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真女の子伝説

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真女の子伝説

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2.校門
 
 
 桐生円たちと高務野々は、百合園女学院の表門の所へと移動してきた。この付近で、網を張って待ちかまえるつもりのようだ。
 表門の所では、ミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が、パートナーのカカオ・カフェイン(かかお・かふぇいん)を肩に乗せたまま、バリケードを作り終わったところであった。
「これで完璧なのかにゃ」
 小型の猫又ゆる族のカカオ・カフェインが、ミューレリア・ラングウェイに訊ねた。
「まだまだだぜ。落とし穴とか掘って、絶対百合園女学院の中に変な物を持ち込ませたりさせねえぜ。そっち、光学迷彩用の罠は任せたぞ」
 答えながら、ミューレリア・ラングウェイは、石灰を撒き散らしているセシリア・ライト(せしりあ・らいと)に声をかけた。
「任せといてよね。フィリッパちゃん、これでいい?」
 元気よく答えてから、セシリア・ライトはメイベル・ポーターの所から戻ってきたフィリッパ・アヴェーヌに聞いた。
「ええ、これでいいですわ」
 こうして石灰を巻いておけば、光学迷彩で姿を隠した物が近づいても足跡が残るはずだった。
「夏合宿のときに、変な光だと思ってたんだよね。きっと変なアイテムに違いないんだから、絶対にここで防ぐんだもん」
 石灰だらけになった手をパンパンとはたきながら、セシリア・ライトが言った。
「これだけ守りを固めれば、静香さまも安心だね。絶対に、ボクが守ってみせるんだ」
 真口 悠希(まぐち・ゆき)が、ガッチリと閉鎖された校門を見ながら、満足そうに言った。
「それで、真珠を見つけたらどうするの?」
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)が訊ねた。
「もち、問答無用で粉々にするんだよ」
 きっぱりと真口悠希が答えた。
「えー、少し乱暴だよね。ちゃんと話をすれば分かってくれると思うんだもん」
 複雑な表情で、七瀬歩が言った。
「呪いのアイテムなんだぜ」
「うーん、確かに、ヴァイシャリーの町から、いつかあたしの所にやってきてくれるはずの王子様が全部いなくなっちゃったら困るよね。とにかく、真珠を拾ったら、湖に投げ返して沈めちゃおう!」
 バリケードの前で、七瀬歩はそう答えた。
「みんな、準備は万端のようだな。花梨、そちらも準備はできたのか」
 校門わきの樹木にもたれかかりながら、和服姿の十六夜 朔夜(いざよい・さくや)はパートナーに訊ねた。
「にゃ〜。大丈夫ですよ」
 猫じゃらしを振り回しながら、小鳥遊 花梨(たかなし・かりん)が答えた。ふんだんにフリルのついた和装アレンジの服で、猫たちと戯れている。
「ねこさん、ねこさん♪ ねこねこロックンロール!」
 猫まみれになりながら、小鳥遊花梨は実に楽しそうだ。猫召喚士と自称しているほどに、猫を集める才には長けている。
「やれやれ。まあ、とにかく、百合園女学院の平和は守らねばなるまい」
 そう言いながら、十六夜朔夜は、近くで不審な動きをしているイルミンスール魔法学校の生徒の方に注意をむけた。
「いいかい、ここで僕が行き倒れのふりをして倒れているから。真珠を持った奴が近づいてきて興味を持ったら、すかさずヴィーレが攻撃。いいね。敵が反撃してきたら、その隙を突いて僕が真珠を取っちゃうから」
 トーヤ・シルバーリーフ(とーや・しるばーりーふ)は、得意げにヴィーレ・ステラマリス(う゛ぃーれ・すてらまりす)に作戦を説明していた。
「はいはい。分かったから、少しじっとしていてね」
 お化粧セットで、トーヤ・シルバーリーフの顔に青痣などのメイクをしながら、ヴィーレ・ステラマリスはお母さんのような口調で言った。すでにバタンキューしているように見せかけるためのメイクだが、ちょっとやりすぎのような気もする。それでも、トーヤ・シルバーリーフに頼まれたら、嫌とは言えないヴィーレ・ステラマリスであった。
「それで、トーヤちゃんは、本当に女の子になりたいの?」
「うん。だって、もともと女の子顔だもん。それに、男のこの間だといじめられるし。女の子の中だったら、きっと僕も表舞台に立てると思うんだ。だから、静香校長に百合園女学院に入れてくださいって頼むんだもん」
 戸惑いがちに訊ねるヴィーレ・ステラマリスに、トーヤ・シルバーリーフは信念を持って答えた。
「しかたないわね。トーヤちゃんを、立派な女の子に育てるのも、面白いかもしれないものね……」
 ちょっと溜め息混じりに、ヴィーレ・ステラマリスはそう言った。