍。乱雑に放たれるレーザー弾が第六天魔王を捕らえることはない。
「この距離からなら十分に当たるっ!」
「まるで案山子じゃ! さっさと沈めてやるとするかのう!」
第六天魔王に搭載された艦載用大型荷電粒子砲が起動、轟音と共に空を裂く電撃の塊は敵戦艦へと直撃する。
大型兵装から射出された強力なエネルギー攻撃に、敵戦艦は煙を上げてゆっくりと傾く。
しかし落ちていく最中、敵イコンを投下する。
「往生際が悪いですわね。……行きますわ!」
「オーケー。ついでに戦列に加わる敵を蹴散らしましょう」
移動しながら覚醒するフランチェスカ、そのまま投下された敵イコンへと向かう。
荷電粒子砲により、元々損傷していた敵イコンはこれに対応する術を持ってはいない。
「先ほどはミサイルに譲りましたが、今度はやらせてもらいますわよ!」
鈍重な敵イコンとの間合いを一気に詰め、持ち替えたアダマントの剣を使いファイナルイコンソードで敵を切り刻む。
半壊していたイコンは空中で残骸と化した。しかし、それだけでは止まらない。
煙を吹き飛ばして、敵の戦列へと切り込んで敵イコンを斬り倒し、凍てつかせ、戦場を飛びまわる。
「覚醒者ですねぇ。それにあっちでも暴れてる人もいますし、砲台支援の出番ですぅ」
覚醒を果たしたフランチェスカ、同じく別の地点で敵を牽制する瓜生 コウ(うりゅう・こう)とマリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)が搭乗するダーク・ヤングを見て、佐野 ルーシェリア(さの・るーしぇりあ)が呟く。
「僚機イコンの準備は万全です。いつでも支援できます」
ルーシェリアの呟きを聞いていたアルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)が僚機イコンの状態を伝える。
「では、私たちアルシェリアは覚醒した方の援護、僚機イコンには牽制中の方への砲撃支援をするですぅ」
「分かりました。各機へ伝達、支援目標は敵へ牽制を行っているイコン機、型番はアルマイン・マギウス」
命令を受けた僚機イコンがアサルトライフによる弾幕での援護を開始する。支援するイコンに当たらぬよう、細心の注意を払う。
一方、アルシェリアも二種のライフルを併用して遠距離からの狙撃を行う。
敵イコン機の間接部、動力部あたりを目掛け次々と狙いを済ました一撃を放っていく。
その援護を受けたフランチェスカやコウたちは烈火の様に敵へ攻撃を続行。
フランチェスカに至っては、増援部隊で先行している敵への牽制もこなしていた。
「周囲の状況はどうでしょう?」
「未だイーダフェルトに近寄る敵機影はありません」
「わかりましたですぅ。ではこのまま支援を続行しましょうー」
順調な現状に油断することなく、攻撃を途切ることなく支援を続けるルーシェリア。
それもそのはず。既に増援部隊は戦列の穴を埋めて、大挙して向かってきている。油断する余裕などあるはずがなかったのだ。
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