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【十二の星の華】双拳の誓い(第4回/全6回) 虜囚

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【十二の星の華】双拳の誓い(第4回/全6回) 虜囚
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「おや、そんな所で何をしているんだい。ちゃんとゾブラクの下で十二星華としてボクらの役にたってくれないと困るじゃないか」
「誰だ?」
 突然立ち塞がった緑の髪の少女に、レン・オズワルドが誰何した。
「シャムシエル! 蛇遣い座の十二星華が、なんでこんな所へ!?」
 アルディミアク・ミトゥナが、驚いてシャムシエル・サビクを見つめた。
「まだお勉強が足りないのかな? いいよ、時間なら、いくらでも作りだしてあげるさ。おいでよ。マ・メール・ロアにはいろいろ揃ってるんだから」
 シャムシエル・サビクが、手をさし出してアルディミアク・ミトゥナをまねいた。
「おかしい。あれは、本人なのか?」
 アルディミアク・ミトゥナは、猜疑心を隠さなかった。
「なら、俺が確かめてやろう」
 言うなり、レン・オズワルドが発砲する。
「嫌だなあ。キミのペットは、お行儀が悪すぎるよ」
 素早くレン・オズワルドの銃弾をよけて、シャムシエル・サビクが笑った。そこへ、マイクロミサイルが飛来する。
 激しい爆風とともに、あっけなくシャムシエル・サビクの姿が吹っ飛んだ。
「やはり偽物か。あの女が、あの程度でやられるはずがない」
「うん、そうだよね」
 アルディミアク・ミトゥナとノア・セイブレムのつぶやきを裏づけるように、壁に開いた大穴から流れ込んできた外の霧が、ゆっくりとシャムシエル・サビクの姿を形作り始めた。
「きりがないようだな。ここは、伯爵の許に急ぐのがセオリーだと思うが、どうだ?」
「いいだろう。きっと、ココもそこにいるはずだ」
 レン・オズワルドとアルディミアク・ミトゥナはうなずきあうと、シャムシエル・サビクとは反対の方向へと走りだした。
「援護します」
 もう一発ミサイルを放ったメティス・ボルトと、ノア・セイブレムもその後に続いた。
 
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「なんだか、あちこちで騒ぎが始まってるみたいよ」
「まったく、こらえ性のない人たちですわね」
 聞こえてくる爆発音などに、ヴェルチェ・クライウォルフとロザリィヌ・フォン・メルローゼが顔を見合わせて言った。
「すっかり、アルディミアクとはぐれちゃったじゃん。早く捜さなきゃ」
 適当な部屋の扉を次々に開けながら、メイコ・雷動が言った。
「そんなことをしたって、中にいる可能性なんか……」
 ないと言いかけて、浅葱翡翠は目を丸くした。
 本当に部屋の中に、アルディミアク・ミトゥナがいたからである。それも、二人も……。
「どうなってるんです!?」
 驚きを隠せない浅葱翡翠たちに、アルディミアク・ミトゥナたちは静かに微笑んだ。
 部屋の中は、なぜか庭園に面したテラスのようになっており、丸テーブルを挟んで座ったアルディミアク・ミトゥナたちは、優雅にお茶を楽しんでいた。
「どうですか、君たちも」
 お茶を勧めてくるアルディミアク・ミトゥナは、白金色の髪を後ろ手に一つに束ねている。どちらかというと、二人とも、浅葱翡翠の見知っているアルディミアク・ミトゥナよりは少し年嵩のように思えた。
「あのう、もしかして、アルディミアクさんのお姉さんですか?」
 その言葉に、二人は一瞬戸惑ったように顔を見合わせると、声をあげて笑い始めた。
「アルディミアクは、彼女の名だよ。私は、アラザルク、残念ながらお姉さんではなくて、お兄さんだ」
 間違いがおかしいとばかりに笑いながら、髪を一つに束ねた方のミトゥナが答えた。
「どういうことですの?」
 初耳だとばかりに、ロザリィヌ・フォン・メルローゼが聞き返した。
「私は、彼女の先……」
 アラザルク・ミトゥナが話しかけたとき、突然吹きつけてきた爆風がその場の霧を一時的に払ってしまった。同時に、二人の姿がかき消える。
「これって……」
 メイコ・雷動たちは、その場に呆然と立ちすくむだけであった。
 
 
4.霧の深層
 
 
「お待たせしました。準備オッケーです」
 クロセル・ラインツァートは、パワードスーツ一式を装着してジャワ・ディンブラの所に戻ってきた。
「不思議な鎧だな。そのまま、塔の上に運べばいいのか?」
「お願いします」
 奇妙な物を見るような目のジャワ・ディンブラに、クロセル・ラインツァートは言った。
 パワードスーツは単体でも機能することはするが、基本的にすべてを装着して運用することを前提で作られている。そのため、完全装備だと人間のシルエットよりも一回りか二回りほど大きくなり、重量もそれなりとなる。だが、ヴァンガード強化スーツとは比べものにならないほど防御力などは強化されている。
 ちなみに、ちゃんとクロセル・ラインツァート専用機は、フェイス部分に仮面つきである。
「行くぞ」
 ジャワ・ディンブラはクロセル・ラインツァートをつかむと、空に舞いあがった。
「出発したのかな?」
 バックパックの中にちょこんと収まったマナ・ウィンスレットが、クロセル・ラインツァートに訊ねた。
「ええ。おとなしくしていてくださいね」
 そんな会話を交わすうちにも、あっと言う間に目的の塔の上に近づく。
「塔の上に投下すればいいのだな」
「ええ。出番というか見せ場ですねえ。高い所と落下には慣れています。思いっきりやってください」(V)
 クロセル・ラインツァートに言われて、ジャワ・ディンブラは言葉どおりにポイと彼を塔の屋根の上に落とした。
 クロセルの計画では、平らな塔の上にストンとポーズを決めて着地し、そのまま中に入ってゴチメイを捜すつもりだったのだが……。
「ははははははは、霧よりの使者、クロセル・ラインツァート参……、はれれれれれれ!?」
 格好良く立ちポーズを決めるつもりが、足下がすべる。
「クロセルぅ、この屋根、とんがってるのだ」
 バックパックの蓋を少し開けて外を見たマナ・ウィンスレットが言った。彼女の言う通り、この塔の屋根は円錐形であった。
「ははははは、やはり、落ちるのですね」
「笑ってる場合ではないのだ。なんとかするのだ!」
 マナ・ウィンスレットが叫んだ。
「よろしい、なんとかしましょう」
 クロセル・ラインツァートが、落ちながら塔の外壁にしがみついた。見た目は格好悪いが、これでなんとかするしかない。
 ガリガリと塔の壁を削りながら、クロセル・ラインツァートは落下していった。
 
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「なんとか入り込んだのはいいけど、こんなに霧が深いと、光学迷彩があまり意味がないなあ」
 塔を目指しながら、如月 正悟(きさらぎ・しょうご)は中庭を進んでいった。まさに五里霧中という感じで、トレジャーセンスでなんとか方角の見当をつけているという状態だった。だが、ゴチメイを探していてトレジャーセンスに反応があるということは、進行方向に間違いはないということになる。
 やがて、なんとか目標としていた塔の下まで辿り着く。
「これは、どうやったら登れるんだ」
 思ったよりも小さな入り口の扉を見つめて、パワードスーツをもてあました如月正悟は、じっと塔を見あげた。
 こん……。
 何か、石の破片が上から落ちてくる。
「はははははは……」
 直後に、笑い声とともにパワードスーツが落ちてきた。
「なんでだー!」
 逃げる暇がなく、成り行き上如月正悟は落ちてきたパワードスーツを受けとめようとした。だが、当然二つのパワードスーツは激突する。
「ぐはっ」
「こんな所で……」(V)
 二人ともパワードスーツのおかげで怪我をすることはなかったが、さすがに激突の衝撃で気を失って、地面に大の字でのびてしまった。
 
    ★    ★    ★
 
「なんか、凄い音がしたよね」
 空飛ぶ箒で塔の上に近づいた久世沙幸が、隣を飛ぶ藍玉美海に言った。
「誰か、塔に激突したみたいですわね。塔が倒れないうちに、早く中を調べましょう」
 二人は、クロセル・ラインツァートが崩しかけた壁に注意して、塔の頂上に入っていった。
「今、塔に突入しました」
 後ろから、小さな箒に乗ったマネット・エェルと、ミニチュアサイズの小型飛空艇に乗った九鳥・メモワールが続く。
マサラ・アッサム(まさら・あっさむ)、発見!」
 塔に入ってすぐに、マサラ・アッサムの姿を見つけて、マネット・エェルが叫んだ。
「ははは、見っかっちゃったか。勘弁してくれよ。ボクが君たちの彼氏を取ったんじゃなくて、ちょっと声かけたら向こうから寄ってきたんだからさあ」
 そう言うと、百合園女学院の制服姿のマサラ・アッサムは、ふわりとスカートの裾を翻して螺旋階段を駆け下りていった。
「追いますわよ!」
 逃げる女は追う。反射的に、藍玉美海は階段を駆け下りていった。
「追跡ですわ」
 ヒュンと、マネット・エェルがその後を追っていく。
「おかしいわね。いつゴチメイの制服を変更したのかしら」
 すぐには追従せず、九鳥・メモワールがふむと考え込んだ。
「えっ、そういえばそうだよね。それに、まだ部屋を調べてないから、行ってみよ。もしかしたら、ペコさんがいるかもしれないし」
 そう言うと、久世沙幸は、塔の一番上の部屋に入っていった。
「同意します」
 九鳥・メモワールがそれに続く。
「えー!? どういうことなの?」
 ベッドの上に寝かされている人物を見て、久世沙幸は驚きの声をあげた。