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狙われた学園~シャンバラ教導団編~1話/全2話

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狙われた学園~シャンバラ教導団編~1話/全2話

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 伊織は森の奥までくると、服を着替え始める。その胸元には入れ墨が確かに入っていた。
「あの〜」
 急に背後から声がして、伊織は飛び上がらんばかりに驚いた。そこには細身の男が立っている。
「君、相良 伊織君…って言うんダネ?」
「そ、そうですが」
 森の暗がりのせいでその男の顔がよく見えない。殺気のようなものは感じられない分、とても不気味だった。
「君は、グェイ・ダー・ダオ・フゥイかい?」
「グェイ・ダー・ダオ・フゥイ?」
「…知らないようだ、それでは私のお仲間ではないようですネ!」
 急にその男が剣を取り出し、伊織に襲いかかろうとする。
 その瞬間、銃の音が森に響き渡り、悲鳴がした。
「うわあ!」
 閃崎 静麻(せんざき・しずま)が狙撃ライフルを構え、シャープシューターで男の足元を射貫いたのだ。悲鳴は男のものだった。
「かすり傷程度だ。それほど大げさな声をあげるもんじゃないぜ。大丈夫か、そこの教導団の生徒さん」
「ありがとうございます、相良 伊織です」
 伊織はさっと上着を羽織る。静麻のパートナー、レイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)がその美しい髪をたなびかせ、男に隙を与えず、ロープで拘束した。レイナは静麻と共に身を隠し、双眼鏡を用いてずっと監視をしていたのだ。
「不穏分子、確保しました!」
「伊織!」
 グランが駆け寄ってくる。
「何があった」
 すでに森の付近で様子を伺っていた北都やクナイ、他の生徒たちも集まってきた。
「ふう。僕のニセの入れ墨に引っかかったんです、この男」
 伊織はニコっと笑うとぐっと自分の手のひらで肌を拭うと、入れ墨がよれていびつな形になる。
「ペイント!?」
「グランにも協力して貰って、不穏分子のふりをしたのですが、あっさりと引っかかってくれましたよ」
「では、あのだて眼鏡とサングラスは…、ははーん、そういうことですか」
 クナイが伊織をじろじろ見つめて、にやっと笑う。
「な、なんですか、童顔でチビって言いたいのですか!」
 伊織は結局、全部自分でバラしてしまう。
 静麻は拘束した男の首や胸元をチェックする。
「あったぜ」
 そこには象形文字のマークの入れ墨が入ってた。


 昴 コウジ(すばる・こうじ)は不穏分子による被害が出ていないか、確認していた。幾人かの生徒が被害を受けており、それを聞き取りするのはコウジにとって重要な役割だったが、気が重い。コウジは非情に徹しきれない男だった。
「調査をされる事自体は不穏分子も予想済みのはず。しかし、ダミーの三人組はすでに拘束されている。だが、それでも被害が増えている。どういうことなのだ?」
 そこでコウジは聞き取りの中から、一つの結論を導き出す。
「これは人間の仕業ではないようだ。機械が走行した後がある。プログラミングされている機械が、走行して無差別に生徒を襲っているのだろう…それにこの走行跡。見覚えがある」
 コウジは意を決して立ちあがり、次に被害が出るであろう場所に趣くことにした。そこにはすでに、フラッグ争奪を目指している連中たちが続々と集まろうとしている。

 同様に、ガートルードとシルヴェスターも、コウジと同じ場所へ向かっていた。
「あがぁなもんが暴走したら、わやなことになってまう!」
 シルヴェスターは呟いた。


第5章 

 草原を越えた先にある、森の奥の滝。
 そこに続々と生徒たちが集まりつつあった。
「あんなところにフラッグ!?」
 イタリア出身の戦車マニア、アクィラ・グラッツィアーニ(あくぃら・ぐらっつぃあーに)が目を丸くする。
 それほど高くはないが、それでも水のカーテンを織りなしている滝上にフラッグが設置されてあるのを見上げているのだ。
「たぶん、岸と岸にロープを渡して、フラッグを立てているのですぅ」
 クリスティーナ・カンパニーレ(くりすてぃーな・かんぱにーれ)が呟く。
「先輩たちに聞いてみようかな…」
 アクィラが無線で【新星】の先輩に連絡を取ろうとするが、何かの妨害電波が出ているのか、通じない。
「仕方ない、上をめざすよ、クリス。横の道から滝の上に上って行こう」
「了解ですぅ」

 比島 真紀(ひしま・まき)はひたすら、フラッグを目指していた。
空気を読んでいるのか読んでいないのか、それすら頭に無い状態でひたすら突き進むことに邁進していた。
ワームもゴブリンも、真紀の敵ではなかった。
「訓練さえはやく終了すれば、こんなシナリオ…いや、不穏分子たちの行動には意味がなくなるはずであります! ガッツであります! 自分を妨害する奴は許せません! ワームもゴブリンもボコボコにしてやりました! 不穏分子もボコボコにしてやります!! …しかし、高所恐怖症の自分にとってフラッグが滝上などと言うのは、げせない話であります!!!」

 ウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)もフラッグを目指して突き進んでいた。
「さがしものはフラッグですかーみつからないよなものですかー♪ ってあんなところにあるんですか! ここは空飛ぶ箒で上まで楽をさせて貰います」
 ひゅっと箒に飛び乗ると、ウィルネストはまた、鼻歌を歌いながら滝へと昇っていく。