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リアクション
第7章 幻想的なスケートリンクで華麗に滑ろう
「あの辺なら人が少ないようなのだ。他の生徒の邪魔にならないようにしないと・・・」
なるべく他の生徒たちの邪魔にならないよう、諸葛涼 天華(しょかつりょう・てんか)はスケート靴を履き滑る場所を探す。
「まずは難易度の低い技からやってみるのだよ」
スピードを上げスケーティングレッグのバックアウトエッジに乗り後向きに踏み切る。
「成功したようだな・・・。次はこの技を試してみよう、―・・・はぁっ!」
さらに逆脚のバックインエッジに乗り、フリーレッグの遠心力を使って後向きに踏み切るエッジジャンプを披露する。
他の生徒から見たらちょっとしたフィギュアスケートのプログのように見えた。
「ふむ・・・もう少し難易度の高いヤツにチャレンジしてみよう」
1回転半ジャンプにチャレンジしようとするが、着地ミスしてしまいリンクの上に倒れてしまう。
「いたた・・・連続技や難しい技は難しいようだな・・・」
天華は痛む足を押さえながら岸に上がった。
「どうれもうめぇな〜。レベッカもこれ食ってみよろ」
五条 武(ごじょう・たける)はミルディアが作ったロールキャベツを皿に取り、レベッカ・ウォレス(れべっか・うぉれす)に手渡す。
ミニスカサンタ姿のレベッカに合わせて、きっちりアイロンがけされたウイングカラーの白ドレスシャツに、赤い蝶ネクタイを締めていた。
黒いカマーバンドと赤い細身のスラックス、ボレロのように丈の短い赤ジャケットでビシッと決めている。
「うん、寒い場所にピッタリだネ♪」
ロールキャベツにパクつくと、葉の甘みが口いっぱいに広がる。
「お腹一杯だネ〜」
「なぁ、ちょっと滑ってみないか?」
凍った湖面を指差してレベッカをスケートに誘う。
スケートリンクの周囲にセットされたアッパーライトの照明が、光の柱のように温かい光を放つ。
「いいヨ〜向こう側は人が少ないみたいだからそっちへ行こうカ♪」
レベッカの腰へ手を回し、ライトアップされているイルミネーションに照らされている氷上のリンクで、ターンやスピンの技を披露する。
「ああぁっと、危ねぇ・・・」
支えきれず滑り倒れそうになってしまう足をなんとか踏み止める。
不安そうに見上げるレベッカに、“心配するな”と笑ってみせた。
「ペア技やってみるか?」
「えー、ちゃんとできるのかヨ」
「まぁ試しにやってみようぜ。しっかり捕まってろよ」
肩を支えるように手をかけ、もう片方の手を腰へ回す。
スピードに乗って勢い良くジャンプし、ペアスケートの技を決める。
「ふぅ、ちょっと休憩するか」
「そうだねネ」
いいとこで休憩しようとしたのは、彼女にちょっとしたサプライズをするためだった。
「手出してみな」
「こう?」
レベッカの手の平にアクセサリーを乗せた。
「ほらよ。別に大層なモンじゃねーよ」
銀細工で加工されたサードニクスの宝石で飾られた銀の飾り鎖をレベッカにプレゼントする。
「本当にこんなのもらっていいのかナ〜?」
「あぁそのために持ってきたんだ」
「―・・・本当に本当?」
「だから遠慮せずに受けとってくれ」
「後で返してとか言わないヨネ?」
「・・・あぁもう、このままじゃ恥ずかしいから受け取れ!」
首を傾げて受け取ろうとしないレベッカに、手の平に押し付けるように無理やり渡した。
「綺麗ネ〜♪」
もらったアクセサリーをさっそく身につけてみる。
可愛らしく笑い嬉しそうなレベッカの姿に、武は思わず見惚れてしまった。
ピンクのマフラーを巻き直し、イリーナ・セルベリア(いりーな・せるべりあ)は寒そうに白いコートの両端を掴んでいる。
「皆スケートを楽しんでいるようだな」
「凍った湖なんかで滑った記憶もあるんだが、その後は色々あって縁がなかったんだよな・・・・・・」
紺のダッフルコートを着た早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が、楽しそうに滑る生徒たちの姿を見ながら呟く。
「マフラー落ちそうだぞ」
イリーナが長い白のマフラーを巻き直してやる。
「一緒にすべろう、早川」
滑りたそうにしている呼雪に片手を差し出す。
「断っては野暮だよな」
差し出されたイリーナの手を握る。
「さすがに早川は運動神経がいいな」
少し教えたあげただけで滑れるようになった呼雪に、イリーナは赤色の双眸を丸くする。
「手だけは気をつけてな、ピアノ専攻なんだから。(まあ私も剣を握るのに手は大事なんだけど)」
そっと手に手を添え、真剣な眼差しで呟く。
「早川の手に傷とかついて欲しくないからなあ」
「ありがとうセルベリア」
整った顔立ちでイリーナに微笑みかける。
「―・・・こうやってゆっくり滑るのもいいな」
「そうだな・・・」
「忙しい日常から解放されて、ゆっくりと流れる時を過ごすのも楽しいな」
星座のイルミネーションが幻想的に氷上を照らす。
祥子が光精の指輪で呼び出した妖精が2人を囲うように舞う。
「トゥルペは氷上のチューリップと呼ばれたくらいスケートは得意でありますよ!」
トゥルペ・ロット(とぅるぺ・ろっと)は得意のスケートをファル・サラーム(ふぁる・さらーむ)に教えてあげようと、スケート靴を履かせてやる。
「こけちゃうかもしれないよ〜」
「習うより慣れろであります!とにかく滑るでありますよ!」
弱気なファルを手を葉の手で掴み、スケートリンクの方へ引きずる。
「うううわわあわわわ滑る滑るすべる〜。あわわわ、止まらないよ〜!」
つるつると滑るリンクを全速力で滑り、ベタンッと尻餅をついてしまう。
「凄い二つ名が付くくらい上手だって聞いたよ。凄いなぁ・・・・・・!」
上手に滑るトゥルペの姿に、赤色の瞳をファルはキラキラと輝かせた。
「もう一度滑ってみるであります!」
「分かりましたぁトゥルペ先生〜!よぉしもう一度・・・・・・きゃぅっ」
左足をひねってしまいドタンッと倒れてしまった。
「あちゃー・・・」
「痛いよぉ・・・・・・ぐすっえぐっ・・・」
「仕方ないでありますね。ちょっと休むであります」
泣きべそをかいているファルを優しく起こしてやり、ホットココアがあるテーブルへ連れていってあげる。
取りに行くとそこでイリーナと呼雪がカフェオレを飲んでいた。
「ほぁ〜温まる♪」
ファルは冷たくなった両手を温かいカップで温める。
「イリーナも休憩しているのでありますか?」
「あぁ、さすがに冷えてしまったからな」
熱いカフェオレをふぅふぅと冷まして口へ運んだ。
「学校が離れているところにあるからこうして遊べる時間はあまりないけど、今日は楽しかったよ」
「私たちも楽しかったぞ。また一緒に遊ぼうな」
カップで手を温めながらイリーナは楽しそうに微笑む。
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