リアクション
第十章
■ゴアドー島、神殿中枢部
「星の力がゴアドーを完全侵食――ゴアドー、消滅しますわ!」
モニターを覗いていたマネットが言う。
九弓は、はふっと息を吐きながら天井を仰ぎ見て、わずかに目を細めた。
「見なさい……あんたが苦しみながら願った、巫女が解放される瞬間よ」
■空京
「ゴアちゃん……」
筐子はゴアドーと怪人達の消え去った荒野を見詰めていた。
流れる涙が大地を渡った風に散らされていく。
ふと、ゴアドーが地面に刻んだ足跡に、小さな小猿の姿を見つける。
というか、小猿の人形だったが。
ともかく。
その小猿を段ボール箱に入れて、筐子は夕暮れに赤く染まる荒野の彼方へと立ち去っていく。
そういう画を撮りながら――
「こうしてゴアドーの脅威は、空京に集った勇者達の活躍によって退ける事が出来た――」
アイリスは何やらナレーション風の語りで締めくくろうとしていた。
「しかし、第2、第3のゴアドーが現れないとは誰にも言えないだろう。
自然の驚異なのか、はたまた人類の凶行なのだろうか……」
「あれに似たような事を……」
アイリスを少し離れた所で眺めていたアメリアが、ほつりと零す。
「言おうか言わまいか迷ってたのよね」
それを聞いて、芳樹はどういう反応を返していいやらと目を泳がせた。
◇
芳樹達の向こうの荒野で。
「あの、私、頑張りました」
そう言ったロザリンドの期待の眼差しが、エメネアを見詰めていた。
その期待の眼差しの意味が分から無かったが、エメネアは何か妙にドキドキとしつつ、片方の目で見返していた。
もう一方の目は薄く閉じている。
まだ光に溶けてしまったままだとかで、瞼の隙間からはひょろひょろと光が零れていた。
そして、その胸元に抱えられていたのは星槍の残骸。
随分と無理な使い方をしてしまったから、ゴアドーを消滅させた時、それは柄を残して壊れてしまったのだ。
ともあれ。
ロザリンドが、じぃっとエメネアの口元に期待の眼差しを向け続けている。
と――。
「チューをゲットぉぉぉぉーっ!」
「ふぃええええ!?」
ずっばーん、と現れたロザリィヌに目を白黒とさせるエメネアへ、ずずいっとロザリィヌが詰め寄る。
「おーほっほっほ! 『星槍を持った人』を運んだわたくしは、すなわち『星槍を届けた人』ですわっ! 当然、チューの権利が発生してましてよ!」
「ちょっと待ってくださいぃ」
メイベルとライトが、ずずいっと割り込む。
「メイベルちゃんが力の欠片を打ち込んだ分で、エメネアのチューは無効だよ!」
「え、でも、私も力の欠片、打ち込みました」
はい、はい、とロザリンドが挙手しながら言って、メイベルがぶんぶんと首を振った。
「だーめーですぅ、乙女のチューはなによりも重いのですぅ」
「分かりましたわ」
ぽむ、とロザリィヌが手を打ち合わせ。
「幸い、此処にいるのは女性同士……五人でちゅーしあえば良いのですわっ! おーほっほっほ!!」
「なにも分かってないのですぅーー!」
エメネアを囲んだ喧騒の端で。
「貰いに行かないんですか? その、報酬を……」
陽太が言った。
「すこぶる入りにくい――いや、まあどうせ頬にする程度で考えていたからなぁ」
隆光の言葉に、陽太が軽く首を傾げて隆光を見やる。
隆光はそちらの方を見やってから軽く笑い。
「チューってのは、本当に好きな奴とするもんだ。おじさんとするもんじゃないさ」
「あの、隆光さん、若いですよね……?」
言った陽太の方へと、隆光が片目を瞑る。
「ありがとよ」
「……でも、頑張ったのに」
「そうさなぁ……本当に好きな人が出来た時は、おじさんを呼んでくれとでも頼んでおくか。それが一番の恩返しだってな」
その向こうで。
「エ、エメネアちゅわーん……ちゅー……」
結局エルは、満身創痍で包帯まみれのまま動けずに居た。
ホワイトが溜め息を零しつつ、
「ほんと……懲りないですね」
どこか幸せそうに、それを介抱していた。
◇
「『力は統制・指向して用いられるべき』というのが僕の持論です――」
昴が言う。
目の前には、激化した女同士のちゅー論争から転がり出てしまったエメネアが居た。
「パラ実や寺院のような混沌勢力は好悪で言えば嫌いでは無いが、彼らがパラミタの力を支配するべきでは無い……と考えます。また、これは力その物を否定するものではありません――つまり、星槍のごとき貴重な事物は、我ら教導団が管理運営してこそパラミタの為になる物と思っているのです……が」
昴は、す、とエメネアの持つ星槍の残骸を指差しながら続けた。
「壊れちゃいましたね」
「……はいぃ、ごめんなさいぃー!」
ひーん、と謝るエメネアを、ダリルが静かに見下ろし、言う。
「もし……その星槍が修復されるようであれば、どうか我々に託してくれないか。信じて預けて欲しい。今、この地の安寧には力が必要なのだ」
エメネアは壊れた星槍を抱き、少し俯いて考えるような間を取ってから、ダリルへと改めて顔を上げた。
「私は、星槍の巫女で……ゴアドーが消滅した今も、それは変わりません。女王に力を託された者として、その力を預けるのならば、その行く末を慎重に見据える必要がある」
そこで、てふりっと溜め息を付いて、「星槍が修繕出来るかは分からないですがぁ……」と零してから。
「ともかく、そのぉ……時間を、くださいぃ」
言って、エメネアは夕日に赤く染まる荒野へと顔を向けた。
「なにせ、あの……わたし、ようやく……『バーゲン』と『友達』を知ったばかりで――」
エメネアの視線の先には、ゴアドーや怪人達と戦った生徒達。
それからテーマパーク方面から向かってくる生徒達が居た。
この度は期日通りの納品を行えず、
皆様にご迷惑をお掛け致しまい誠に申し訳ございませんでした。
〜〜〜
改めまして。
シナリオへの御参加有り難う御座います!
アクション作成お疲れ様でした!
エメネアに関して。
一応、仕掛けはバラ撒いてみたものの、
拾う人や繋げる人はあんまり居ないだろうなぁと思っていたら――。
判定とか諸々、ギリギリな所もありましたが、
こういう結果を導いて頂けて、とても嬉し楽しかったです。
ちなみに。
星槍無しで封印の場合や
星槍はあるが印が足りないままタイムアウトという場合は
『エメネア光になってゴアドーを永久封印』となる予定でした。
それから。
アクション内にMS宛ての感想等をくださった方、有り難う御座いました!
喜び踊りながら読ませて頂きました。
個別返信は出来ないので、此処でお礼を述べさせて頂きます。
本当に有り難う御座いました!!
(※感想の有無などによって判定・描写優先度に、有利不利が生じる事は絶対にありませんので御安心ください)
なにはともあれ、
お付き合いくださり有り難う御座いました。