First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
chapter.2 Woman’s rush
一通りテントの設営や焚き火の準備が終わった頃、ヨサークが再び生徒たちを集めて指示を出した。
「よし、寝床と火は用意出来たみてえだな。じゃあいつも通り、男は全員テントで寝てくれ。女は野宿だ。そして凍え死ね」
前回から何も変わっていないヨサークの傍若無人っぷりに、またもや生徒たちからは非難轟々である。巻き起こったブーイングを、ヨサークは一喝した。
「やかましいぞこらあっ! 俺がいつまでも不耕(たがやさず)を誓ってる男だと思ってんじゃねえぞ!」
別に誰もそんなことは思ってないのだが、テンションが上がりすぎてヨサークは若干ハイになっていたのだ。一瞬静まった生徒たちだったが、その中から凛とした声が聞こえた。
「まったく、器の小さな方ですね」
以前にもヨサークの船に乗ったことがある何人かは、既視感を覚えた。
こんな展開、前もあったような……ということは、この声の主は、またあの女の子か?
そう、蒼空学園校長誘拐事件の際、同じようなシチュエーションで同じような言葉を吐いた生徒があの時ひとりいた。その名は、荒巻さけ。
がしかし、生徒たちの中からすっと前に出てきたその声の主は、さけではなかった。そこに立っていたのは、さけよりもやや大人びた外見の、風森 望(かぜもり・のぞみ)だった。
「どうも反抗期の生徒が多いみてえだなあ、あぁ?」
早速望を睨みつけるヨサーク。当然望は怯まない。
「そこまで女性を嫌う理由が分かりませんけど、おおよそ美人局とか二股とか財布代わりだったとか、そんなしょうもないことでしょう?」
「大した推理力だな、あぁ? そんなことを考えつくってことは、おめえ普段から美人局とか二股してるクソメイドってことじゃねえのか?」
「ああ、それかそんな汚らしい言葉遣いだから、女性が離れていってしまうのかもしれませんね。そもそも、そんなに女性嫌いをアピールしていたら、逆に周りから見たら未練たらたらにしか見えませんけれど?」
「おい黙れクソメイド。ガキが知った風な口聞いてんじゃねえ。おめえの口は主人のモンをくわえるためについてんだろ? なら余計なこと喋ってねえで、さっさと主人におねだりしに行ってろ。じゃなけりゃ耕すぞ」
段々ヒートアップしていくヨサークと望の口論。互いにそれをやめる気はないらしい。
「耕す耕すと言う割には、一株が駄目だったからと言って畑全てを潰すような言動ですね。これを器が小さいと言わずして、何と言うのでしょう」
望がヨサークに負けじと言葉をぶつけ返す。と、そこでようやく、口げんかを止めに入る者が現れた。望のパートナー、ノート・シュヴェルトライテ(のーと・しゅう゛るとらいて)である。
「の、望! たとえ本当のことでも、言って良いことと悪いことが……!」
「……あぁ!?」
若干火に油状態だが、ノート自身に悪気はまったくなかった。ただ少しばかり、彼女は馬鹿だった。
「……お嬢様が言うのなら、このへんにしておきましょうか。それに一応依頼を受けたわけですから、依頼主には従いますよ。どんなにそれが生理的に嫌な相手でも」
「だから望! それはわたくしも同じですけど、ここで本人を前に言わなくても良いことですわ!」
繰り返し言うが、彼女はちょっと気配りが足りないだけで、悪気はないのだ。そしてちょっとだけ馬鹿なのだ。
「おめえら、まとめて耕すぞ!!」
ヨサークが我慢しきれず怒鳴る。ノートが止めに入ったこともあり、望は仕方なく集団の中へと戻っていった。ちなみにこの時、終夏が持っていた種芋をぎゅっと握りしめていた。いつでも耕される準備出来てるよ! と言わんばかりの姿勢だ。最も、まったく彼女には関係ない上に相変わらず言葉の意味を誤解したままなので、周りからしたら「何あの人芋を固く握ってるんだろう」くらいにしか映っていなかったが。
そんな終夏の様子はさておき、望とノートが引き下がった後、ヨサークは改めて寝床を含めた待遇の違いを生徒たちに示していた。そこに、辛抱ならないといった様子で割って入ったのは姫宮 和希(ひめみや・かずき)だった。
「おいお前! さっきから男はどうだの女はどうだの、細けーことをグダグダとくだらねえぜ!」
「今度は誰だ、あぁ?」
和希は堂々とした態度で、ヨサークに迫る。
「過去に何があったかなんて知らねーけど、みっともねえぜ。マジでタマついてんのかよ? 要は、能力があるかないかだろ?」
とても女性とは思えぬ乱暴な口ぶりでヨサークに抗議を続ける和希。ヨサークもしかし、相手が女性とあっては黙っていなかった。
「女が一丁前に言うじゃねえか。女の持ってる能力なんて、男にたかる能力か陰口叩く能力くらいだろうが。大体おめえこそ、女なのにそんな口調でみっともねえと思わねえのか。マジで胸膨らんでんのか、あぁ?」
「どんな口調しようと勝手じゃねーか! そもそも俺は、外見は女だとしても魂は漢だぜ! そこらのタマ無し野郎共より男らしい俺を女扱いすんじゃねーよ!」
女が大嫌いなヨサークと、男らしさにこだわる女の和希は、なかなか相性が悪かった。乱暴な言葉のやり取りを何回か続けた後、和希は鼻息荒くヨサークに背を向けた。
「よーし分かった、俺がそこらの野郎より役に立つヤツだってことを示してやるぜ! それで俺の実力が分かったら、そん時は俺のことを認めろ! いいな!」
そう言い残すと和希は、辺りに落ちていた、余った木々を担ぎ片付け始めた。男がやるような仕事でも俺は出来るぜ、というアピールなのだろう。ヨサークはそれを一瞥すると、小さくひとつ息を吐いた。
依然男女の寝床格差が埋まらない現状に、女性陣は不安を抱えていた。
これ、私たちリアルに野宿させられるんじゃないの? と。
そんな空気を好機と捉え、桐生 円(きりゅう・まどか)がパートナーのオリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)と共に動き出した。円はゆっくりとヨサークの前へ進み出ると、彼に問いかけた。
「やあ、ボクのこと、憶えてる?」
「あ? 誰だおめえは。自意識過剰にも程があんぞクソガキ。ランドセル背負って緑のおばさんとでも戯れてろ」
外見が幼かろうと関係なく、女と見るや否や厳しく当たるヨサーク。しかし円は、そんな彼の反応を予測していたかのように薄く笑い、一枚の写真を取り出した。他の生徒たちからは見えぬよう、自身の体で隠しながら。
「ヨサークくんが憶えてなくても、ボクは憶えてるんだよね。あの時、突き飛ばされて暴言を吐かれたことを」
そう、円は前回の招集時、ヨサークにぶつかられた上に罵声を浴びせられるという、ひどい目に遭っていたのだ。そこで彼女は仕返しをすべく、他の生徒たちが乗船し空中戦を行っている間、ずっとパートナーと共に蜜楽酒家でヨサークの情報を集めていたのだ。そして彼女は、一枚の写真を入手することに成功していた。
「これ、なーんだ」
円がぺらり、と写真を表に返す。それを見たヨサークは、思わず目を丸くし、固まった。
「お、おめえがなぜそれを……」
そこに写っていたのは、下半身を脱いで足と足の間から長ねぎを挟むように奥まで持っていき、ねぎを持った両手を前後のポジションにセットして当てているヨサークだった。円たちがお金を払ってまで蜜楽酒家で手に入れたものは、これだったのだ。なにをしているところかはよく分からないが、あまり人に見られたくない姿であることは間違いない。
「こんな恥ずかしいことをしていたなんてびっくりだよ。まあこれが儀式だっていうのをボクは知ってるけど、それを知らない他の人たちは、空賊の頭がこんなことしてるのを見てどう思うんだろうね」
円は写真と一緒に、ヨサークの故郷の情報もある程度入手していた。なんでもヨサークのこの奇行は、彼の村に代々伝わる豊穣祈願の儀式らしい。儀式の詳しい内容までは知ることが出来なかったが、手元にこれだけあればそれで充分だった。
「……何がしてえんだ、おめえ」
「まあ、そう構えないでよヨサークくん……ううん、頭領」
「あ!?」
「ちょっと個人的なお話がしたいだけだよ」
円が妖しい笑みを浮かべている時、オリヴィアはヨサークの後ろに自然に回りこんでいた。そのままヨサークに近付くと、すっと肩から腕を回すオリヴィア。
「あらあらぁ〜、ヨサークさん、こういうご趣味だったのねぇ〜。これは他の皆さんに教えてあげないといけないわよね〜」
「おめえっ……! 調子に乗んじゃねえ!」
振り返ったヨサークは、強引にオリヴィアの腕を振り解いた。その時だった。
「ええっ、頭領、ド変態じゃないですか!」
「俺、頭領はそういうことをしない、硬派な男だと思ってたのに!」
「頭領、見損ないましたぜ!」
ヨサークの耳に、次々と船員たちの非難の声が聞こえてきた。
「お、おめえらちょっと待て、これは……」
うろたえるヨサークを見て、円はにやりと笑った。今ヨサークの間近にいるのはオリヴィアと円だけなので、船員たちが写真を見れるはずもなければ、これほど急激に態度を変えることもないはずである。つまり、ヨサークの耳に聞こえているこれらの声は幻聴だった。円がスキル「その身を蝕む妄執」で、ヨサークに偽りの声を聞かせていたのだ。このスキルは幻覚を見せるだけでなく、こういうことも可能らしい。
少ししてオリヴィアが目で合図すると、円はスキルの使用を止めた。ハッと我に返るヨサーク。そんな彼の耳元で、オリヴィアが囁く。
「ねえ〜、ヨサークさん? 私たち、入団希望なのよねえ〜。皆さんに紹介してもらえないかしらぁ〜?」
「女は入れねえって何度言ったら……!」
「あらぁ〜? 何か問題があるようなら、あの写真を皆さんに見てもらうしかないわよねぇ〜」
「……ぐっ、女、憶えてろ、いつか必ず耕し……」
言いかけたところで、円が写真をひらひらとさせた。ヨサークは止むを得ず言葉を飲み込んだ。
「これで、無事入団だね。それと、船員は当然テントで寝れるよね」
満足そうにヨサークにそう告げた円の横で、オリヴィアが生徒たちに向かって声をあげた。
「皆さぁ〜ん、ヨサークさんが、女性も入団していいって言ってくれたわぁ〜。寝床もちゃあんとテントよぉ〜」
彼女のその言葉で、場は一気に歓声に包まれた。船員たちが意外そうな顔でヨサークを見つめているのを確認すると、オリヴィアはさらに調子に乗ろうとした。
「そしてぇ〜、私オリヴィアはヨサークさんの婚や」
今度は、オリヴィアが言いかけた言葉を飲み込む番だった。ヨサークがそっと刃物をオリヴィアの背中に当てていたのだ。
「いい加減にしろよ女。静かな水面の水田でも、台風で水が溢れることだってあんだぞ」
オリヴィアは、「冗談よぉ〜」と煙に巻こうとするが、ヨサークの目は本気だった。
その時、盛り上がっている生徒たちの中からすっとナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)が現れ、ヨサークに声をかけた。
「よっ、団長! さすが懐が深ぇや! ますますいい男になりましたぜ!」
団員であるナガンはヨサークをおだて、機嫌を取ろうとした。団員であるナガンに褒められ、悪い気がしなかったヨサークは刃物をしまい、オリヴィアの背中を押した。
「いいかおめえら、入団を許可するっつっても、あくまで一時的な仮入団としてだ。男は今まで通り普通に入団出来るが、女は仮団員ってことを忘れんな。寝床もテントの中で構わねえが、組み立てや片付けはおめえらでやれ。いいな?」
「団長、厳しさの中の優しさが光ってますぜ!」
ナガンの言葉を聞き、どんどん機嫌が直っていくヨサーク。彼を一通り煽り終えると、ナガンは先ほどまでヨサークと交渉していた円らと生徒たちの群れの中で合流した。
「ヨサークくんを焚きつけてくれて、助かったよ」
「なぁに、お安いご用だぜぇ」
「でも、団員なのによく煽り役なんて引き受けてくれたね。この話を持ち出した時は、断られるかと思ってたよ」
「おいおい、ナガンを甘く見てもらっちゃあ困るなァ。楽しそうなことなら、バレない限り何だってアリなんだぜぇ」
どうやら、円とナガンは裏でつるんでいたらしかった。軽く会話を終えると、ナガンは「さァて、そろそろ団員としてのナガンに戻ろうかァ」と言い残し、ヨサークのところに向かっていった。
そのヨサークのところには、ヴェルチェ・クライウォルフ(う゛ぇるちぇ・くらいうぉるふ)が円たちに続きヨサークへの懐柔を図っていた。
「ヨサークちゃんずるいじゃない。こないだはあたしの入団駄目だって言ったのに、あの子たちに言われたら女性の入団を認めるの?」
ヴェルチェは自身が言うように、前回の乗船時に色気を武器に入団しようとしたのだが、ヨサークに手痛くあしらわれたのだった。そんなヴェルチェにとって、さっき起きた急な女性入団可の流れは納得出来ないのだろう。
「ねえ、あの子たちに何言われたか分かんないけど、きっとあの子たちよりあたしの方が都合の良い相手になれると思うのっ」
「……女の仮入団を認めたからって、気安く話しかけてくんじゃねえ」
「ふふ、相変わらずねヨサークちゃん。でもね、『都合の良い相手』の意味をきっと履き違えてると思うのよね」
「あ?」
いぶかしがるヨサークに、ヴェルチェは何かを小さく呟いた。それを聞いたヨサークは、信じられない、といった様子でヴェルチェを見て口を開く。
「……それを俺が信じるとでも思ってんのか?」
「さあ? 信じるも信じないもヨサークちゃん次第よ? ただ、どっちにしてもこの外見で仲良くしてたら変な噂も立っちゃうだろうし、それは諦める。あたしはただ精一杯、ヨサークちゃんに協力するだけよ」
「おめえは何が目的だ」
「やだ、そんな野暮ったいセリフ言わないでっ。あたしはただ一目惚れしただけなの。ヨサークちゃん、あ・な・た・に」
「あ? だっておめえ、今……」
「ふふ、そこから先は、言わないの」
人差し指でヨサークの口を塞ぐと、ヴェルチェは意味深な発言と共にヨサークの前から消えた。ヨサークはただその背中を、不思議そうに少しの間見ていた。
「ったく……喧嘩売りに来るヤツといい、男みてえなヤツといい、どっからか俺の写真持ってくるヤツといい、なんだか不気味なヤツといい……どうなってんだ、最近のガキ共は」
ヨサークがひとつ息を吐く。と、そんなヨサークのところに、またもやひとりの生徒がやって来た。
「なんだ? また女か?」
振り返ったヨサークは、言葉を一瞬失った。そこに立っていたのは、股下で大胆に切れ込みを入れたセクシーなメイド服を着た大和だった。服の丈が合っていないせいでヘソが常に見えており、ひらひらとした布からは見事な大根足が伸びている。そして胸には乗船時に所持していたマスクメロンを収め、これでもかというくらいに豊満な胸を形作っていた。
そう、彼、大和は以前とある孤島で女装をした際、仲間に無理矢理大根を胸に詰められ散々な思いをしていた。今回はそのリベンジということで、前のような歪な胸ではなく、きちんと丸みを帯びた立派な胸をこしらえたのだ! 大和改めヤマコの再来である。いや、もはやこれはただのヤマコではない。進化したヤマコ、そう、セクシーダイナマイト・ヤマコオブジョイトイ(以下SD・YOJ)である。SD・YOJはそのボリューミーすぎる胸を上へ下へ揺らしながら、ヨサークへと近付き、声色を変えて話しかけた。
「あっはぁんっ、ヨサーク様ぁ、見て、私を見てぇ……っ! そしてイれて! イれてほしいのっ……!」
言葉が少し抜けてはいるが、どうやらSD・YOJは空賊団に入れてほしいと言っているようだ。これにはさすがのヨサークも迫力負けし、思わず後退せざるを得なかった。
そもそも、なぜ彼は入団を志願しておきながら、女性嫌いのヨサークに女装して挑んだのだろうか。それは、なんか流れ的に女性が次々にヨサークに絡んでいたから、これは女装キャラも受け入れられる流れだ、と彼が勘違いしたからだった。加えて、彼の頭の中の方程式は一般の人とちょっとずれていた。彼の脳内では、このような式が成り立っていたのだ。
農家の男→農作物を愛している→じゃあ大根とかメロンも愛しているはず→そのふたつを兼ね備えた俺を愛している
「ヨサーク様ぁっ、見ないでっ! 私の胸を、脚をそんなにじろじろ見ないでぇっ!!」
脳内の式もさることながら、言ってることも滅茶苦茶だ。見てほしいのか見ないでほしいのかどっちだよという話である。がしかし、SD・YOJはこれで確信した。己の勝利を。
目の前の美味しそうな作物、そしてそれを恥らう純朴な乙女心! 畑に生きる男には堪らないはずっ!
しかし、彼は、大事なことを忘れていた。基本的に女装した彼は、気持ち悪いのだ。なんなら、胸の異常な膨らみと丸みがそれをさらに助長させていた。セクシーダイナマイト・ヤマコオブジョイトイ改め、気持ち悪いヤマコオブジョイトイ(KYOJ、略してキョージ)である。
「いや、つうか気持ち悪いからやめろよ、そういうこと……」
そしてキョージは、普通に怒られた。あのヨサークが普通に注意したということは、よっぽど気持ち悪かったということだろう。
「あ、はい……」
「おめえも、もうそんくらいの歳になったらやって良いことと悪いことの区別くらいつくだろ?」
「はい……なんか……すみません……」
悪ふざけが過ぎた子供が叱られているかのような、若干気まずい空気が流れる。
「あの、これは本当に悪いと反省しました。衣装だって、孤島でサバイバル生活した時の使いまわしですし。でも俺、とにかくヨサークさんの気を引きたくて……!」
衣装が使いまわしかどうかは心底どうでもいいのだが、とりあえず反省はした様子のキョージ……否、大和。そんな彼を見て、ヨサークは軽く頭を小突いて優しく告げた。
「こんなことしなくても、一緒に立ちションした仲じゃねえか。入団してえなら、男のままのおめえで来い。な?」
「ヨ、ヨサークさん……!」
前回の乗船時に共に立ちションしたことをアピールするのは、最後の手段にしようと大和は思っていた。しかし、まさかヨサークがそれを憶えていて、しかも入団を受け入れてくれるとは! あの時共に晒したサツマイモは、干からびてはいなかった! 己のサツマイモと排尿量に不安を感じ、迷走し迷走を重ね、彼が辿り着いた結果は、感謝であった。1日1回、感謝の小便漏れ!!
「さあ、着替えて来い。それでおめえも、入団だ」
感謝の気持ちが湧くと小便が漏れるかどうかは置いといて、大和はとりあえず入団するため、そしてへそ出しっぱなしの服でお腹が冷えたため着替えることにした。
なお、大和のこの一連の奇行は、今回同行した大半の生徒の間で「イルミンさんちの大和さん、女装癖があるんですって」ともっぱらの噂となった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last