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5000年前に消えたはずの…蜃気楼都市

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5000年前に消えたはずの…蜃気楼都市
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第1章 馬路モード鬼ごっこ

 まるで蜃気楼のようにぼんやりと小さな都市がシャンバラ大荒野に現れた。
 しかし都市は闇龍の呪いにより、その場所から消されてしまったはずだが、なぜか数百年年に一度だけ同じ場所に現れるのだ。
 蜃気楼の都市に興味を惹かれた生徒たちが、その中へと入っていく。



「ここが蜃気楼みたいな都市か・・・。闇龍の呪いの影響らしいけど、1日経ったら本当に消えちゃうのかな?」
 興味津々に目を輝かせ、ニコ・オールドワンド(にこ・おーるどわんど)は周囲を見回す。
「へぇ〜、服装が変わっている人がいるよ」
 都市の住人がこういう服を着てみたいという夢を叶え、一瞬で服装が変わった瞬間を見て目を丸くする。
「服だけじゃなくって、魔法も使えるんだねぇ!いいなーっ、楽しそう」
 地獄の天使の翼で飛んでいる姿を見て、もしかしたら自分も使えるのかとワクワクがと回らない。
「自分たちの夢が叶うみたいですね。ということは私たちの夢も叶うということでしょうか?」
 ユーノ・アルクィン(ゆーの・あるくぃん)が公園を往来する住人を見ながら言う。
「まずは無難なとこから試してみようか。(もしもボクが大人になったら、どんな姿になるのかな・・・)」
「そうですね、まず叶えたい夢を考えてみないと。ニコさんならまず、どんな夢を叶えてみたいですか・・・て・・・・・・、えぇえーっ!!」
 ニコの方へ振り返るなりユーノは、ぎょっとした顔をして口をぱくぱくさせる。
「その姿は一体・・・」
「ボクの姿がどうかした?」
「どうもこうも・・・・・・」
 わなわなと指を震わせながらユーノは、彼にショーウィンドーを見るように指差す。
「すっごぉおいー!大人になりたいなーって思ったら、本当になれちゃったよ」
 ベタッと両手をショーウィンドに当てて、20代前半の姿になったニコは嬉しそうに自分の姿を見る。
 頭の中で考えた夢が叶ってしまったのだ。
「そ・・・そんな、声まで変わって!」
 若干、低くなったニコの声音を聞いたユーノは驚きのあまり腰を抜かし、ぺたんっと地面に座る。
「身長はユーノと同じくらいかな?」
 彼の傍へ寄り、自分と背丈を比べてみる。
「(ぱっと見た目感じは大人の姿になる前の面影はありますけど。ちょっとかっこよく見えますね、なんだか肉食系女子にモテそうな感じです・・・)」
 ユーノから見たニコのイメージは、だるそうな小動物系の可愛い雰囲気と、スラリとした体系のかっこいい系の中間的な感じだ。
「何か面白い物がありそうだね、探してみようか」
「はしゃぎすぎて、他の方たちを巻き込んでは・・・!」
「一緒に来てくれるよね?」
「えぇ・・・もちろん」
 ニコがニッとユーノへ笑顔を向けた瞬間、彼はパートナーの願いにより服従させられてしまう。
「せっかくだから飛んで空から見てみようよ」
 まだ使えないはずの地獄の天使の、影の翼をバサァアッと背に生やしてユーノの腰を掴み、ふわりと空へ舞い上がる。
「そうですね・・・」
 絶対服従させられたユーノは、ずっと笑顔のままだが決まったセリフしか言わない人形のように、ぼーっとしたような喋り方になってしまっている。



「普段は使えないスキルが使えるだったね。じゃあやることといったら・・・アレかな?」
 東條 カガチ(とうじょう・かがち)は親友の椎名 真(しいな・まこと)の方へ振り返りニヤリと笑う。
「人がいない広場があるからそこで試そうか。魔法を放つのはあまり得意じゃないけど、こんな感じに手を広げて、それで精神を集中させて的を絞るのかな」
 広場のジャングルジムによじ登り、真は空に手の平を向ける。
「―・・・凄い、出来た・・・!うわっ!?」
 吹き荒れる吹雪を見て喜びのあまり大声を上げるが、コントロールがいまいち上手くいかず、凍結した足場に足を滑らせ落ちそうになってしまう。
「おーい、大丈夫かい。椎名くん」
 ジャングルジムの下にいるカガチが声をかける。
「あぁ、なんとか大丈夫だよ。別の魔法も試してみるか」
 草の上へ飛び降りた真は地面に転がっているドラム缶を並べ、サンダーブラストを放ってみる。
 ズガァアーンッ。
 ぶっ壊されたドラム缶の破片が、無残に地面へ飛び散る。
「普段はナラカの蜘蛛糸や、鉄甲で直接仕掛ける技が多いから。こうやって魔法を使って爽快に吹っ飛ばすのも面白いな。カガチもやったら?―・・・あっ」
「し・・・椎名くん・・・」
 破片がカガチの後頭部にクリーンヒットし、彼は地面へ突っ伏して呻く。
「あっ、あはは。ごめん、そんな顔しないでくれよ。わざとじゃない、わざとじゃないから」
 真は頬の冷や汗を流し、睨みつけるカガチに謝る。
「試したいのが色々があるんだけど。実際に使えても上手く使えるかどうかだねぇ」
「コツさえ掴めれば出来るって。こう・・・手の平に意識を集中させて、ぶつけたいところへ的をしぼる感じかな」
「うーん・・・コツねぇ。おっ、成功したよ!」
 サンダーブラストを成功させ、気を良くしたカガチは辺りに放ちまくる。
「あぶなっ。えっ、ぁあぁ・・・ひぎゃああぁああーっ!!」
 必死に走りながら真は落雷を避けようとするが、直撃してしまいプスプスと焦げる。
「ねぇ真、見た!?あれ・・・?」
 いつの間にか無意識のうちに彼を“真”と呼び、カガチは嬉しそうに彼の方へ顔を向ける。
 落雷の衝撃で倒れている親友の背を、拾った小枝で突っついて起こそうとする。
「―・・・ま、まだ・・・魔法を使い慣れてないから仕方ないよな。はははっ・・・」
 服についた土を両手で払い、真は笑顔を引きつらせる。
「(ふぅ・・・悪気があったわけじゃないんだし。気にしない、うん・・・気にしない)」
 別の魔法を試してみようと真は、拾ってきた空瓶にファイアストームを放つ。
「どぁああー、あちゃぁああーっ!背中が火事だよ、大火事だよーっ!!」
 カガチはゴロゴロと土の上に転がり火を消す。
「ごめん方向ミスッたかな」
「―・・・・・・ふっ、ふふふ。そうだよねぇ〜。真はそういうことしないって分かってるさ。(わざとじゃないんだから、怒らない・・・怒らない・・・)」
 立ち上がったカガチは不敵に笑い、拳を握り締めて怒りを抑える。
「あぁれれぇえー?ミスッたかな。ごめんごめ〜ん」
 空き瓶に向かって放ったはずのファイアストームが、真の方へぶっ飛んでしまい、カガチは軽口調で笑いながら謝る。
「はは・・・かぁーがぁーちぃー!?」
 頭を通過した炎でチリチリヘアーになってしまった真は、眉を吊り上げて睨みつける。
「そんなに怒らないでよ、わざとじゃないんだからさ。大体、最初に飛ばしてきたのはそっちじゃないか」
「だからってこんな髪にするなんて、酷いじゃないかぁあ!」
 真はチリチリ頭を指差して怒鳴り散らす。
「洗ってストレートパーマでもかければ大丈夫だって。次はきっと大丈夫だからさ。―・・・あれ?どこに飛んでったんだろ?」
「うぁっ、あぶなっ!俺を満身創痍の状態にする気か!?」
 空き缶から軌道がそれてしまい、スゴォオオッと猛スピードで炎の嵐が真へ向かってくる。
 真はぐねっとブリッジ体勢をとり間髪避ける。
「今の曲がり方、明らかに狙っただろ!」
「狙ってないって、狙ってないよ。こうやって・・・普通に使っただけだから。ありゃ・・・」
 的に当てようとするが、またもや真を炎の嵐が直撃してしまう。
 それならばと真はお返しをくれてやろうと、カガチに向かってブリザードを放つ。
 ビュォオオーッと吹き荒れる吹雪に襲われた彼は、身体が凍ってしまいそうになる。
「ちっ・・・ちべたい・・・。ぶぇーくしょん!・・・って本気出すこたぁねえだろうよ!!」
 地獄の天使の翼で空を舞う真を見上げ、奈落の鉄鎖で彼の足を捕まえてベシャッと地面へ叩き落す。
「大体そっちこそ本気でやることないだろ!!」
 ブリザードを放ち拘束から逃れた真は、軽身功の体術で水辺を走る。
 大人気ない互いにブチギレた鬼ごっこが始まった。
「うるせぇいつの間にか俺よりめっぽー強くなりやがって追いつかねえよこのクソドM執事!―・・・びょぁああ、ちべたぁああぁあいっ!!」
 親友が振り向き様にカガチへ吹雪を放ち、彼はあまりの寒さに声を振るわせる。
「またやったね・・・もう容赦してやらん真、沈めぇえーっ!」
 大人気なく怒るカガチはSPタブレットをバリバリと噛み、真をエンドレス・ナイトメアの闇に包む。
「なんだ・・・急に気分が悪く・・・。―・・・ごぼぼぉおおっ!」
 顔を青ざめさせた真が両手で口を押さえた瞬間、バランスを崩し水の中へ沈んでしまう。
「よし、次はこの技を・・・んぐげあぁああーーっ!!」
 水面に顔を出した真に向かって、カガチは橋の上から今度は叫びの凄まじい音で放って水の中へ沈める。
「わぁー何やってるんだろう、鬼ごっこ?面白そうだね、ボクも混ざりたいな」
 混ざりたそうにニコが地獄の天使の翼で空から見下ろす。
「溺れさせる気かっ。そっちがその気になら、こっちだって!」
 真は藻で身体をカモフラージュして隠れながら岸へ泳ぎ、それに彼に気づいたのと同時に、仕返しに同じ魔法を放つ。
「うぁあっ頭がぁあ、頭がーっ!―・・・待ちやがれぇえ真ぉおお!」
 ライトニングブラストの雷の気を、水の中に落ちてびしょ濡れの真に感電させる。
「残念だったなカガチ!」
 先の先でカガチの行動を呼んだ真は対電フィールドで衝撃を減らし、ナラカの蜘蛛糸を彼が握る2本の刀に絡みつかせて、相手の腹部を思い切り殴る。
 ドゴォスッ。
「げはぁあっ!こんちくしょぉお」
 拳が埋まりそうなほど、カガチが親友の頬をごりっと殴る。
「うぐっ。ごはぁっ、負けるものかーっ!」
 術のぶつけ合いから顔面の殴り合いになり、数十分間も互いに殴り続けた。
「んーもぅ、ボロボロだー・・・。ボロボロになるのはいつものことだけど」
「あぁー・・・確かに」
 殴り疲れたガガチと真はバタンッと草むらに横たわる。
「ところでヒールってどうやってやるんだ?」
「こう・・・・・・傷に手を当てて、他の余計なことを考えずに意識を集中させて治すんだよ」
 真はカガチにヒールをかけてやって教えてやる。
「うーん・・・こんな感じかな」
 教えてもらった通り、真にヒールをかけてやる。
「治った!ヒール・・・実際に上手く使えたらいいのにな」
「・・・カガチ、俺・・・大人気なくむきになってゴメン」
「いいんだよ、俺の方こそ大人気なかった」
 2人は互いに謝りヘラッと笑う。
「もっと上手くやるには・・・そうだな。相手の傷を治してあげたいっていう気持ちが大切・・・かな?」
「遊ぼうよ!」
 疲れきって眠りそうになっている2人に向かって、ニコがライトニングブラストを放ち、彼らの眠りを妨げる。
「あっははは、逃げないと捕まえちゃうよ?」
 エンドレス・ナイトメアの闇に包み、激しい頭痛にもがく真たちをケラケラと見下ろす。
「(うあぁあ、ニコさん。何やってるんですかー!?)」
 いつもならユーノが止めるのだが、ニコに服従させられて止めることが出来ない。
 心中で叫ぶものの、彼の絶対服従の願望から逃れられないのだ。
「あれー、鬼ごっこもうお終いだった?じゃぁもう1回やろうよー」
 闇のスクラップ帳から発した罪と死の、闇の棘で逃げる2人の足元を狙う。
「むー・・・すばしっこいなぁ。動きを止めてやろうっと」
 ペトリファイの魔法を手のような形状にし、カガチの足を捕まえて石化させようとする。
「(あわわっ他の人を石にぃい!?何てことをしようとしてるんですかニコさぁああん!)」
 彼を止められないユーノは心中で号泣する。
「もうちょっとだったのに逃げられちゃったよ!次は別のを試そうっと。ねぇユーノ、驚きの歌を歌ってSPを回復させてよ」
 先の先を読まれ避けられてしまったニコは、違う魔法を試そうと考える。
「はいニコさん」
 言われるがままユーノは彼のために歌い、SPを回復させてしまう。
「そんじゃあ、寒くしちゃえば捕まえやすいかな?」
 ニコはくふふっと笑い、今度はブリザードで彼らを凍えさせて捕まえようとする。
「しぶといねぇ!」
 2人にディテクトエビルの魔法でそれも防がれてしまい、眉を吊り上げて子供のように顔をムッとさせる。
 ライトニングブラストで感電させてやろうと放ちまくる。
「ん・・・あれはカガチさんと真さん。誰かに追われているのかな」
 どこまで現実か調査をしている神和 綺人(かんなぎ・あやと)が、カガチたちの姿を見つける。
「普段使えない魔法を使って2人を追いかけているみたいだね」
「翼が消えるように思ってあげれば、助けてあげられそうですけど。どうしますか?」
 クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が追われている可哀想な2人を、助けてあげたほうがいいか綺人に聞く。
「カガチさんたちなら、放っておいても大丈夫だと思うよ。(たぶんね)」
「何か・・・3人の身体が透き通って見えるが、気のせいか?もう1人はまだなんともないようだが」
 ニコと彼に追われているカガチたちの身体が透き通って見えたが、目の錯覚かユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)は首を傾げる。
「もう少し観察してみれば分かるかもしれません」
 銃型HCに記録する準備をし、神和 瀬織(かんなぎ・せお)は観察しようと言う。
「それじゃあしばらく観察してみようか」
 本当に身体が透けて見えたのか、綺人たちは3人の後を追って調査する。