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虹色巨大卵救出作戦

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虹色巨大卵救出作戦

リアクション


Scene3


 さて、妖精救出に向かった連中である。
 途中、スタッフに見咎められたのをルナ・エンシェントが殴り倒す。
 そんなルナに導かれ、レキ・フォートアウフたちがやって来た先は、見世物小屋と巨大卵のテントの間にある空間である。
「誰もいないのかな?」
「さすがに騒ぎのほうに出払っているようですね」
 それでも警戒は怠らないレキである。
(だって、村雨さんやルナさんは違ったけど、ネルソンについてる人だっているはずだよ……)
 その空間は、中央に台座が置かれており、その上にアンティークな雰囲気の鳥籠が置かれている。
「いかにもな雰囲気じゃん」
 こっそりと頭を出すイーディ・エタニティ(いーでぃ・えたにてぃ)
 とりあえず、誰もいないことを確かめ、こそこそと鳥籠に近づく。
 それに仲間たちが続いた。
「やですわ、ネルソンがいないではないですか」
「いないなら、いないで好都合だよ」
 ネルソンが妖精たちを手元で監視しているという情報に、意気揚々とやって来たクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が当てが外れたと文句を言い、神和 綺人(かんなぎ・あやと)はそんなことより妖精たちを助け出すほうが先だと部屋の中央の台座に顔を向けた。
 台座の上の鳥籠の中には小さなふたりの妖精がおり、綺人たち近づいてきた人間たちに怯えた表情を向けていた。
「助けてあげるから、コンロンのお宝とかについて教えるじゃん」
「イーディ、いきなり取引かよ……妖精たちがビックリしてるじゃないか」
「……」
 葛葉 翔(くずのは・しょう)はパートナーの物言いに呆れつつ、籠の中の双子の妖精たちに視線をうつす。
 身長25センチくらいの薄い透き通った羽根を持った小さな少女たちだ。
「コンロンのお宝……?」
「あったかしら?」
「いや、まじめに考えなくてもいいから」
「それより、さっさと行こうよ」
 と、綺人が妖精の籠を持ち上げた。
 瞬間、トラッパーが作動し上から敷物の下にあった網が一同をすくいあげ、妖精救出組は文字通り一網打尽に捕らえられてしまった。
「誰だ! こんなことしやがるのは!?」
「ふん……こう簡単だと面白味にかけるな」
 現れたのは、カーシュ・レイノグロス(かーしゅ・れいのぐろす)だ。
 その隣ではハルトビート・ファーラミア(はるとびーと・ふぁーらみあ)が申し訳なさそうな表情をしている。
「なんでこんなことを?」
「そんなの楽しいからだ」
 どきっぱりと言い放ち、カーシュは「じゃあな」と宙ぶらりんの一同を残して行ってしまう。
 彼はネルソン側の人間として、いろいろと忙しいのだ。
「ほったらかしかよ!?」



 カーシュとハルトビートがテントの方へ行くと、そこには混沌とした世界が繰り広げられていた。
 それぞれが思い思いに何かしている印象だ。
 見ると元祖最強ドージェのパパとユルルのおじさんが何か画策している。
「そういや、あいつら人間火炎放射器になんか取り入ってたな」
 ネルソン側についた仲間のひとりだが、何を考えているのかわからない。
「ま、俺には関係ないけどな……」
 その一方で一番目を引いたのは、王 大鋸だ。
「うおぉおおおおおお!! ど畜生っ!!!」
 オリヴィア・レベンクロンに昏倒させられていたが復活したらしい。
 目指しているのは、パラ実四天王がひとり電光のネルソンなのだろうが、そこかしこでカーシュのしかけた罠に引っかかり悪態をついている。
「申し訳ありません。あなた方に恨みも何もありませんが、カーシュ様のご命令ですので、お相手させていただきます」
 そんな大鋸の前にハルトビート・ファーラミアがフェザースピアを構え立ちふさがり攻撃を開始した。

※ ※ ※


 さて、足止めをくっている大鋸をはじめ、皆が思い思いに電光のネルソンを目指す一方で、藤原 和人(ふじわら・かずと)は人間火炎放射器イェンホウを目指していた。
 このイェンホウという男、身の丈2メートル以上の大男だ。
 彼が人間火炎放射器と呼ばれることを差し引いても、非戦闘系の和人にはその彼と正面からぶつかるのは、愚の骨頂だった。
「それならそれで方法はあるぜ。いくぜ、ムジカ!」
「OK」
 和人とムジカ・ウィーズル(むじか・うぃーずる)に合図をすると、戦っているイェンホウに向かって水の代わりに“油”を入れたゴム風船を投げつけた。
 割れる風船。
 油まみれになるイェンホウ。
 すかさず、和人とムジカは油をしみ込ませた『バーストダッシュ』でロープをイェンホウにぐるぐる巻きにまきつけた。
「……」
「俺はロクに戦闘をした事がねぇ。魔法を撃っても命中するかどうかも怪しい。けどさ、このロープを掴んだまま火術を使えばアンタまで一直線……分かるな?」
「ほう……どうなるんだ?」
 イェンホウの小ばかにしたような言葉。
 和人にはそれが負け惜しみに思えた。
 油まみれの人間に火をかければどうなるか、想像するのは容易いはずだ。
「ま、降参しなよ……そんな頑張る理由もねぇだろ?」
「やれるものなら、やってみればよかろう?」
 和人の言葉にイェンホウは不敵に笑い、そして大きく息を吸い込むと、和人の持つ油ロープに向かって炎を吹きかけた。
 油ロープを炎が駆け抜け、和人を襲う。
 イェンホウは自らも炎につつまれながら、大きく腕を広げて和人を襲う。
「うわぁっ!」
「和人!」
「ちょっとまったぁ!」
 水激のスィージィが割って入った。
 動きを止めるイェンホウ。
「どけ!」
「だから、やめなって、殺しちゃったら営業停止だよ」
 そういう問題か?
「おのれの正義を振りかざし、状況もわきまえず一般客にまで迷惑をかける連中に容赦はいらん!」
「ま、とりあえず火ぃ消したら? 火炎放射器じゃなくて火達磨のイェンホウって名乗る気かい? あんたも、その若さで人殺しになりたかったのか?」
「その前に降伏すると思った」
 スィージィの問いかけに和人は答え、予想外だったのは相手が常識外れの怪人だったことだ。