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オークスバレーの戦い

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オークスバレーの戦い

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<2>



 それぞれの砦では軍議が終了し、また、本陣からも、生徒らがそれぞれの探索に発った頃。
 すでに、河岸からボートを出し、対岸を目指す者があった。
 クルード・フォルスマイヤー(くるーど・ふぉるすまいやー)
 遭遇戦のときにも、他校生を中心とするベオウルフチームのフォワードとして、キングと剣を交わした。今回、南西分団はベオウルフ隊を呼ぶことはできなかったが、クルードはこの戦いを聞くや、更なる強敵を求め、この地を訪れていたのだ。
 戦いを前に、今はただボートを漕ぐクルード。
 そこにはもちろん、彼のパートナー、ユニ・ウェスペルタティア(ゆに・うぇすぺるたてぃあ)の姿もあった。
「クルードさん……」
 もし戦場でなければ、峡谷の綺麗な景色のなかに、ボートに乗る二人は恋人同士のようであったかも知れないが……
「……ユニ……援護は、頼むぞ……」
 対岸には、オークが待ち受けているのだ。危険な戦いとなるだろう。
 ボートは、砦の渡河点から幾分離れたところを、隠れるように、進んでいく……
 と、それより二、三十メートルほど離れたところだろうか。
 水面を進んでいく、船影、いや、馬、……オークの騎狼……?
 二人に緊張が走ったが、どうも、様子が違う。獣に乗っているのは人間の大人のようで、クルードらと同じく、対岸を目指して、進んでいる。

 何事かを、繰り返すようにつぶやいているのは、クルード達には聞こえなかった。

「オレはいつも迷惑ばかりかけていますからね……今回ぐらいはあいつ等の役に立ちたいんですよ」……


第3章 戦までの時

3‐01 騎狼

 狼……とは言っても、その大きさは虎、よりも一回り二回り大きく、その潰れた顔は、犬科というよりも、豚の類を思わせた。
 ハイエナのように、首(こうべ)を垂れてとろとろ歩き回り、ジュルジュルと、涎をたらすかのような唸り声をもらし、ときどき、ガチ、ガチ、と牙を鳴らしてみせるのだった。
 オークの乗り物に相応しい、醜悪な獣だった。
 メイベルは、餌付けできないかと、干し肉を投げてみた。
 ギ! ギ!! と、それまでとろとろうろいついていた騎狼がもの凄い速度で、それにたかって、齧りつく。あっという間にたいらげてしまい、こちらを見たが、まためいめいがとろとろと柵のなかを歩き出すのだった。常に甲冑を着けているのが騎狼と呼ばれる所以だが、動きは、それでも恐ろしく俊敏である。
 ……
 これを前に、騎狼部隊を夢見る生徒らは早ひるむ様子を見せたが……
「わーい♪ おっきなわんことキャッキャウフフした〜い」
 一条アリーセが、騎狼の柵のなかへ、まっさきに飛び込んでいった。
「おい、ちょっ……マジか、アリーセ。ちょっとキャラかわってるし、それにあぶな……」久我がとめようとするが、
「おいで。さあ」
 騎狼のあたまをなでなでするアリーセ。
 ブッーと、威嚇するような騎狼。
「(フフフ こわくない、こわくない……)」
 騎狼は目を閉じておとなしくするかに見えたが、とつぜん、
「ギ!!」アリーセの手に、噛み付く。
「! アリーセっ……」
「……だいじょうぶ。(ホラ こわくない)」
 騎狼は、牙を抜き、低い姿勢になり、ジュルジュル、と血の着いた腕をなめた。
「ねっ……(おびえていたんだね でももうだいじょうぶよ)
 ユパさまおねがいこの子わたしに(略)」
「あっ、ああ……(ユパじゃないけど。でも、アリーセ、ちょっと血が出過ぎ)」
 そのとなりでは、カッティ・スタードロップも率先し、騎狼の群れと戯れている。
「友達にならなきゃ! ほ〜ら。心がきれいなあたしなら、狼の口に頭を入れてもだいじょうぶ!」
 イレブンはとめようと思ったが、案の定
「ギ!!」騎狼が、カッティの頭に、噛み付く。
「……だいじょうぶ……じゃないっ どっちがボスなのか犬っころに理解させなきゃならないよね! 愛の棍棒だ!」
 イレブンは、とめられなかった。
 ルケトも出てきて、「よーしよし、今日はよろしく頼むな」騎狼の頭をなでなでにかかる。「デゼルどうした、来ないのか? 騎狼に乗るんだよな」
 デゼルはまだ柵の外で、壁にもたれかかって見ていた。「……メ、メンドクセェだけだよ」
 そこへ、シャンバラ人の壮年男性がやって来た。
「不思議な力だ……人にはなれぬ騎狼を……」
「まあ、あいつは機晶姫だけど」
 アリーセは、これから騎狼部隊(まだ仮)と戦をともにすることになるだろう、騎狼たちを集め、十分なブラッシングで毛のもつれをほぐす。「グスタフ、お願い。お湯を持ってきて」「あ? ああ……」それが終わると、ぬるめのお湯で、全身を優しく濡らし、「顔には直接かけずに、手のひらで、やさしく、やさしくね。あ、グスタフ。シャンプーも、お願いね」「ああ? あ〜……(何なんだ、俺は〜)」「シャンプーする間も、コミュニケーションを忘れちゃだめよ。リラックス、リラックス♪」騎狼たちは、くるくるとアリーセになつきつつあった。「わんこちゃんがストレスを感じすぎない程度に、ね。グスタフ、次は、バスタオルをお願いしますね」「よ〜し、ここからは俺、久我 グスタフが説明しちゃうぞ♪ バスタオルで丁寧にふき取り」「ガルルル」「あっ、痛。顔にあてないように、ドライヤーで」「ガルルル、ガブ、ガブ」「ドライヤーで……コラっ、貴様、くっ……ドライヤーで、乾燥な♪(泣)」
 これにつられて、葉月やミーナ、メイベル、セシリアら女性陣は、キャッキャと騎狼とじゃれ合い始めた。
「あ、アリシア殿まで。ロブ君、いいのか……」
「アリシアはヴァルキリーだし騎狼に乗って戦うのもありかもな。俺は歩兵だし、たぶん騎狼には乗らないから。それより、イレブンはいいのか? 騎狼部隊を設立するんじゃ……」
「そうだな、もう少ししたら、行こうと思う」
「はっはは。あのような姿形をしていますが、本来は犬科の生きもの。慣れれば、主人には従順なものですよ」
「ところで、そう言うあんたは誰だ?」
 デゼルは、柵にもたれかかって一条たちの騎狼とじゃれ合う姿を見ている、シャンバラ人に話しかけた。
「失礼。わたしは、オークに支配されていた付近の集落の者で、ユハラと申す者。シャンバラ教導団がオーク達を追い払い、この峡谷を助けてくださると聞き、土地に詳しいわたしがパルボン閣下に迎えられたというわけです。
 騎狼は、今でこそ忌まわしいオークの乗り物となりさがっておりますが、本来は、峠に住み着く、高潔な獣であり、オークに略奪される以前は、わたし達シャンバラ人と仲よくしていたものです。あの娘達のようにね……」
 副官の、アンテロウプがつかつかとやって来た。
「よう貴様ら。いやしい獣は乗りこなせるようになったか。せいぜい振り落とされて、食われぬようにすることだな。さあ、出撃の準備を致せ。オーク騎狼兵の姿が、対岸に見えたぞ」





「ユハラ殿? 何か、気になることでも」
「いや、確か十九匹いた筈なのですが……一匹足りないようでして」



3‐02 船出

「ぬぉわはははははは!」





 さて、遡ること、二週間ほど前になるだろうか。
 オークの森での遭遇戦の後、クレーメック・ジーベックは、教導団学生寮の近くにある、青 野武(せい・やぶ)の庵を訪れていた。
 遭遇戦においても、殿軍において作戦を指示し、指示したあとは彼にしか成し得ない、まさに独自の爆弾製作を行った、異彩を放つ人物だ。
 青は、【ノイエ・シュテルン】の立ち上げにあたって、彼が是非とも迎えたかった人材の一人だった。
 青は、クレーメックの三顧の礼を受け、今日、【ノイエ・シュテルン】の一員として、この戦いに参加することになったのだ!





 二乃砦の渡河点では、工兵科所属、青 野部の指導のもと、"火船"を造るための、船体改造、着火物の作成が進められていた。
 一色、ミラ、皇甫、うんちょう、黒がそれぞれの乗り込むことになる船で、働いている。
「ぬぉわははは、まずは取り外し可能な仮甲板、それに帆柱・帆・艪・舵を取付ぃ!
 船底には、風向急変対応の為、ヨット式に板を取付ぃぃ、更ぁぁに! 操船者防御用の簡易防盾を取付……
 着火剤にはよ〜〜く油分を浸透させてね♪
 がっ、はぁぁぁぁ……油分揮発防止と敵火矢対策のため、着火剤は天幕用難燃シートで覆うぅぅぅ!!
 船体バランスに留意よね♪」
「……青さん、はりきっていらっしゃいますね」
 ちょっと苦笑しながら、ミラ。
「そうだな。目が違うよな」
 一色はまじめに感心している(のか?)。
「お口の開き具合も、Goodですぅ〜」
 きゃらきゃらとはしゃぐ皇甫。
「普段からあれだと、ちょっとこわいでござる」
 船体に隠れるようにして、うんちょう。
「……いや、野武さんはいつもあんな感じでありま」
「こーらこらこらぁ、そこぉぉぉ、さぼってぬゎいでぇ、はたらくのだぬぉわはははははは!!」
 ……
 曇り空が広がり、対岸の砦は小さく、かすんで、河水に浮かんでいるのが見える。
 他方、ノイエ・シュテルンの寡黙な士官マーゼンは、砦の尖塔より、その様子をじっくりと観察していた。その目は、常に、冷徹だ。
「……アム」
 傍らに侍るのは、どこか儚げな面影の吸血鬼、アム・ブランド(あむ・ぶらんど)
「行くぞ」
「……」
 無言で、静かに頷くアム。
 マーゼンは、砦の構造を観察し、効果的に火災を発生させるための突入箇所、敵兵の出現地点などを的確に押さえた。アムは、風向きや水流の方向を探知し、これらを踏まえ、軍議室のロンデハイネ、クレーメック、香取らに再度合流し、戦略を更に練り進めた。
 と、にわかに砦の外が騒がしくなった。
「やはりか……」
 砦に攻め込んだボートがオークに多量の矢を射かけられ戻ってきたのだった。
 見向きもせず、わかっていたこと、と言わんばかりに、マーゼンは無言でそこにいた。

 砦の外では、ハインリヒ、ケーニッヒ、昴らが、ロンデハイネ旗下の兵らと共に、出撃の準備をしていた。
 ゾルバルゲラ隊の失敗を目の当たりに、昴は少し、緊張の面持ちでいる。
「うまく、近づけるのでありましょうか」
「まあ、作戦の方は、クレーメック殿に任せるでございます」
 ハインリヒ。いい加減に言い放ったように見えるが、そこには仲間への信頼が窺える。「わたくし達は、それをスムーズに完了させるのが務め」
「その通り……我はただ、目の前の敵を斬るのみ!」
 ケーニッヒは、ブン、ブン、と剣を振るう。
「おう兄貴。血が騒ぐな」
 ケーニッヒと義兄弟の契りを交わした、アングロ・ザルーガ。自慢のドラゴンアーツで暴れるときを待っている。

 昴は、銃を手に、出陣までのとき、河沿いを少し歩いた。
 河べりの一角では、ハインリヒのパートナー、魔女のクリストバル ヴァリア(くりすとばる・う゛ぁりあ)が、同行する魔法使い達に、魔女のスープ(ギャザリング・へクス)を振る舞っていた。
「皆、それぞれに、自分の誇りとする武器を、持っている……」
 カチャッ、と銃を構えて見せ、
「僕も、自分の立ち位置は、自分で獲得したいな!」
「主(あるじ)」
「ラ、ライラ」
 後ろに、ライラプスの姿があった。
「そろそろ、出撃のときです」
「……よし!」昴は、力がわき上がってくるのを感じた。





「さあ! 今こそ、我等が【ノイエ・シュテルン】の船出だ!」



3‐03 前哨戦

佐野 亮司(さの・りょうじ)が支給するカロリーメイトの量が少なすぎるのでやる気が出ない。こうなったら、妄想して寝るしか。……





 どーん。どどーん。
 対岸から、オークの投石が始まり、こちらまで届くことはないが、オーク陣営構築中の渡河を牽制しているようだ。
「ちいっ。やはり、どのみちここからの渡河は無理か」
「レーヂエ隊長。さっさと……いえ、そろそろ、ご出発なさってはいかがです?」
 レーヂエの隣には、長橋ルートの監視を担当する、シルヴァ。
「あっ。貴様、今、俺を邪魔だと思ったな。この野郎〜〜余裕の表情しやがって、許さぬぞ〜〜」
「え、そんなまさか。あ、はい。ごめんなさい」
「……。
 とにかく、貴様はしっかりと、ここを死守しろよ。もし砦を落されたら、責任者として、貴様がパラ実送りだ」
「え〜そんな(あり得ないけど♪)」
「わかったら、とっとと砦に入って守ってろ。レオンは何処へ行きおった?」
「レオンは一ノ瀬のお守りです。って僕が砦を守るんですか……??」





 長橋のたもとでは、レーヂエ兵と共に、防壁として土嚢を積み上げる月島。月島と一緒で、兵達の動きもいい気がする。
「しかし、対岸で出撃準備をしているオークが厄介だな。こちらの防備が未だ万全でない。今、突っ込まれたら被害が大きいぞ」
 霧島のぼやきを聞いて、
「確かに。あの出鼻は挫いておきたいな」
「レーヂエ部隊長。まだいたのか」
「……。
 とにかく、あれに一撃を加えておくというのもいいな」
「ほう。なるほど」
 前線で戦えないことがちょっと不満な霧島は、それを聞いてかすかに笑みをうかべた。
「今回俺の砦に配属されたなかで、新たに士官候補生となった剣士が一名いる」
「ほう」
御鏡 焔(みかがみ・ほむら)
「ええ、マジですか……俺が?」
 短く切った髪を赤く染めた、どことなく不良っぽい生徒だった。
「貴様は何故、我が隊に参加した」
「ふらふらとさまよってて……自分の名前以外は覚えてないからわからない」
「……よし、その心意気や良し。
 今よりレーヂエセイバーの一隊を率い、長橋を渡ってあれにいるオークを攻撃してくれまいかな。ヒット&アウェイで戻ってくるんだ!」
「俺は、慎重に攻める策をオススメします」
「突撃〜〜!!」
「わっ」
 御鏡 焔を先頭に、レーヂエセイバー※の群れは怒涛のごとく長橋を駆け出した。(※レーヂエ隊の主力となるセイバーどもの俗称。皆、どことなくレーヂエに似ている。)
「月島。ここはまかせた。ひとっ走りしてくる」
「……あ。霧島」





 レーヂエに、無理やり砦に入らされたシルヴァ。
「おーいい眺め♪
 あれ? 長橋から一隊が突っ込んでいくではないですか。ま、誰が渡っても止めないけど。ん? いちばん後ろにいるのは、霧島??

 ……お。あれは。ボートの整備をしているレオンと一ノ瀬を発見しました。
 他に人が、とくにイリーナが、いないのをいいことに、いちゃついてたりして」





「働け馬鹿者! 寝るな! 動け! 敵は直ぐ其処に居るんだぞ!!」
 河辺では、ボートの整備をする、……している筈の、レオンと、一ノ瀬。
 げし げし げしっ
 レオンの蹴りを食らいながらも、(ちょっとうれしそうに)まどろんでいる一ノ瀬。

 ――あー……いい気持ちね。
 隣にはイケメン男性。私たちは今ラブラブ。
 この日をどんなに持ち望んだことか。
 ……って、え。よく見たらこいつオークじゃないの。死ねよ(銃殺)。
 で、今日はオーク退治なのね。めんどくさいわね。サボりたいわ。ダメとかいわれるけど。
 とりあえず物資の確認を頼まれたからやっておくわ。
 カロリーメイトを3ダースくらい隠し持ったけどいいわよね。《全採用》


「うっ、い、一ノ瀬……」
 うずくまるレオンをよそに、まだ一ノ瀬は夢の中だ。
 レオンは、「死ねよ(銃殺)」のところで、一ノ瀬に打たれた(一応Not撃たれた)のだった。
「リ、リズリット、た、たすけ……」

 ――なんかいきなり月実がトリップしてて困るんだけど。
 あんた今日は部隊の一員で動くんだからしっかりしなさいよ! このバカ月実!
 って、3ダースも盗ったらばれるじゃないの! 何考えてるのよあんた!!
 あと私の分もちゃんと寄越すんだよ!
 (一部略)
 今戦闘中なのよ! 戦う時間なのよ! って寝るなー!
 夢オチじゃないから! ほんとに戦ってるんだからー!
 このバカッ!バカ月実!!いいから起きろー!
 もう、誰かこれ持っていって……(半泣き 《ほぼ採用一部抄》

 頼みのパートナー、リズリット・モルゲンシュタイン(りずりっと・もるげんしゅたいん)も、夢の中で一ノ瀬と戦っているのだった。
「うっ、む無念……がくっ」
 レオンはやぶれた。





 敵陣が、近付いてくる……
 が、長い。
 この橋は、どれだけ長いのだろう。そう思わせる。
 なんだか、この間にも、なくした記憶が、甦ってきそうな、気がする……
 と、思ったら、もうオークの顔が目と鼻の先に…… !!
 長橋にあふれ出んとしていた、オークの突撃部隊に、先制して突っ込んだ、レーヂエセイバー、それを率いる(率いさせられる)御鏡 焔。
 剣を振るう。
 盾で受け止めるオーク。
 もう、一撃だ。
 後ろから殺到したレーヂエセイバー(なんなんだろうこの人達……)らが、いっせいに切り込んでいく。「ヒット&アウェイ!」「ヒット&アウェイ!」
 オークスバレーの、前哨戦だ。
 にわかに、混戦状態になる、オーク陣営の一端。
 橋上なので、オーク兵も一気に攻め込んでくることはできない。
 三匹目、四匹……! 切り倒した。
「くっ」
 オークの切っ先が顔をかすめる。
 そろそろ、退きどきか!
「アウェイ!」「アウェイ!」「アウェイ!」
 一気に逃げ去るレーヂエセイバー達。
「……」
 今度は、御鏡が殿(しんがり)になった。
 追ってくるオーク達。
 逃げていくレーヂエセイバーをかき分けて、ひとり逆走してくる者が……
 アサルトカービンを手にしている、ソルジャーだ。
 スプレーショット。ばら撒かれる銃弾。
 シャープシューターの技術で、悉く命中。よろめくオーク達、「ヒャババババ」
「まるでヨチヨチ歩きだ」
 ははは、と笑う、霧島 玖朔。
「さてこれで十分だな」
「おう!」
 オークが兵を収拾している。攻撃は成功した。
 駆け去るレーヂエセイバーの群れは、もうもと来た河岸へと消えていくところだった。





 砦の玉座についてみる、シルヴァ。
「あれ♪ これ、いいかも。
 あ〜でも何かすぐ落ち着かなくなってきました。レオン〜〜」





「ん、良くやった。偉いぞ」
「えへ♪」
 きっちり仕事をこなす一ノ瀬の頭をなでなでするレオン。可愛く微笑む一ノ瀬。もちろん二人とも、夢の中で。