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闇世界の廃校舎(第2回/全3回)

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第4章 笑う研究者

-PM18:00-

 調理室の外を覗きながら島村 幸(しまむら・さち)は、検体が運ばれて来るのを待っていた。
「暇ですね・・・」
「早く戻って来いよ。解剖したくてうずうずしてる島村姐さんの視線が怖いんだけど・・・・・・何でこっちをじっと見てるのかなぁ?」
 待ちきれなくなったのか、じっと見つめる幸の視線に風森 巽(かぜもり・たつみ)は怯えた顔をする。
「ねぇ巽・・・、時間もあることですし・・・私が強化してあげましょうか?」
「ちょ・・・待って!もう少しできっと戻ってくるから・・・・・・!我を改造とかそんな怖い冗談やめて!」
「フッ・・・フフフ・・・・・・」
「え・・・冗談じゃない?ちょ・・・本気で勘弁して!」
 冷蔵庫の前でティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)と一緒に焚いた線香の香が、自分の余命が近づいているように感じた。
 死者たちのご冥福を祈った1時間前の出来事が、走馬灯のように脳内に流れる。
「あっ・・・戻ってきたよ!皆さん早く来てー」
 検体を運んで来る七枷たちの姿を見つけ、ティアは大きく片手を振る。
「(早く来てください、我の身が危ない!)」
 巽はまだ見ている幸に怯え、心中の中で叫んだ。
「そこ、早く運びなさい!検体の新鮮さが落ちるでしょう!!それともあなたたちも解剖されたいですか?ふふっ♪」
 笑顔で言う幸に陣たちは慌てて調理室へ検体を運び込んだ。
「許してくれとはいいませんぞ。ただ、貴方の尊い犠牲に感謝いたします」
 調理室から出てきたガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)が検体を運ぶのを手伝い、調理台の上にドンッと置いた。
「やっと始められるのね♪」
 遠野 歌菜(とおの・かな)は笑顔でハルバードを握り締める。
「始めますよー、ゴーストの解体ショーを♪」
「よくもまぁ、あそこまでテンション上がるよなぁ〜」
 幸たちが嬉しそうに笑いゴーストを解体しようとしている姿に、その様子を傍で見ている佐々良 縁(ささら・よすが)はため息つく。
「これくらいの明るさでよろしいですかな?」
 ガートナは光精の指輪の明かりで検体を照らす。
「えぇ、それくらいで大丈夫です。恨み・・・?妬み・・・?後でいくらでも聞きましょう。死者への冒涜だなんていう戯言も甘んじて受けましょうとも・・・」
 誰もやったことのないゴーストの解体ショーが始まった。



「・・・そんなに楽しいのかな?」
「はい、人格形成にかかわる大事な値が下がるからぁ、見ちゃだぁめ」
 無残に斬り裂かれていく検体と解剖班の表情を見せないため、佐々良 皐月(ささら・さつき)の後ろからハグして手で目を隠す。
「わぷ!・・・駄目なの?」
「なるほど・・・じゃあこうするとどうなるのかな?あはっ!あははは!!」
 ダガーをメスの代わりにし、幸はどこかに病巣がないか探す。
「あなたの心をオープン♪」
 動いていない心臓を取り出しダガーで斬り開くと、プシュァアアッと血が噴出し幸の顔にかかった。
「お任せを、幸!しっかりサポートいたしますぞ!!」
 ガートナは解剖されている検体をデジカメに撮っていく。
「歌菜殿、そこは斜めに切るとありますな」
 さらに幸が用意した医学資料を読みながら、解剖をする彼女らへ指示を送る。
「次は熱湯をかけてみよう」
 再生状況を見るために歌菜は、検体の身体に鍋の熱湯をかける。
「ほう・・・素晴らしい再生速度ですね。延命研究か生物兵器開発でもしてたのでしょうか?」
「動き出しそうね」
 歌菜はハルバードでザクッザシュッとゴーストの四肢を斬りつける。
「まだまだ調べなきゃいけないことがあるからごめんね♪」
 公開処刑のような光景に、巽は思わず視線を逸らした。
「この前のゴーストと違って声を出さないようね」
「喉を切って調べてみましょうか」
 ビシュッと喉を斬り、声帯があるのかどうか調べてみる。
「ちゃんとありますね・・・・・・」
「首に継ぎ目があるわよ」
「これは・・・別の人物の首・・・ということでしょうか」
「取れるのかな・・・あっ!」
 雑に縫い付けられた首を引っ張ると、あっさり簡単に取れてしまった。
「だから喋れなかったんでしょうか」
「病巣らしいのもないわね」
「―・・・もしかして・・・・・・」
 検体の腹部に両手を突っ込み、すい臓や胃腸をブチブチと取り出した。



「あぁ・・・なんていうことでしょう。病棟で遭遇したゴーストたちを思い出して・・・もしやと思って取り出してみたら・・・」
「何か分かったの・・・?幸姐さん・・・?」
 顔を俯かせてギュッと検体の大腸を握り締める幸の顔を、歌菜は心配そうな顔をして覗き込む。
「大変なことが分かってしまいました。これは人体実験です!」
「それってどういうこと・・・」
「このすい臓を見てください、こっちの胃と比べると明らかにおかしいんです」
「うーん・・・臓器によってサイズは異なるようだけど・・・ちょっと変ね。胃の方はまだ幼い子供のサイズみたい・・・・・・」
「で・・・もう片方のコレは成人の大きさです。それに小腸とかに不自然な継ぎ目が沢山あります・・・病気を治すために臓器移植を行ったとしても、ちょっとこれはありえません」
「多くの人たちを実験台にして作ったということ?一体何のために・・・・・・」
「それはまだ分かりませんが・・・。もっとよく調べてみましょう!」
 何のために作られたのか、幸たちは検体の解剖を再開した。