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【2019修学旅行】舞妓姿で京都を学ぶ

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【2019修学旅行】舞妓姿で京都を学ぶ

リアクション

「記念写真を撮りませんか」
 黒子に徹してると思われた車夫が声をかけた。
「私、静香校長の隣、いいですか」
 アピスが静香の隣にちゃっかり並ぶ。
「静香さんと一緒だといいなって思ってたんです。お茶にしてよかったわ!」
 エレンディラも静香の隣が良かった。
 どうしようか迷っていると、静香を支えていた小夜子が、エレンディラに微笑みかける。
「こちらにどうぞ。かわりますわ」
 エレンディラに静香の体をあずける小夜子。
「ごめん、小夜子さんだって静香さんのいいよね」
 葵が困ったように、みんなの顔を見ている。
「順番を変えて何枚か取りましょう」
 車夫が気を利かせて声をかけた。
 繭と亜璃珠は隣に。
 エレトリカは、モデルばりのポーズを決めている。
 アーチ橋を背景に全員で記念写真を撮る。


 その後、一同は通りをそぞろ歩きして、ちいさな寺院の門をくぐる。
 狭い路地を歩き、小さな扉をくぐると茶席が現われる。
「ふーっ」
 静香が大きく安堵のため息をつく。おぼこ(靴)が脱げて嬉しいのだ。

 亜璃珠もホッとしている。
「私の知っている流派のようだし、先に行きます」

 さて、とにかく茶席では正座をする必要がある。
「あの、その・・・すみません亜璃珠さん」
 繭がおどおど口を開く。
「正座が出来ません」
 まともに正座ができるのは、茶道の心得のある亜璃珠と葵、それに万事をそつなくこなす小夜子ぐらいである。
「まさか座り方から指南するとは」
 亜璃珠は着物が開かないよう、膝を折る方法からみなに教えている。
 小夜子は、頭の重さにふらふらする静香を座らせるのに必死だ。
 なんとか全員が座ったとき、お茶を入れる亭主が出てきた。
 ものすごい老婆だ。一見して、それなりの修行を積んだ人物とわかるオーラを出している。
「楽にしておくんなはれ。作法やらなんやら気にへんといておぶを楽しんでおくんなはれ」
 優しい言葉とは裏腹に、真剣な面持ちで亭主のお点前は続く。

 それぞれの前にお菓子が置かれる。
 作法を気にするなといわれても、そんな雰囲気ではない。
 膝を崩すものも、私語するものもいない。
 そろそろ限界が来ているものもいる。

 最初に座った亜璃珠の前には、茶碗が差し出される。作法通り優雅にのむ亜璃珠。
 次は隣に座っている繭だ。
 繭はお茶菓子と格闘している。
 繊細なつくりの栗のお菓子をどうやっても小さく割れないのだ。
「大丈夫よ」
 亜璃珠がそっと繭に手を重ね、菓子を小さくする。
 お茶碗が繭の前に差し出される。
 亜璃珠は繭の耳元で作法を呟く。

 次に座った葵は、小笠原家茶道古流を習得している。
 モミジをかたどった色鮮やかな生菓子を作法どおりに食べている。
「分からない所は教えてくださいね、葵ちゃん」
「エレン、分からないことがあったらなんでも聞いてね。お茶には少し自信あるの♪」
 既に足のしびれているエレンディラは、足をさすろうとして、バランスを崩してしまう。
「キャー!」
 エレンディラは葵にもたれかかり、小柄な葵は必死に耐えている。

 アピスの足もしびれていた。本当は得意の魔法でなんとかしたいのだが、愛用のランスは宿舎において来ている。
 行儀作法は一通り身につけているので、大騒ぎすることはない。
 だけど、だんだん無くなる足の感覚に不安になっている。
「立てるのかな・・・」

「もうダメデス」
 突然、エレトリカが叫んだ。足を前に投げだすエレトリカ。

 お茶を立てていた亭主が年を感じさせないリンとした声を上げる
「楽にしておくんなはれ」

 エレンの前にお茶が出てきた。
 足を少し崩したエレンは、葵に作法を教わりながら、お茶を飲む。
 ホッとしたように呟く。
「お茶を飲むと心が落ち着きます」

 アピスも周囲にわからない程度に足を崩した。
 目の前に茶碗が置かれる。
 これまでの作法をジッと観察していたアピスは、そつなく作法をこなす
「アピス、スバラシイワ」
 横にいたエレトリカが感嘆の声を上げる。

 お茶菓子を食べては「おいしいっ!」と叫び、イタリア人らしいオーバーアクションを繰り返していたエレトリカだったが、天真爛漫な明るさが、茶室の空気を和ませている。
 エレトリカの前にお茶碗が置かれた。
 真剣な面持ちで、作法通りにお茶を飲むエレトリカ。
 残るは、静香のみだ。

 静香はさきほどからそわそわしている。
 頭にのるかんざしが気になって仕方が無い。
「この宝石が1つあれば・・・」
 邪心と戦っているのだ。
 お茶を飲めば心が落ち着くんだ、そうだ。
 悪いことをしちゃだめだ。
 勢いよく頭を振る静香。
 目の前にお茶碗が置かれる。
 作法を無視して、勢いよくお抹茶を飲み干そうとしたとき、
 かんざしからお茶碗の中にひときわ大きく輝くダイヤが落ちる。
「えっ?えっ!」
 ダイヤはお茶と共に、静香の胃袋まで流し込まれた。