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【臨海学校! 夏合宿!!2020】漕ぎ出せ海の運動会!

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〜華麗な人魚と対戦!
 その尾びれを掴め!
 水泳リレー大会!!〜




 既に決められたチーム順に並び、それぞれが既に順番を決めている欧に並んでいた。釣りをしていた岩場のあたりに、人魚達がうきを並べ始め、ルートが確定する。
 沖に立てられた大きなうきをターンして戻ってきて、アンカーが戻った段階でほら貝を吹いて、終了のようだ。

「人魚チームは2つあります。よろしくお願いしますね、茅野 菫さん」
「うわあああ! 本物の人魚さんだ! ねぇねぇ、人魚を食べると不老不死になるってホント!?」

 興奮した様子で、やんわりとチームメイトであるかわいらしい人魚たちにセクハラをする。それを審査員としてみて少しだけ怒りを露にしているのはアルメリア・アーミテージだ。

「くぅ、羨ましい」

 ちょっと怒りの方向性が違ったようだ。だが似たような羨望のまなざしを向けているのは、朝野 未沙だった。

「いいなぁ。私もさわさわしたいなぁ」
「姉さんたら〜」

 朝野 未那がくすくすと笑いながら眺めていると、準備運動を終えたらしい孫 尚香がニーフェ・アレエを伴って現れた。

「それよりも、彼女に強化パーツつけなくっていいの?」
「ニーフェさん泳げるの?」

 足のところに人魚のようなヒレ……フィンを取り付けてもらった朝野 未羅が、心配そうにニーフェ・アレエの顔をのぞきこむ。少し前はある事件で脆く壊れそうな機晶姫だったが、今はあるべきものを取り戻し、元気いっぱいに返事をする。

「ええ。一応防水してきましたし、泳げますけど……フィンつけたほうがいいならつけたほうがいいのかなぁ」
「つけたいならすぐにつけられるよー。どうせなら勝ちたいもんね!」

 そういうが早いか、朝野 未沙はニーフェ・アレエの足元に膝を付くと手早く外付けのフィンを取り付けた。

「スイッチは両足をビシッとくっつけることだよ。そしたら、このフィンが動き出すからね」
「ありがとうございます! 未沙さん」

 そうした和やかな雰囲気の中、戦部 小次郎は海を眺めて目を細めた。

「……や、おかしいと思うんです。先ほどまで美人人魚しか出てなかったのに……」
『兄弟、女どもを負かしてやろうぜ!』
『ふふふ、なかなか美人ぞろいじゃないか、陸の女達も』

 マッチョな上半身に、宝石のような魚の下半身がミスマッチもいいところだった。期待はしていなかった。していないといったが、だが、いくらなんでもこの差はひどすぎるだろう。彼は旨のうちでそう思っていた。

『うふふ。やっぱり陸の男はたくましいわねぇ……ねぇ? コジローちゃん、アタシと今晩……キャ、はずかしくっていえな〜い♪』

 今晩なんだ。
 思わず突っ込みを入れたが、もはやどこから突っ込みを入れていいのかわからないスキンヘッドのガチホモな人魚から若干距離を置いてバトン代わりのほら貝を握り締めた。



「なんだか、色物だなぁ」
「私たちも結構色物だと思うよー」

 豊かな胸を惜しげもなくさらけ出している久世 沙幸はケイラ・ジェシータの幾度目になるかわからない呆れたため息に言葉を返した。その横でさらにぽ四、と音がしそうな巨乳を水着で申し訳程度に包んでいるのは天貴 彩羽だ。

「それに、別の意味で向こうも怖いから気をつけないとね」

 彼女が指した先にいるのは、ローザマリア・クライツァール達だった。さながら軍隊のような準備運動までしている。それを一通り終えると、金髪をたなびかせ、にこやかに微笑む。

「楽しんで、その上で勝ちましょう――Semper Fi!」
「「「Hoo‐yah!」」」

 彼女の言葉に、シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ、グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー、典韋 オ來は一斉に唱和する。
 一同がようやく準備を終えると、アルメリア・アーミテージは合図ようの旗を掲げる。

「位置について、よーい………スタート!!!」

 一斉に飛び出した。
 第一泳者は、朝野 未羅、天貴 彩華、典韋 オ來と人魚達だった。

「おらおらおっらああああああ!!!」

 見た目に反し、その名の通り漢らしい様子でバタフライを続けいきなり差を開こうとした。だが、朝野 未羅もただではその差を開かせはしなかった。その先は人魚達が二人仲良く泳いでいる。天貴 彩華は優雅に泳いでおり、あくまでもその水の冷たさを堪能しているようだった。

「皆さんがんばってー!!」

 運営の火村 加夜は『人魚リレー』と書かれた横断幕を振り回し、選手達を応援し始める。アンドリュー・カーは先ほど見つけた模様が、その横断幕にも書かれているのを見つけると、思わず苦笑いを浮かべた。

「負けないんだからぁ!」
「け、お嬢ちゃんやるじゃねえか!!」

 典韋 オ來が余裕の表情で後を追ってくる朝野 未羅に声をかけながら、次のグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーにほら貝を投げつけるように渡すと、砂浜に倒れこんだ。

「まかせたぜ、ライザ」
「うむ、大儀! 後は引き受けようぞ!」

 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーは人間側のトップを維持できるよう、すばやく飛び出したがそのすぐ横を掠め出て行ったものがいた。ニーフェ・アレエだった。

「すみません、お先に」

 そんな丁寧な言葉までかけられて、彼女の中の闘争心に火がつけられた。
 第二泳者はグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー、ニーフェ・アレエ、ケイラ・ジェシータと人魚達だった。ケイラ・ジェシータはのんびりと帰ってきた天貴 彩華に「楽しかったかい?」と問いかけると、満面の笑みが帰ってきた。
 それを見て自分もにっこりと微笑むと、浜で待っているパートナーに一瞥して、海に飛び込んでいった。

「……」
「応援しないんですか?」

 ルーノ・アレエが声をかけてきて、御薗井 響子はうつむいてしまう。恥ずかしいのか、その頬がわずかに赤らんでいた。それを汲み取って、ルーノ・アレエは目いっぱい息を吸い込んだ。

「ニーフェ! がんばってください!」

 そう、恥ずかしげもなく応援をするルーノ・アレエの姿を見て、御薗井 響子も目いっぱい息を吸い込んだ。

 トップ争いはニーフェ・アレエとグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダーだったが、ケイラ・ジェシータもかなり追い上げていた。

「ケイラ! がんばってっ……!」

 遠くから聞こえてくるパートナーの声援に、ケイラ・ジェシータは口元が緩んだ。速度が上がったのは、そのすぐ後だった。さすがに追い抜くことはできなかったが、かなり差を縮めることが出来た。

「任せて! 私がもっと縮めるから!」
「はぁ、頼むよ、沙幸……」

 息切れを死ながらほら貝を渡すと、久世 沙幸はとても競泳にはむかない水着姿で飛び込んでいった。

 第三泳者はローザマリア・クライツァール。飛び込んだ瞬間に、その下半身が鱗と化して人魚形態となった。そして朝野 未沙と人魚チームは戦部 小次郎、久世 沙幸だった。
 ローザマリア・クライツァールは、男人魚チームを追い抜いた。

「ぐう、負けてたまるものかっ!!」

 男の維持とプライドをかけて戦部 小次郎は水をかく腕にさらに力を込めた。そのときだった。

『コジローちゃあんっす・て・き★』

 という、なんとも脱力するしかない声が聞こえてきたのは。背筋に冷たいものを感じたが、彼はそれでもくじけなかった。
 そして、その中でものすごい勢いで追い上げてきていたのが、朝野 未沙だった。トップを爆走している女人魚チームの尾びれに、いや、その身体に抱きつく勢いで……いや、実際に抱きついていた。

「はわああ、すべすべぇ……やわやわだよぉ〜」
「あらら、悪い癖出ちゃったわね……せっかくトップになったってのに」

 孫 尚香は肩をガクッと落として陸に逃げようようとしている人魚にしがみついたままの朝野 未沙からほら貝を強制的に引っ張り出すと、弓を腰に携えたまま飛び込んでいった。

「ごめん、抜かれた!」
「任せて!」

 第4泳者は孫 尚香、シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ、茅野 菫、天貴 彩羽だった。
 男人魚チームも追い上げているが、既に4位まで順位を落としてしまっていた。トップを争うのは、茅野 菫と孫 尚香だ。その後を、シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリが追う。

「人魚さん達の期待を背負ってんだから、負けないよ!!」
「私だって!!」
「ここで負けたらシャチの獣人の名前が泣くわっ」
「ゴメン、追いつけなかった」
「大丈夫。お疲れ様」 

 久世 沙幸からバトン代わりのほら貝を受け取り首にかけると、天貴 彩羽は海に飛び込んでいった。久世 沙幸は呼吸を整えて飲み物を配っている火村 加夜から飲み物をもらおうとするが、なにやら回りの視線が自分に集中している気がする。

「え、なに?……きゃあああああああああああ!!!

 しゃがみこみ、露になっていた巨乳を必死に隠す。だが覆うものがないその旨の柔肉はしゃがんだことにより一層色気をかもし出していた。
 どうやら、バトンを渡すときに首もとのひもをいっしょに解いてしまったようだ。

「だめだめだめぇええ、見ないでえぇ!!」
「落ち着いてくださいませ〜、沙幸様」

 朝野 未那がすかさずタオルを差し出して、ようやく久世 沙幸は落ち着きを取り戻した。

「うう、ありがとうね」
「いいんですよ〜」 

 そうこうしているうちに、リレーのほうは佳境を迎えていた。
 トップを泳ぎ続けていたのは……天貴 彩羽だった。その後を孫 尚香、シルヴィア・セレーネ・マキャヴェリ、茅野 菫が追う。順位は代わることなく、そのままゴールとなった。


「なんと大逆転! 天貴 彩羽さんがトップでゴール………」



 実況をしていた影野 陽太の言葉が急に止まる。
 本人以外はその理由が分かり、一部の人間たちは盛大に鼻血を噴出していた。それをみてふと、天貴 彩羽はスースーする胸元を見下ろした。



「きゃああああああああああ!!!」