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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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【十二の星の華】ヒラニプラ南部戦記(第1回)

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兵は詭道なり-02 タクト

 グレタナシァを睨む岩城。三日月湖に拠点を置く教導団遠征軍の最前線だ。
 最上階から、国境を見つめ、呟く。
「兵とは詭道なり」
 松平 岩造(まつだいら・がんぞう)。城を預かる【龍雷連隊】が隊長である。
「嬉しいな。甲賀が来てくれた。さて、私はどうしようか?」
「ああ。隊長さんは、思う存分、城の外へ出て暴れてもらいましょうか」
 甲賀 三郎(こうが・さぶろう)。兵法を知る人である。
 まだ傷病兵のままだが、龍雷の軍師(仮)として、軽くタクトを振るくらいのことはできる。そう、甲賀は思った。忍者軍師の復帰。
 岩造も、甲賀の言葉に、ニ、と笑む。
「フフン。やはり、私にはこれか」
 岩造は、ブライトグラディウスを抜き放ちその白く輝く刀身を見つめそう言った。
「岩造様!!」
 男性用軍服に身を包んでいるフェイト・シュタール(ふぇいと・しゅたーる)。前回以降、岩造と結婚している。
「彼女は、銃器などとかが取り扱えるようになってきた。フェイトと約20名は、城内の護りに残そう」
「はぁぁ!!」
「私は約80名を率い、城外の敵を討つ!!!」
「隊長さん、いい意気だ。これで兵の士気も上がりましょう。
 さてすでに、国境に敵の大部隊が展開している……我が軍は現状ではそれに対し無勢。しかし手は打ってあります。グレタナシァに入り込んでいるナインに、特命の士・ロザリオを差し向けてあります。我が遠交近攻策、必ずや成功しましょう」
「おお、甲賀!!! さすがだな」
 岩造は、ファルコン・ナイト(ふぁるこん・ないと)の肩を叩く。「ならば行こうか。策謀は甲賀に任し、ファルコン、私達は存分に敵を粉砕しようぞ」
「……岩造様」
 ファルコン、静かに頷く。
 そこへ更に、
「岩造殿ー! 一隊が、岩城に向かって近づいてきますぞぉ」
「何」
 岩造は階段を駆け下りる。ファルコンもそれに続いた。
「おお、来てくれたのか!!!」
「フフフ、久しぶり。龍雷の隊長さん。間に合ったようだね。
 どうだった、最前線の気分は十分に味わえたかい?」
「ああ。城の中で、皆で震えてたよ」
「本当?」
 七名の援軍の到着。しかし駆け付けてくれた戦友に岩造は喜びを表した。
 バンダロハムの激戦を共に戦った【黒豹小隊】の隊長、黒乃 音子(くろの・ねこ)。以下、フランソワ・ド・グラス(ふらんそわ・どぐらす)パプディスト・クレベール(ぱぷでぃすと・くれべーる)ヴィクトル・ルクレール(びくとる・るくれーる)ら小豹分隊の参陣であった。そこには、ドリヒテガ(どりひてが)の姿もある。「イ、イワゾウ。オ、オマエヲク、喰ワセロ」「ドリヒちゃん……」
「ああ、いいぞ。この戦を勝ち抜いたら、最後に皆で食事を取るつもりなんだ」
 上階から顔を出した甲賀に、黒乃はサインを送ってみせる。甲賀の要請で駆け付けたのだった。作戦はすでに聞いている。ドリヒも、美味いものが食えそうだと涎を拭った。



 続々と、砂漠を進軍してゆく、ドストーワの獣人兵団。
 その先陣はすでに、グレタナシァ国境に到着し、黒羊兵、ならず者らと合流、すぐにも岩城を攻撃する姿勢を見せている。(岩城を攻めずいた黒羊軍のラッテンハッハはこれでようやく動く。)
 ただ、一つ気がかりとして、砂漠の小国郡の一つが、グレタナシァに攻め入るため兵を動かしているという。
 同盟国の上の立場にある黒羊の将として、三軍をまとめる指揮官ラッテンハッハ(らってんはっは)は、これに対し自軍の一隊を差し向けた。
 また、ラッテンハッハは、岩城から放たれたらしい伝書鳩を捕えていた。
「何。これは、龍雷連隊の軍師(仮)甲賀より、黒豹小隊に宛てられた手紙だな。
 ゛備蓄少なく、士気に陰りあり。早急に援助を請う゛、か」
 ラッテンハッハは、ニタリと笑んだ。
 ラッテンハッハはすぐさま、岩城攻めを決断した。
「これより、我らが共に打ち倒すべき教導団の最初の敵・龍雷連隊の岩城攻めに移る。
 ではまず、ならず者ども、行け! 続いて、獣人兵……」
「ハァ? お前らは後方で見学かよ。大そうなこって」
「グッヘヘ。マァ、イイダロウ。オレタチ、戦ウ為ニ来タノダ。血ニ飢エテイルンデナ」
「ま、待て。敵は手強い。教導団最凶の部隊だと聞く。各個撃破されてはいかぬ。
 ならず者ども。この戦の褒賞は弾むぞ」
「ほーぅ」
「共に攻めよ。お前たちが合わされば、数は500。これだけでも敵を圧倒する。後方は我らに任せよ……おい弓隊、しっかり二軍を援助せよ。
 行け、砂漠の猛者どもよ! 岩城を落とすのだ」
「フン。金が入るとあらば」「グッヘヘ。血ト肉。コレダゼ」