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オークの森・遭遇戦

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オークの森・遭遇戦
オークの森・遭遇戦 オークの森・遭遇戦

リアクション


終盤戦


「シャンバランダイナミィィィック!!!!」
 突如、激戦繰り広げられる森奥に、その声は響いた。響き渡った。
 激しく打ち合っていた誰もが、一瞬、手を止め、その方向を向いた。オークも。戦士達も。
 森奥の裏手、キングの真後ろの大木の梢に姿を現したのは……
神代 正義(かみしろ・まさよし)……またの名を……パラミタ刑事シャンバラン! ここに参上!!」
 すでに、懐にしまっていたヒーローお面は着用済だ。
 更に、その後ろから、
「た、太陽戦士……ラブリーアイちゃん……!」
 最速正体をばらしてしまうことになるが、彼女はもちろん、神代のパートナー、大神 愛(おおかみ・あい)だ!
 少し、いやかなり声が小さい。オークも、ハア? モウイチドイッテクレと言っている。
「ぷりちーらぶりーしゃんばらら〜ん! うぅ……恥ずかしいです……」
 カワイイ! コロスコロスコロ……
「行くぞ! ラブリーアイちゃん!! だあっ。
 シャンバランダイナミィィィック!!!! 悪は滅びろ!!」
 大神に目下萌えているオークどもに、飛び降りつつ、ダブルスラッシュ!!
 オークは、大神に見とれたまま気絶。
 大口を開けるキングの頭上を飛び越し、戦場の真ん中に降り立った。
「ヒット&アウェイ! ヒット&アウェイ!」
 戦法は、わりとスタンダードだ。
 その間に、大神は皆にヒールをかけまくる。
「よし、もういいだろう。ラブリーアイちゃん……光条兵器だ」
「はい、パラミタ刑事シャンバラン!」
「シャンバランブレード!」
 カッ 戦場を、光が覆う。
「撤退!!!」
 光が収まり、見ると、すでにシャンバランの姿はなかった。


第5章 キングと勇者達

01 施設への到着

 星が、きれいだった。
 そして後方には、襲い来るオークの軍勢。

 森をいち早く抜けたジャック・フリートの目に、夜の闇にはためくシャンバラの旗が見えた。やっと施設へ到達したのだ。
 施設を見上げながら、カービンを構えるジャック。
 オーク達を眼前に、背中に装備した二対のブレードを手にするイルミナス。
 二人は今背中越しに、
「私は施設の上から奴等を落とす。お前は味方の到着までここを守りきれ」
「オッケー!」
 ジャックは施設の中へ駆ける。
 同時に、イルミナスは身体の各部位からブースターを展開、襲いかかるオークへブーストダッシュ。
 紅い軌跡を描きながら、オークの懐に飛び込み、斬りかかるのだった。
 一度に、三匹のオークが倒れる。
 森から追ってきたオークの数は、まだ少ない。
 大部は、森のなかで戦闘を行っているのだろう。
 イルミナスの横を、今度は、続けて森を出てきたイレブン・オーヴィルとカッティ・スタードロップが走っていく。
「イルミナスさん! 無理はしないでね」
「すぐ、準備を整えてくる!」
 二人も、施設へ入っていく。

 ジャックの頬を、夏の宵風が撫でていく。
 真下では、次の襲撃に備えるイルミナス。
 数十メートルの平地を挟んだ黒い森では、かすかに、剣の音、銃声が、悲鳴が、上がっているのが聞こえる。
 どうした……何故、誰も出てこない。
 ……
 ……来た!
 ジャックらの出てきたのとは、幾分西よりヘ離れたところ、葉っぱを散らして、勢いよく飛び出してきた者。
 二人。
「一色か……!? クレーメック? ……違うな。私達の前に伏兵と鉢合わせた者達か」
 薄明かりに照らされる教導団の軍服……他にも包囲を抜けていた者がいたのだな!
「橘殿! 見えた、見ました、施設へ辿り着いたのです」
「そうか、やったな。キミと会ったおかげで、何とか! 木刀も、血のりで切れ味(?)が半減していた。」
「だからカルスノウトが〜〜……それより、まだオークを逃れてはいません! 我が銃も、ほとんど弾切れです、もう一息……」
 戦部は、施設の上に立つ影を見、その声を聞いた。
「仲間、のようだな。教導団のジャックだ! こっちへ。下にイルミナスがいる。他にまだ追いついてくる仲間がいるんだ!」
「おお!」
「我らも、ここで迎え撃ちます!」

 施設のなか。
 対オーク警備に就く常備員は、割合少数だった。
 酒を食らっていた施設の長が、部屋から出てくる。
「何やら騒々しいことだな。
 騎凛はこんな夜更けまでオーク狩りか。今日はどれだけ狩ったことか、オーク肉は酒のツマミにしても不味……な、何してる、おま!」
「あ、これもらっていくよ?」
 カッティが、大量の救命器具を持ち出しているところだった。

 一方、森のなかでは、ドラゴニュートのパルマローザ、数学教師の日紫喜が、火術で、オークを追い立てていた。
 オークにとっては、森を出てしまえば、不利になるし、奇襲もきかなくなる。
 しかしどのみち、伏兵はもう台無しにされていた。
 こうなれば、ここにいる人間どもを皆殺しだ!
 オーク達は、森の入口へ殺到した。
 そこへ、咄嗟の策を立て、潜んでいたクレーメックとリアトリスが、反対側から一色とミラが、オークに襲いかかる。逆に奇襲をかけられ、混乱するオークが、完全に士気を失った状態で森からめいめいに飛び出してくる。
 施設の前で、にわかに繰り広げられる一大攻防戦。
 が。ほぼ、勝敗は見えていた。
 そんななか、散り散りのオークにあって、ハンマーを持った一匹が、中心にいるクレーメックめがけて一直線に駆けていく。
「伏兵団の頭か? ミラ、そいつに気をつけるんだ」
 一色の呼びかけに応え、それへ立ち塞がったミラが、盾で一撃を受け流し、ランスで反撃を返す。打撃は、浅い。すぐに、一色が向かう。飛んで加勢に入った橘が次の一手を木刀でとめ、一色のランスが敵の体を貫いた。
 オークは最後の足掻きに、ハンマーをクレーメックに投げつける。回転しながら襲うハンマーが、クレーメックの脇を掠め飛んでいった。
「ならば、これでどうだ?」
 アサルトカービンが、オークの動きを完全に止めた。

「大佐ぁぁ!!」
「どうした?! オークどもが侵入したか」
「いえ、その、我々のこの地域は辺境に近く、ほとんどの軍事物資はヒラニプラ北部等に多くが流れ、つまり、非常に軍事物資には事欠いているのでありますが……」
「なんだ。言えー!!」
「その……一つしかないナパーム弾を、侵入……でなく、新入生と思われる者に、持ってゆかれた次第です、はい」
「そうか。……。……。戦勝祝いは、盛大にやらねばな。盛大に」
ドガーーーーーン!!
イレブンが施設に置いていた軍用バイクの後ろにカッティを乗せ、施設の前を疾走している。
「イレブン! 見てよ。オークの丸焼き」
「……」
「ナパームは格別だね。この匂いがたまらないッ」

逃げ散るオーク。他はほとんど焼死だ。
施設の外で、クレーメックらが勝ち鬨を上げるのをよそに、施設の中では、大佐らが密やかに泣いているのであった。



02 爆発!!

「ハア、ハア……」
 黒 金烏の体力は、すでに限界に近付いていた。彼は、パートナーの青が爆弾を作り続ける間ずっと、彼を、というよりは、爆弾が暴発したときのために皆を守るため、禁猟区を張り続けてきたのだ。
 殿の敵は討ち果たされ、皆は、策(これも青が進言した策なのだが……)に従い、防禦線をこしらえていた。
 真面目に働く者、真面目には働かない者……
 メンドクセェ……と言いつつも、真面目に働け! というルケト(今回キレっぱなしだが)に追われ、せっせと動くデゼル。
 ロブは葉巻を吸っている。
 風雪ちゃんは、老人くさいことを言いながらも、動きがいい。
 まあ皆(青(別の働き)を除いては)、働いてはいるのだけど。
 そのとき、遠く、浅森の方角から、かすかな、爆発音……
 それが目覚まし時計代わりでもあったかのうように、「ハッ」と、青が声を上げた。
「ほお、勇者様がやっと、こっちの世界にお戻りになったかな?」
 働かない男子生徒を鞭打っていた朝霧が言う。
「ぬぉわははははははは! そうだ、我輩は帰ってきたぞ!!」
「ハア、ハア……」
「うっ、黒 金烏おぬしどうした? 皆、どうした何が……」
 ガサッ
 茂みから、殿へ転がり込んでくる、黒衣の男。
「クロ!」
「匡、ああここだ! 戻ってきた」
 ガサッガサッ、立て続けに、舞い込んでくる。ガサガサッ、最後に、小さな男の子。ササッ「ここ、は……」
「殿だ。そして、戦場だ」
 防禦線に立ち、剣を抜き放つ岩造。
「早く、このなかへ……」
 フェイトが、男の子を引っぱり上げる。
 更に続けて、木々の合い間に赤々と光る目、オーク、オーク、オークの群れだ。
「青氏、青氏はいずこに!」
「青、おまえの出番だぜっ」
 再び「ハッ」とする青 野武。
「我輩の手にあるは、これ確かにナパーム弾!!
 ……皆、これ、もう使ってしまう? ということになるのだな??」
 皆、頷く。
 青は、惜しい。いかにも惜しい……というふうにナパーム弾を我が子の頭を撫でるようにするが、かっと目を見開くと、それを持って、敵へ突っ込んでいった。
「ぬぉわははははははは! 自爆は男のロマン……」
「そ、それは違……」
ドガーーーーーン!!