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幽霊船を追え! 卜部先生出撃します!!

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chapter .8 救出 


 玉藻がヒロイックアサルトである「九尾の妖力」を使うと、その尾から炎がぼうっと湧き上がった。
「我が一尾より煉獄がいずる!」
 火柱のような姿へと変貌を遂げた尾は、ぶうんと空を薙ぎながらアンデッドの群れへと襲いかかった。本来なら強力な一撃であり、ゾンビたちはその身を燃やしていてもおかしくはなかったが美央がファイアプロテクトをかけていたため、思った以上のダメージは与えられなかった。
「ほう、なかなか頑丈だな! そうでなくては遊び甲斐がないわ!」
 構うもんか、とばかりに玉藻は炎を振り回し続ける。さすがに何度も防ぐことは困難と見た美央は、再度ファイアプロテクトをかけより炎への耐性を高めんとしていた。
「月夜、剣を」
 刀真はもうひとりのパートナー、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の体から光条兵器を取り出そうとしていた。月夜は言われた通りそれを差し出すと、自らも銃を取り出した。同時に、刀真がゾンビの群れめがけ突っ込んでいく。
「消えろ」
 刀真は素早い身のこなしで、近付くゾンビをあっという間に切り刻んでいく。それを月夜が、銃でサポートしていた。
「……私がいる限り、刀真の隙を突くのは無理。いなくても無理なんだけどね」
 月夜のサポートを受けゾンビの群れを抜け出した刀真は、そのまま守りの要である美央の下へと距離を詰める。
 とっさに盾を構える美央だが、刀真の持っているものは光条兵器。盾を通過して本体を刺すことも可能な武器だ。
「邪魔だ、死ね」
 刀真が剣を突き刺そうとした瞬間、一足先に月夜の放ったゴム弾がふたりの間を抜けていった。剣を引っ込め自分の方を向いた刀真に、月夜が言う。
「刀真に玉ちゃん、殺す必要はないし殺してほしくない」
「……分かったよ、月夜」
 刀真は武器を収めると、ブラックコートを美央の前ではためかせた。一瞬視界が暗転した隙を突いて、盾をずらしその鳩尾に拳を叩き込んだ。その一撃で意識を失った美央は、どう、と倒れこんだ。直後、美央の体からレイスが抜けていくのが見えた。
「操られていた者は殺さないが、操った者は殺す」
 容赦のない刀真の刃が、それを貫いた。
「……玉ちゃんも」
 依然炎を放ち続けていた玉藻も、月夜に制されじきその火を鎮めた。
「だから玉ちゃんと呼ぶなと言っておるだろう」

 刀真たちが生徒をひとり救ったことで、彼らの心境に変化が生じた。
 ――救うことが出来るのだ、と。
 四方天 唯乃(しほうてん・ゆいの)とパートナーのエラノール・シュレイク(えらのーる・しゅれいく)は、この勢いに乗じて攻勢に打って出た。
「たしか、相手方のアンデッドの支配権を奪うのは困難なのですよね? でも守りの要が倒れた今ならこれも通じるはずですよー!」
 エラノールは抱えていた杖から、自身の得意系統である炎を放った。腐敗した肉を焦げ付かせ、数体のゾンビが甲板に転がった。
 ファイアプロテクトをかけていた美央が倒れたことで、炎への耐性が弱まっていたのだ。
「唯乃、今ですよ」
「ちょうど新しい骨が欲しかったのよね。ま、せっかくだからついでに救出活動もしてあげよっかな」
 唯乃は護国の聖域を展開させ、同時に光術を拡散させて放つことで操っているレイスの掃討を試みた。が、やはり一度に退治出来るほど都合は良くないようだ。
「あら、これでも駄目なのね。じゃあ、こんなのはどう?」
 次に唯乃が繰り出したのは、しびれ粉だった。随分とアナログな発想かもしれないが、これで霊を縛れないかと考えたのだ。
 唯乃は取り出したその粉を持ち、銃を乱射させている夢見のところへ向かってかけようとした。
「裏切られて死ぬってのがどれだけつらいか分かってんのか、ああ?」
 生前のうらみつらみを晴らすかのように銃弾を四方八方に向ける夢見だったが、運良く唯乃が向かっている最中で弾切れを起こしたようだった。
「あ? なんだ、もう弾がねえのか!? ちくしょう、こうなったらぶん殴ってでも恨みを分からせてやる!」
 夢見の腕が、唯乃へと伸びる。唯乃はそれをかろうじてかわすと、持っていたしびれ粉を夢見にふりかけた。
 すると。
「ああ? なんだ、舌がビリビリするじゃねぇかちくしょう!!」
 どうやら夢見についた霊は主に口に影響を強く及ぼすタイプの霊らしく、唯乃のかけたしびれ粉は夢見の舌をしびれさせるにとどまった。
 まあ考えてみれば痺れると縛るは似て非なるものだったので、そもそも可能性の低い賭けだったのかもしれない。
「……何をやっているのですか、唯乃」
 見かねたエラノールが、夢見に力を調節したファイアストームを放つ。
「あっ、あちいぞくそおおおっ!!?」
 あっさりと夢見の体から出てきたレイス。そのままレイスは炎に焼かれ、消し炭となった。
 かろうじて意識を取り戻した夢見は、瞼が下りきる前に乱れる息遣いで唯乃とエラノールに感謝と謝罪の気持ちを伝える。
「……ごめん、なさい……あ、ありがと……う……」
 そのまま夢見は意識を失った。なお後日、「感謝のしるしです」ということで夢見から唯乃とエラノールにゼリーセットが送られたらしい。

「まだ憑依させられている生徒が?」
 刀真が周囲を見渡しながら確認すると、ざっと見ただけでも綾乃、袁紹、真の3人がまだ操られている様子だった。
「刀真……たぶん、あの人たちも」
 月夜が指差した先には、未沙と武。このふたりに関しては特に目ぼしい被害が出ていないので問題はなさそうだが、レイスが憑いているのなら一応助けなければいけないだろう。
「操られてる人って、結構多いのね」
 唯乃が溜め息と共に呟く。彼女もエラノール、そして刀真たちと力を合わせ残りの憑依されている生徒たちの救出に乗り出した。



 彼らのように関わりのない生徒を助けようとしている者もいれば、自分のパートナーが憑依させられ悩み苦しんでいる者たちもいた。
 体の自由を奪われ、意識も乗っ取られているクレア・ワイズマン(くれあ・わいずまん)の前には、契約者である本郷 涼介(ほんごう・りょうすけ)、そして涼介のもうひとりのパートナーエイボン著 『エイボンの書』(えいぼんちょ・えいぼんのしょ)――通称エイボンが立っていた。涼介は信じがたいものを見るような目でクレアを見ていた。
「クレア……まさか、レイスに憑かれてしまっているなんて」
 涼介はメイスをぎゅっと握りしめる。
「私の大切なパートナーに手を出すとは許せない……黒幕を探し出して塵も残らぬよう滅してやらないと」
 熱くなりかけた涼介を、エイボンが押し留める。
「兄さま、まずは姉さまを助けませんと……」
 涼介とエイボンが会話をしているうちにも、クレアはふらふらとふたりに歩み寄る。
 おそらく、今のクレアが人に近付いたら攻撃をしてくるだろう。それはパートナーであろうと、誰であろうと。
 そう察した涼介は、エイボンにある魔法を唱えるよう声を上げた。
「エイボン、狙いは足だ!」
「はい、兄さま!」
 エイボンの周りの温度が下がりだす。冷気を集めたエイボンは、クレアの足元に向かいその冷気の塊をぶつけた。ふたりの狙いは、氷術でクレアを動きを止めることにあったのだ。
「兄さま、今です! 姉さまをどうか助けてあげてください……!!」
「クレア、私が必ず悪霊を祓ってやるからな」
 涼介は、かっと目を見開きバニッシュを放った。その眩い閃光は邪悪な気配を追い払うかのようにクレアを包み、彼女の瞳に正気を取り戻させた。
「うまくいった……のか?」
 エイボンが魔法を解き、クレアの足元を固めていた氷がなくなる。クレアは少しの間立ち止まっていたものの、頬を赤らめて涼介の胸に飛び込んでいった。
「おにいちゃん! 怖かったようっ……!!」
泣きじゃくるクレアを優しく受け止め、背中をさする涼介。クレアを抱きとめながら彼は「無事で良かった……」と小さく言葉を漏らしていた。

 彼らのすぐ近くでは、クレア同様に操られてしまった霧雨 泰宏(きりさめ・やすひろ)が数匹のゾンビを従えて――否、それらを守るように契約者の霧雨 透乃(きりさめ・とうの)と対峙していた。透乃の両脇には、パートナーの緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)、そして月美 芽美(つきみ・めいみ)もいる。
「やっちゃん……やっちゃんも操られちゃったんだね……」
「透乃ちゃん、すみません、石化解除薬ではなく憑き物を落とせるような準備をしてくればよかったですね……」
 陽子が申し訳なさそうに言う。どうやら以前ひどい目に遭った経験を活かし、透乃にそのアイテムを持ってくるよう頼んでいたようだが現状は石化よりも憑依の方が問題であった。
「ううん、気にしないで陽子ちゃん! そういう色々なことに頭が働くのってすごいことだよ! さすが私の恋人だね!」
 あっけらかんと言う透乃に、陽子は少し恥ずかしがっている。このふたりは、そういう間柄のようだった。
「それはいいけどふたりとも、泰宏君をどうにかして解放してあげないと」
 芽美がお腹いっぱい、といった感じでふたりに言った。
「そうだね、まずはあの周りにいるゾンビを倒さないと!!」
 透乃は言うや否や、盛夏の骨気を拳にまとわせて突進していく。
「ゾンビってことはもう死んでるんだろうけど、この場合殺す、って言っていいのかな?」
 外見とは裏腹に、背筋の凍るようなことをさらっと言うと透乃はその拳でゾンビに殴りかかった。が、それを泰宏が無言で防ぐ。
「ははっ、やっぱりやっちゃんは操られててもすごい防御力だね! でも私だって攻撃力は低くないんだからね!」
 透乃が自らのパートナーと激しい攻防を繰り広げている間に、芽美はその身軽さを活かし軽身功で甲板の上部から垂れ下がっていたロープをキャッチすると、雷光の鬼気を発動させた。
 そのままロープを振り子のように左右に動かすと、雷に速度が加わった。充分に勢いがついたことを確信した芽美は、反動をつけてゾンビへとドロップキックを食らわせた。
 激しい衝撃を受けたゾンビはそのまま甲板から海へ落下し、沈んでいった。残っていたゾンビも、陽子が自ら使役しているレイスの餌食となっていた。
「さあレイスの朧さん、そのままその肉体を下へ……」
 ふら、と操られるようにゾンビが甲板の淵まで歩き出し、そのまま海に飲み込まれていった。
 こうなっては、ディフェンスに定評のある泰宏と言えども状況としては厳しい。何せ、タイプの違う攻め手が3人も揃っているのだ。泰宏はそれでも懸命に攻撃を防ぎ続けるが、やがて透乃の熱を帯びた一撃が彼の脇腹を捉えた。
「う、おっ……!」
 がくん、と片膝をつく泰宏。その拍子に、入り込んでいたレイスがするりと抜け出した。
「あれ、ここは……私は操られてしまっていたのか……情けねぇ……! 自分すら守れず、心配をかけちまうなんて……」
 泰宏の意識が無事戻ったことを理解した透乃と陽子は「無事でよかった」と胸を撫で下ろし笑顔を浮かべていたが、芽美だけは僅かに反応が違っていた。
「本当にもう、勝手にいなくなるようなまねはやめてよ。あなたがいなくなったら、透乃ちゃんと陽子ちゃんがいちゃついている時に、誰が私の相手をするの?」
 僅かに視線を逸らしつつも告げたその言葉に、泰宏は顔を真っ赤にして思わずどもった。
「え、そ、それって……」
 泰宏は芽美の顔を見る。その照れたような横顔が彼の気持ちを昂らせた。反射的に抱きしめた泰宏を、芽美は満更でもない様子で受け止めるのだった。

 甲板上で小さなドラマが起きている頃、船内でも同じような事件は起きていた。
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)から絶え間ない猛攻を受け、防戦一方となっていた。
 セレアナの槍が、鋭くセレンフィリティを突く。かろうじて回避する彼女だったが、手持ちの武器が銃しかなかったため下手にパートナーを撃つことも出来ず、困惑の表情を浮かべていた。
「セレアナ、お願い、止めてよ……!」
 一縷の望みをかけて、セレンフィリティは説得を試みる。しかし返ってくるのは、ぞっとするほど無機質なセレアナの表情と鋭い打突だけだった。
「正気に戻ってよ、セレアナ!!」
 声を大にして叫ぶも、結果は変わらない。次第にセレアナの槍がセレンフィリティを追いつめていき、彼女は壁際に背中をドンとぶつけた。じり、とセレアナが距離を詰める。
「……こうなったら、一か八か」
 正確にセレンフィリティの心臓目がけ槍を突いてくるセレアナの一撃を、セレンフィリティはそこに攻撃が来ることを分かっていたかのようにかわす。ザスッ、と槍が壁に刺さり、それを抜くためにセレアナにタイムロスが発生した。その隙を見計らい、セレンフィリティは距離を置き、シャープシューターでセレアナに狙いを定める。
「こんなに引き金を引く手が震えるのは初めてよ……」
 直後、響いた銃声。彼女の銃弾は、セレアナの急所から僅かに逸れたところを撃ち抜いた。戦いの中、セレアナに憑いたレイスがうっすら留まって見えた場所、それが心臓の少し横だったのだ。そこを狙いレイスを撃つことで、彼女はパートナーを救おうとした。
銃を捨て、傍へと駆け寄るセレンフィリティ。
「これで駄目だったなら、あたしはとてつもない罪を……お願い、目を開けてよ……!」
 セレンフィリティのこぼした涙がセレアナの頬に落ちた。その涙は止まることなく彼女の頬を流れていく。その時だった。
 すっ、と伸びた腕が、彼女の頬を拭った。
「セレ……アナ……?」
「ごめんね、セレン。もう、どこにも行かない。ずっとセレンのそばにいてあげるから」
 そしてふたりは、お互いが必要な存在だと確かめるように抱き合った。

 同じく船内では、秋月 桃花(あきづき・とうか)十束 千種(とくさ・ちぐさ)がある人物を追って甲板からここまで歩を進めていた。
「本当に、郁乃さんの声が聞こえたのですか?」
 千種が桃花に尋ねると、桃花は間を置かずに答えた。
「はいっ、桃花を呼ぶ声が確かに聞こえました! 桃花が郁乃様の声を間違うはずがありません!」
 甲板でゾンビの相手をしていたふたりは、その途中行方不明になっていた契約者の声を聞き、その姿が船内に消えていったような気がして急いで後を追いかけてきていた。
「あ、あれはっ……!」
 暗闇の中を走っていた千種が、前方に影が見えたのを視認した。それは紛れもなく、彼女らの契約者芦原 郁乃(あはら・いくの)の姿だった。
「郁乃様っ! やはり郁乃様の声だったのですね!!」
 郁乃の姿をはっきり捉えた桃花は、我慢しきれないといった様子で一目散に駆け出した。瞬間、郁乃の口の端が歪に曲がったのを千種は見た。
 気のせいかもしれない。しかし、それを確認する暇も、迷っている時間も彼女にはなかった。もう桃花が、郁乃に向かって走り出している。
「っ!?」
 あと少しで郁乃に触れることが出来る。そんな距離まで近付いていた桃花だったが、その手が郁乃に触れることはなかった。郁乃の目の前に仕掛けられていたロープが、桃花の足を絡めとり転倒させたのだ。
「い、痛っ……え? い、郁乃様!?」
 上を見上げた桃花が目にしたのは、自分に向かって剣を振り下ろそうとしている郁乃の姿。どうやら操られた彼女は、罠にはめるためここまでふたりをおびき寄せたということらしい。
「危ないっ!!」
 追いついた千種が、反射的に郁乃を切り伏せる。目の前で郁乃を切られた桃花は、その口を塞ぐことが出来なかった。
「いく、の、さま……」
 キッと千種を睨みつける桃花に、千種は苦笑いで答えた。
「そんな目で見ないでください、桃花さん。光条兵器ですよこれは。切ったのは郁乃さんではなく、郁乃さんに憑いていたレイスです」
 千種が「ほら」と立ち位置をずらし後ろをのぞかせると、そこにはいつもと変わらない雰囲気の郁乃がいた。
 郁乃は既に涙目で、かすれた喉を振るわせた。
「ごめん、ごめんね操られちゃって……! 私、心の中ではずっとやめて、やめて! って叫んでたのっ……でも、体が言うことを聞いてくれなくて……!」
「郁乃様、無事で良かったです」
 桃花はそれだけを言い、にっこりと笑っていた。郁乃はその笑顔に、少しだけ甘えることにした。
「桃花、心配させてごめんね。それと、ありがとう」
 郁乃はそう言うと桃花の胸に飛び込み、頬にキスをした。それを見ていた千種が、軽く咳払いをする。
「ワタシも一応いるんですが……」
 それを見て再び謝った郁乃を見て、ふたりはまた笑うのだった。

 彼女らがパートナーの救出に成功していた頃、船のさらに奥では。
 ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)が契約者であるつかさのことを懸命に探していた。
「迂闊であった……俺様も前よりはつかさを守ってやれると思っていた」
 つかさの過去を思い起こし、ヴァレリーは軽く体の震えを覚えた。
「既に他の者が助け出していてくれれば、それに越したことはないのだが……」
 しかし、ヴァレリーのその願いは虚しく潰えた。
ある船室に入った彼女がそこで見たものは、アンデッドたちによって言葉には出来ぬほど凄惨な姿となっているつかさの姿だった。
「わたし……わたしは、また……こんな事を……」
 ぼそぼそと力なく漏らすつかさに、ヴァレリーはそっとマントをかけてやった。
「大丈夫だつかさ、もう大丈夫なのだ……」
 効果もさほどない気休めでしかなかったが、ヴァレリーに出来るのはそれくらいであった。ふと船室を見渡すと、つかさと同じような目に遭ったと思われる女子生徒がもうひとりいた。アリアだった。
「……この子もか……可哀想に、意識を失っているようだ」
 ヴァレリーは彼女たちがどんな目に遭ったのかを直接見たわけでもないし、知っているわけでもない。それでもつらいことがあったのだということは、充分察することが出来た。ヴァレリーは一旦外へ戻り、彼女らを安全な場所で療養させるよう頼みに行った。

 各地で生徒たちが救出され、それにより次第に形勢も逆転し出した。
 しかし、まだ脅威は残っていた。それも相手側と自分たちの側両方に。