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秋野 向日葵誘拐事件・ダークサイズ登場の巻

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秋野 向日葵誘拐事件・ダークサイズ登場の巻

リアクション

「ひぃ、はぁ、ふぅ」
「な、7階……」

 久世 沙幸(くぜ・さゆき)風森 巽(かぜもり・たつみ)ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)は、律義に一階から一部屋一部屋回り、ようやく7階までやってきた。

「つ、疲れちゃいました……」

 ヴァーナーはさすがに弱音を吐く。

「も、もっと効率のいい方法があったんじゃ……」

 巽は今さらながら少し後悔している。
 一人元気なのは沙幸。

「ほらほらっ、元気出して! きっともうすぐだよっ」
「で、でも」
「しっ」

 ヴァーナーがしゃべろうとするのを、沙幸は制し、耳を澄ます。

「きっとあの部屋だよ!」

 奥のドアから騒ぎ声が聞こえている。

「ほんとだ……」
「や、やっとついたですぅ」

 元気な沙幸と、力を振り絞って立ち上がる二人。

「よーし、いっくよー!」

 沙幸は広間のドアを思いっきり押しあける。

「やいっ、ダイソウトウ! やっと見つけたぞ! 私にサインをくださいなっ!」

 と言うが早いか、サインの代わりに飛んできたのは、メニエスのロープ。

「まず人質は、きつーく縛る!」

 偶然なのだが、メニエスが扉の方に投げたロープが、沙幸の体にまとわりつく。

「え、な、なになにっ!?」

 当然驚く沙幸。メニエスも一瞬キョトンとする。

(あれ? 誰かしら……ま、いっか。このまま人質役やってもらおっと)

 すばやく頭を切り替えたメニエスは、そのまま沙幸をがんじがらめにする。

「当然手足の自由は奪う! 手は後ろ手! 足首を縛った部分と連結すれば、絶対に動けないわ。肺はかろうじて呼吸できる程度に適度に圧迫すること!」

 メニエスはすいすいとロープを操り、沙幸の胸が大きく反る形に縛りあげた。

「ええええっ、何これぇ!」
「きゃああ! 沙幸ちゃんっ!」
「そして! 縛り上げた女の人質にすることと言えば一つよね……」

 メニエスは当然のように、ロープによっていつもより余計に強調された、沙幸の豊かな胸をまさぐる。

「ちょ、待って! やめ、ふあぅ……」
「これぞ悪の特権よ! 肝に銘じておきなさい!」

 ヴァーナーは顔を覆い、

「ああっ、何てうらやましい、いや、ひどいです!」
「久世さんっ! 不意打ちとは卑怯です! 許さんッ、ダークサイズ!」

 ビルをわざわざ階段で登った疲れ、イライラ、そして許すまじ、悪人の不意打ち。ビルでの冒険を共にした仲間が奪われ、巽の怒りは頂点に達する。

ぎーんのかーめーんに〜赤いマフリャ〜……

 自らテーマを歌いながら、巽は華麗に変身(着替え)する。
 巽はびしっとポーズを決め、

「仮面ツァンダーソークー1! ラジオ番組と仲間を守るため、ただいま参上!」
「あら? いつの間にか正義の味方の登場みたいだわ」

 メニエスは大きな動揺もなく、巽を見据える。巽も負けじと胸を張り、

「覚悟しろよっ、ダークサイズ!」

 メニエスは隙だらけにダイソウを振り返り、

「ねえどうするの? あなたリーダーなんだから、みんなに指示しなさいよ」

 ダイソウは目を光らせ、

「よし、では行け! 縄縛り教師!」

 とメニエスを指さす。

「ちょっと待ってよ! 何そのエロい肩書き!」
「お前の幹部名だ」
「いやよ、そんなの!」
「幹部名っていうより、二つ名ですね……」

 翡翠がぽつりとひとりごちる。

「ていうかね!」

 メニエスが声を張る。

「何であたしが行かなきゃいけないのよ。あなたが行きなさいよ」
「指示を出せと言ったではないか、縄縛り教師」
「そんな変なので呼ばないでよ!」
「ふん、内輪もめを始めたか。わしの出番のようであるな」

と、テーブルから立ち上がるのは、三道 六黒(みどう・むくろ)

「くっくっく……ダイソウボス、いや、ダイソーボス、いや、百均ボス! わしがあの、正義気取りの小童を片づけてやろう」
「よし、任せよう」

 ダイソウは、落ち着き払って六黒を見る。

「な、何て男だ……百均呼ばわりされて気にも留めないなんて……」

 巽はごくりと息を飲む。

「その代わり百均ボスよ。わしがやつを倒したならば、それ相応のものをいただくぞ?」

 六黒はダイソウが座っている椅子を指す。つまり大総統の座を狙っているのだ。

「よかろう」

 ダイソウはそれを分かっているのかいないのか、即答する。

「見ているがいい、百均ボス。わしが悪の手本を見せてやる。悪とはこのように黒き太陽の如く、燦然たる暗黒の輝きをもって行動するのだ。小僧! 覚悟はいいだろうな」
「小僧じゃねえ! 仮面ツァンダーソークー1だ!」
「仮面ツァンダーソークー1よ」

(ほう、相手の名前を一発で覚えるとは。彼は早覚え侍と呼ぼう)

 ダイソウは変なところで六黒に感心している。

「仮面ツァンダーソークー1。言っておくがわしは強いぞ?」
「あ、ていうか! 言っておくと言えば、我も言いたいことがあるんだよ! 貴公らが放送局占拠するから、楽しみにしてた将棋の番組が聞けないじゃないか! あと階段すっごい疲れたし!」
「ふん、知ったことではないわ。言いたいことがあるなら、わしを倒してから……」
「あとダークサイズ! 何だよ頭に長ったらしい説明文つけやがって!」
「それこそわしが知るか。百均ボスに言え」
「略せないじゃんか! どう略すんだ! ダサか! ダークサイズだからダサか! 謎の闇のとか長いんだよ! 覚えらんないよ!」
「おい、そんなのどうでもいいから、わしと」
「それには私が答えよう」

 ダイソウが立ちあがる。

「我々ダークサイズを略称で呼びたいなら」


ギランッ


 ダイソウはいつになく鋭く巽を見据え、

「DSと呼べ!」
「でぃ、DS……! 大手の携帯ゲーム機みたいに! ちょっとカッコイイじゃないか!」
「そうだろう。だから我々を省略して呼ぶときは、『謎の闇の悪の秘密の結社DS』と呼ぶがいい」
「うおおい! 前半一切略してないじゃんか! そこも略せよ!」
「そうか。では、『N・Y・A・H・K・DS』ではどうだ」
「なおさら覚えられんわ、そんなアルファベットの羅列!」

 ダイソウはそれもそうだと考え、ポンと手を叩く。

「それを単語っぽく読んだらどうだ。NYAHKだから、ニャークとかか? 謎の闇の悪の秘密の結社ダークサイズ。略して、ニャークDS! でどうだ」
「もはや原型がわからん!」
「わしをおいてきぼりにするでないー!」

 腹を立てたのは六黒である。せっかく悪の見本を見せつけて、ダークサイズを我がものにしようとしているのに、すっかり形無しだ。

「それ以上わしを無視するなら!」
「きゃあっ!」

 六黒は縛られた沙幸を抱え、

「こいつを殺す!」

と叫んだあと、六黒は愕然とする。

(しまった。何だかわしが小物キャラみたいではないか!)

 巽は六黒に向きなおり、

「婦女子を盾にするなんて卑怯な!」
「む、その娘は腐女子なのか?」
「違うわ! 婦女子だ! 百均ボスは口を挟むでない!」

 六黒はすっかり頭にきているようだ。

(むう、声を荒げたらますます下っ端のようではないか……)

 六黒は歯ぎしりして、

「この三道六黒、かつては武神とまで言われた男。もはやごたくはいらぬ!」

 六黒はスラリと綾刀を抜き放ち、巽目がけて一閃。


ガキンッ!


「な! う、受け止めた、だと!」
「確かにすばらしい太刀筋……でもなぁ!」

 巽は刀をはじき返し、六黒のみぞおちに一撃を加える。

「ぐほおっ!」

 六黒は大きく後退し、膝をつく。

「な、なぜ……」
「我と貴公では、だいぶレベルに差があるんじゃないですか?」

 落ち着いた巽は、普段の丁寧な言葉遣いで六黒を見下ろす。

「くぅ、ぬかったわ。わしの封印解除はまだ第一段階……。面白い。シャンバラ広し、と言ったところか」

 六黒はダメージがあるとは思えないスピードで部屋の扉へ走り寄り、

「面白い男であったわ、仮面ツァンダーソークー1! この次はそうはいかんぞ。わしの次の封印を解除すれば、おぬしの肉体など四散せしめるであろう! わしは三道六黒! 遠からずダークサイズの権力を握る男! 覚えておくがいい!」

と、思いっきりかっこよく言い残し、六黒は颯爽と姿を消した。

「三道六黒……確かに末恐ろしい男でした……」

 巽は痺れの残る右腕を握り、今度はダイソウをきりりと睨む。

「さあ、ダイソウトウ! 今度は貴公の、うおおい!」

 見ると、いつの間にか大勢のダークサイズメンバーが、ダイソウを囲んでいる。

「ん? 終わったか?」
「今のやりとり見てなかったのかよ! 六黒かわいそう!」
「面接があるから忙しいのだ」
「全員合格って言ってたじゃんよ!」
「はいは〜い、みんな落ちつ置いて並んでねぇ。ダイソウトウ閣下は逃げたりしないから、全員ちゃんと面接できるからねぇ」

 黒脛巾 にゃん丸(くろはばき・にゃんまる)は、ダイソウに指示をもらおうと集まるメンバーを、列にして並ばせている。

(ふ、ふふふふふ……下っ端でもいいのさ。一応向日葵解放の説得に来たんだけど、逆に説得されちゃったもんね……入団したらお便り優先的に読んでくれるってさ……)

と、にゃん丸は、あっさりダークサイズに取り込まれた自分の意志の弱さを少しだけ呪う。
 彼の胸には、ダークサイズのステッカーが貼ってある。

(まだ未公表のロゴ入りステッカー、特別にもらっちゃったもんね……レアモノで簡単に釣られちゃったぁ、俺……)

 にゃん丸は、列を整理しながら、哀しい笑顔でたそがれる。

「あ、すみません、インタビューはいつ……?」

 何だかんだでずっと待たされる羽目になっていた六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)が、勇気を出してダイソウに話しかける。

「うむ、そうだったな」

 きらりと目を光らせ、クロス・クロノス(くろす・くろのす)もそれとなくそばに寄ってきている。

(彼女のインタビューに便乗して質問すれば、ダークサイズの情報を引き出せそうですね)

 シャンバラ教導団情報科所属のプライドにかけて、ダークサイズの内部情報を獲得するつもりだ。

「む、お前は何者だ?」

 ブラウスにミニスカート、ニーハイブーツをはいて、黒のマスケラを着用して、まったくもって怪しげな変装をしたクロスを、ダイソウは気になったようだ。

(あら、さすがにこの格好は怪しすぎたようですね……)

 しかしクロスは堂々として

「私はクロス・クロノスと申します。ダークサイズには面白そうだから加入しました。ただそれだけです。いけませんか?」
「うむ。よし」

 ダイソウは意外に押しに弱いようである。
 優希は質問する。

「あの、このダークサイズはどれくらいの組織なのですか?」
「我々は駆け出しの悪者。まだ小さな秘密結社だ。その事実は謙虚に受け止めなければならん。しかしラジオでも次々と人材を引きこみ、今回で大幅にメンバーを増やしたことになるな」
「悪の組織なら、なぜ最初に幼稚園のバスを乗っ取ったりしないのですか?」
「それだとまさにパクリになってしまうではないか」

 そこにクロスも負けじと口を挟む。

「番組を獲得するときは、何と言ってディレクターを脅したんですか?」
「我々は悪の秘密結社。それはそれは卑劣な手を使って、ディレクターを陥落したのだ」
「詳しく聴かせて下さい」
「まず、私と総統と大幹部で、一週間徹夜で考えた企画書を、彼のファイルに紛れこませた。同時に彼の恥ずかしい写真の数々を……」
「あ、ダイソウトウ様! こっちに顔振ってくださーい」

氷見 雅(ひみ・みやび)がカメラを構えて、注文する。

「あ、笑顔もらえますか? いや、ひきつってないで、自然なにこやかなやつ」
「笑顔は苦手だ」
「そんなこと言わないで。シャンバラに顔売るチャンスですよー」

 さらに別角度からカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)もビデオを構える。

「あ、こっちにもちょうだい! よかったらメッセージ一言!」
「この動画は何に使うのだ?」
「へへ。DVD作って、ダークサイズの広報活動しちゃうよ! ほら、ダイソウトウ様、一言!」
「う、うむ。では、ダークサイズ第一の原則を皆に伝える」
「そういうのイイよね! お願いしま〜す」


ギラリ!


『みんな仲良く!』
「おっ、いい眼力! いただきました〜」

 インタビューを皮切りに、にわかににぎやかになる面々。
 ミヒャエルはやはり気に入らないようだ。

「むう。ダークサイズのスポークスマンたる私を差し置いて……おい、にゃん丸君。君、行列を仕切るのが最初の仕事だろう。何とかしたまえよ」
「あぅ、わ、分かってるよぉ〜。みんなぁ、順番だよぉ。」

 ミヒャエルはため息をつく。
 優希はさらに、核心を目指した質問をする。

「あの、ではダークサイズのこれからのビジョンを教えてください。まず空京放送局を支配して、何をするのですか?」

 ミヒャエルの眼が光る。

(今だっ! 今こそ私の出番だ!)

「それは私が答えよう! 我々ダークサイズは、パラミタ大陸征服を目指す、悪の秘密結社! 今シャンバラにいくつかの悪は存在するが、今こそ! シャンバラには新たなる偉大な悪が必要とされている! それが我らのダイ、おい! 聞きたまえ!」

 ミヒャエルの演説を聞き始めたようで、結局みんなダイソウから離れない。ミヒャエルの存在感アピールは、これからも努力が必要のようである。
 ヴァーナー・ヴォネガットは、はたと気づいて久世 沙幸に話しかける。

「そういえば、沙幸ちゃん。ボクたち、ダイソウおじちゃんの説得をしにきたですよぉ」
「は! そうだった! よーし、やいやいっ、ダイソウトウ! 私にサインくださいなっ」
「ち、ちがうですぅ、沙幸ちゃん……」
「お、そうだった、それで思い出した」

 久途 侘助もぽんと手をたたき、

「ダイソウトウ、俺にもサインくれよー」
「ええっ、侘助さん! 俺たちの目的はそれじゃないですよ!」

 香住 火藍があわてて止める。

「だって、サインもらうなら今しかないぜ?」
「いや、そういうことではなく……」

 宇都宮 祥子も侘助を制する。

「そうよ、私達はあくまでスパイなのよ。下手に目立っちゃダメよ」
「ばれたところでどうってことなさそうだぜ?」

 侘助はもはやマイペースだ。

「そ、それはそうかも……あ、でもとりあえず、向日葵の居場所を探そうよ。どうもここじゃなさそうだし」

 祥子たちはそれとなく、広間から姿を消す。



 桐生円はイライラした目で、にゃん丸を見ている。

「あのさ、順番はまだなのかな」

 にゃん丸は焦った声で、なんとか円を押しとどめようとする。

「あぅ、うん、もう少し待ってくれよ」
「もう順番とかどうでもいい感じになってるけど、どういうことなのかな」

 円はジトッとした眼でにゃん丸を睨み続ける。

「もういいよ円ちゃん! あたしたちも前に割り込んじゃおうよ」

 七瀬歩も、我慢の限界だ。

「あ、おい、だめだってば。後で怒られるの俺なんだぜ……」
「だったらちゃんと整理してよね。もう待ちくたびれちゃったよ」
「わ、分かってるってばよぉ」

鏡氷雨と姫神夜桜も、にゃん丸に寄っていく。

「ボクもずいぶん待たされてるよ。ねえねえ、早くダイソウトウ様とお話がしたいよぉ」
「人手不足だろうってタカくくってたけど、こんなことになってるとはね。僕も驚きだ」

と、夜桜はまた周りを見渡す。

「だろぉ? いや、実際人は多いけど、俺一人じゃ手が回んないんだよぉ。手伝ってくれよぉ」
「やだ」
「ええ〜。もうクレームも処理しきれねえよぉ」



 皇甫 伽羅(こうほ・きゃら)はしばらく様子を見ていたが、

(大事な議題がぜぇんぜん語られないですねぇ。やっぱり私の出番ですぅ)

 伽羅は人だかりの中から、ダイソウをひっぱりだす。

「むっ、何をする」
「ダイソウトウ様ぁ、大事なお話がありますぅ。今私達はぁ、秋野向日葵を誘拐して監禁してるんですよぉ」
「うむ。忘れていないぞ」
「それをどのようにして、ダークサイズの財政に役立てるおつもりですかぁ?」
「財政に?」

 のんびりした口調で、伽羅は突然、現実的な話題を振る。
 話題が話題なので、他のみんなもおいそれと口を挟めないようだ。

「例えば身代金ですぅ」
「身代金だと? 誰に要求するのだ」
「もちろん、向日葵を救出しようとしてる連中ですわぁ。金額は彼らに払える程度で、きっと大丈夫ですぅ」
「なるほど」
「それに、ダークサイズにお金はあるんですかぁ?」
「もちろん、ない」
「やっぱりですぅ。今後の経理のことも考えないといけませんねぇ」
「よし、任せよう」
「ダークサイズの直近の目的はなんですかぁ?」

 それは優希やクロスたちも聞きたい疑問であった。皆ダイソウを見つめる。

「当然さしあたっての目的は、空京放送局の支配と維持である。支配はできても維持できなければ、また誰かに奪われるだろう」
「ということは、スポンサーが欲しいですねぇ」
「うむ。そしてそのためには、面白い番組を作るのだ」
「わぁ! 面白そう!」

 氷雨の目が輝く。

「面白番組があれば、いい広報活動ができるね! ラジオCD作ってシャンバラ中で販売だぁ!」

 カレンもやたら乗り気である。

「うむ。まず皆で面白番組をたくさん作るのだ。そして、りかまるとか御夜食とか必要ないくらい、楽しい放送局にしろ。悪役のくせにシャンバラの者たちを楽しませるのだ。これが我がダークサイズの、空京放送局無血支配大作戦だ!」
「ということは、今回の誘拐の目的は」

 優希が尋ねる。

「秋野向日葵を誘拐して放送局を占拠し、その間に面白い番組を作る。それを放送して、『面白いからダークサイドでもいっか』っていう気分を伝播させるのだ。その後向日葵を解放すれば、器の広い組織だと思われ、むしろ英雄に扱いしてもらえるかも知れない」
「や、ややこしー……」

 雅は少しあきれた顔をする。

「流石は閣下ッ! 何という遠大かつ情け深い計画ッ!」

 ミヒャエルは感動を隠さない。

(なるほど、意外と複雑な計画も立てられる人物のようですね。これは報告の必要あり……)

 クロスはメモを残す。
 一方、難しい顔をしているのは、明日香、歩、沙幸、ヴァーナー、氷雨などののんびり組。

「えーっと……どういうことかなぁ……」
「よくわかんないねぇ」
「頭パンクしそうですぅ……」
「ねえ夜君、どういうこと?」
「ま、深く考えなくていいってことだよ」

 夜桜が氷雨の頭をポンポンする。
 そしてダイソウは宣言する。

「ということで、これから面白い番組作り競争を始める! 我こそはと思う者は、適当にスタジオを使って、番組を作るのだ!」

と、ダイソウはメンバーを連れて、スタジオに向かって広間を出て行った。



「あれ、そういえば我、ほったらかしにされてる……」

 思い出したように、巽はつぶやいた。