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虹色巨大卵救出作戦

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虹色巨大卵救出作戦

リアクション


Scene4


 その一般客にまで迷惑をかけた原因を作った大悪党「電光のネルソン」だが……
 当然のように四天王狙いの下克上組がこぞってネルソンに挑戦していた。
 そんな彼らを尻目に朝霧垂(あさぎり・しづり)は『子守歌』で、戦闘員(スタッフ)たちを眠らせ、ついでに一般の見物客たちをも眠らせる。
 ネルソンを前にライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)が『パワーブレス』で垂の攻撃力を高め、垂は戦闘中のネルソンの隙をうかがう。
「ねぇねぇ、垂〜 勝てそう? 勝てそう?」
「うるさいライゼ」
 わきゃわきゃはしゃぐライゼを睨み、垂は王 大鋸がチェーンソーを振り回しし邪魔者を蹴散らして行くのをみた。
「俺の邪魔をするんじゃねぇ!!」
 大鋸はネルソンの姿を発見し、敵の総大将に向かって走り出そうとした瞬間、盛大にすっころんだ。
 それは見事に、すこーんと。
「誰だ!? こんなところにワックスかけやがったのは!?」
「垂だねぇ」
「……」
 出鼻をくじかれて怒る大鋸と影ながら見守る垂。
 そしてカーマル・クロスフィールド(かーまる・くろすふぃーるど)がネルソンの前に立ちふさがった。
「電光のネルソンと言ったか……ご指導頼むよ」
 そう言い、カーマルはその手に電流を纏いつかせ始める。
 電光のネルソン、同じ雷使いとして手合わせしたい相手なのだ。
 攻撃はすばやく相手との距離を詰め、側面から打撃攻撃。
「やぁっ!」
「させるかっ」
 カーマルの拳を前腕で受け流し、弾かれたカーマルが体制を整え『雷術』攻撃を放つが、ネルソンはびくともしない。
 それどころか電撃の威力をあげた『雷術』攻撃がカーマルを襲う。
「ぐっ……この程度ッ!」
「はーはっはっはっ! その程度の腕でこの私に勝てるとでも言うのかね?」
 嫌味な笑い声。
 そんなネルソンを狙う小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
 その手には『轟雷閃』で雷をまとわせた矢をつがえたリカーブボウ。
 美羽を援護するためにパートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)が『バニッシュ』を解放そうとしたところで炎嵐に襲われた。
 「砂嵐のシャラン」から【D級四天王】を譲られたガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)が解き放った『ファイアストーム』だ。
「きゃっ」
「なぜ邪魔をするのですか?」
「……」
「そがぁなこと決まっとるんじゃけぇの。パラ実学生でないあんたがたが、万が一にもパラ実四天王を名乗るんが許せんのじゃ」
 ガートルードの代わりにシルヴェスター・ウィッカー(しるう゛ぇすたー・うぃっかー)が答えた。
 ま、このガートルードを倒してもD級四天王の座は手に入る。
「四天王になるのが目的じゃないよ! ダーくんの力になりたいんだもん!」
 美羽はそう言い、再度、雷の矢をつがえるとネルソンに向かって弓を引いた。

 どーんという音とともに雷が落ちる。

 電光のネルソンの名のとおり『雷術』を自由に操り、なおかつ自ら発電すらする男。
 そのネルソンに雷の矢を放ったということは、余計なエネルギーを与えたことになる。
 そしてさらに威力を増した電撃攻撃が周囲を襲い始めた。
「しんじらんなーいい!」


※ ※ ※


 電光のネルソンの電撃攻撃のさなか、嵐の過ぎるのをまつ大鋸たちだが、その一方で虹色巨大卵の周囲でなにか動きがある。
「想像以上に大きいですぅ……」
「でも、ネルソンたちがコンロンの山からここまで運搬してきた方法があるはずですわ。その手段をそのままそっくり使用する方法で山へ返しましょう」
 卵を見上げ呆然とするメイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)がどこかに卵運搬に使った重機とトラックがあるはずだと言う。
「あったカ? そんな目立つモノ」
 小首をかしげるシー・イーだ。

 そこへ妖精たちをなんとか救出して(というか罠から脱出して)きた一同と合流する。
「この虹色巨大卵はなんの卵なの?」
 セシリア・ライト(せしりあ・らいと)が双子の妖精に聞く。
「コンロン巨大蛾の卵だ」
 と、リリ・スノーウォーカー。
「あの……人間の方々がなんというのは分かりませんけど」
「これはツァンヨンの卵だわ」
 妖精たちの言う意味がわからずメイベルたちは首を傾げた。
 どちらにしろ、この大きな卵が孵化したらろくでもないことになるにちがいない。
「でも、このまま移動する手段がないなら、卵を孵して中身に歩いてもらうしかないですぅ」
「方法は?」
「んーと、火術を使える人、爆炎波を使える人を集めて卵を温めるんだよ!」
「え〜?!」
 セシリアの提案に一同は顔を見合わせた。
「そんな温め方で大丈夫なのですかぁ?
「わかりませんが、でも他に山へ返してもらう方法がないのなら、しかたありません」
 メイベルの問いに妖精たちは声をそろえて答えた。

 そういうわけで―――
「いやいやいやロミー殿、毎度毎度ながら無茶苦茶だよ」
「なにを言うか、卵を温めるのは まろだけの思い付きじゃなかったじゃろ? まろの作戦は完璧なのじゃ、ぜーったい! これで卵がかえるはずなのじゃ!」
 『ファイアーストーム』で卵を温めろと言われ滅茶苦茶だと言うマシュ・ペトリファイア(ましゅ・ぺとりふぁいあ)ロミー・トラヴァーズ(ろみー・とらばーず)は自信たっぷりに言い返す。
「あ、あまり温度をあげないようするのじゃぞ」
「はいはい……」
 マシュの『ファイアーストーム(弱火)』をはじめ、メイベルたち火術を使える者たちが巨大卵を取り囲むようにして温める準備を始めた。


※ ※ ※


 ところで、事件に巻き込まれた一般の見物客たちだが「爆弾が仕掛けられている」という情報に避難しようとしていた。
 情報の出所は【E級四天王】譲葉 大和(ゆずりは・やまと)の『情報攪乱』だが、彼自身はネルソン配下として卵奪還組と対峙していた。
「正確には、四天王狙いの下克上組ですけどね……」
 そういう大和は、E級以上のランクへの格上げという目的がある。
 大和は巨大な卵を背にして周囲の状況を確かめる。
 ネルソンの電撃攻撃に大鋸たちは苦戦している様子だ。
 そんな彼らが大和のしかけた罠の有効範囲に移動してきたことを確認して『火術』で火を呼び起こして、罠を作動させた。
「何をする!?」
「俺の覚悟の前に立ちふさがるな!!」

 どかーん!!!

 爆風に人々が吹っ飛ぶ。
 大和が予想していたよりも大きな爆発だ。
 そして勢い良く火の手が上がる。
「どうしたのでしょう? 俺が用意したよりも火の勢いが強すぎる……」
 思いもよらない火災に、大和は疑問を感じる。
 大和が用意した罠以外に誰かが可燃性のものを大量に用意していたのだろうか?
「……あっ!」
 はたと気が付く。
 大和と同じようにネルソン側に付いた元祖最強ドージェのパパとユルルのおじさんが、イェンホウに取り入っていた。
 そして、なんだかんだと理由をつけては油だの、燃えやすそうなものを持ち込んだりしていた。
 大和はドージェのパパの姿を探すが、その姿が見当たらない。
「そう言っている場合ではないですね」
 火の手はテント内を火の海にして燃え上がる。
 大和は、逃げ惑う人々をテント外へと誘導するべく走り出した。
「うまくいったのだ」
 その元祖最強ドージェのパパ(がんそさいきょう・どーじぇのぱぱ)は、ひそかに掘った穴の中にその身を潜めていた。
「でも、ちょっと燃えすぎなのだ」
 鎮火を待ちつつ、自分が用意した以上に燃える火災に身の危険を感じるドージェのパパだった。