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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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兵は詭道なり-07 吸血鬼・獣人混成軍

 ドストーワの、後軍。砂漠の中ほど、砂丘地帯に差しかかろうというところ。
「ズイブン、中軍ト離レテシマッタナ」
「モウ先鋒ハ、敵ヲ倒シテルンジャネェェカ?」
 グッヘッヘヘ。
 進行方向から、誰か来る。同じ部隊の者らしい。中軍からの伝令だろう。
「オイ。ドウシタ。中軍ニ何カアッタカ?」
「指揮官ニオ会イシタイ。先鋒ガ壊滅状態トノコト」
「ナ、何」
「中軍ハ、ソノ報ヲ受ケ、スデニ、グレタナシァ、急行シタ」
 指揮官が出てきた。
「ジャールバッフだ。よくぞ伝えてく、ぐ……!! な、何だこれは!?」
 指揮官{boldジャールバッフ(じゃーるばっふ)の胸が、赤く染まっていく。
「オ、御大将!」「オイ、オマエカ。オマエガヤッタノカ?」
「……」
 伝令に来た獣人は、何もしていないようだ。無言で、立ち尽くしている。
「ぐ、ぐ、ぐ」
「御大将……ジャールバッフ様!!」
「て、敵のさ、策に…………」
 ジャールバッフは息絶え、砂に沈んだ。
「御大将ガ亡クナラレ」
 砂丘の左側から、何か多数飛び出してくる。同時に、射撃が来る。
「あーそびーましょー ミネルバちゃんあたーっく!」
 射撃で側面の獣人兵を一掃すると、乱撃ソニックブレードを放ちながら、突進してきた。従えている兵は、牙を剥き出しにした下級の吸血鬼どものようだ。
「オ、オノレェェ」「ア、反対カラモダ!」
 逆からは、投擲が来る。
 怒りを滾らせた獣人兵が、かかっていく。「貴様等ァァァ。不意打チ、卑怯ダロォ!」
 オリヴィア・レベンクロン(おりう゛ぃあ・れべんくろん)はディフェンスシフトを展開した。
「さあ人形さん、恐怖を教えてあげましょう」
 オリヴィアがぱちんと指を鳴らす。すると、砂漠の空から、黒い虫の群れが降り立ち、獣人兵団を襲った。毒虫だ。獣人の鋭い感覚に、毒虫の羽音と臭いは効いたらしい。
 砂丘の影には、狙撃を終えた桐生 円(きりゅう・まどか)
「あの様子だと、将は死んだね……討ち取ったり(シャープシューター&とどめの一撃使用)。
 ミネルバも上手くできたようだよ」
 円の狙撃後、一呼吸おいて円を見て左側より襲撃。そう伝えてあった(実際には、「銃撃後少ししたら遊びに行きなさい」、と)。兵は勿論、砂丘に隠してあったのだ。
 奇襲は成功した。
 指揮官(後軍にいたのは更に全軍の指揮官)が倒れ、士気も完全に低下した。
 勿論……虚報を流して、中軍と引き離したのも、円の策であった。
 相手は獣人兵だ。奇襲をもっての各個撃破できなければ、勝利は難しかったろう。
「逆らえば死だよー武器を捨ててうつぶせにねー、なんない子は壊しちゃっていいよー♪」
 ミネルバ・ヴァーリイ(みねるば・う゛ぁーりい)は、生き残りの獣人兵を捕虜とした。
 オリヴィアは、下級吸血鬼どもに、死体からは装備を剥ぎ取るよう命じた。最後尾で輜重隊を守っていた一部は、輜重を捨てて、本国の方に逃げていった。円らは、物資を手に入れた。円は、手に入れた輜重を砂丘に隠し、そこに隊を留まらせた。
「グヮヮ!」「ヤ、ヤメロ」
 また、円らの吸精幻夜な夜が始まる。
「さすが血気盛んな獣人兵の血。おいしいよ」「何だか興奮してきたねぇ」「はぁ、はぁ」
 吸精幻夜が更けていく。獣人兵の内、100は戦死、100は逃亡。200程をしもべにした。(桐生円軍300)
「はぁ、はぁ。さすがに、頭にまで血が上ってきたよ」「はぁ、はぁ」「はぁ、はぁ」



「活躍した者には兵を与える」
 円は、全隊の前で、獣人兵を捕らえる活躍をした吸血鬼を数名、前に出し、兵長の位に就けてみせた。
 円の軍は、吸血鬼・獣人の混成軍となった。砂漠に住む魔も、幾らか寄ってきている。
 黒羊、教導団。どちらと結ぶべきか。円は思案した。
「さて、ともあれお次は……」
 またその目が、赤く妖しく光った。