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学生たちの休日2

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学生たちの休日2
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リアクション

 
 
    ☆    ☆    ☆
 
「まあ、このへんの問題集から例題を解けるようになれば、年明けの期末試験も大丈夫だろう」
 クレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)の前にいくつかの問題集を積みあげて、本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)は言った。
「えー、こんなに解かなくちゃだめなのー」
 あまりの問題量の多さに、クレア・ワイズマンは、思わず図書室の机に突っ伏した。
「大丈夫だ。ちゃんと問題は絞って、付箋を貼りつけておいた。最低限それだけやっておけば、それなりの成果はあがるだろうさ」
「それでも多いー」
 まだ文句を言いながらも、クレア・ワイズマンはおとなしく問題を解き始めた。ここで逃げ出しては、手間をかけてくれた本郷涼介に悪い。
「さてと、私の求める資料は、はたしてあるものだろうか……」
 本郷涼介が求めているのは、未だ明らかにされていない秘術の発見だ。もっとも、そんな物が簡単に見つかるとは、本郷涼介も思ってはいない。
 ただ、まだまだビギナーである自分たちにとっては遙か上の存在の魔法でも、熟練の術者にとっては旧知の魔法だということもある。たとえば、空京の新幹線に使われている空間制御魔法がそうだ。存在は知られているのに、特定の術者以外には、原理の片鱗すら明かされてはいない。校長の使う空間転移魔法がそれに属するのであろうが、そうであるならば、この図書館のどこかにそれに言及した書物があってもよさそうだ。もっとも、禁書扱いで奥の特別室にでも保管されていたら、簡単には手が出せないだろうが。
 他にも、噂されているものには、召喚術のようなものもある。存在は確認されていないが、魔法大系から考えると、存在してもおかしくはない。事実、使い魔のような簡単な僕(しもべ)はじょじょに普及し始めている。きっと、もっと強力な精霊に匹敵するようなものも召喚する術があるに違いない。
 だが、そう目星はつけていても、手がかりのような物は皆無だった。だからこそ、探す。あるいは、創り出す。それはそれで、面白いテーマかもしれない。
「やった、終わったよ、おにいちゃん」
 悪戦苦闘の末、問題集を解き終わったクレア・ワイズマンが、本郷涼介に声をかけた。だが、本郷涼介は資料に夢中で気づかない。
「もしもーし、おにいちゃーん」
 とまどいつつも、クレア・ワイズマンは本郷涼介のそばで、両手をひらひらと振ってアピールしてみた。
 けれども、気づかれない。
「えーい!」
「いってー」
 クレア・ワイズマンに思い切りデコピンをされて、さすがに本郷涼介も本から顔をあげた。
「何をするんだ!」
「だって、全然私に気づいてくれないんだもん」
 怒る本郷涼介に、クレア・ワイズマンがむくれて見せた。
「ああ、悪かった。そうむくれるな」
「だってぇ。私、ちゃんとがんばったんだもん」
「よしよし、だったら『宿り樹に果実』に行って、お茶にでもしよう」
「じゃあ、アップルパイ奢って」
「分かった、分かった」
 とりあえず機嫌をなおしてくれそうなので、本郷涼介は状況が変わらないうちにと、『宿り樹に果実』へ急いだ。
 
「ふふふ、あの様子じゃ、たいした魔法は見つけられなかったようだねえ」
 図書室から出て行く二人を見て、マシュ・ペトリファイア(ましゅ・ぺとりふぁいあ)は言った。
 彼の手元の本には、石化に関する物語がいくつか載っている。
 魔法大系としては、いったん失われてしまったのだろうか。あるいは、秘術として隠されているのか。いや、どちらかといえば、魔獣の特殊能力としての方が一般的かもしれない。
 石化。
 もしも、これが使いこなせるとしたら、実に強力無比の能力となる。
 だが、実際に魔法として使えたとしても、その持続時間というものが一つの問題とはなるだろう。
 数分で解けてしまう魔法であれば、刹那的な戦闘での使用が中心となるはずだ。
 だが、石化には、あまり知られていない別の効果もある。
 太古の人物が石化状態で発見されるということは、手元の本からも実例がなかったわけではない。さらに、その石化を解くことさえできれば、魔女のような不死の種族ではない者でも、数千年の時を経て蘇るのである。
 これは、寿命が延びていたと考えるのは早計だが、時間が関係しているという仮説は立てられる。石化している間の該当者は、時間が進行していないらしいのだ。もっとも、実際にインタビューしたわけではないので、石化中の意識があるかどうかは分からない。あるのかもしれないし、ないのかもしれない。ただ、細胞の老化だけは確実に止まっているようだ。
 石化と似たもう一つの現象、あるいは、その目的のために石化を使う場合もある、封印。これもまた、特定のフィールドに対象を閉じこめるものだ。
 もしかすると、石化というのは、ごく限定したフィールドの時間を凍結するものなのではないだろうか。
「いや、それでは、実際に身体が鉱物化する現象が説明できないねぇ……」
 さっそく矛盾を発見してしまい、マシュ・ペトリファイアは考え込んだ。
 いくつかの複合魔法の結果が石化というのはどうだろう。仮にそうだとしても、ベースとなった魔法とは何かという問題に突きあたる。
 結局、ハイリターンを求めるならば、ハイリスクが伴うのだ。高位の魔法は、それなりの研究が必要ということになる。
「結局、さっきの人たちとあまり変わりがないですねぇ」
 そうつぶやいたとき、突然ロープが飛んできて、先端のわっかでマシュ・ペトリファイアを絡め取った。
「何事です!」
「やった、捕まえたのじゃ」
 ロミー・トラヴァーズ(ろみー・とらばーず)は、しっかりとロープの端をつかんで叫んだ。
「失敗したなぁ。殺気看破を使っていればぁ」
 マシュ・ペトリファイアは悔やんだが、後悔先に立たずだ。
「さあ、約束通り、遺跡探検につきあってもらうのじゃ」
 ロープを持ったまま、ロミー・トラヴァーズはマシュ・ペトリファイアの周りを回り始めた。
「それは、断ったでしょう」
「うるしゃあい! まろにつきあう約束は、最優先なのじゃ。四の五の言わせないようにしてやるから、さあ、行くのじゃ〜!」
 そう言うと、ロミー・トラヴァーズはマシュ・ペトリファイアをロープでぐるぐる巻きにした。
 倒れ込みながら、これも封印なのだろうかとマシュ・ペトリファイアは考えずにはいられなかった。
「探検、探検♪」
 ロープでぐるぐる巻きにしたマシュ・ペトリファイアを引きずりながら、ロミー・トラヴァーズは御機嫌で図書室を出て行った。
 
    ☆    ☆    ☆
 
「このロープはなんなのー」
「さあ」
 『宿り樹に果実』の隅っこに張られたロープを見て、クレア・ワイズマンと本郷涼介は首をかしげた。
「あらあらあら。それは、執事修行をしたいという方がいたので、今日だけ特別に場所をお貸ししたんですよー。一応、ちゃんと区別できるように、境界線を作ってるんですー」
 アップルパイセットとコーヒーを運んできたミリア・フォレストが、そうクレア・ワイズマンたちに説明してくれた。
 
「ありがとうございます。お客様が来なかったらどうしようかと思っておりました」
 砂時計が落ちるのを確認して、沢渡 真言(さわたり・まこと)はカップに紅茶を注いだ。
「ダージリンです。どうぞごゆっくりしていってください」
「ありがとう」
 疲れたように椅子に座っていたメイコ・雷動は、ちょっと顔をほころばせた。
「さて、迷ってしまって美術室には辿り着かなかったけど、作戦変更してここを調べるよ」
「うむ。何しろタダのお茶とクッキーであるからな。ゆっくりするのである」
 メイコ・雷動の言葉に、マコト・闇音がうなずいた。
「その紅茶、おいしーでしょー。マコトはねー、マコトのパパからいろいろと練習道具とかお茶のセットとかもらったんだけど、いっぱいありすぎて使いきれなくてしょーみきげんが切れちゃうのがもったいないと思ったみたい。だから、どうせ使うならいろんな人に楽しんでもらいたいよねって思ったみたいなんだよ」
 隣の席に座っていたユーリエンテ・レヴィ(ゆーりえんて・れう゛ぃ)が、ちょっと身を乗り出していらぬことを言った。
「賞味期限ぎりぎりなのか……」
 ちょっと複雑な心境になって。メイコ・雷動が自分の紅茶を見つめた。
「タダより高い物はない。でも、この紅茶は充分においしいのだ」
 平然と紅茶を飲みながら、マコト・闇音が満足そうに言った。
「ありがとうございます」
 そう言いつつ、沢渡が真言がユーリエンテ・レヴィの耳元に唇を寄せた。
「――あまり変なことは言わないで」
 そう小声でささやく。
「そうだぜ、ユーリ。俺たちは、今はお客の役なんだ。奇跡的に他の客が来たからと言って、サクラの役目はちゃんと果たさなきゃだめなんだぜ」
「はーい」
 ローブを脱いだ普段着姿のマーリン・アンブロジウス(まーりん・あんぶろじうす)が何げに酷いことを言い、意味を分かってか分からずか、ユーリエンテ・レヴィが素直に返事をする。
「じゃ、おにーさん、俺にも、新しい飲み物を。濃いめの紅茶が飲みたいなー。……すみません、そんな目で睨まないでください真言さん」
 調子に乗ったマーリン・アンブロジウスが、沢渡真言にちょっと睨まれてあわてて縮こまった。
「あら、お客様。おめしあがりにならないのでしたら、このわたくしがお作りさしあげました特上においしいクッキーはお下げさせていただきますわ」
 ティティナ・アリセ(てぃてぃな・ありせ)が、すっとマーリン・アンブロジウスの前におかれたクッキーの皿を取りあげた。
「ちょっ、それまだ食べてない。酷いじゃないか、ティティナ」
「あーん、ユーリもまだ食べてないー」
 マーリン・アンブロジウスとユーリエンテ・レヴィがあわてる。
「あーら、どこのどなたか知りませんですけれど、気安く名前をお呼びにならないでいただきたいですわ」
「いや、マーリンだから。いつもと衣装が違うんで雰囲気違うけど、俺だから」
 必死にアピールするマーリン・アンブロジウスであったが、ティティナ・アリセには無駄だった。
「知りませんわ、そんなの」
 ぷいと、横をむくと、ティティナ・アリセはクッキーを隣のテーブルに持っていった。
「はい、クッキーのサービスでございますわ」
「他人のお下がり……」
「でも、おいしいであるぞ」
 経過を見てちょっと引いているメイコ・雷動を尻目に、マコト・闇音はクッキーをほおばった。
「あのー、楽しんでいただけてますでしょうか」
 なんだかカオスな展開に、沢渡真言はおそるおそるメイコ・雷動たちに訊ねた。
「もちろんだ」
 なにやらメモをとりながらマコト・闇音が答えたので、沢渡真言はひとまずほっと胸をなで下ろした。
「後はお客様がメインですから、そちらの物語に移行していただければ。あくまで、私はただの執事ですから」
 
    ☆    ☆    ☆
 
「ふう、いいお湯だったな」
「ああ、いいお湯だった」
 身体からホコホコと湯気をあげながら、和原樹とフォルクス・カーネリアは、自室がある寮のエリアまで帰ってきた。
「本当にこのへんなんだろうな。ミーには、寮の一画に見えるんだけど」
「大丈夫。今度こそ、ここが下宿エリアですってば」
 廊下で、狭山珠樹と新田実がなにやら言い合いをしている。その横を通り過ぎると、和原樹たちは自分の部屋に入っていった。
「なあ、フォルクス。今日は朝まで隣に居ろよ」
「なんだ? いつもそばで寝つくまで見ていてやってるじゃないか」
 髪が乾くまでくつろいでいると、和原樹にそう切り出されて、フォルクス・カーネリアはちょっと怪訝そうな顔になった。普段から和原樹は寝つきが悪いので、フォルクス・カーネリアはそばで頭を撫でて寝かしつけているのだ。
「や、そうじゃなくて……たまには一緒に寝てみる? あ、変な意味じゃないからな! 変なことしたら殴るから!」
「今のお前が、そういう誘いをしないことは分かっているから安心しろ。そういうことはまぁ、いずれ……な」
「いずれって……」
 話の流れに、和原樹はちょっと顔を赤らめた。
「とりあえず座れ。寝る前に髪を梳いておかねば、朝の手入れが面倒になる」
 そう言うと、フォルクス・カーネリアはブラシを取り出して、和原樹の細いプラチナブロンドの髪を梳き始めた。
 
    ☆    ☆    ☆
 
「ゆけー、ゆけ、ロミー・トラヴァーズ。ゆけー、ゆけ、ロミー・トラヴァーズ……」
 まだ縛りつけたままのマシュ・ペトリファイアを後ろに従えながら、ロミー・トラヴァーズは意気揚々と進んでいった。
「いい加減、ほどいてくれないかねぇ」
「逃げないと約束したらほどくのじゃ」
 それは、絶対にほどかないということだ。
 ほどなくして、二人は遺跡に到着した。遺跡といっても、まあ、古墳公園のような物だ。あまりに小さすぎるので、他の人間からは無視されている場所である。言ってみれば、これはロミー・トラヴァーズの散歩みたいなものなのである。とはいえ、小さくとも遺跡には間違いがないので、ひょっとしたら何かが発見できるかもしれない。
「あれれ、誰かいるのじゃ」
 人影を見つけて、ロミー・トラヴァーズが言った。
「敵ですか。ほどいてくださいよぉ」
 慎重に近づいていくと、遺跡の中央でレイディス・アルフェインが途方に暮れて座り込んでいた。
「ああ、人だ。すまないが、トパーズの洞窟を知らないか……」
「知らぬのじゃ!」
 即答だった。
「でも、面白そうなのじゃ。探索に出発しようなのじゃ」
「おいおい、まだ歩くのですかぁ」
 マシュ・ペトリファイアが、うんざりしたように言う。
「さあ、そこの、一緒に出発するぞ。トパーズ探しの探検なのじゃー」
「おー」
 ロミー・トラヴァーズのテンションに引きずられるようにして、男二人が声をあげた。
 その後、三人がトパーズの洞窟に辿り着けたのか、はたして、首尾よくトパーズを手に入れたのかは、氷の洞窟のみが知っている。
 
    ☆    ☆    ☆
 
「まだ負けない……! 私は立派なお嫁さんになるんだからっ」(V)
 寮の自室で、遠野 歌菜(とおの・かな)は孤軍奮闘していた。年末の大掃除である。
 少しは女の子として役にたつところを見せようと、パートナーたちを追い出して一人で部屋の大掃除をかって出たのであった。
「なんで、私の部屋は、こんなに物があるのよ」
 物を片づけるというよりも、さらに散らかしてしまっているような気がするのは錯覚だろうか。いや、錯覚だと思いたい。このままでは、パートナーたちが買い物から帰ってくるまでに、部屋が片づかない。
「どうしよう……。みんな、ごめん……」(V)
 遠野歌菜が途方に暮れかけたとき、ばんと、勢いよく部屋のドアが開いた。
「じゃーん、お掃除お助け人とーじょー」
「不本意ながら、その二だ」
 飛び込んできたのは、狭山珠樹と新田実である。
「さあ、ビュリ、部屋のお掃除を……あれっ?」
「また間違いじゃないか」
 新田実が、うんざりしたように言った。
「しかたないですよ、みんな似たような部屋なんですから。それにしても、これは……」
 あらためて、狭山珠樹たちは遠野歌菜の部屋を見回した。その惨状に、思わずお掃除人の血が騒ぐ。
「だめぇ! 手伝っちゃ。一人で片づけると決めたんだから」
 遠野歌菜が、叫んだ。
 そう言われてしまったら、狭山珠樹としてもなかなか手を出しにくい。とはいえ、この状況は、手を出して片づけたい。
「手を出さなきゃいいんだろ。なら口を出すぜ。ほら、あそこにぬいぐるみが転がってるだろ、ああいうのはチェストの上とかにだなあ……ストーップ! その前に、ハンディモップで埃を払う!」
「がんばってねー」
「あっ、はい!」
 応援を受けつつ、遠野歌菜は効率を上げて片づけに動き回った。
 
「レイ、そんなに心配しなくても……。歌菜ちゃんは、やればできる子だよ」
 夕食の鍋の材料をかかえながら、リヒャルト・ラムゼー(りひゃると・らむぜー)は、横を歩くブラッドレイ・チェンバース(ぶらっどれい・ちぇんばーす)にそう言った。
「カナには、もう俺は必要ないのか……」
 心配のあまり、ブラッドレイ・チェンバースがあらぬことを口走る。まるで、まだまだ子離れができないお父さんのようだ。
「レイらしくないね。歌菜ちゃんには、まだまだレイと僕のささえは必要だよ」
「……ありがとう、リヒャルト」
 慰められて、やっとブラッドレイ・チェンバースは気を持ちなおした。
「さあ、がんばった歌菜ちゃんをねぎらってあげようじゃないか」
 そう言うと、リヒャルト・ラムゼーは遠野歌菜の部屋のドアを開けた。
「歌菜ちゃん、お疲れ様! 鍋の材料を買って来たよ。今夜は鍋で温まろうか」
「あ、おかえりなさい! 掃除、終わったよ〜」
 朗らかな顔で二人を出迎えた遠野歌菜だったが、その隣に別の顔が二つあった。
「ど、どうも。お掃除応援人ですわ」
「二号です」
 成り行きで、狭山珠樹と新田実が挨拶する。
「どうなってるんだ。なんだ、手伝ってもらったのか。ふっ、やっぱり、俺がいないと、カナはだめだな」
 どこか嬉しそうに、ブラッドレイ・チェンバースは言った。
「いいえ、見てただけです」
「うん、ミーたちは見てただけだ」
 狭山珠樹たちが否定する。アドバイスはしたが、それはそれ、これはこれ。実際に判断したのも、身体を動かしたのも、遠野歌菜自身だ。
「うーん……。まあいいか。まだ、いつか俺の出番は残されていそうだからな」
 ブラッドレイ・チェンバースは、そう自分自身を納得させた。
「僕は、充分努力は認めるれどね」
 リヒャルト・ラムゼーは、満足そうだった。多少お節介があったとしても、頑張った分はちゃんと認めてあげなければ。だいたい、自分が見張っていなければ、きっとブラッドレイ・チェンバースが介入して力仕事を手伝っていたに違いない。そういう意味では、応援だけですんだのは幸いだ。
「さあ、すっごく綺麗になったでしょ。御飯にしましょ。もちろん、珠樹も実も食べていってくれるわよね」
 遠野歌菜に請われて、狭山珠樹たちも、お呼ばれに与ることにした。